オバかの耳はロバの耳 

2015/12/27
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転載記事

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人物探訪: 大村智教授、一期一会のノーベル賞

「自分はもっと何かをしなければ済まない」という初志が、多くの人々の助言、助力を呼び寄せた。



■1.「自分も学び直そう」

 大村智(さとし)が東京・墨田区の夜間高校で物理と化学の試験を監督している際、ふと目にしたのは、一人の生徒が鉛筆を握っている手の指に油がこびりついている事だった。

 改めて生徒たちの姿を見ると、洋服の所々に油をにじませている生徒もいる。昼間は働き、夜はこうして勉学のために登校してくる。大村は改めて、その姿に感動した。

 大村は自分の高校生時代の生活を思い出した。裕福な農家の長男として生まれ、何一つ不自由なく過ごした高校時代は、勉強などしないでスキーや卓球に明け暮れていた。高3の2学期からは受験勉強をしたが、大学に入ってからも、勉強に打ち込んだ覚えはない。




■2.信条は「一期一会」

 今年のノーベル医学・生理学賞に輝いた大村智・北里大特別栄誉教授が研究者への道を歩み出したのは、この瞬間だった。

 大村は、12月7日、ストックホルムでの受賞記念講演で、信条としてきたのは「一期一会(いちごいちえ)」だと語った。茶会に臨む際に「一生(一期)に一度の出会い(一会)と考えて、真心を尽くせ」という茶道の心得である。

 この夜間高校での生徒たちとの一期一会の出会いで、「自分はもっと何かをしなければ済まない」という初志を抱いた事が大村が研究人生を踏み出すきっかけとなった。この時に「生徒たちも頑張っているな」という程度の思いで終わっていたら、今回のノーベル賞もなかっただろう。

 その後の大村の研究人生も、この初志を遂げるために様々な人々との出会いを大切にし、それらの人々に導かれ、助けられて、ついにはノーベル賞に至ったのである。


■3.出会った人々の助言助力で研究者の道に

 夜間高校の教師から研究者への転身の過程でも、大村は出会った様々な人々に導かれた。

 教師となった2年目の春、山梨の実家に帰った時、大学時代の恩師を訪ね、学び直したいという決意を伝えると、学者仲間の東京教育大学教授の小原哲二朗を紹介してくれた。小原への紹介状を得て、その講義を聴講するようになった。

 小原の研究室に出入りしているうちに、大村が夜間高校の教師をしながらも、本格的に化学の研究をしたいという希望を持っていることから、有機化学の分野では世界的に知られている東京理科大学の都築洋二郎の研究室に大学院生として入るのがいいのではないか、と勧められた。

 その勧めに従って、ドイツ語などを猛勉強し、東京理科大学の大学院修士課程に入学したのは、昭和35(1960)年4月だった。昼は大学院で勉強、夜は高校の教師、週一日の高校の研究日を金曜日として、金土日の3日間は大学で実験をする、という生活が始まった。

 都築の研究室では、核磁気共鳴(NMR)を応用して有機化合物の構造を調べるという、当時の最新技術を研究する幸運に恵まれた。ただし、NMR装置は当時、東京工業試験所に1台あるだけだった。人づてで、この装置を夜間だけ使わせて貰う、という許可を得て、徹夜の実験を繰り返した。



 都築は「日本語で論文を書いても外国人は読めないから実績として認めないし、研究成果も正当に評価してもらえない。論文は必ず英語で書きなさい」と指導していた。それで論文は英語で書いて、学会の欧文誌に投稿しようということになった。都築の教えを守って、大村はその後に発表した11百編近くの論文の95%を英語で書いた。

 こうして大村は研究者の道を歩み始めた。その過程で、出会った人びとは大村のために助言・助力を惜しまなかった。大村の「自分はもっと何かをしなければ済まない」という真剣な志ちが伝わったからだろう。


■4.「だったら世界を目指せばいいじゃないか」

 大学院修了の目処がついた頃、山梨大学の助手としての採用も内定した。父親は大村が地元に帰ってくることには喜んだが、秘かに将来を心配し、山梨でも学識のある偉い先生に相談にいった。

 大村の経歴を見た先生は「この経歴だったらあまり将来性がない。せいぜいよくても大学の講師どまりだろう。このまま高校教師を続けて、将来は校長にでもなればいいのではないか」と言った。



 昭和38(1963)年4月、大村は山梨大学工学部発酵生産学科の助手として赴任した。しかし東京で最先端の研究をしていた大村にとっては、ここでの研究は手応えがなかった。そこに東京の北里大学樂学部で化学の研究員を一人募集しているのが、どうか、という話が持ち込まれた。

 条件は大学新卒者と同じということだったが、大村は「やります」ときっぱり返事をした。

下に続く







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Last updated  2015/12/28 12:51:50 AM
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