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9va(きゅうべえ)は、アニメ作成フリーソフト(無料)です。パソコンやタブレット(ipadなど)を急に手にされた学生やご家族の方、どうぞお使い下さい。完全に無料です。使い方で不明な場合「yahoo知恵袋」などを検索してください。9vaは、1日で6500もダウンロードされることもあります。英語版、中国版の説明があります。http://9vae.com/en/ http://9vae.com/zh/ http://9vae.com/zh-tw/ ●山田企画事務所は数年にわたり、配布・セミナーに協力してまいりました9va-win(きゅうべえwin)は、アニメ作成フリーソフト'9VAe'きゅうべえのWindows版です。http://9vae.com/ja/ 9VAe(きゅうべえ)は、Macintosh用アニメGIF/動画(MOV/QuickTime)作成フリーソフトです。http://9vae.com/ja/mac.html 9VA-pi(きゅうべえ)は、 Raspberry Pi用アニメGIF/EVA 作成フリーソフトです。http://9vae.com/ja/raspberry-pi.html
2022年04月01日
AF腐敗惑星のアリスー宇宙連邦の監視機構の元で封印されている惑星がある。その腐敗惑星内で新生命トリニティが蘇生し、世界の秩序を変える動きが始まるこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n6825dd/2/幻想イラストはTHESEIJI(今西精二)作品集からお借りしました。http://www.yamada-kikaku.com/artists/52-seiji-imanishi.html腐敗惑星のアリス■第2回■レムリアという「宇宙の記憶を任務づけられた端子」の回収へ未知の生命体、回収使ゲノンが腐敗惑星へ向う。腐敗惑星の上では、一角獣が、禁断の実の発生を感じていた。 腐敗惑星のアリスー第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 腐敗惑星(2)未知の生命体《回収使ゲノン》 ■遠い旅だった。回収使かいしゅうしの彼は思った。やっと恋人に会えるのだ。が、その恋人はもう過去のことは忘れている。 なぜあの星に飛来してきたのか。 そんなことすらも、ひょっとして昔の恋人である回収使「ゲノン」のひとすら覚えていないのでは。 ゲノンはぞくっと身震いした。 そんなことはありえないはずだ。 我々の種族は、記憶をよりどころに生きている種族なのだ。それゆえに、回収子「ゲノン」の役割は大変なのだ。 このあたりの「宇宙の記憶を任務づけられた端子」である、コードネーム“レムリア”が、連絡をしてこないばかりか。どうやらレムリアは、形態変化を起こしたらしい。 そういう報告が、「ノド」のドームに連絡が入ってきていたのだ。急遽、回収使が派遣されることになった。それがゲノンだった。 ■《回収使ゲノン》の思い 「何という汚らしい星だ」 それがゲノンが腐敗惑星を見た印象だった。 人間型ヒューマノイド肌色か、人間体の血色、その肉色、どすぐろく腐った色が地表の上で、ぐるぐるまわって移動していた。 まるで惑星自体が生物で、腐った肉の海がたゆとうているようだった。 臭い感覚はゲノンにはなかったが、もしゲノンにそれがあるとしたなら、嘔吐していたろう。それほど遠くから見ても、感覚的におぞましい星だった。 (本当にレムリアは、まだこの星で生き残っているのか)絶望がゲノンの心を占めた。 ■(2)腐敗惑星の上 そのとき、腐敗惑星の上で、一角獣は、長い時間、舞おうと思った。 一角獣はその舞踊行為が、償いにあるかもしれないと思ったからだ。その舞踊行為以外に感情を表す方法がなかつた。 彼、一角獣は涙も、でないのだ。 はぎ取られてしまった人間としての感情。心の動きは決して戻ることはないだろう。 一角獣の筋肉がはためく。 血流が彼の体を巡る、波打つ。充分な酸素が必要だつた。(くそ、この星腐敗惑星はあまりに寂しい)彼の感情が爆発する。 彼の体を充分に動かすにたるだけの酸素がなきに等しい。 一角獣は、昔の元とうりの自分(他の生命体)の姿を思い起こそうとする。が、残念。記憶がないのだ。 誰かに、はぎ取られた、そんな気がした。 『僕は一体何者だったのだろう。今の僕は一角獣だ。悲しさを紛らわせるために踊るんだ、一角獣にすぎない事を忘れようとして。それもこの放棄された星の上でただ一匹だけだ。なぜなんだ。寂しいよう』 彼は興奮していた。顔を何かが濡らしている。 『何、これ、生暖かい。いやだ。血だよ』 そう、いましがた、彼の鋭い角が、屠った相手の血だった、、事にきづく。 『そうか、僕の踊りは死の舞踊だったんだ。任務はこの呪われた星の腐った生物を殺戮することだ』 彼は急に自分の任務にきずく。 『でも、一体だれが僕にこの役割を』いっそう疑問が深まる。 腐敗惑星の肉は、一角獣の足まで及んでいた。少し動くと足がずぶっと沈んだ。目の前で爆発が起こる。 何やら、分からぬ生物の内蔵が膨れ上がり破裂したようだった。臭気が立ちのぼり地平線は真っすぐには見えない。歪んで見えた。 彼の頭の中に、急にイメージが広がっていた。 記憶がもどったのか。それとも。 (禁断の実を発見し、彼女がそれを食べたなら、そう、王が発生するかもしれん) 『一体、何だ、このイメージは。禁断の実だって、それに、彼女だって。何なの』 この意識の流れは。彼は一層激しく体を動かす。目の前の腐敗物へ体ごと、身をぶつけるユニコーン一角獣だった。 (続く)20210830改定腐敗惑星のアリス(トリニテイ・イン・腐敗惑星・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#腐敗惑星のアリス
2021年08月30日
https://www.youtube.com/watch?v=uldiFMoT-5c&t=7s Pandemic Ono band2020年パンデミック発生の年に結成。自由な活動が制限される中、さまざまなジャンルで活動して来た4人がパンデミックの収束を願い結成。サウンドは60年代後半から70年にかけてのサイケデリックロック、プログレッシブロック、ジャズロックなどの新しい音楽がマグマのように湧き出てくる瞬間を表現しようと音作りを行う。4人の長いキャリアから出てくる様々なアイデアを凝縮してその時代のエネルギーを再現している。音楽配信とCD絶賛発売中です。■メンバープロフィール・三原淑治(ギター)大学在籍よりジャズギタリストとして活動を始める 卒業後楽器メーカー(日本ハモンド)にて電子楽器の開発を担当するが音楽活動に専念する為に 1981年退社。同年 Jimmy Smith(グラミー賞受賞ジャズオルガンプレイヤー)日本ツアーサポートギタリストを始めとする演奏活動を再開、また西日本初の総合音楽専門学校●キャットミュージックカレッジ専門学校の理事・校長●として長く後進の育成を行いながら多くの自身のアルバム制作、様々なアーティスのサポート・プロデュースを行う。2015年にOGDrecords設立、関西の若手ジャズアーティストを中心にリリース。・三原淑治リーダアルバム「Up-town blues/キングレコード」1985年「Aya/米国Moon café record」1999年「Rie smile/OGD-records」2015年「Jin Jin/OGD-records」2020年 その他多数のアルバムに参加・小野みどり(ハモンドオルガン)大学在学時より本格的にジャズを始め国内外で活躍。サンフランシスコジャズフェスティバル、サンノゼジャズフェスティバル、スタンフォードジャズフェスティバル等アメリカのジャズフェスにも招聘されている。2017年には、Akira Tana and the Secret Agent Bandのオルガンプレイヤーとしてアメリカ西海岸ツアーに参加した。1999年に初アルバム「Green's Blues」、2000年に「Jazz Organ Tribute」、2014年、アメリカのジャズレジェンドドラマーAkira Tanaを迎えて「In my own way」をリリース。・チーチョ西野(ドラム)関西を代表するパーカッショニスト&ドラマー。自身のユニットだけでなくSMAP、ゴスペ☆ラッツ、東方神起、NANIWA EXP.、コモエスタ八重樫、シモーヌ深雪、木村優一(和太鼓)、青木美江、等多くのアーティストをサポート。また司会、後進の指導、講演、DJ、テレビ出演など演奏活動以外にも多彩に活動中。・戸嶋 哲(エレクトリックベース)1997年ロックユニット「リビドー」でキューンレコードよりデビュー、同バンドでニューヨークのライブハウス出演した際にはフジテレビのドキュメンタリーとして放映される。 その後音楽をジャズ、ラテンにシフトして国内外で幅広く活動。サンフランシスコのロシアンリバー・ジャズ・フェスティバル、モンタレー・ジャズ・フェスティバルなどにも出演し現在関西を中心に活動中。配信は世界185ヵ国以上ほとんどの配信サイトでダウンロード可能。OGD recodsホームページは工事中(もうすぐオープン)。*山田企画事務所・山田博一は●キャットミュージックカレッジ専門学校の理事・校長●三原先生にお世話になりました。https://ogd-records.jp/ PANDEMIC ONO BAND2021/02/21 にライブ配信ーyoutubehttps://www.youtube.com/watch?v=uldiFMoT-5c&t=7s Pandemic Ono bandFormed in the year of the 2020 pandemic. While free activities are restricted, four musicians who have been active in various genres formed a wish for the pandemic to converge.The sound is created to express the moment when new music such as psychedelic rock, progressive rock, and jazz rock from the latter half of the 1960s to the 1970s springs up like magma.The energy of that era is reproduced by condensing various ideas that come out of the four long careers.Music distribution and CD are now on sale. Please check it!
2021年08月23日
ラッキー植松先生は、山田企画事務所の協力作家です。ラッキー植松先生にマンガの描き方を書いていただいております。(無料)英語 中国語版があります。ご覧ください。http://www.yamada-kikaku.com/lesson.html http://www.yamada-kikaku.com/en/lesson-1.html http://www.yamada-kikaku.com/cn/lesson-1.html http://www.yamada-kikaku.com/tw/lesson-1.html
2021年07月14日
■「コロナな日々から」「日本漫画家協会 関西ブロック展」が開催7月7日(水)~12日(月)2021年06月29日(火) この度、日本漫画家協会 関西ブロック所属の作家による漫画展「日本漫画家協会 関西ブロック展」が開催されます。「日本漫画家協会 関西ブロック展」--------------------------------------■期間:2021年7月7日(水)~12日(月)■会場:アートギャラリー北野 1階〒604-8005 京都市中京区三条通河原町東入ル恵比須町439-4 コーカビルTEL:075-221-5397Web:https://www.gallery-kitano.com/ ■時間:11:00 - 19:00■出展者外村晋一郎/岡本治/篠原ユキオ/武田秀雄/高月紘/柳たかを/筑濱健一/ラッキー植松/田中智海/丸岡昴洋/桑原まさはる/たむら純子/南洋 (敬称略)■「コロナな日々から」口を開けばコロナからという日々が続いています。『3密』を避けたひきこもり生活は、漫画家にとってはごくノーマルな状態ではあるものの、それぞれの生活に多くの変化をもたらしました。そんな中で失ったものは色々ありますが、新たに見えてきたものもたくさんありました。今回の展示はコロナ禍で浮んだそれぞれの想いを作品にしたものを中心にご覧頂きます。まだまだ油断できない状況が続きますが、十分な予防を心掛けて無理のない範囲でお出かけ下さい。--------------------------------------どうぞよろしくご来場をお願い申し上げます。注 山田企画事務所・山田博一も日本漫画家協会会員なので関西ブロック長の許可を得て告知させていただきます。
2021年06月29日
6月13日放送NHK大河ドラマ「青天を衝け」敦賀にある武田耕雲斎/水戸天狗党等の墓です。2014/09/29撮影。武田耕雲斎等の墓 水戸烈士記念館Matsubara Shrine,Shrine024
2021年06月13日
6月13日放送NHK大河ドラマ「青天を衝け」敦賀にある武田耕雲斎/水戸天狗党等の墓です。2014/09/29撮影。
2021年06月13日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/26/源義経黄金伝説■第27回★西行は奥州、藤原秀衡に平泉を第二の京都にいかがと告げる、その考えは後白河法皇も考えていた源義経黄金伝説■第27回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube西行はその平泉東稲山の、京都東山の桜に似た風景を愛でた。「変わってしまったのは、我らのほうです。西行殿、自然はこの後千年も二千年も桜の花を咲かせましょう。が、我々の桜はもう散ってしまったのです」「何を寂しいことを申される、秀衡殿。平泉という桜も今は盛りに咲いておるではございませんか」「しかし、西行殿。平泉という桜は、いずれ、散ってしまおう」「西行殿だからこそ、話もいたしましょう。この陸奥の黄金郷、末永く続けたく思っておるが、悩むのは、私がなくなった後のこと」「なくなるとは、また不吉な」「いやいや、私も齢六十七。後のことを考ておかねばなりません。六年前までおられた義経殿を、ゆくゆくはこの我が領地の主としようと画策致しましたが、我が子の清衡は、いかんせん、私の言うことを聞きそうにありませぬ」「ましてや、義経殿が、この奥州を目指していられるとの風聞もある由、そうなれば鎌倉殿と一戦交えねばなりますまい」「西行殿、再び、平泉全土をご覧になってはどうじゃ。この平泉王国、けっして都に引けは取りますまい。この近在より取れる沙金、また京の馬より良いと言われる東北の馬が十七万騎。いかに頼朝殿とて、戦火を交えること、いささか考えましょうぞ。そこで西行殿、ご相談だ。この秀衡、すでに朝廷より大将軍の称号をいただいておる。加えて、天皇の御子をこの平泉に遣わしていただきたい」「何、天皇の御子を平泉に…」「さよう。恐らく、西行殿も同じことをお考えになっておられるに相違ない。この平泉、名実ともに第二の京都といたしたいのです。今、京の荒れようは保元事変以来、かなりの酷さと聞き及びます。どうぞ、御子をはじめ公家の方々、この陸奥ではあるが、由緒正しき仏教王国平泉へ来てくださるようにお願いいたす。秀衡この命にかえましてお守り申しそう」 平泉を第二の京都に、その考えは後白河法皇も考えていたのである。が法皇はそれにある神社を付け加えたいと考えていた。保元の乱にかかわったあの方。そして西行もかかわったあのかた。崇徳上皇である。京都は霊的都市である。京都を建設した桓武は怨霊の祟りを封じ込める方策をした。当時の最新科学、風水、陰陽道である。東北にあたる鬼門には、比叡山を置き、西北には神護寺がある。文覚の寺である。またその対角線には坂之上田村麻呂を意味した将軍塚をおいた。将軍塚は東北征伐を意味する。坂之上田村麻呂が征服した東北、鬼門が奥州である。奥州平泉に比叡山にあたる神社をおけばよい。そうしれば、後白川は、京都朝廷は崇徳の祟りから防衛できる。そう考えていた。西行は、「しきしま道」すなわち言葉遣い士、言う言葉に霊力があり、西行が歌う言葉に一種霊的な力があるとした。和歌、言葉による霊力で日本を守ろうとし、西行を始めとする歌人を周回させている。西行はその意味で歌という言霊を使う当時の最新科学者。言葉遣い士である。西行は、それゆえ歴史に書かれてその名が残るように行動した。現世よりも死後歴史著述にその名が残るように行動した。そういう形で西行の名が不滅であるようにした。西行の行動様式こそが歌人の証明であった。いわば祝詞という目出度い言葉を口にさせで、目出度い状況をつくりあげるのだ。万葉集という詩華集以来、日本は世界最大の言霊のたゆとう国である。平泉を第2の京都には、実質は奥州藤原氏によって立ち上げられている。後は祭事行為をどこまで、認めるかである。「秀衡殿、そうならば、鎌倉の頼朝殿の攻撃から逃れられるとお考えか」「甘いとお考えかもしれぬ。しかし、我が子泰衡の動き、考え方などを見るにつけても、泰衡一人で、この陸奥王国を支配し、永続させていく力はございません」「が、義経殿がおられましょう」「義経殿は、いまだ、どこにおわすか」「秀衡殿、お隠しめされるな」西行は語気強くいった。「何と…」秀衡は慌てていた。「すでに義経殿は、秀衡殿の手に保護されておられるのではないか」西行は疑う様子が見える。「何を証拠に…」慌てる秀衡に対して、西行は元の表情に戻っている。「いえいえ、今の一言、この老人のざれ言、気になさらずとも良しゅうございます。もし義経殿がおられるとしたらどうするおつもりかな」「そうよ、それ、もしおられるとすれば…。西行殿もご存じのように、津軽十三湊とさみなと、我が支配にあることご承知でしょう」「知っております」そうか、その方法があったのかと西行は思った。海上の道である。「あの十三湊は、大陸との交易につこうています。今、大陸では、平清盛殿のおりとは違って、宋の力も落ちているとのこと。もし鎌倉殿の追及が激しければ、義経主従、かの国に渡っていただこうと思っております」「おお…、それはよき考え」「つまり、義経殿は、この日の本からいなくなるという。それで頼朝殿からの追及を逃れる。加えて法皇様の力で、この平泉政庁を第二の京都御所にしとうございます。そうすれば、この平泉仏教王国は、京都の背景を受け安泰でござる。そのためにはぜひとも…」秀衡は砂金を使い、砂金をそれこそ、金の城壁にして平泉を守ろうとしている。京都はそれできくだろう、が、鎌倉は、頼朝殿は、そうはいくまい。西行は思った。源頼朝は、源氏の長者は、その金そのものがほしいのだから。「その東大寺の沙金、そうした意味の使い方もございますか」「さようです。無論、東大寺の、重源殿に渡していただければ結構。しかしそれがすべてではございまぬ。どうぞ、後白河法皇様にこの秀衡の話を、取り次いでいただけませぬか」「わかりました。この西行がこの老いの身をおして、再び平泉の地を訪れたのも、この極楽郷、平泉の地がいかがなるかと気に致してのこと。秀衡殿、この地、永遠に残したいという思いあればこそ、二ヵ月もかけて、この陸奥の地を踏みました。よくお受けくださいました。法皇様も喜ばれることでございましょう」西行の思いは半ば成立している。崇徳上皇様、法王様、喜び下されい。これで少しは鎌倉殿の勢力を押さえる事が可能かも知れない。西行は四国の寒々した崇徳上皇綾を思った。同じ寒さでも、ここは、崇徳上皇様にとって暖かかろう。西行は、この平泉平和郷を守りとうしたかった。ここでなら、西行の守る西国王朝、京都の言葉の武器「しきしま」道も守れるかもしれん。平泉の衣川べりの高い台地に、新しい館が建っている。高館たかだてと平泉に住むものどもは呼んでいる。 館の下を二人の雑色がとうりかかり、館を見上げる。「おお、あれはどなた様のお館なのだ」「お前、知らぬのか。あれは高館御所。義経様と郎党の方々が住んでおられる」「おお、あの義経殿か。それでもお館様の伽羅御所に比べれば、小さいのう」「まあ、これは俺が聞いた話だが、泰衡様が、義経様に対して、あまりよい顔をなさってはおられぬ」「なぜだ」「それは、お前。秀衡様は、我が子泰衡様より義経様をかっておられるからだよ」続く201208改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube
2021年06月07日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/25/源義経黄金伝説■第26回★平泉・秀衡屋敷で西行を待ち受ける藤原秀衡。四十年の旧交を温める。源義経黄金伝説■第26回★ 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所anga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube西行はようやく平泉にたどり着いていた。平泉全土の道路に1町(約108m)ごとに張り巡らされた黄金の阿弥陀佛を描いた傘地蔵が、ここが、新しい仏教世界を思わせる。この地が仏教の守られた平和郷である事をしめしている。長い奥州の祈念が読み取れるのだ。「おお、ここだ。この峠を越えれば平泉は望下の元だ」「では、西行様、我々はこれにて姿を消します」東大寺闇法師、十蔵が告げた。「何、お主は、私と同じ宿所に泊まらぬつもりなのですか」「はい、私の面体にて、藤原秀衡殿に変に疑いを生じせしめらば、東大寺への勧進に影響ありましょう。私は沙金動かすときに現れます」 十蔵は、西行の前から音もなく消え去る。また背後の結縁衆の気配も同じように消えている。西行の前に、平和なる黄金都市平泉の町並みが広がっている。平泉は京都とそっくりにつくられている。賀茂川にみたてられた北上川が、とうとうと水をたたえ流れている。東の山並み束稲山は比叡山である。この桜を、西行との友情のため秀衡が植えてくれていた。 平泉は当時人口十数万人を数え、この時期の日本では京都に次ぐ第二の都市となっていた。清衡以来、わずか100年でこのように発展したのは、この黄金の力によるのだろう。奥州王国は冶金国家であり、その基本は古来出雲から流れて来た製鉄民の集まりである。金売り吉次が重要な役割につけたのも、岡山のたたら師であった出自であったからである。 平泉・秀衡屋敷で西行を待ち受ける藤原秀衡は、この時六十七歳である。「西行様、おおよくご無事で、この平泉にこられたました」秀衡はまじまじと、西行の顔と姿を見る。「秀衡様、お年を召されましたなあ」西行も嘆息した。「前にお会いした時から、さあもう四十年もたちましたか。西行殿、当地に来られた本当の理由もわかっておりますが、私も年を取り過ぎました。息子たち、あるいは義経様がおられましたら、法皇の念ずるがままに、この平泉の地を法皇様の別の支配地に出来ようものを。残念です」「季節はすぎております。お見せしたかった。おお、東稲山の桜は、きれいに咲いておりまする。その美しさは、ふふ、四十年前と変わらぬではございませぬか」続く2010改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube
2021年06月07日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/24/源義経黄金伝説■第25回 西行は、多賀城にある吉次と義経救出について話しあう。平泉に向かう奥大道を歩く 静かの一行と出会う。その後静かは黒田の悪党に拉致される源義経黄金伝説■第25回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube平泉で、義経が感激している時期、西行は少し離れた、多賀城たがじょう(現・宮城県多賀城市)に入っている。奈良時代から西国王朝の陸奥国国府、鎮守府がおかれている。つまり、多賀城は西国王朝が東北地方を支配がせんがためにもうけた城塞都市である。いわば古来からの西国征服軍と先住アイヌ民族戦争での最前線指揮所である。ここから先は、慮外の地、今までに源氏の血が多く流されしみついていた。今も奥州藤原氏勢力との国境にあり、世情騒然たる有様である。鎌倉と平泉との間に戦端が開かれるかいなか、民衆は聞き耳をたてている。西行は、多賀城にある金売り吉次の屋敷を訪ねる。屋敷はまるで、御殿のようであり、「大王の遠つ朝廷みかど」多賀城政庁より立派な建物と評判であり、金売り吉次の商売の繁盛を物語っている。ここ多賀城だけではなく、日本中に吉次の屋敷はあるのだ。二人は先刻から、座敷に対峙していた。吉次は赤ら顔でイノシシのような太い体を、ゆらゆらと動かしている。体重は常人の倍はあるだろうか。西行は、思いが顔にでていまいかと、くるしんでいる。話はうまく行ってはいない。「吉次殿、どうしても秀衡殿の荷駄の護衛を受けてくれぬか」吉次はふっとためいきをいき、上目つかいで、ためないながら言った。「西行様、、、、いくら西行様のお願いとて、吉次は、今はやはり商人でございます。利のないところ商人は動きませぬ。今、藤原秀衡様は鎌倉殿と戦いの火ぶたを切られようとするところ。さような危ないところに、吉次の荷駄隊を出すことはできませぬ。やはり、昔のような事ができませぬ」「わたしとお主との旧い縁でもか」「牛若様、いや義経様が、鎌倉殿とあのような、今は、、、やはり、時期が悪うございます」「吉次殿、お主も偉くおなりだな」 西行は吉次に嫌みを言った。一体誰のお陰で、、この身上を吉次がきづけたのかという思いが西行にはある。「西行様、もうあの頃とは時代が違ごうてございます。今は世の中は、鎌倉殿、頼朝様に傾きつつまると、吉次は考えます」「そういうことなら、仕方あるまい」 西行、吉次の屋敷振り返りもせず出て行く。先を急がねば、いつの間にか、姿を消していた重蔵の姿が現れている。この2人をとりまくように、人影がまわりを取り巻き歩いている。鬼一方眼が使わせた結縁衆である。西行は重蔵に語りかけるのでもなく、、一人ごちた。「不思議な縁だよ。いろいろな方々との縁でわたしは生きておる。平清盛殿、文覚もんがく殿、みな、北面ほくめんの武士の同僚であった。清盛殿は平家の支配を確立し、文覚は源頼朝殿の旗揚げを画策し、この私は義経殿をお助けしたのじゃ。がしかし、この治承・文治の源平の争いの中を、この私が生き残ってこれたのも、奥州藤原秀衡ひでひら殿のお陰だ」西行は昔を思い起こしている。西行は、多賀城にある吉事屋敷をでて平泉に向かう奥大道を歩いていた。前を歩く小者と乳母をつれた女性が静であるとに気付き、呼び止める。「静殿、静殿ではござらぬか」「ああ、西行様」静は西行に気づいている。静も平泉を目指していると言う。「お子様のこと、誠にお気の毒でござる。が、御身が助かっただけでもよいとはせぬか」西行はなぐさめようとした。「我が子かわいさのため、あの憎き頼朝殿の前で舞い踊りましたものを。ああ、義経殿の和子を殺されました。ああ、くやしや」「その事を確かめるのも、みどもの仕事であった。後白河法皇さまから、言われておったのじゃで、静殿、この後はどうされるおつもりじゃ」静は、少し考えて言った。「行く当てとてございません。母、磯禅尼とも別れたこの身でございます」「禅師殿とのう。さようか、そうなれば白河の宿の小山家こやまけまで行ってくだされぬか。我が一族の家でござる」西行の一族、藤原家はこの板東に同族が多い。その一の家にとどまれと西行はいうのだ。「白河の関。まさか、義経様がそこまで…」「はっきりしたことは言えぬ。が、義経殿に会える機会がないとも言えぬ」「私が、西行様と同道してはならぬとお考えですか」「ならぬ。儂の、この度の平泉への目的は、あくまでも東大寺の勧進だ。秀衡殿から沙金を勧進いただくことだ。女連れの道中など、目立ち過ぎる。鎌倉探題の義経殿に対知る詮議も厳しかろう。それに、いくら私が七十才を過ぎた身なれば、何をいわれるかわかり申さぬ」しづかは、ある疑いをたづねた。「ひょっとして、西行様。わが母、磯禅尼とはなにか拘わりあいが、若き時に」静はつねから、疑問に思っていたのである。「これ、静殿、年寄りをからかう物ではない」が、静は自分の疑問がまだ広がっていくのを感じた。 西行は、自分と乙前があったあの神泉苑で、その思い出の場所で、この若い二人が、義経と静が、出会うとは思っても見なかった。縁の不思議さを感じている、やがて西行は意を決して言葉を発した。「これは義経殿よりの便りじゃ」「えっ、どうして、これが西行のお手に」「儂がこのみちのくへ旅立つ前のことじゃ。実は、儂の伊勢にある草庵に、義経殿の使いの方がこられて、これを鎌倉のいる静殿に渡すよう頼まれたのじゃ。あの鎌倉では危のうて渡せなんだ」「西行さま、義経さまとは」「たぶん、平泉であえるだろう」「平泉。どうか、私もお連れください」「それはならぬ。頼朝殿の探索厳しい、そのおりには無用だ。この地にある小山氏屋敷に止まっておられよ。きっと連絡いたそう。これが私の紹介の書状です。私の佐藤一族がこの地におる」「きっとでございますよ」静は祈念した。 西行と分かれ旅する静たちに気付く数人の騎馬武者がいる。遠く伊賀国黒田庄に住まいしていた悪党、興福寺悪僧、鳥海、太郎左、次郎左を中心とする寺侍、道々の輩の姿の者どもが板東をすぎる途中に、14人に膨れあがっている。その一行である。 黒田庄は東大寺の荘園であり、東大寺の情報中継基地の一つであった。大江広元からの指示を得て、西行のあとに追いついてきていた。そこでめざとく静をも見染めている。「おい、あれは静ではないか」鳥海がつぶやいた。「おお、知っておる。見たことがあるぞ」「あれは京一番の白拍子と謳われたのう。が、確か義経とともに吉野へ逃げて、どうやら頼朝が離したらしいのう」 鳥海が付け加えた。「ふふう、ちょうどよい。ここでいただこうぞ」「おう、そうじゃ。女子にもとんとご無沙汰じゃのう」「よき話。幸先がよいのう。静は西行へのおさえにもなろう」 なかの三人はゆっくりと、旅装の静たちを追い越し、一定の距離で止まっている。静は何か胸騒ぎを感じた。 騎上の三人がこちらを見ているのが、痛いほどわかる。それも好色な目付きで、なめ回すように見ている。首領らしい三人とも、普通の武士ではない。加えて、心の荒れた風情が見えるのだ。この戦乱の世でもその人間の壊れ具合が静かには手に取るようにわかる、「そこなる女性、我々の相手をしてくれぬか」静たちは無視して通り過ぎようとした。「ほほう、耳が遠いと見えるわ」「いや、違うじゃろう」「義経の声でないとのう、聞こえぬと見えるわ」すわつ、鎌倉探題の追って、静は思った。 静は走り出していた。が、三人は動物のように追いかけて捕まえている。小物と乳母はその場で切り捨てられいる。「ふう、どうじゃ。我が獲物ぞ」「兄者、それはひどいぞ」「次郎左、よいではないか。いずれ、西行が帰って来るまで、こやつは生かしておかねばならぬからのう」「それも道理じゃ。ふふ、時間はのう、静、たっぷりとあるのじゃ」 ひげもじゃの僧衣の男がにやついている。静の顔をのぞき込んでいる。 街道の近くにある廃屋の外にひゅーっと木枯らしが吹いていた。 可哀想な獣たち。 静は、太郎佐たちを見てそう思った。 きっと、この戦乱が悪いに違いない。静は舌を咬んで死のうかと思った。が、万が一でも、義経様に会えるかもしれない。この汚れた体となっても、義経様はあの子供のような義経様は許してくださるに違いない。 静はそう思い、いやそう念じていた。この獣たちと生きて行くが上の信仰となっていた。 この獣たちは、静の体を弄ぶとき以外は、非常に優しかった。静という商品の価値を下げてはいけないという思いと、以外と京の白拍子という、京に対する憧れが、静を丁寧に扱わせているのかもしれなかった。「おい、鳥海。あの笛、止めさせぬか。俺はあの音を聞くとカンが立つ」太郎左が言う。 静が廃屋で、源氏ゆかりの義経からもらった形見の薄墨の笛を吹いているのである。「よいではないか、兄者。笛ぐらい吹かせてやれ」「次郎左、お前、静に惚れたか。よく庇うではないか」静は、我が体が死しても義経に会わなければならなかった。こうなった今はなおさら、続く 201308改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube
2021年06月06日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/23/源義経黄金伝説■第24回「我が子よ」 秀衡は、義経の体をがっしりと抱き締めていた。義経の少年のような健気さを、奥州の帝王は愛した源義経黄金伝説■第24回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所 ★奥州の黄金都市平泉にはすでに初雪が舞っている。10万の人口を抱える中心にある藤原秀衡屋敷が騒がしかった。多くの郎党が玄関先に並んでいる。「我が子よ」 秀衡は、義経の体をがっしりと抱き締めていた。それは親子の愛情よりも、もっと根深いものであった。いわば、お互いに対する尊敬の念であろう。が、この二人の仲むつまじさが、秀衡の子供たちの嫉妬を義経に集めたのである。「よくぞ、ご無事で、この平泉まで」義経は肩を震わせている。それは平氏を打ち破った荒武者の風情ではない。「遠うございました。が、秀衡様にお会いするまでは、この義経、死んでも死にきれません」「死ぬとは不吉な。よろしいか、この平泉王国、ちょっとやそっとのことでは、頼朝を初めとする関東武士には、負けはいたしませんぞ。おお、どうなされた、義経殿」義経は涙を流し、秀衡の前にはいつくばっていた。「くやしいのでござる。実の兄の頼朝殿の振る舞い。それほど、私が憎いのか。疎ましいのか。一体、私が平家を滅ぼしたのが、いけなかったのか。私は父の敵を打ちたかっただけなのです。おわかりでございましょう」 秀衡は、義経の肩を抱き、慰めるように言った。「おお、そうでございますよ。よーく、わかっております。その願いがなければ、あなたを戦の方法を習わせに、女真族の元まで、いかせるものですか」奥州の帝王、藤原秀衡はゆっくりと義経の全身を見渡し、顔を紅潮させている。「そうなのです。私の戦い方は、すべてこの奥州、さらには秀衡様のお陰で渡れた女真の国で学んだものでございました。おもしろいほどに、私は勝つことができたのでございます」義経は、頼朝のことも忘れて、目をきらきらさせて、戦の話始めていた。義経の圧倒的な戦い方は、日本古来の戦法ではなかった。外国、特に騎馬民族から学んだ戦い方、異なる戦い方をするということが、坂東武士から嫌われる原因の一つともなっていたのである。 義経は、純粋の京都人でありながら、平泉王国という外国へ行き、そこからまたもう一つ遠くの女真の国へ出向き、新しい地平を見たのであった。 義経は、自分の力を試したかったのだ。自分の力がどれほどのものか。外国で培った戦術がこの日本で、どれくらい有効なのか。義経は、そういう意味で、戦術の技術者であった。技術者同志ということで、不思議と冶金の技術者であった金売り吉次と気があったのかもしれなかった。もっとも、吉次は、今は商人という技術者だが。 義経は京都人であった。ましてや、源氏という貴人の血を持っていた。また義経は十五歳以降源頼朝の元へ参じる二十三歳までは、奥州人でもあった。奥州は京都から見れば、異国である。義経はいわば奥州という外国生活をした訳である。後年、戦術においては、それまで存在していた戦い方を一変させた義経の戦闘方法は、いわば奥州という外国製である。 義経にとって育ての親は、藤原秀衡である。秀衡は当初義経を京都に対する政治的道具として使おうとしたであろう。義経の素直さ。また何とも人を引き付けるいわば少年のような健気さを、この奥州の帝王は愛したのである。続く2014改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所 ★
2021年06月05日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/22/源義経黄金伝説■第23回■鎌倉の大江屋敷で、静の母である磯禅師と、大江広元が密談する。2人共京都との微妙な関係の上にたっている。源義経黄金伝説■第23回 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube 鎌倉の大江屋敷で、静の母である磯禅師と、大江広元が密談している。大江広元は西行との会談後、磯禅師を呼びつけている。「ここは腹を割っての相談だ。二人だけで話をしたい」 怜悧な表情をした広元はゆっくりとしゃべる。「これはこれは何事でございましょう。頼朝様の懐刀といわれます大江広元様が、この白拍子風情の禅師にお尋ねとは?」磯禅師は身構えている。広元は京都の貧乏貴族、昇殿できない低格の貴族だった。それが、この鎌倉では確固たる権力を手にしている。侮れぬこの男と禅師は思う。「あの静、本当はお前の娘ではあるまい」 磯禅師の返事は少し時間がかかる。やがて、答えた。「さすがに鋭うございますね。大江様、確かにあの娘は手に入れたもの」「禅師殿、赤禿あかかむろを覚えておられるか」 急に大江広元は京都の事を問い始める。 磯禅師の頭には、赤禿の集団が京都を練り歩く姿が思い起こされた。「何をおっしゃいますやら、平清盛殿が京都に放たれた童の探索方、平家の悪口を言う方々を捕まえたというは、大江様もご存じでございましょう」 続いて白拍子が清水坂にたむろしている姿も思い出していた。「いや、まだ話は続くのだ。この赤禿以外に、六波羅から清水寺にいたる坂におった白拍子が、公家、武士よりの悪口を収集していたと聞く。その白拍子を束ねていた女性にょしょうがあると聞く」「それが私だとおっしゃるのですか」「いやいや、これは風聞だ」「……」磯の禅師は黙った。次に来る言葉が怖かった。◎尼僧が禿かむろを呼び止めている。京都、六波羅の近くである。「どうや、あの方のこと、何かわかったか」「あい、禅師様。残念ながら、も一つ情報がつかめまへん」「ええい、何か、何か、手づるはないのかいな」「へえ、でも禅師様…」禿は、いいかけて言葉を止めた。自分の想像を禅師に告げたならば…。仕返しが恐ろしかった。禿の思いには、何故そのように西行様の情報を…、何か特別な思い入れがおありになられるのか…、答えはわかっているようであった。つまりは嫉妬である。西行が皇室の方々に恋をし、またその皇女の方も、西行を憎からず思っていることを…。、どうしても邪魔をしなければならなかった。大江広元の前、磯禅師の追憶で、顔色は変わっていた。がしかし、次の広元の言葉は禅師の予想とは違った。「が、安心せよ。本当に聞きたいのは、西行殿のことなのだ」「え、西行様のことですか」 磯禅師はほっとした。平家のために行っていた諜報活動を責めるのか。いやそうではない。私はお前の過去のすべてを知っているぞという威しであろう。ともかく、安堵の心が広がっている。そこは同じ京都人である。「そうじゃ。今日、西行殿が頼朝様の前に現れた。西行殿は東大寺重源上人より頼まれて、奥州藤原氏、平泉へ行くと言う。目的は東大寺勧進じゃ」「確か、西行様は、七十才にはなられるはず。西行様と重源様とは、高野山の庵生活の折りからお知り合いとか聞いております」「そう聴いている、が、その高齢の西行殿が、よりにもよってこの時期に、平泉へ行かれるというは、何かひっかかる」「それで、何をこの私にお尋ねになりたいのですか」「まずは、平清盛と西行殿の繋がりだ」「確か、北面の武士であられたときに知己であったとか、また文覚様とも知己であったと聞いております」「あの文覚どのと、重源どのは京都で勧進僧の両巨頭だ。清盛殿がこと。西行庵と六波羅とは指呼の間、六波羅へは足しげくなかったか」「特にそれは聞いておりません」 大江広元は、しばし考えていた。 広元の声が、磯禅師の耳に響く。「聞きたいのは西行とは奥州との繋がりだ。私も京都にいたとき聞いておるが、あの平泉第の吉次じゃ。あやつが数多くの公家に、奥州の黄金や財物を撒き散らしておるのは聞いておる。そこで、吉次と西行との関係を知りたい」 金売り吉次は、奥州藤原秀衡の家来であり京都七条にある平泉第ひらいずみだいの代表である。平泉第は京都の一条より北にあり、現在でいう首途かどで八幡宮のあたりを中心に、広大な屋敷を構えている。いわば異国の大使館である。 吉次の率いるの荷駄隊は、京都にて黄金を、京都在住に多くの貴族に贈り物として差し出していた。「そういえば、平泉第は一条より北にありましたな…」「西行法師は平泉第へは通っておらなんだか」「ともかくも西行様、平泉の秀衡様とも確か知己であったはず。そうなれば、京都での西行様の良き暮らしぶりも納得がいきます」「さらにだ、西行は西国をくまなく訪ねている。これは後白河法皇様の指示ではなかったか」「そこまでは私には断言できませぬ」「それもそうだな」「大江様は、西行殿をお疑いですか」「この時期に平泉に行くのが、どうもげせんのだ」 西行殿…、なつかしい名前を聞いた。思わず、磯禅師の顔は紅潮している。大江広元に気付かれなかったろうか。 京都・神泉苑でのことを、磯禅師は思い出している。多くの白拍子が踊っている。観客は多数である。その中に一際目立つ、りりしい武者がいた。磯禅師は、近くの知り合いの白拍子に尋ねる。「あの方はどなたなの」聞かれた白拍子が答えた。「ああ、あの方は佐藤義清様よ。このお近くのお住まいの佐藤家のご長男ぞ」 磯禅師は佐藤義清の方を見やって、溜め息をつくように思わずつぶやく。「佐藤義清様か」 その白拍子が、微かに笑って言う。「ほほほ、さては、磯禅師さま、一目ぼれか」磯禅師ははじらった。「ばかな、そのようなこと……」 が事実だった。頬が紅色に染まっている。禅師の十七才の頃の思い出である。日本を古代から中世へと、その扉を開こうとしていたのは、西行の嫌いな源氏の長者、源頼朝であった。 また頼朝の側にいるのは、貴族階級の凋落を見、新しい政治を求めて鎌倉という田舎へ流れていった貧乏貴族である。その代表が大江広元である。頼朝は西行の背景にいる後白河法皇に憎しみを滾らしている。「あの大天狗、私を騙そうと言う訳か。大江、大天狗にひとあわふかせるべく手配を致せ」 源頼朝が大江広元に命令する。「いかように取りはからいます」「西行へ、奥州藤原氏より、いだされる沙金を奪うのだ。が、平泉から鎌倉までの道中にてぞ。鎌倉についてしまえば、これから先は鎌倉の責任、黄金を奪う訳にはいかぬ」「さようでございます。また、よくよく考えますればこの沙金、奈良まで着きましたならば、西国にいまだ隠れおります平家の落人たちに渡るやも知れません」「あの大天狗の考えそうなことよ。北の奥州藤原氏と西の平家残党から、この鎌倉を挟み撃ちにしようとな」「では、義経殿もこの謀に加わっておられると」「可能性はある。実の子供よりも、源義経を考えておった藤原秀衡殿のことであるからな。また、後白河法皇もいたく、義経が気に入っておった。あやつは法皇の言うことなら何でも聞く」「頼朝さま。やはり、沙金を必ず奪い取らねば、我が鎌倉の痛恨となりましょう」「さっそく梶原と相談し、しかるべく手配をいたせ」「わかり申した。すでに手は打って御座います。私、京都におりました時より、東大寺にすこしばかり手づるがございます」 大江広元は、先手うちとして、東大寺の荘園、黒田荘の悪党への使者を、すでに旅立たせていた。続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube
2021年06月04日
建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/21/源義経黄金伝説■第22回★源頼朝屋敷を出た西行に、元の北面の武士の折、同僚であった、文覚が声をかける。源義経黄金伝説■第22回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube源頼朝屋敷を出ようとすると、背後から声が掛かる。西行は後方を振り向く。「西行、ここで何をしておる」聞いたことのある声だが…、やはり、、頼朝の荒法師にして政治顧問、文覚もんがくが、後ろに立っている。傍らに弟子なのかすずやかな眼差しをした僧をはべらしている。「おお、これは文覚殿。先刻まで、大殿(頼朝)様と話をしておりました」「話だと、何かよからぬ企みではあるまいな」 文覚は最初から喧嘩腰である。文覚は生理的に西行が嫌いだった。西行は院をはじめ、貴族の方々とも繋がりをを持ち、いわば京都の利益を代表して動いているに違いない。その西行がここにいるとすれば、目的は怪しまなければならぬ。「西行よ、何を後白河法皇ごしらかわほうおうから入れ知恵された」 直截に聞いている。元は、後白河法皇から命令され、伊豆の頼朝に旗をあげさせた文覚であったが、今はすっかり頼朝側についている。それゆえ、この時期に、この鎌倉を訪れた西行のうさん臭さが気になったのだ。「さあ、さあ、もし、大殿に危害を加えようとするならば、この文覚が許しはせぬぞ」 西行も、この文覚の怒気に圧倒されている。文覚は二〇年ほど前を思い起こした。1166年京都「西行め、ふらふらと歌の道「しきしまみち」などに入りよって、あいつは何奴だ」 文覚は心の底から怒っていた。文覚は怒りの人であり、直情の人である。思うことは直ぐさま行い、気に入らぬことは気に入らぬと言う。それゆえ、同じ北面の武士ほくめんのぶしのころから、気が合わないでいた。西行は佐藤義清さとうのりきよという武士であった頃は、鳥羽院とばいんの北面の武士。院の親衛隊である。西行は、いわば古代豪族から続く政治エリートであり、それがさっさと出家し、歌の道「しきしまみち」に入った。それも政治家など上級者に、出入り自由の聖ひじりなのである。西行は文覚に言う。「文覚どの、私はこの世を平和にしょうとおもうのです」「平和だと、うろんくさいこと言うな。おぬしの口からそんな言葉がでようとはな」「では、この国の形を変えるともしあげればどうだ」「くっつ」文覚は苦笑いしている。「その笑いは同じく国を変えようとされているからであろう」「何年たっても私の考えがおわかりにならないのか」「わかりたくもない」「で、藤原秀衡殿を呪殺されようというわけか」「主ぬしは何を企む。平泉と何を企む。まさか、」文覚は思う。「主は崇徳上皇にも取り入り、弟の後白河法皇に取り入り、また平泉にも取り入るつもりか」崇徳上皇は30年前、1156年保元元年、弟の後白河法皇に敗れている。保元の乱である。この後、四国に流されている。「文覚どの、鎌倉には法皇の命令で、今は鎌倉のお味方か」「だまれ、西行、貴様こそ、由緒正しい名ある佐藤家の武士でありながら、「しきしまみち」を使うとは先祖に対して申し開きできるか」「文覚どの、その言葉をお主にそのまま返そうか。お主も武士でありながら呪殺を江ノ島祈願いたしておろう」「うぬ。敵、味方がはっきりしたならば、お主を平泉に行かせまいぞ」「よろしいのか。大殿とのご命令は」確かに頼朝の命令は西行を平泉に行かせよである。「しかたがないな。ここで雌雄を決、、、」二人はにらみ合っている。恐るべき意識の流れがそこに生じていた。「御師匠様、おやめ下さい」かたわらにいる子供の僧が言いた。子供ながら恐るべき存在感がある。その顔は夢みる眦に特徴がある。「おおう、夢見ゆめみか。わかった。この西行殿が顔を覚えておけ」「西行様、初めてお目にかかります。拙僧の名前は、夢見でございます。京都神護寺からまいりました。師匠さまの事よろしくお願いいたします」夢見、後の明恵みようえである。法然ほうねんと宗教上で戦うこととなる。同時に、何かの集団が近きつつあった。「くそ、西行、味方が増えたらしいな。集団の守りで動くか。お主も。勝負はいずれ,まっておれよ」「文覚どの 生きて合えればなあ」西行も悪態をつく。 二人はふた方向にわかれた。「西行様、ご無事で」いつのまにか東大寺闇法師、重蔵が控えている。が、笑いをこらえている風情である。「おお、重蔵殿か。あいすまぬ」汗をかいている。「ふふ、私としたことが、つい歳を忘れてしまう。あやつにあうと」にが笑いをしている。「お知り合いでございますか」重蔵は、西行にもこのような面があるかと思い微笑んでいる。この有名なる京都「しきしきみち」の漢に子供のけんかのような、、「古い付き合いよ。北面の武士以来なのだよ。」西行は目に見えぬ廻りの集団が気に成っている。「結縁の方々、ありがとうござる。何でもございません。危機は、、もう終わり申した」重蔵の言葉に近くの樹木の影にいた気配がすべて消えていた。西行はにがりきった笑いをする。「法眼殿の手下か」先ほどの手勢は、鬼一法眼きいちほうげんが京都から連絡した結縁衆であろう。密かに西行を守っている。「あの子供の僧が気にかかります。夢見とか なにやら恐ろしげな、、」重蔵はつぶやいている。薄ら寒い10月の鎌倉の朝もやの中で、西行が先ほどの情景を思い出している。「重蔵どの。頼朝殿は、流鏑馬に熟達し、当代第一の弓持ちと言われたこの西行の前で、弓矢の技を見せられたのだ」東大寺闇法師重蔵が返した。「それは何をお考えなのでしょうや」「頼朝殿、平泉を攻めるつもりであろう」「えっつ、やはり」十蔵は西行を見た。が西行はすでに自分の殻に入り考えにふけっている。不思議な方じゃ、重蔵は最初の出合いを思い出している。「くそ、いらぬじゃまが、はいりおったわ。のう夢見よ」鎌倉になる文覚屋敷で。文覚が発した。夢見、後の明恵みようえは答えた。「西行様の背後には、あるやんごとなき想いが見えます」「和歌しきしまみちに対する想いか」「いえ、そうではございません。人で御座います」「女か」「いえ、ある男の方への想いで御座います」「では、まさか、あ、おの方へか、」文覚は、西行の想いが、待賢門院たいけんもんいんへかと思った。が,夢見ー明恵は違うという。待賢門院の兄は徳大寺実能、西行は藤原家徳大寺実能の家人であった。待賢門院は崇徳上皇の母である。夢見は感受性が強い、その人間の過去もうっすらと読み取る事ができる。夢見のよく見る夢は恐ろしい。きり刻まれた体の夢だ。夢見の父は,頼朝決起の戦いでなくなっている。母は紀州豪族、湯浅氏ゆあさの出身である。この時期の紀州は、熊野詣で大繁盛している。紀州熊野は仏教に在来の民間密教が結びつき、一大新興宗教の集積地として機能している。密教秘儀を身につけて貴族の保護をうける人物が、京都の政治を左右できる。桓武帝以降、宗教各派は、政治闘争を繰り返している。摂関政治に関与できた宗派が権威を持ち荘園を所有できる。仏教各教団は、経済組織でもあり、民衆もその権威に頼ろうとした。その夢見の夢想の中に西行が現れていた。続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube
2021年06月03日
G源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/20/源義経黄金伝説■第21回■西行と源頼朝はお互いの策謀を胸に話し合い、頼朝の矢懸場にて武技を競われる。源義経黄金伝説■第21回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube ◎「これは、これは有り難きご教示、有り難うございました。もう夜も白んで参りました」鎌倉の酉が鬨の声を告げていた。頼朝と西行二人は一晩中語り合ったのであった。 西行はわれにかえっている。まだ鎌倉にいて、頼朝の前なのだ。「西行殿、この鎌倉にお止まりいただけぬか」唐突な頼朝の提案であった。「いや、無論、平泉から帰られた後でよいのです」 と頼朝は付け加えた。「それはありがたい提案ですが」 西行は考える。黄金をこの地鎌倉に留め置くつもりか。加えて西行をこの鎌倉に留めおき、平泉の動き、京都の動きを探ろうとする訳か。「いやはや、これは無理なお願いごとでございましたな。それではどうぞ、これをお受取ください。これは旅の邪魔になるやもしれませんが…」 頼朝が手にしたのは、黄金の猫である「ほほう、これを私めに、それとも奥州藤原家に…」「いや、西行殿でございます」「私はまた猫のようにおとなしくなれという意味かと思いました」「いや、旅の安全を願ってのこと。他意はござらぬ」1186年(文治2年)、草深き坂東鎌倉に三人の男が対峙しょうとしている。東国で武家の天下を草創しようとする男。頼朝。その傍らにて、京都王権にては受け入れられず、坂東にて「この国の形」を変えようとする土師氏はじしの末裔。大江広元。対するに、京都王権の交渉家、貴族政治手法である「しきしまみち」敷島道=歌道の頂点に立つ。西行。頼朝にとって、西行は打ち倒すべき京都の象徴であった。京都から忌み嫌われる地域で、忌み嫌われる職業、武家。いたぶるべき京都。京都貴族王権の象徴物・大仏の勧進のために来た男・武士「武芸道」からはじきでた、貴族の象徴武器である歌道「しきしまみち」に乗り換えた男。結縁衆けちえんしゅうなる職業の狭間にいる人間とつながりのある男。さらには、奥州藤原氏とえにしもある。坂東王国を繰り上げようとした、平将門を倒した俵俵太の末裔。この坂東にも、そして、義経を育て平泉に送りこんだた男。対手である。その男がなぜ、わざわざ敵地に乗りこんだか。その疑問が頼朝の心に暗雲を懸ける。西行にとってこの頼朝との邂逅は、今までの人生の総決算にあたるかも知れぬ。その長き人生において最後の最終作品になるものかも知れなかった。心に揺らぎが起こっていた。その瞬間、西行に重源ちょうげんと共に歩んだ高野山の荒行の光景が蘇ってきた。山間の厳しい谷間、千尋の谷、一瞬だが、谷を行き渡る道が浮かぶ。目の前にあるその道をたどる以外にあるまい。「西行どのこちらへ」大江広元が頼朝屋敷の裏庭に案内される。矢懸場が設けられている。武家の棟梁、頼朝は、毎日犬追物をたしなんでいる。的と砂道が矢来をさえぎられ続いている。「ささ、こちらへ」促されるまま、西行は裏庭物見小屋へいざなわれる。遠くに見える人馬が、的を次々と射ぬきながら、こちらへ走ってきた、頼朝である。「いざ、西行殿の弓矢の極意を昨晩お伺いし、腕前の程をお見せしたかったのです」「大殿は、毎日武芸にたしなみを、」「西行殿は、我が坂東の武芸の祭りをご存知でしょうな」坂東のしきたりが、京都の弓矢道と結びついているのが、西行には理解できた。京都人でありながら、武芸は坂東と、頼朝は言っているのだ。馬をもといた場所にとって返し、再び、馬を駆けさせ、用意された的をすべて、射抜いている。我が坂東の武芸の祭りとは、坂東足利あしかがの庄にある御矢山みさやまで行われる八幡神を祭る坂東最大の武家の祭事である。「西行殿、奥州平泉からお帰りに、この祭りに参加いただきたいのです」馬上から、息をつきつつ、頼朝が叫んでいる。返事は無用という訳だ。答えようとする西行の前から姿を消し、再び馬首を元の方へ。西行は義経を助けなければ。が、藤原氏の黄金が、果たして役に立つのか。秋風の吹きはじめた鎌倉で、西行は冷や汗がでてきている。三度、的をすべて打ち矢って、頼朝は馬上から叫ぶ。「さらに、西行殿、義経のおもいもの、静の生まれし子供の事聞きたいのではござろうぞ。和子は男子がゆえに不敏だが、稲村ヶ崎に投げ捨てましたぞ」と言い捨てている。後ろ姿に笑いが感じられる。頼朝は、西行の策を、封じようとした。西行は動揺を表情に出さず。が、考えている。かたわらにいる大江広元を見た。広元殿、政子殿がいるなかば、わづかばかりの希望あろう。また、そうか、あるいは、静の母、磯の禅師が糸を引いているかも知れぬ。わずかだが、希望の光はある。極楽浄土曼陀羅、あの平泉におあわす方が。早く合いたい、さすれば、この身、西行法師の体は、まだ滅ぼすわけにはいかない、平泉を陰都となし、この世の極楽を、さらには、しきしま道にて日本を守れねばならぬと、西行は思う。頼朝は四度目もすべて撃ち終え、今度はゆっくりと馬を歩ませてきた。「西行殿、御家、佐藤家は、紀州にその領地がありと聞きます。弟君の、佐藤仲清殿。高野と争い絶えずときく。誠でしょうか」馬上の頼朝は、しばし、西行の回答を待っていた。「その御領地を、この頼朝の元に預けられぬか。さすれば、高野山との争いは解決して見せようぞ」佐藤家は、高野山山領地、荒川荘の領地におしいっている。西行のなりわいはこの弟の家からでている。いわば佐藤家の家作からから活動資金がでている。紀伊の国、那賀郡、田仲庄は紀ノ川北岸にあり、摂関家徳大寺の知行である。佐藤家はこの徳大寺の家人である。今では平家の威光を背景にしてきたのだ。その根っこを、頼朝は押さえよとしているのだ。「どうでありましょうな、西行殿、この申し出は」絡め手か。やはり、頼朝殿は、この西行と義経殿の関係を気づいているか。京都でもそのとこしるは、わずかだが、、大江広元が、秀才顔でしらぢらと西行をにらんでいる。大江広元は、水を得た魚。大江広元が京都から呼びだされ、この鎌倉に根付いた時、歴史は変わった。日本最優秀頭脳集団・大江家。元は韓国からくにから来た血筋。この関東坂東で同じ韓国からくにの史筋武家の平家と結びついた。「すべてのご返事は、平泉からの帰途におこないましょうぞ」西行は、頼朝の前から去ろうとした。「まて、西行殿」 大江が呼びとめようとするが、「勝負は、後じゃ」頼朝が止めた。「はっつ」頼朝が打ち据えた的が割れていた。的の裏側には、平泉を意味する曼荼羅が描かれているのだ。武家の棟梁頼朝が、打ち破るべき国だ。そして黄金もまた、、そして、西行は、まだ、最大の対敵、文覚もんがくとは、対峙していない。続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube
2021年06月02日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/19/源義経黄金伝説■第20回★東大寺大仏再建を計る重源は、東大寺闇法師、僧兵の中から選ばれた戦人、重蔵に命令する。源義経黄金伝説■第20回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube僧衣の男、十蔵じゅうぞうが重源ちょうげんの前に呼ばれる。十蔵は東大寺のために荒事を行う闇法師である。東大寺闇法師は僧兵の中から選ばれた戦人いくさびとである。十蔵は陰のように重源の前に、出現していた。「十蔵殿、わざわざ、かたじけない。今度の奥州藤原氏への西行殿の勧進、大仕事です。西行殿にしたがって奥州に行ってくださるか」「あの西行さまの……わかりました」「さて、十蔵殿、今、述べたのは表が理由です」「重源様、まだ別の目的があるとおっしゃいますか」「さようです。西行殿は私が思いどおりには動いてくださらぬ可能性があります。ましてや、この時世。鎌倉の源頼朝殿が、奥州藤原氏と一戦構えるかもしれません。いいですか、十蔵殿、西行殿が我々東大寺を裏切らぬとも限らせんぞ」「西行様が東大寺や重源様を裏切ると。しかし、西行様は、もう齢七十でございましょう」「いや、そうであらばこそ、人生最後の賭けにでられるかもしれません。西行殿は義経殿と浅からぬ縁があります。この縁はばかにはできませんぞ。十蔵殿、よいか、こころしてかかれよ」「西行様が 東大寺の意向にしたがわぬ場合は、、」「十蔵殿は、東大寺のために動いて下され」 重源は気迫のこもった眼差しで、十蔵に命じた。重源にとっても、この大仏再建の仕事は大仕事。失敗する訳にはいかなかった。重源は自らを歴史上の人物と考えていた。 重源の使命。いや生きがいは、今や東大寺の再建であった。先に重源は平家の清盛から依頼され、神戸福原の港を開削していた。この日の本に、重源以上の建築家集団を統べる人間は、存在しないのである。 重源は世の中に形として残るものを、生きている間に残しておきたかったのである。重源の背後には宋から来た陣和慶という建築家がいた。また朝鮮半島から渡ってきた鋳物師もいる。 そして、有り難いことに運慶、快慶が同時代人であった。この日本有数の彫刻家、運慶工房とも思える彫刻工房を作り上げ、筋肉の動きを正確に表す、誠に力強い存在感のある彫刻像を続々と作り上げていった。日本の始まって以来、二度目の建築改革の波が押し寄せて来たかのようであった。「重源様のご依頼でございますならば。このことをお断るわけにもいきますまい」 十蔵はにやりと笑う。そしてつけくわえた。「西行様のこと、承知いたしました。が……」東大寺闇法師は自らの意志などもたぬ。その東大寺闇法師の十蔵が、何らかの意向を重源に告げようとしていた。不思議な出来事であった。「十蔵殿、まだ何か、まだ疑問がございますか」 切り返す十蔵の問いにはすごみがあった。「私十蔵の死に場所がありましょうか」 重源は冷汗をかき答えた。死に場所だと、闇法師は東大寺がために死ぬことが定め。が、その十蔵とかいう男は、別の死に方を求めている。それも自らが東大寺闇法師中の闇法師という自信を持って言っているのだと、ようやく重源は思い答えた。「十蔵殿、、、時と事しだいでしょうな」 それにたいして「わかりもうした」平然と言う十蔵だった。 十蔵はすばやく姿を消した。「十蔵め、この仕事で死ぬつもりか」 重源は、十蔵が消えた方向を見遣り、つぶやく。「まあまあ、重源様。そう悩まずともいいではございませんか。重蔵殿にまかしておかれよ。茶を一服どうでございますか」 話を聞いていたのか、後から一人の若い僧が手に何かを持って現れている。巨大な頭のハチに汗がてかっている。 栄西であった。 重源と栄西は、留学先の中国で知り合い、友人となっていた。 そして、栄西は、仏典とともに、日本の文化に大きな影響をもたらす「茶の苗」を持ち帰っていた。栄西が手にしているのは、茶である。まだ、一般庶民は、手に入れることができぬものである。「ほほう、どうやら、茶は根付いたと見えますな。よい匂い、味じゃ。妙薬、妙薬」 重源は、栄西が差し出す茶碗をうまそうに啜った。「さすがじゃのう、栄西殿。よい味です」 その重源の様子を見て、栄西が尋ねる。「重源様、どう思われます。この茶を関東武士たちに、広めるというのは」「何と、栄西殿。あの荒々しい板東の武者ばらに、この薬をか…」重源は茶に噎せた。 重源は少し考え込む。やがて意を決したように、若者のように眼を輝かせながら言った。「いい考えかも知れません。思いもかけぬ組み合わせですが。京都の貴族よりも、むしろあの武人たちをおとなしくさせる薬効があるかもしれませんな」 なるほど、栄西はおもしろいことを考える。 重源や栄西には、自負があったのだ。日の本を実質動かしているのは、貴族でも武士でもない。我々、学僧なのだ。僧が大和成立より、選ばれた階級として、日の本のすべてを構築してきたのだ。それを誰もが気付いておらぬ。が、大仏再建がすでに終わり、この東大寺再建が済めば、我々の力を認めざるを得まい。重源の作るものは形のあるもの。そして、栄西は、茶というもので、日の本をいわば支配しようとしている。おもしろいと重源は思った。続く2016改訂★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube
2021年06月02日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/18/源義経黄金伝説■第19回■源頼朝と鎌倉で話し合う西行法師は、奈良東大寺での勧進職であり、昔からの高野山聖以来の友人、重源との会話を思い出している。源義経黄金伝説■第19回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所 ★you tube★yamadakikaku2009ーyoutubehttp://www.yamada-kikaku.com/ 西行は、奥州藤原氏のことをしゃべり終わると、急に無口になった。頼朝は、話題を変えた。歌曲音舞、そして弓道のことなどである。頼朝はこの伊豆に住みながら、いつも京都のあのきらびやかな文化を、生活を恋い焦がれていた。武士という立場にありながら、京の文化を慈しみ愛していた。それゆえ、その京の文化に取り込まれることを恐れていた。 義経は、京の文化、雰囲気という、得も知れぬものに取り込まれ、兄頼朝に逆らったのだった。同じように義経より先に都に入った義仲も、京都という毒に当てられて死んだ口だった。 京都は桓武帝以来、霊的都市であった。藤原道長のときの安倍晴明を始祖とする土御門家が陰陽師として勢力を張っていた。 京のことを懐かしむ頼朝に、西行は佐藤家に伝わる弓馬の術などを詳しく述べていた。これを語る西行は、本当に楽しげである。 鎌倉幕府の史書『吾妻鏡あずまかがみ』には西行と頼朝、夜をあかして話し合ったとある』西行の頭の中に、急に奈良での重源ちょうげんとの会話が思いおこしていた。一一八〇年の平家による南都焼き打ちにより、東大寺及び大仏は焼け落ちていた。都の人々は、平家の横暴を憂える。また、貴族は、聖武帝以来の東大寺を焼き打ちする、平家、武家の所業が人間以外の動物に思えた。また、自分達、貴族に危機が及んでいると考えざるを得なかった。 東大寺の大仏は硝煙の中、すぐに再建に着工され、すでに大仏は開眼供養が一一八五年、後白河法皇の手で、行われていた。大仏を囲う仮家屋や、回りの興福寺を中心とする堂宇の修復が急がれていた。今、南都は立て続く建築物が現れ、ある種の気に満ち満ちている。 西行は東大寺焼け跡にある仮建築物にいる重源(東大寺勧進僧)を訪ねている。重源は齢六十五才であったが、精力的に各地を遊説し、東大寺勧進を行っていた。また全国に散らばらせている勧進聖から、諸国の様子を手にとるように得ていた。 勧進聖は、当時の企業家である。技術集団を引き連れ、資材を集め、資金も集める。勧進の場合、費用のために半分、残りの半分は聖の手元に入る。 西行は、佐藤義清という武士であった頃は、鳥羽院の北面の武士であった。 西行の草庵は、鞍馬、嵯峨などで、草庵生活を送っていた。草庵といっても仙人のように山奥に一人孤独に住む訳ではなく、聖の住む位置はほぼ決まっていた。そして藤原家を縁とする寺塔が立て並んでいる。 また、難行苦行の生活をするのではない。政事の流れから外れて、静かに物事を考えるのである。日々の方便については、佐藤家は藤原家の分家であり、大豪族であり、日々の心配はないのだ。 数日前、伊勢の庵に重源の使いの者が訪ねてきて、ぜひ東大寺再建の様子を見に来てほしいというのだ。若い頃、高野山の聖時代に知り合った二人だったが、すでに重源は二度、中国の宋に渡って、建築土木の技術を習得して帰国していた。「重源殿、お久しぶりでございます。このたびの大勧進抜擢、誠に祝着至極でございます」「おお、これは西行殿。わざわざ伊勢から奈良まで御足労をおかけいたしました。実はお願いがございます。さてさて、西行殿の高名にすがりたいのです」「はて、それは……」「奥州に勧進に行っていただきたいのです。奥州は遠く聖武帝しょうむていの時代より、黄金の産地。できますれば、黄金をこの東大寺のために調達いただけまいか。平泉は黄金の仏教地と聞き及びます。もし、藤原氏から、黄金が手に入りましょう」 重源は、西行と奥州藤原氏とのかかわりあいを知っていた。話の出所は後白河法皇に違いなかった。 時期が時期だ。奥州へ、それは朝廷から藤原氏への意向を伝えるために違いない。思ったより大きい仕事だ。が、これも私を信じておられるゆえんか。私の最後の一働きになるかもしれん。「それと、これは平泉におられる方々への手土産です」「何でござりますかな。重源殿のことでございますから」「これは…」 鎌倉の絵図である。「ありがたく頂戴いたします」 西行の顔色は変わっている。相手は、当代希代の建築家・都市建築家の重源である。「あの方の役に立てばよろしいですが」「役に立ちますとも。では、重源様、私にあのまちをよく見て参れというわけですな」「そうです。その鎌倉の様子を、詳しく書状にしたためてください。この重源が、いろいろな技者と語らって、新たな絵図をお作りしましょう」「ありがとうございます」「よろしいか、重源がかようにするは、京都の法皇様のためにでございます」西行は、重源がさりげなく奥州の秀衡たちに、自分の腕前を披露しようとしていることに気がついている。西行が去ったあと、重源に雑色ぞうしきが話しかける。「この御時世でございます。西行様のため、「東大寺闇法師」を護衛に付けた方がよろしいのではございませんか」「おう、よい考えです。誰か「東大寺闇法師」の中で心当たりの者はおりますか」「十蔵じゅうぞうが、いま比叡の山から降りてきております」「わかりました。ちょうどよい。十蔵を呼んでください」続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube
2021年06月01日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/17/源義経黄金伝説■第18回■鎌倉の源頼朝の屋敷は すでに夕刻を迎え、西行が平泉の話をしている。源義経黄金伝説■第18回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/「西行殿、これから行かれようとしている平泉ですが……」 西行は、平泉のことを意を決してしゃべる。「よく聞いてくだされました。藤原秀衡殿は、平泉に将兵を集めて住まわせることなどはしておりません。よろしゅうございますか。藤原氏の居館は、お城ではございません。平泉の町には、軍事施設はないのでございます」「では兵はどうするのですか」「いざ戦いがあれば、平泉に駆けつけると聞き及びます。秀衡殿、源頼朝様に刃向かうつもりなどないのでございます」 頼朝は、この西行と藤原氏の関係をむろん疑っている。広元も先刻、西行と会う前に、耳元で同じ旨を告げていた。この西行の平泉への勧進は、果たして何を企んでいるのか。平泉は城ではないというのか。まるで平泉全体が大きな寺だと、頼朝は、頭をひねりながら、西行の話を聞く。「初代藤原清衡殿は中尊寺、二代基衡殿は毛越寺、三代秀衡殿は無量光院をお造りになったと聞いております」「それでは、歴代の藤原氏の建築は、すべて寺院だということですな」「さようでございます。平泉は仏都でなのです。中尊寺建立の供養には、こう書かれているのです。これは初代清衡公のお言葉。長い東北の戦乱で、多くの犠牲者がた。とくに俘囚の中で死んだものが多い。失われた多くの命の霊を弔って、浄土へ導きたい。また、この伽藍は、この辺境の蕃地にあって、この地と住民を仏教文化によって浄化することである。こう書かれています」 頼朝は、冷気を浴びせるようなな視線を、西行に浴びせている。「西行殿は平泉という仏都がお気に入っておられるのですか」頼朝のその質問に、西行の頭の中に、ある風景が浮かんでいる。平泉、束稲山の桜である。「私は花と月を愛しますがゆえに」 頼朝屋敷はすでに夕刻を迎えていた。「なぜ、西行殿、秀衡殿を庇いなされる。ただ東大寺がために勧進とはおもわれせん。聞くところによれば、西行殿の佐藤氏と、平泉の藤原秀衡どのとは浅からぬ縁があると聞ききますが……」 頼朝は、矛先を、奥州藤原氏と西行との親密なる関係に向けてきた。この質問に、西行はいささか足元をすくわれる感じがした。「いや、遠い親戚でございます。私は唯の歌詠み。東大寺の勧進のために、沙金をいただきに秀衡様のところへ参るだけでございます」「それならば、今は、そういうことにしておきましょう。で、西行殿」頼朝はかすかに冷笑した。その笑いの底に潜む恐ろしいものを感じ、わずかに言葉がかすれている。「何か」「西行殿は、昔は、北面の武士ですね。あの平清盛と同僚だったと聞いております。なにとぞ、この頼朝に、佐藤家の、直伝、弓の奥義などお聞か、お見せいただきたいのです」「ふ、私でよろしければ。よろしゅうございます」 話の矛先が急に変わったことに、西行は安堵した。頼朝は、これ以上、西行を追い込むことを避けた。あまりに西行を追及すれば、この場所で西行を殺さねばなるまい。あるいは、殺さずとも、閉じ込めねばなるまい。板東の独立のためには。今、それは京都のいらざる怒りを買うであろう。無論、大江広元も、その案には賛成すまい。 ここは少しばかり話を流しておくことだと頼朝は思う。一方、西行は虎穴に入らずにはと考えていたが、源頼朝という男は、虎以上に恐ろしかもしれぬ。このことはすぐさま、後白河法皇様に、書状をもって報告せねばならないだろう。この頼朝という男の扱い方は、義経殿のようにはいかない、頼朝は、西行が、現在逃亡中の弟、源義経の行方を知っていると考えている。続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月31日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/16/源義経黄金伝説■第17回■鎌倉の源頼朝の屋敷を 西行法師が 平泉からの東大寺沙金の輸送安堵のために訪れていた。源義経黄金伝説■第17回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 驟雨が、鎌倉を覆っている。頼朝の屋敷の門前に僧衣の男が一人たっている。警備の騎馬が二騎、二人は、この僧を物乞いかと考え、追い払おうとしていた。「どけどけ、乞食僧。ここをどこと心得る。鎌倉公、頼朝公の御屋敷なるぞ。貴様がごとき乞食僧の訪れる場所ではない、早々に立ち去れい」語気荒々しく、馬で跳ねとばさんばかりの勢いだ。「拙僧、頼朝公に、お話の筋があって参上した。取り次いでくだされ」「何を申す。己らごときに会われる、主上ではないわ。どかぬと切って捨てるぞ」ちょうど、頼朝の屋敷を訪れようとしていた大江広元が、騒ぎを聞き付けて様子を見に来る。「いかがした。この騒ぎは何事だ」 広元が西行に気付く。「これは、はて、お珍しい。西行法師殿ではござらぬか」「おお、これは広元殿、お久しゅうございます。みどもを乞食僧と呼ばれ。何卒頼朝公にお引き合わせいただきたいのです」「何ですと。天下の歌詠み、西行殿とあれば、歌道に詳しい頼朝様、喜んでお会いくだされましょう」 広元が武者に向かい言う。「この方をどなたと心得るのだ。京に、いや、天下に名が響く有名な歌人の、西行殿じゃ。さっさと開門いたせ」 広元は西行の方を向かい、「重々、先程の失礼お詫び申しあげます。なにしろ草深き鎌倉ゆえ、西行殿のお名前など知らぬやつばらばかり」「私は、頼朝殿に東大寺大仏殿再建の勧進のことを、お頼み申したき次第です」「何、南都の…東大寺の…勧進で」広元の心の中に疑念が生じた。その波は広元の心の中で大きくなっていく。「さよう、拙僧、東大寺勧進、重源上人より依頼され、この鎌倉に馳せ参じました。何卒お許しいただきたい」 頼朝と西行が対面し、横には大江広元が控えていた。「西行殿、どうでござろう。この鎌倉の地で庵を営まれましては」「いやいや、私は広元殿程の才もありません」「それは西行殿、私に対するざれ言でござりますか」「いえいえ、そうではございません」「西行殿、わざわざ、この頼朝が屋敷を訪れられましたのは、歌舞音曲の事を話してくださるためではありますまい」西行の文学的素養は、絢爛たるものがあった。母方はあの世界史上稀に見る王朝文学の花を開かせた一条帝の女房である。 西暦一千年の頃、一条天皇には「定子」「彰子」という女房がいたが、定子には「枕草子」を書いた清少納言が、また彰子には「源氏物語」を書いた紫式部などが仕えていて、お互いの文学的素養を誇っていた。「さすがは頼朝殿、よくおわかりじゃ。後白河法皇様からの書状をもっております。ご覧ください」 西行は、頼朝に書状をゆっくり渡す。 頼朝は、それを読み、「さて、この手紙にある義経が処置いかがいたしたものでしょうか。法皇様は手荒ことなきようにおっしゃっておられるが」「義経殿のこと、頼朝様とのご兄弟の争いとなれば、朝廷・公家にかかわりなきことですが、日々、戦に明け暮れること、これは常ではございません」「それはそれ。この戦や我が弟のことは私にまかされたい。義経は我が弟なればこそです。我が命令に逆らいし者です、許しがたいのです。……」 頼朝は暗い表情をした。しばらくして、表情が変わる。続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月30日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/15/源義経黄金伝説■第16回■東大寺の荘園である黒田。黒田悪党たちに京都王朝の人間から、平泉からの東大寺勧進沙金を奪えとの指令が。源義経黄金伝説■第16回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/奈良にある黒田荘くろだのしょう(現三重県)は、東大寺の荘園である。先月の東大寺があげての伊勢神宮参詣もこの地で、重源を始め多数の僧が宿をとっている。いわば東大寺の情報中継基地である。 あばら家の中、どぶろくを飲んで横たわっている二人がいる。太郎佐。そこに弟の次郎佐が訪れていた。「兄者、兄者はおられぬか」「おお、ここだ、次郎左」「何じゃ、なぜそんな不景気な顔をいたしておるのだ」「これがよい顔をしておられるか。お主、何用だ。俺に金の無心なら、無用だぞ」「兄者、よい話だ。詳しい話は、ここにおる鳥海から聞け」蓬髮で不精髭を生やした僧衣の男が汚らしい格好で入ってくる。着物など頓着していない様子だ。顔は赤銅色に焼けてはいるが、目は死んでいる。鳥海は興福寺の悪僧(僧兵)として、かなりの腕を振るった人間だ。園城寺、比叡山との悪僧たちとの争いでも、引けを取らなかった。が、東大寺炎上の折りから、腑抜けのようになっていた。一人生き延び、この太郎左、次郎左のところに転がり込んでいいのである。 鳥海は、話を始めた。「太郎佐殿は、先年、東大寺が焼き払われたこと、ご存じだろう」「おお、無論、聞いている」「東大寺の重源、奥州藤原氏への勧進を依頼した。さて、使者は西行法師」「たしか先月、重源ちょうげんと、、そうか、あのおいぼれ。確か数え七十ではないか」「供づれはいないと聞く。いかに西行とて、この我ら黒田悪党のことは知るまい」「ましてや、みちのく。旅先で、七十の坊主が死んだとて、不思議はあるまい」「お前、それでは、平泉からの東大寺勧進の沙金を…」太郎佐は言う。「そうよ、奪えというご命令なのだ。この話しはな、京都のやんごとなき方から聞いた。ほれ、このとおり、支度金も届いておる」「さらば、早速」「まて、まわりがおかしい」太郎左が皆を圧し止めた。動物のような感がこの男には働く。「ようすを見てみろ」次郎左が命令を聞き、破れ戸の隙間からまわりをみる。鳥海も他の方向を覗き見る。「くそっ、お主ら、付けられたのか。馬鹿者め」 まわりは、検非違使けびいしの侍や、刑部付きの放免(目明かし)らが、十重二十重に取り囲んでいる。検非違使の頭らしい若侍が、あばら家に向かって叫んでいた。「よいか、我々は検非違使じゃ。風盗共、そこにいるのはわかっておる。おとなしく、縛につけ。さもなくば討ち入る」「くくっ、何を抜かしおるか」太郎左、次郎左は、お互いをみやって笑った。戦いの興奮の血が体を回り始めているのだ。「来るなら来て見ろ。腰抜け検非違使め」大声で怒鳴った。「何、よし皆、かかれ」若い検非違使が刀を抜き言った。「ふふっ、きよるわ。きよるわ」「よいか、次郎左。ここは奥州の旅の置き土産。一つ派手にやろうか」「あい、わかった」太郎左と次郎左は、小屋の後手に隠してあった馬に乗り、並んで頭の方へ駆けていく。侍は、急な突進にのぞける。「ぐわっ」太郎左の右手、次郎左の左手に、握られていた太刀が交差した。 瞬間、検非違使の頭が血飛沫を上げ、青空に飛びあがっている。後の者共は蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。「ふふっ、少しばかり、馬をいただいておこう」 三人は逃げ去る侍たちの方へ目がけて駆けていく。 太郎左たちは、板東地方(関東)に入り、盗みを立ち働いていた。まず、第一の目的はよい馬を得ることである。 近畿地方の馬と、阪東や板東の馬とは、種類が違っていた。脚力、体長とも、板東の馬が勝っている。武者の家が焼けている。中には多くの死人。そこから阪東の馬に乗り飛び出してくる三人の姿がある。「さすが阪東の馬よのう。乗り心地や、走りごこちが違うなあ」 次郎佐は叫ぶ。「それはよいが、次郎左、屋敷に火を放ったか」 太郎佐が、その言葉を受ける。「おお、それは心得ておる。この牧の屋敷は、もうすぐ丸焼けだ」「行き掛けの駄賃とはよう言うな。屋敷の地下に埋めたあった金品もすべてこちらがものよ」 鳥海が言う。三人は走り去る続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月29日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと源義経黄金伝説■第15回■東大寺の勧進事業のある人物が、若い僧と湯釜を囲んで話し合っていた。源義経黄金伝説■第15回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/おなじころ、奈良東大寺。焼け落ちた大仏の鋳造も終わり、これからは大仏殿の建築にとりかかろうとしている時である。 治承四年(1180)平重衡の手で東大寺をはじめ興福寺の伽藍が焼かれ大仏が焼けた折、京都の貴族はこの世の終わりと思ったものだが、、重源ちょうげんの一団、勧進聖の手で、東亜においての黄金国日本の象徴である東大寺大仏は、その姿を再びこの世に現している。 牛車が荷駄を載せ、大工、石工、彫師、諸業の人間が一時に奈良に集まり、人のうねりが起こっている。その活気に囲まれ東大寺の仮屋で、この勧進事業の中心人物が、もう一人の若い僧と湯釜からでる湯気を囲んで話し合っている。「どう動かれますでしょうか。西行さまは」、 若い僧が年老いた僧に尋ねる。「西行殿が、東大寺にために、どれほどの勧進をしてくださるかという問いですかな、、」何か言外に言いたげな風情である。「左様、、でございます」 若い僧は、この高名な僧の話し振りにヘキヘきする事もあるのだが、なんと言っても、当代「支度一番したくいちばん」の評判は彼の目から見ても揺ぎ無いところだ。このような難事業はやはりこの漢しかできまい。「お手前は、まだまだ、蒼いですね、、」「といいますと」少しばかりの怒りが、若い僧の口ぶりに含まれている。「西行殿は、あるお方の想いで動いておられます。人生の最後の花と咲かせるおつもりです」「では、平泉の黄金は、大仏の屠金はどうなります、、いや、しかし、重源ちょうげんさまは、昔、西行さまの高野の勧進をお手伝いされたのでは、、」若い僧は、答えに困惑している。「蓮華乗院の事ですか。ふう。あれはあれ、これはこれです。我が東大寺の伊勢への 参拝の件で西行殿は 恩は返してくれているのですよ。はてさて、物事はどう転ぶか、ですな」 高野山の蓮華乗院の勧進を、西行が行っていた。治承元年(1177)の事である。 西行の働きで、歴史始まって以来初めて、、仏教僧が、伊勢神宮に参拝している。重源ちょうげんの一団である。西行は、神祇信仰者であった。本年文治二年(1186)であった。「重源様は、西行様と高野山では長くお付き合いされたと聞き及びます」「そうです、西行殿が、高野山麓の天野別所に、妻と子も住まわせておったこともしっておりますよ。また、西行殿の弟の佐藤仲清殿が佐藤家荘園の田仲庄の事で、高野山ともめておられた事も、よく存じあげております」「さらに、」重源は少し、言葉をにごす。「相国殿(平清盛)との付きあいも、よく存じ上げていますよ」西行の実家、佐藤家の荘園、田仲庄は、紀州紀ノ川北岸にあり,粉河寺と根来寺の中ほどにある。「ああ、和田の泊(現在の神戸港)も重源様の支度でございましたな。そうか。それで、東大寺の闇法師である重蔵殿を、、お供に」「そうです。すべては、西行殿が平泉に這いてからです」 二人は、若い僧、栄西えいさいが中国・宋から持ち帰栽培した茶をたしなんでいる。 独特の香ばしい馥郁ふくいくたる香りが、二人をゆったりと包んでいる。続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月28日
表示調整YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと 源義経黄金伝説■第14回★旅装の僧が、目の前の風景荒錆びた様子で噴煙をあげている富士山に嘆息する。背後には東大寺闇法師。源義経黄金伝説■第14回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/広野から見えるその山は、荒錆びた様子で噴煙をあげている。富士山である。「おうおう、何か今の時代を表わしているような…」 一人の旅装の僧が、目の前の風景に嘆息をしている。心のうちから言葉が吹き出していた。その歌を書き留めている。詩想が頭の中を襲っている。湧き上がる溢れんばかりの想い。僧は、もとは武士だったのか屈強な体つきである。 勢い立ち噴煙を上げているは富士の山。富士は活火山である。『風になびく 富士のけぶりの空に 消えて行方も知らぬ 我が思いかな』「我が老いの身、平泉まで持つかどうか。いや、持たせねばのう」 老人は、過去を思いやり、ひとりごちた。 豪奢な建物。金色に輝く社寺。物珍しそうに見る若き日の自分の姿が思い起こされて来た。あの仏教国の見事さよ。心が晴れ晴れするようであった。みちのくの黄金都市、平泉のことである。「平泉だ、平泉に着きさえすれば。藤原秀衡ひでひら殿に会える。それに、美しき仏教王国にも辿り着ける」僧は、自らの計画をもう一度思い起こし、反芻し始めた。 平泉にある束稲山たばしねやま、その桜の花、花の嵐を思い起こしている。青い空の所々が、薄紅色に染まったように見える。その彩は、絢爛たる仏教絵巻そのものの平泉に似合っている。それに比べると都市まちとしては鎌倉は武骨である。「麗しき平泉か、、そうは思わぬか、な、重蔵じゅうぞう殿」言葉を後ろに投げている。後ろの草茂みにいつの間にか、黒い影が人の形を採っている。東大寺闇法師、重蔵(じゅうぞうである。「西行さいぎょう様はこの風景を何度もご覧に」「そうよなあ、、吾が佐藤家はこの坂東の地にねづいておるからな」西行ー佐藤家は藤原北家、そして俵藤太をその祖先とする。平将門の乱を鎮めた藤原秀郷ひでさとである。「重蔵殿、まだ後ろが気にかかられるか。はっつ、気にされるな。結縁衆けちえんしゅうの方々だ。ふう、鬼一法眼きいちほうがん殿が、良いというのに後詰めにつけてくだされた」一息。「さてさて、重蔵殿、鎌倉に入る前、いささか、準備が必要だ、御手伝いいただけるかな」しっかりとした足取りで、西行は歩きはじめた。続く2016改訂Manga Agency山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月27日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと 源義経黄金伝説■第13回 静の動静を悩む者。 静の母親 磯禅師(いそのぜんし)が、固唾を呑んでその舞いを見ていた。 裏切られた。 「禅師が苦労を無にするつもりか」義経黄金伝説■第13回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 桟敷の中央にいる源頼朝が、急に立ち上がった。「あの白拍子めが。この期に及んで、ましてやわが鎌倉が舞台で、この頼朝が面前で、義経への恋歌を歌うとは、どういう心根だ。この頼朝を嘲笑しているとしか思われぬ」 頼朝は毒づいた。それは一つには、政子に対するある種の照れを含んでいる。「よいではございませぬか。あの静の腹のありようお気付きにありませぬか」 政子はとりなそうとした。薄笑いが浮かんでいることに、頼朝は気付かぬ。「なに、まさか義経が子を…」「さようでございます。あの舞いは恋歌ではなく、大殿さまに、我が子を守ってほしいというなぞかけでございます」「政子、おまえはなぜそれを……」 疑惑が、頼朝の心の中にじっくりと広がって行く。今、このおりに頼朝に、自分の腹の内を探らせめる訳にはいかぬ。あのたくらみが、私の命綱なのだから。政子は俯きながら黙っている。「……」「まあよい。広元をここへ」 頼朝の部下、門注所別当・大江広元が頼朝のもとにやってくる。「よいか、広元。静をお前の観察下に置け。和子が生まれ、もし男の子なら殺めよ」[では、大殿。もし、女の子ならば、生かして置いてよろしゅうございますな」「……それは、お前に任せる」 広元はちらりと政子の方を見ていた。 頼朝は広元と政子の、静をかばう態度に不審なものを感じている 政子は静を一眼見たときから、気に入っていた。その美貌からではなく、義経という愛人のために頑として情報を、源氏に渡さなかった。その見事さは、一層、政子を静を好ましく感じた。また、京の政争の中に送り込まれるべく、その許婚を殺されたばかりの、政子と頼朝の子供、大姫をも味方に取り込んでいた。義経の行方を探索する人間は、何とか手掛かりを取ろうと静の尋問を続けた。が、それは徒労に終わった。尋問した武者たちも、顔には出さなかったが、この若い白拍子静の勇気を心の中では褒めたたえていた。 観客の中で、静の動静を悩む者が、もう一人。静の母親 磯禅師いそのぜんしが、固唾を呑んでその舞いを見ていた。裏切られた。そういう思いが心に広がっている。愛娘と思っていたが、「あの静は、この母、禅師が苦労を無にするつもりか……」やはり、血の繋がりが深いものは…。この動乱の時期に女として生き残って来た者の思いが、頭の内を目まぐるしく動かしている。その思いは、しばらくの前のことに繋がる。静の母禅師は、政子の方を見やった。続く2010改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月26日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと 源義経黄金伝説■第12回源氏は一族の血の記憶として,鉱山経営のうまみをしっている。 そして、今、目指すは奥州金山である。 源氏の護り神、八幡神は、産銅・産鉄神である。 最終目標は奥州。源義経黄金伝説■第12回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/大江広元おおえひろもとは、これから奥州平泉を攻めようとする頼朝にとっては勝利を確約する、いわば勝利の女神であった。なぜなら、大江広元の曾祖父は、奥州攻略を成功させた八幡太郎はちまんたろうの知恵袋だった。占いの専門職。占いはこの時期の総合科学である。しかし、今、その広元は恐怖を感じて、青ざめていた。このままでは、会場の武士を味方にしてしまう。大殿はいかに、頼朝をかいま見る。政治顧問である,荒法師の異名をとる文覚もんがくでさえ、静の舞に内心は心動かされていた。文覚は若い頃、北面の武士の折、色恋沙汰で殺傷事件を起こしている。感情の高ぶりをおさられないのである。この感情の濃さが、いい具合に発露すると、それが、寺社の勧進かんじんとなった。また、頼朝に対する挙兵を教示し、いわば、頼朝の教師である。頼朝とは幼き頃、朝廷で顔を見知り置いている。その後、文覚は数々の荒行をこなし今は、江ノ島で、藤原秀郷の呪殺を、頼朝から依頼され、とり込んでいる。先年、後白河法皇から許可を受け、京都から、頼朝の父、義朝の骨を発見し、クビからぶら下げ、東海道を下るという鎌倉幕府成立の知らしめる行いしながら帰ってきたばかりである。この寺は、勝長寿院・大御堂という。骨の髄から、頼朝は、平泉を恐れている。16万の軍旗が、義経という天才に率いられて鎌倉を背後から、また海から襲ってくる事。おそらく、この日本で、義経は最高の軍事指揮官であろう。それは頼朝も、いらなぶ、坂東武者もわかっている。傍らに控える大江広元も、文覚も理解しているだろう。この勝利はまさに義経のおかげである。そのため、そのおもいものである静かが、ここで、頼朝に対して恭順のいを著わすべきであった。が政子が、、意図と違う事を、わずかながら、意思の疎通がうまくいかぬ。また、最大の交渉者、西行さいぎょう法師が、この鎌倉を目指していると文覚から、聞いている。西行は、京都王朝で、始めて伊勢神宮と、東大寺の手を握らせた男。後白河法王の意図で動く男。文覚とは、北面の武士の折の同輩。そして義経とも、平泉とも、近しい。この坂東でも、西行の本家、佐藤家の威光は輝いている。東北の伝説の勇者、平将門たいらのまさかどを強弓で射抜いた、俵の藤太の子孫。それが西行。加えて、当代一の詩人・この文学的功名は、京都貴族の中においても光り輝いている。いわば京王朝の切札。また、平泉にとっても最強の交渉の1枚。まして、民衆の指示を受けつつある東大寺再建指導者、重源ちょうげんの友人。そして、その後ろには結縁衆けちえんしゅう。恐らくは東大寺を始めとする京宗教集団の力も。意図は何か。西行は1万の武装集団よりも怖い。頼朝はそう思った。源氏は鉱山経営と関連が深い。祖先・源満仲は、攝津多田の庄(現・兵庫県川西市)の鉱山経営の利益を得ている。能勢・川辺・豊島三郡における鉱脈を支配し、最盛期2000を越える抗を穿っていた。鉱山の警備隊として武士団を養い、鉱山経営のうまみを知った源氏は、その後、京都大江山鉱山の利権も手にした。その利権を手に京にいき貴族を籠絡する。いわば鉱山貴族である。いわゆる大江山鬼退治の伝説である。源氏は一族の血の記憶として,鉱山経営のうまみをしっている。そして、今、目指すは奥州金山である。源氏の護り神、八幡神は、産銅・産鉄神である。最終目標は奥州。また、そのためにもこの東国の独立運動はまもらねばならぬ。東国王朝は、源氏の悲願である。奥州平泉王朝を打ち倒す事もまた源氏の悲願。それぞれの思いの中、やっと頼朝は、言葉を発した。続く2010改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月25日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/10/源義経黄金伝説■第11回(第10回欠番)歌姫・白拍子・女の戦士としては、 静は十分にこの戦場で勝利をおさめようとしていた。源義経黄金伝説■第11回(第10回欠番)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/あの女、手に入れたい。頼朝は思った。たとえ、義経の思いものであったとしても…。 文治二年(1186)四月八日。 鎌倉八幡宮の境内。目の前には、京一番の舞い手義経が愛妾が舞をまっている。義経の女の趣味は良い。誉めてやりたいぐらいだった。頼朝は今でも心のうちは、京都人である。京都の女が好きなのであった。この田舎臭い鎌倉近辺の女どもには、あきあきしている。が、そのあたりには、異常に感の鋭い政子のために、今までにも、散々な目にあっている。いままた、頼朝はちらりと…、横目で政子の方を向く。視線がばったりあう。いかぬ。政子はその頼朝の心を見抜いているかのようだった。が、政子は、そんな頼朝の思いを知らぬげに、静の舞に見ほれている。よかった。感づかれなかったかと、頼朝は安心した。 政子の思いは別のところにあったのである。北条家・平政子は、この板東を統べる漢の妻になれたという自負もあり、肌色もよろしく、つやつやしている。新しい坂東独立国が、京都の貴族にもかなわぬ国が、我が夫、頼朝の手でなったのである。 義経のことは、気にならなかった。静という、コマを手に入れているのだから。それに静の体には。「ふふう」と、思わず政子は笑った。 大殿もそのことはご存じあるまい。せいぜい、京都から来た白拍子風情に、うつつを抜かされるがよい。私ども、関東武士。平家の北条家が、この日本を支配する手筈ですからね。あなた、大殿ではない。誇りが、政子の体と心を、一回り大きく見せている。頼朝はある種の恐れを、我が妻である政子に感じている。やがて,後に政子は、日本で始めて、女性として京都王朝と戦いの火蓋を切るのだが、その胆力は、かいま見えているのだ。 この政子と頼朝に共通している悩みと言えば、それは…愛娘大姫のことであった。舞台の上の静の元気さ、華麗さを見るたびに、比較して打ちし抱かれたようになっている大姫の心の内を思い悩む二人であった。 その問題は二人の、この鎌倉幕府成立の内にたなびく暗雲である。 大姫はうつむきかげんに静の舞いを見ている。舞台を見て嗚咽が会場のあちこちに広がっている。見事である。それが、武士達にとっての正直な感想であろう。いわば敵に囲まれながら、どうどうと義経への恋歌を歌うとは、歌姫・白拍子・女の戦士としては、静は、十分に この戦場 敵地鎌倉で勝利をおさめようとしていた。続く2016改訂源義経黄金伝説■第11回(第10回欠番)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月24日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/9/源義経黄金伝説■第9回 東北黄金王国の平泉に、東西の軍書を読んでいる牛若はいた。さらに女真族の国へと。源義経黄金伝説■第9回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 平泉に、東西の軍書を読んでいる牛若はいた。 その顔は真っ黒にやけ、元気そうに見える。基本的体力は、鞍馬山にて鍛えられ、この奥州の地でその体力がぐんぐんと伸びていた。また馬も、この地の馬にすぐ慣れ、新しい馬術を学んでいる。「牛若殿、ご勉強、精が出ますな」 奥州平泉の帝王、秀衡であった。「これは秀衡様」 牛若は姿勢を正し、挨拶をした。「いやいや、そう堅苦しくせずともよい。よろしいですか、牛若様。我が郎党ども、感嘆の声をあげておりますのじゃ」 にこやかに秀衡は言う。本当にうれしそうなのだ。「いや、一体」 牛若には、この秀衡が、なぜ機嫌がいいのか、わからぬのだ。「腕がよい。教えがいがあると、申しますのじゃ。教える者は、京の軟弱な子供かと考えていたようでございますよ。はは」「これはしたり。こう見えても私は、源氏の氏長者の息子でございます。そうはずかしい仕業を見せる訳には行かぬのです」 若い牛若は、本気で怒っているのである。彼には、大きなプライドがある。たとえ、母親が白拍子であろうと、父親は歴とした源義朝。由緒正しいのである。逆に言えば、牛若の売り所はそれしかないのである。その一点に牛若はかけていた。「それで、元気のよい牛若様。一つ留学をなさって見る気になりませぬか」「留学ですと。私は僧になるつもりはありませぬぞ」意外な 言葉に、牛若は怪訝な顔をする。「いや、別に僧になり、仏教を勉強していただこうという訳ではありません。我が平泉には僧は足りておりまする」「では、何のために」一瞬、秀衡は牛若の顔をのぞき込んでいる。「武術でございます」ゆっくりと秀衡は告げた。「武術ですと。、、」牛若も詰まった。「それは面白い。中国の武術、実際に見て見たかった」「いや、牛若殿。中国、宋へ渡る訳ではないのです」「我々、平泉王国は、近くは蝦夷、遠くは黒竜江まで、貿易をしておることはご存じでしょう」「まさか、その黒竜江を越えて」「さようです。丁度便船を、津軽十三湊とさみなとから出す予定があるのです。従者を付けましょう」十三湊は奥州平泉の支配下にあり、外国との貿易でにぎわっていた。「従者、それは」「吉次です」「吉次。あの者が、なぜ」「吉次は、京都、平泉第にいた隠密の一人ですが、もともとあの男は播州(ばんしゅう・兵庫県姫路のあたり)の鋳物師の息子。冶金については、一通りの技術を持っているのでございます。吉次には、かの地の新しい技術を持ってこよと」 牛若は、少しばかり考えにひたっている。 この機会、かなり面白いかもしれぬ。牛若は本で読み、体得した技を使って見たくて仕方がなかった。秀衡の部下相手の模擬戦には、少しばかり飽いて来ていたのだ。実戦を経験したかったのである。「宋を北方から狙っている、女真族の一団があります。すでにこちらの手配は済んでおります。後は牛若様の決断次第。よろしいですか。私はあなたを実の息子のように、いや息子以上に思っております。これは何も西行殿に頼まれた訳ではない」「わかりました。外国へ行かせていただきます」「おお、さすがは牛若様じゃ」■■7一一七八年 中国沿海州・女真族の国に義経はいる。「日本のこわっぱ、このようなことができるか」義経の前を一陣の風がまった。いや、風でなかった、人馬一体となった戦士が、的を次々に射抜ているのだ。神業であった。歓迎の印として女真族の若者が見事な射術を見せているのだ。 平泉をでて2ヶ月の時間を経て、牛若は中国、女真族の国にたどり着いている。彼らは裸馬に乗り、あぶみ、両手を離し、後ろ向きに弓矢を打つのである。おまけに、その矢は、すべて中心に打ち込んでいる。日本の流鏑馬の巧者でもあそこまでは打てまい。義経は感心している。また、自分を送り出した秀衡の頭のさえにも。秀衡は牛若をこの地に派遣し武術を学ばせ、牛若を平泉の武将とし西国王朝の備えにしょうとしているのだ。「弁慶、どうじゃ、あの若者は」 義経は傍らにいる弁慶に尋ねた。弁慶は付き従ってきた。元々弁慶は紀州熊野水軍の流れをひく。この国の水軍の武術に興味があるのだ。「恐るべき術にございます。日本の武者では、あのような真似はできますまい。若、やはり世界はひろうございます。我々の預かり知らぬ術を持つ人間が多うこざいます」先年まで、京都の鞍馬という山にいて、自分の存在の不遇を嘆いたおとこが蛮地、奥州平泉にあり、そこから先、日本の毛外のち、にいるのだ、新しい運命!、それをあの僧形の男が与えてくれたのだ。あの男は何故に。牛若の心に疑問が浮かんだ。 この女真族の国で、牛若は戦術を学んだ。それが財産となる。続く2014改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月23日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/8/源義経黄金伝説■第8回-全72回「私が欲しいのは鞍馬宝物の征夷大将軍坂上田村磨呂公の太刀なのだ」と牛若はいう。源義経黄金伝説■第8回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/弁慶は鬼一から 牛若の氏素性を話され、守り役に徹すると決めた。牛若がいう。「弁慶、私の味方になりたいのかどうだ?返答はいかがか」「いや、それはもう、、」悪僧、弁慶の答えは微妙である。「先刻の五条の橋で暴言をはかなったか。いや、で、ものは相談。お主が味方かどうか、こころたい。私のゆうことを聞いてくれるかな」「それは、もう」「弁慶、俺は奥州へ行くにあたって、鞍馬から土産を持って行きたいのよ」「若、一体、何を。いたずらはもう、いい加減になされませ」 弁慶は牛若を若と読んでいる、この男なりの諧謔である。「いたずらではない。俺が源氏の生まれで在る事を証明したいのだ。私はな、鞍馬に伝わる太刀を持って行こうと思うのだ。そうすれば、あの奥州の者共、俺の力にびっくりするぞ。いや、敬服する!」牛若はもう心を決めている。あの埒外の地にいき、自分の存在を示す、いわば旗をあげるには それに限るのだ。「まさか、若様。あれを…」 弁慶は冷や汗を流している。「そうなのだ。私が欲しいのは鞍馬宝物の坂上田村磨呂公の太刀なのだ」 坂上田村磨呂、最初の征夷大将軍である。東北人との争いで、始めて大和朝廷の力に屈せしめた大将軍である。その太刀が、この鞍馬の秘刀として、鞍馬に保存されているのである。しばらくして鞍馬山の火祭りの夜のことである。「誰か、火が。火が宝殿から出ておるぞ」 凄まじい叫び声が、鞍馬山から木霊している。漆黒の闇の中、炎が宝殿をなめ尽くそうとしていた。「早く、早く、中の仏典、宝物を、、、」僧坊の僧たちがてんでに、宝物を持ち、宝殿から助け出そうとしている。その中に無論、牛若と弁慶も混じっている。「若、これは、、泥棒ではないか」「いや、何、火を持ってする戦法だ」牛若の顔が笑っているように弁慶には見える。 疾風のように、二人は京都の奥州の大使館にあたる平泉第まで駆け抜けている。その場所には猪首の巨漢が体を振るわして待っていた。「さあて、吉次、準備は調うたぞ。出発いたそう」牛若が鋸やかに言う。うやうやしく吉次は答える。「わかり申した。ふふ、牛若さまの本当の旅立ちでございますな」 金売り吉次はこのとき三十才。若い盛りであった。 吉次は、奥州の金を京都の平家に届けている。 清盛はその金を宋に輸出し、宋の銭を得ていた。日本の貿易に 宋銭を利用し、お金というものの革命を起こそうとしている、その一翼を吉次がになう。奥州と平家はこのように結び合っていた。続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月22日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/7/源義経黄金伝説■第7回★ー全72回 弁慶と牛若の争いを見て「争い事は、武士たちにお 任せなるのだ」源空、後の世にいう法然は、牛若につげる。源義経黄金伝説■第7回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/言うが早いか、弁慶は、背中から引き抜いた薙刀を一閃していた。普通の人間ならば、真っ二つである。が、弁慶の薙刀には、手ごたえがない。目の前にあるはずの、血まみれの体も残ってはいない。「はて、面妖な」「ふふっ、ここだ、ここだ」 弁慶の後ろから声が聞こえて来る。すばやく、背後を見返すと、橋げたのうえにふわりと牛若が乗っている。まるで、重さがない鳥のように、それは乗っているのだ。「貴様は、飛ぶ鳥か」「ふふう、そうかも知れぬぞ」不敵な笑みが、牛若の顔から漏れている。「鞍馬山の鳥かもな」 その声音は、完全に人を食っている。牛若は、自分の力を他人に見せるのが、うれしく、楽しいのだ。「お前は、平氏のまわし者か」毅然と、牛若が言う。「何を言う。平氏など、物の数ではない」そう答えるが早いか、弁慶は橋を蹴って、欄干のうえに薙刀を数振りする。その刀の動きは、常人の目には捕らえられぬ。とはいえ、明かりなどない夜中である。誰もそれには気付かぬ。ただ、野犬が、恐るべき力の争いに驚き、鳴き声をあげている。「どうした、弁慶。この私を捕まえることができぬか」にやりと笑う牛若の顔に、弁慶は、憎しみを倍加させる。 西行と鬼一法眼は橋の影からのぞいている。「どうだ、遮那王様の動き」「よかろう。あのように成長しておられるならば、奥州の秀衡殿の手元にお送りしても、十分役にたつだろう」。「秀衡殿もお喜びであろう」二人笑い会う。「西行殿、後はお任せるぞ」「何をこしゃくな」が、弁慶の額には、うっすらと汗が浮かんでいた。「弁慶、止めるのじゃ」突然異形の老人が、弁慶の前に姿を現し、争いを止めようとした。強い、この男は、弁慶はこの男を見て毛穴がひゅつと閉じるの感じた。「なぜだ、鬼一殿。この若造を殺せというたは、お主ではないのか」弁慶はこの老人にくってかかる。「もうよいのだ。お主もこの若者の力がわかったであろう」「そうであればこそ、なおさら許せぬ。俺の力を見せねば、気が済まぬ」「そうだ、鬼一。止めてくださるな。この大男に負けたと言わせるまでは、私も気が済まぬ」欄干の上にいる牛若が、答える。「こやつ、いわしておけば」背中より大槌を引き抜いて、弁慶は打ってかかる。ズーンと大きな音が響き、バラバラと橋げたが川中に崩れ落ちる。「おお、何をする。橋を壊すつもりか」「橋が壊れるが早いか、お主が死ぬのが早いか」 騒ぎを聞き付けた検非違使たちが六波羅の方から駆けつけてくる。「いかぬ」弁慶はそれにきを取られる。「ぐぅ」思わず弁慶が叫び、気を失う。牛若の高下駄が蹴りを弁慶の天頂に加えていた。「やれやれ」鬼一は橋のしたに用意してあった小舟に弁慶の体を隠し、鴨川を下った。「牛若殿、もう少しお手柔らかにお願いいたすぞ」「戦いの舞台を移そう」「こわっぱ、どこに逃げる。怖じけづいたか」息を吹き返し、苦しい息の下から弁慶が叫ぶ。「何を言う。お主がそう暴れるから、そら平家の郎党が現れたではないか」平家の屋敷に点々と灯が灯り、その灯が五条の橋を目がけてくる。かなりの人数のようだ。牛若が跳躍する。「おのれ、何処へ」弁慶は上を眺め、叫んだ。「頭の悪い坊主。この京都で晴れ舞台と言えばわかろうが…」声は天から響いた。「くっ、あそこか。わ、わかったぞ。約束を違えるなよ。半刻後じゃ、よいな」遠方で見ていた、西行と鬼一法眼はお互いに顔を見合わせていた。「いかん、あやつら、まさか…」「そうじゃ、あの寺だな」二人は疾風となり、東山を目指している。四人が目指すは、坂上田村麻呂公の寺、清水寺である。牛若は、弁慶の前で、清水寺の舞台で、ひらりひらりと舞っている。「ふっ、弁慶、どうだい。貴公もこの欄干の上で、京都の町を見てゆかぬか。よう見えるぞ。特に平家屋敷がな。おっと、貴公の体では、ちと無理かもな」「くそっ、口のへらぬこわっぱだ。そのようなこと、俺にもできるわ」「弁慶、止めておけ。お主の重さ、この清水寺の舞台を沈ませるぞ」「牛若殿、もう止めておきなされ。このお方もお疲れなのだ。お主の武勇、充分私も見せてもろうたぞ」いつも間にかその場所に源空も現れている。「争い事は、武士たちにお 任せなるのだ」源空の頭の中には、子供のころの自らの家の惨劇が埋まっている。 源空、後の世にいう法然は、この後、京都市中で僧坊を営み、後白河法皇、九条兼実らの知遇を得ることになる。 後に鎌倉仏教と呼ばれることになる、新しい日本仏教は、この源平争乱という武者革命と時を同じくしつつ起こった「宗教改革」だったのである。この時の源空には、まだその片鱗は見えない。続く2016改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月21日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/6/源義経黄金伝説■第6回京都・五条にある松原橋たもとに のっそりと、大男の悪僧は立ち 塞がっている。 大男にして筋肉質で敏捷な動き。源義経黄金伝説■第6回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 京都・鞍馬堂宇で鬼一法眼が、西行を待っていた。「おお、ここだ、西行殿」「おお鬼一法眼殿、息災であられるか」「西行殿も、歌名ますます上がられる。うれしい限りだ。それにあの遮那王、教えがいがある。よい弟子を送り込んでくれたものだ」「牛若、いや遮那王はそれほどまでに」「そうじゃ、仏法など、とんと興味がないわ。俺が教える武法のみ。さすがは源氏の頭領、源義朝殿が和子だな」「いや、やはり清盛殿の願いどおりにはならぬか」「それでは、やはり奥州、藤原秀衡殿の手にお渡しするか」「そうじゃのう。がその前に、武術の腕どれくらいのできあがりかを確かめてみるかな」「よい考えだ。さすがは武名高い北面の武士であられた西行殿。して、相手は」「近ごろ京で評判の、あの法師はどうだ」西行は手を打って、「弁慶か、よかろう」五条を中心とした平清盛、六波羅ろくはら政権は、170屋の大きな屋策をほこり、5200余の家々をしたがえている。六条河原と京の葬送地、鳥辺野とりべのの間を埋め尽くしている。この北域には、山門武装の資源つまり弓矢を生産する弓矢町を抱合している。弓矢町はつまり武器工廠である。また、300名からなる「赤かむろ」なる幼年探索第養育所も含んでいる。幼き密偵の養成所である。この年、「太郎焼亡たろうしょうぼう」と呼ばれる大火事がおこっていて、西の京はまだ焼け跡が広がっている。京の人間は乱世の始まりを感じ始めていた。その京都・五条にある松原橋たもとに のっそりと、その大男の悪僧は立ち塞がっている。大男にして、筋肉質で敏捷な動きをしている。「お主が牛若殿か」 月の光が鴨川の川面に映えている。牛若が押し入ろうとしていた平家の公達の家屋敷あたりからは、光とさざめきが漏れている。庶民が住んでいる辺りはもうすでに闇の中に沈んでいる。東山の辺りも、夜空に飲み込まれていて、遠く比叡の山からのわずかな光が、星のひとつのように霞んでいた。「私が牛若とすれば、どうするつもりかな」 ゆっくりと、牛若は答える。「そうなればー」 急に大きな弁慶が、牛若の顔を隠していた布を捲る。「ふふっ、なかなかよい顔をしている。我が稚児にするにちょうどよい…のう」 少しばかり、沈黙が二人の間に流れ、視線が素早く交わった。「しかしな、やはり、命をもらわねばならぬな」続く2016年改稿作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月20日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/5/源義経黄金伝説■第5回 鞍馬山で師匠の鬼一法眼から武術をならう牛若は、守護神に合う。また、僧、源空に心を見透かされる。源義経黄金伝説■第5回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com十五年後。永暦元年(一一六〇)今年57歳になった法師が、山道を登っている。 京都、鞍馬山僧正ヶ谷である。山肌に木の根が血管のようにごつごつと現れている。 激しく武者修行をする牛若の前に、法師が一人現れていた。かぶりもので牛若うしわかには顔が見えない。「牛若殿、元気であらせられるか」「はっ、あなた様は」「名乗るほどの者ではない。いずれ私の正体わかりもうそう。いわば、牛若殿の未来にかけておるものだ。いかがかな、牛若殿、武術の方は上達いたしましたか」その問に不審な顔で牛若は答えた。「はっ、師匠の鬼一法眼おにいちほうがん様の指導よろしきを得て、ますます励んでおります」「そうよのう、ここ鞍馬山の坂道で鍛えられれば、体力もつきもうそう。が、牛若殿、くれぐれも自重されよ。牛若殿の身は、御身一人だけのものではないのだ。お気をつけられよ」 そう言い残し、法師は去って行った。練習に励む牛若の前に、牛若の師匠、鬼一法眼が現れる。京都、いや日本で有名な幻術師である。「お師匠様、見たこともない法師が、私を激励されましたが…」不思議そうな表情で述べた。 鬼一法眼はかすかにほほ笑んで「ふふう、牛若、あちこちにお前の守護神がおるようだのう」「あの方は、私の守護神ですか」「どうやら、そのようだのう」 牛若は、首をひねる。その姿を見て、鬼一法眼は笑っていた。今、牛若は毎日、下界の京都までかけ降りては、自分の武術を試し、鞍馬にかけ戻っている。「牛若殿、またそのような乱暴狼藉を働かれて…」非難するような様子で、その若い僧は言う。 その源空げんくうという名の僧は、京都王朝の大学・学術都市である比叡山の僧坊に属しているのだが、ある時牛若と出会い、友達となったのだった。ゆっくりとお互いの身の上を話し合った。 源空は、じっとりと顔が濡れるほどに、牛若の身の上を案じてくれた。「何と、お可哀想な身の上なのだ…」 その若者らしい激情に、牛若もまた自身の身の上話に、ほほに涙をぬらすのだ。「牛若殿、仏に身を任せるのじゃ。そうすれば、おのが身、仏によって救われるであろう」いつも出会うたびに、言うのだった。が、牛若は仏を信じぬ。 牛若は自分の体は、戦の化身だと信じている。なぜならば、父は源氏の氏長者うじのちょうじゃだったのだ。武者中の武者の血が流れているのだ。それがこのような京都の外界、辺境に置かれようとも、いつかはこの世に出たい。源氏の若武者として、名を馳せたい。そういう願いが、牛若の心を一杯にしている。そうするべきだという自身が、みづからの中から沸き起こるのだ。 若い血は、あの急勾配の鞍馬山を、毎日行き来することによってにじり立ち、若い体は強力な膂力を手に入れつつあった。そして、その若い力を、この無慈悲なる、牛若自身の力を理解しない世の中へ出て試したいと、希っていた。これは、世に対する復讐なのか 源空は、やさしくにこやかな表情でゆっくりと分かりやすく牛若に語る。「およしなされ、牛若殿。、、、おのが身は、、、平相国そうこく、平の清盛様から助けられた命でございますぞ。、、、そのようなお考え、恐ろしいことは、お止めなされ」 と非難し止めるのであった。なぜに源空は、私の心がわかるのか、、と 牛若は思った。(続く)★2016改訂★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com
2021年05月19日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/4/源義経黄金伝説■第4回 西行法師は、北面の武士の当時に同僚であった平清盛を訪れ、ある人物を東北黄金王国の平泉へ送る事を約束する。源義経黄金伝説■第4回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com第1章永暦元年(一一六〇)今年42歳となった西行は、北面の武士当時、同僚であった平清盛を訪れている。京都六波羅かいわいは、まるで平家の城塞都市である。平家親戚一同が甍を並べ、藤原氏をはじめとしての貴族を睥睨している。平家にとって武力は力であった。 清盛と話す西行から、奥座敷の方に、幼児と母親がかすかに見える。(なにか、面白い話か、あるいは、わたしを陥れる奸計か。くえぬからのう、清盛は、、)こう考えていた折り、大きな陰が現れている。今、飛び鳥を落とす勢いの男が、仁王がごとく立っている。「おひさしゅうござる。西行法師殿、巷の噂、ご高名聞いておる。これがあの北面の武士、当時の佐藤殿とはのう」 今42歳同年の清盛は、若い頃、詩上手の西行に色々な恋歌を代作してもらったことを思い出して、恥じらい、頭を掻いている。「いやいや、北面の武士と言えば、あの文覚殿も」文覚も同じ頃、北面の武士である。「いやはや、困ったものよのう、あの男にも」「今は、確か」「そうじゃ、あの性格。、、よせばいいものを、後白河法皇にけちをつけ、伊豆に流されておる」文覚は摂津渡辺党の武士である。「あの若妻をなで切りにしてからは、一層人となりが代わりよったな」話を切り出してきた。背後から若い女御が、和子を清盛の腕にさしだしている。「のう、西行殿。古き馴染みの貴公じゃから、こと相談じゃ。この幼子、どう思う」「おお、なかなか賢そうな顔たちをしておられますなあ。清盛殿がお子か」「いや、違う。この常盤ときわの子供だ、名は牛若と言う」「おう、源義朝がお子か」 西行は驚いている。(政敵の子供ではないか。それをこのように慈しんでいるとは。清盛とは拘らぬ男よな。それとも性格が桁外れなのか)西行の理解を超えていることは確かなのだ。「そうじゃ、牛若の後世こうせい、よろしくお願い願えまいか。西行殿も確か仏門に入られて、あちらこちらの寺にも顔がきこうが。それに将来は北の仏教王国で、僧侶としての命をまっとうさせてくれまいか」「北の…」 西行は、少しばかり青ざめる。「言わずともよい。貴公が奥州の藤原氏とは、浅からぬ縁あるを知らぬものはない」にやりとしながら、清盛は言う。西行は恐れた。西行が奥州の秀衡とかなり昵懇な関係があり、京都の情報を流していることを知れば、いくら清盛といえども黙っているはずはない。西行は冷や汗をかいている。「……」「それゆえ、行く行くは、平泉へお送りいただけまいか。おそらくは、藤原秀衡殿にとって、荷ではないはず」しゃあしゃあと清盛は言う。西行の思いなど気にしていないようだ。「清盛殿、源氏が子を、散り散りに……」「西行殿、俺も人の子よ。母上からの注文が多少のう」 相国平清盛は、頭を掻いていた。母上、つまり池禅尼いけのぜんにである。清盛も母には頭があがらぬ。池禅尼が、牛若があまりにかわゆく死んだ孫に似ているため助けをこうたらしい。が、相国平清盛は、北面の武士の同僚だった折りから、食えぬ男、また何やら他の企みがあるかもしれぬが、この話、西行にとっていい話かもしれない。あとあと、牛若の事は交渉材料として使えるかもしれぬ。ここは、乗せられみるか。あるいは、平泉にとっても好材料かもしれぬ。ここは清盛の話を聞いておくか。この時が、西行と源義経のえにしの始まりとなった。平清盛はゼニの大将だった。平家の経済基盤のひとつは日宋貿易である。奥州の金を輸出し、宋の銭を輸入した。宋の銭の流入は日本の新しい経済基盤をつくろうとしていた。むろん、ここには平泉第の吉次がからんでいるのはいうまでもない。無論、西行もまた。新しい経済機構が発達しょうとしていいる。新しい職業もまた始まろうとしている。日本の社会が揺れ動いているのだ。続く2014改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com
2021年05月18日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/3/源義経黄金伝説■第3回 鎌倉八幡宮舞殿にて、男装の白拍子、静が舞う。源頼朝の面前で愛する義経がために源義経黄金伝説■第3回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com第1章 一一八六年 鎌倉八幡宮 1 文治二年(1186)四月八日のことである。 鎌倉八幡宮の境内、音曲が響いてくる。「京一番の舞い手じゃそうじゃ」そこに向かう雑色ぞうしきが仲間と声高に話していた。相方がこれも声高に答えた。「おまけに義経が愛妾とな」「それが御台所様のたっての願いで、八幡宮で舞うことを頼朝様がお許しになられたのそうじゃ」「大姫様にもお見せになるというな」「おう、ここじゃが。この混み様はどうじゃ」鎌倉の御家人たちもまた、この静の白拍子の舞を見ようと、八幡宮に集まって来ている。大姫は頼朝と御台所・北条政子の娘であり、木曽義仲の子供である許婚を頼朝の命令で切り殺されたところでもあり、気鬱になっていた。去年文治元年(1185)三月平家は壇ノ浦で滅亡している。その立役者が義経。その愛妾が話題の人、静。平家を滅ぼした源氏の大祝賀会である。その舞台にある女が登場するのを、人々はいまか今かと待ち兼ねて、ざわついている。 季は春。舞台に、観客席に桜の花びらがヒラヒラと散ってきて風情を催させる。その時、どよめきが起こった。 人々の好奇心が一点に集中し、先刻までのどよめきが、嘘のように静まっている。舞台のうえにあでやかな人形があらわれた。 舞殿まいどのの上、ひとりの男装の白拍子が舞おうとしている。 頼朝から追われている源義経の愛妾静その人であった。この時、この境内の目はすべて静に注目している。 衣装は立烏帽子に水干と白い袴をつけ、腰には太刀より小振りな鞘巻をはいている。 静は、あのやさしげな義経の眼を思っている。きっと母親の常盤様そっくりなのだろう。思考が途切れる。騒がしさ。ひといきれ。 静の母親の磯禅師は今、側にはしり寄って執拗に繰り返す。「和子を救いたくば、よいか、静、頼朝様の前での舞は、お前の恭順の意を表すものにするのです。くれぐれもこの母が、どれほどの願いを方々にしたか思ってくだされ。わかってくだされ。よいな、静」涙ながら叫んでいる。 が、静にも誇りはあった。 母の磯禅師は白拍子の創始者だった。その二代目が静。義経からの寵愛を一身に集めた女性が静である。京一番といわれた踊り手。それが、たとえ、義経が頼朝に追われようと…。 静は母の思わぬところで、別の生き物の心を持った。要塞都市、鎌倉の若宮大路。路の両側に普請された塀と溝。何と殺風景なと静は思った。その先に春めいた陽炎たつ由比ガ浜が見えている。その相模の海から逃れたかった。 かわいそうな一人ぼっちの義経様。私がいなければ、、そう、私がここで戦おう。これは女の戦い。知らぬうちにそっと自分の下腹をなででいる。義経様、お守り下させ。これは私の鎌倉に対する一人の戦い。別の生き物のように、ふっきれたように、静かの体は舞台へ浮かんだ。 しかし,今、舞台真正面にいる源頼朝の心は別の所にある。 頼朝は、2つの独立を画策していた。ひとつは、京都からの独立、いまひとつは、階級からの独立である。武士は貴族の下にいつまでもいる必要がない。とくに、東国では、この独立の意識が強いのだ。西国からきた貴族になぜ、金をわたさなければいけなにのか。だれが一番苦労しているのか。その不満の上に鎌倉は成り立っている。しかし、義経は、、あの弟は、、義経は人生において、常に逃亡者である。自分の居場所がない。世の中には彼に与える場所がない。義経は、頼朝が作ろうとしている「組織」には属することが不可能な「個人」であった。その時代の世界に彼を受け入れてくれる所がどこにもない。 頼朝はまた平泉を思う。頼朝に宿る源氏の地が奥州の地を渇望している。源氏は奥州でいかほどの血をながしたのか。頼朝は片腹にいる大江広元おおえひろもとをみる。土師氏はじしの末裔。学問を生業とする大江一族。頼朝は京から顧問になる男を呼び寄せる折、あるこだわりを持った。なぜなら、彼の曾父は大江匡房まさふさ。博学の士。八幡太郎義家に兵法を伝授し、奥州での勝利を確約したといわれている。頼朝はその故事に掛けている。奥州との戦いのために学問の神、大江家が必要だったのだ。さらに別の人物頼朝は眺める。文覚もんがくは十年前、後白河法王の密命を受けてきた荒法師で、が今は頼朝の精神的な支えとなっている。皮肉な運命だった。法王はそこまで、頼朝が大きくなるとは考えてなかった。 その想いの中を歩む心に、声が響いて、頼朝はふと我にかえる。「しずや、しずしずのおだまき繰り返し、昔を今になすよすがなる。吉野山みねの白雪踏み分けて、入りにし人の跡ぞ恋しき」 ひらひらと舞台の上に舞い落ちる桜吹雪の中、静は妖精のようだった。人間ではない、何か別の生き物…。 思わず、頼朝をはじめ、居並ぶ鎌倉武士の目が、静に引き寄せられていた。感嘆の息を吐くのもためらわれるほど、 それは…、人と神の境を歩んでいる妖精の姿であった。●続く●2014版作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com
2021年05月17日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/2/源義経黄金伝説■第2回 1180年(治承4年)四国白峰。西行法師が、北面の武士佐藤 義清の折、仕えた崇徳上皇の塚に額き、崇徳上皇を奉ずる約束。崇徳上皇の霊は日本を祟っている。源義経黄金伝説■第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/明治元年(1868年)よりさかのぼる事、690年前1180年(治承4年)四国白峰。老僧が荒れ果てた神社の鳥居の前に佇んでいる。鳥居から見える四国瀬戸の荒海はひゅひゅうと音を立てて荒れすさんでいる。「ようやく参りましたぞ、崇徳上皇様、しかし、この荒れよう、いかにかならぬものか。上皇様、上皇様、どうかお姿をお見せくださいませ。西行が、佐藤義清が参りましたぞ」西行は大声で叫んでいる。ここは四国の山中である。が、社殿は静まり返っている。その静けさが、何とも恐ろしい。「いかがなされました。何かご不満がおありになられるのか」「ふ……」どこからともなく、うめき声が、あたりの静寂を破る。突然、風が強くなってくる。空が急激に曇り始め、やがてポツリと西行の頬を雨脚が濡らした。「遅いわ、西行よ。朕を、何年待たせるのじゃ。さような奴輩が多いがゆえ、京都に災いの種を、いろいろ蒔いてやったわ。四つの宮、後白河もいやいや腰をあげたであろう。俺が恐ろしいはずじゃ。う、悔しや。もっとあやつ、、、、後白河法皇を苦しめてやるぞ」その声は恨みに満ち満ちている。「崇徳上皇様、お待ちくだされい。民には、何の咎もございませぬ。どうか、他の人々に災いを与えるのはお止めくだされい」「ふふう、何を言う。日本の民が苦しめば、あやつも苦しむ。もっともっと苦しめばよい。俺の恨みはいかでも晴れぬは」「お聞きください、崇徳上皇様。では上皇様のための都を新たに作るという策は、いかがでございますか」声が急に途切れる。「何、西行よ、お前、何かたくらんでおるのか。いやいや、お主は策士じゃ。何かよからぬことをたくらんでいるに違いない」意を決して、西行が顔をあげた。「崇徳上皇様、奥州でございます」「何、あの国奥州に」「そうでございます。この国の第二の都を。それならば唐国にも前例がございましょう」「何、平泉を、第二の京に。そして朕を祭ると、、そういうことか、西行よ」「さようでございます」西行法師は、顔を紅潮させていた。「西行、たばかるでないぞ。わかったぞ。朕は、少しばかり様子をみる事としょう。がしかし、再度謀れば、未来永劫、朕はこの国に、祟るぞ」風雨は、急に止み、天に太陽が姿を現す。汗がしたたり落ちている西行の顔は、まぶたが閉ざされている。体が瘧のようにぶるぶると震えている。腰は、地に落ちている。「これでよろしゅうございますか、兄君、崇徳上皇様に告げましたぞ。後白河法皇様。はてさて、しかしながら、恐ろしい約束事を…。この私が西行が、佐藤義清が、いかにしてか、平泉を第二の京にしなければなりませぬなあ…」ひとりごちている西行は、心中穏やかではない。西行は四国白峰にある崇徳上皇の塚にいる。崇徳上皇は「保元の乱」で破れ、弟、後白河上皇に流されたのだ。それゆえに弟、後白河上皇を憎みきっているのだ。そしてその配下も。東北の平泉は、源平どちらにも属さず、第3勢力の仏教王国として、産金王国として栄えている。その昔西行法師、佐藤義清は、北面の武士として仕えていたのだ。平の清盛の同僚のモノノフとして。(続く)20200701改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月16日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/1/源義経黄金伝説■第1回 明治維新後 新帝は、白峯神宮の祭神、崇徳上皇(すとくじょうこう)。日本の大魔王に深々と、頭を垂れた。前書き「源義経黄金伝説」とは■日本版三国志の物語。■時代は,源平の争いから、鎌倉幕府が成立しょうとしていた時期。■京都の陰陽師・鬼一方眼に、友人、西行法師は源義経の養育を依頼。その背景には、後白河法王、藤原秀衡が。東アジアのフロンテイアである日本は、国家を成立。その象徴として黄金大仏を作り、国家の勢力をシンボル化。平安京に奠都した大和ヤマトは、日本を統一していくが、国家象徴としての黄金大仏は、武家革命勢力による内乱のため、消失。■その大仏再建を図らんため独立国家、奥州を併合、黄金を収奪しょうとする鎌倉武家革命政権。瀬戸内海荘園群を経済地盤とする、後白河法王を頂点とする貴族制西国王朝と新興勢力である東国騎馬武士団を率いる源頼朝。■古代よりエミシの血を受け継ぐ奥州に黄金・仏教王国を構える藤原秀衡。■「義経黄金伝説」は、一二世紀日本の三つの都市(京都、鎌倉、平泉)と三人の騎士の物語。源義経黄金伝説■第1回2018版改稿作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/京都市上京区今出川通り飛鳥井に京都市上京区に白峯神宮はある。祭神は崇徳上皇すとくじょうこう。日本の大魔王といわれている。幼き帝の手を外祖父、中山忠能がかしづき、新しく出来た神社に詣でている。「さあ。御君おんきみ、ご先祖帝さまにお願い申し上げてくだされ。これからの、御帝さまを中心とされる新しき政府に、崇徳様の怨霊がたたらぬよ うに、あたらしき政治をお守りくだるようにお願いつかまつれ。代々、外祖父、中山忠能が家、藤原本家に伝わりし、西行法師さいぎょうほうし殿との約束をお伝え下さいませ」この日、1日驟雨である。中山忠能卿のさし出される傘の中。御歳15歳の新帝は、手を合わせ、御願いを、なされた。「崇徳上皇殿下、お許しくだされ。我が王朝が武士から世辞を取り戻すに700年かかってしまいました。今にいたり、源頼朝、大江広元の子孫たる二家、薩摩島津。長州毛利両家をもって、武士どもの町、江戸と政庁江戸幕府を倒し、武士どもを根こそぎ退治いたします。この長き屈折したりし日々をお許しくだされ。そして、陰都かげみやこでございます。平泉王国は、いにしえに滅びました、それゆえ、代わ りに江戸を陰都といたします。平将門を祭る神田明神を持って、陰都の守神といた します。が、本来は、崇徳上皇様が祭神でございます。どうぞ、我が王朝が、江戸城をもっ て新しき王朝の皇居といたす事をおゆるしくださいまし」御年十六歳の帝は、深く頭をさげた。白峰稜前にある白峰寺木像(白峰大権現)が 讃岐(さぬきー香川県)から運ばれて来ていた。先帝孝明帝が望み、できなかった事をなしとがている 。「今、奥州東北の国々が、列藩同盟とか申し、昔の蝦夷どものように反乱を起こそうとしております。我が王朝の若い貴族を持って先頭に立ち、荒恵比寿どもをたいらげます」幼き帝は、再び深々と、頭を垂れた。崇徳上皇は、保元の乱ほうげんのらんの首謀者の一人である、後白河に敗れ、讃岐に流され、そのちでなくなり、白峰山しらみねさんに葬られた。讃岐は京都の南西の方角、つまり裏鬼門うらきもんであり、平泉は、京都から見て鬼門にあたる丑寅の方角である。突然、空から、驟雨の中雷光が、崇徳上皇の独白が落ちてきて響き渡る。「西行法師よ、長くかかったのう。いつまで朕をまたせたことやら。がしかし、その陰都もいつまでも、安穏とするかや。所詮は、東の幕府、所詮は、荒夷どもが都ぞ。朕が情念は、いつしかその都に吹くだすやもしれぬぞ。見ておれ」その時 雷光が風景すべてを白濁させ、消えた。残光が響き渡る。「不吉なり。。」思わず誰かがつぶやく。数人の供人が、島津家が源頼朝の子孫であると称し、毛利家が、鎌倉幕府、大江広元の子孫であることを想起した。あたらしい鎌倉幕府か?この日、元号が明治と改元された。(続)20190117改稿作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年05月15日
展示「75歳でまだこども」白石卓也の世界メカムシデザイン工房の白石先生の展示会が開催。https://youtu.be/aFENzMnIYtA 観覧無料。日時令和3年3月10日(水)から3月31日(水)平日(月曜日を除く):9時30分から20時まで土日祝日:9時30分から18時まで場所伊丹市立図書館ことば蔵http://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/EDSHOGAI/EDLIB/index.html メカムシデザイン工房http://mekamushi.com/showcase.html メカムシデザイン工房ブログhttps://plaza.rakuten.co.jp/mekamushi/
2021年03月12日
■山田企画事務所・ペンネーム飛鳥京香の小説集です。SFフアンタジー小説、歴史小説などをご覧下さい。お楽しみください。著者は、飛鳥京香・山田企画事務所は日本漫画家協会会員・日本イベント業務管理士協会理事。アクト情報交流理事です。●YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと?https://ncode.syosetu.com/n1703dc/●BK私の中の彼へー青き騎士ー異星の生命体《アイス》と人の戦争で、少女暗殺組織ローズバットの沙織は、共生装甲機体・零号を操る独立装甲歩兵・翔と恋に落ちる。沙織には過酷な運命が待っていた。彼女は人類を新たな旅へ導く。https://ncode.syosetu.com/n5222dc/●TC東京地下道1949■ 1949年日本トウキョウ。 太平洋戦争の日本敗戦により、日本はアメリカ軍とソビエト軍に、分割占領。生き残った少年少女はどう生きるのか。それからの過酷なる日本の運命は?https://ncode.syosetu.com/n1603de/●TD「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」 故郷、神立山の伝説は、僕、日待明にあらたなる人生の選択を迫る。彼女は何者であったのか?私は地球人でなく観察者として地球の長い歴史に関与したことをしる。https://ncode.syosetu.com/n9669cz/●RSロボサムライ駆ける■「霊戦争」後、機械と自然が調和、人間とロボットが共生。日本・東京島「徳川公国」のロボット侍、早乙女主水が 日本制服をたくらむゲルマン帝国ロセンデールの野望を挫く戦いの記録。https://ncode.syosetu.com/n2492db/●KIアイランド■暗殺者の島■ かって存在したエルドラド、サンチェス島で、地球連邦軍暗殺チーム「レインツリー」に属する暗殺者2人の対決。https://ncode.syosetu.com/n3928db/●YK夢王たちの饗宴--ドラッグウォーの跡でー(麻薬戦争の跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高のドリームマスター,夢王は、だれなのか?なぜ、この世界はできたのか?https://ncode.syosetu.com/n7285dc/●CP封印惑星 封印された地球で情報収集端子であるユニーコーン・新機類は、天空の光矢を見る。それは新地球の解放者、世界樹の出現する。予兆である。https://ncode.syosetu.com/n1512de/●AFアリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー宇宙連邦の監視機構の元で、腐敗惑星内で新生命トリニティが蘇生し、世界の秩序を変える動きが始まる。https://ncode.syosetu.com/n6825dd/●KZガーディアンルポ03「洪水」 廃墟で、人類最後の生存者カインは地球滅亡を迎え。彼は生命形を変え自分から精強なる生物兵器に変貌、地球を再生し敵へ復讐を硬く誓う。https://ncode.syosetu.com/n1503de●UK宇宙から還りし王■初めて新宇宙への門「タンホイザーゲイト」から帰還した男ネイサンは、今、ゼルシア国自然保護区、ラシュモア山で王国を建設。みづから発する言葉で、人類を次の高みへと進化させようとする。https://ncode.syosetu.com/n1598de/●RUN遙かなる絆-ランナー● 地球と月を結ぶ「ムーンウェイ」から話は始まる。連邦軍「サイボーグ公社」に属するロードランナー,ヘルム。マコトは超能力者。2人は月で人類外の野望を砕く、新世界の人類の出現が始まる。https://ncode.syosetu.com/n1867de/●「支配者たち」(ハーモナイザー01)世界樹ハーモナイザーの支配する宇宙での、2人の宇宙飛行士の物語。これは現実か夢なのか「もちろん、あの人は私の夢の一部分よ。でも、私も、あの人の夢の一部なんだわ」https://ncode.syosetu.com/n1894de/
2021年02月20日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/5/ 源義経黄金伝説■第5回 鞍馬山で師匠の鬼一法眼から武術をならう牛若は、守護神に合う。また、僧、源空に心を見透かされる。 源義経黄金伝説■第5回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com 十五年後。永暦元年(一一六〇) 今年57歳になった法師が、山道を登っている。 京都、鞍馬山僧正ヶ谷である。山肌に木の根が血管のようにごつごつと現れている。 激しく武者修行をする牛若の前に、法師が一人現れていた。 かぶりもので牛若うしわかには顔が見えない。 「牛若殿、元気であらせられるか」「はっ、あなた様は」 「名乗るほどの者ではない。いずれ私の正体わかりもうそう。いわば、牛若殿の未来にかけておるものだ。いかがかな、牛若殿、武術の方は上達いたしましたか」 その問に不審な顔で牛若は答えた。 「はっ、師匠の鬼一法眼おにいちほうがん様の指導よろしきを得て、ますます励んでおります」 「そうよのう、ここ鞍馬山の坂道で鍛えられれば、体力もつきもうそう。が、牛若殿、くれぐれも自重されよ。牛若殿の身は、御身一人だけのものではないのだ。お気をつけられよ」 そう言い残し、法師は去って行った。 練習に励む牛若の前に、牛若の師匠、鬼一法眼が現れる。 京都、いや日本で有名な幻術師である。 「お師匠様、見たこともない法師が、私を激励されましたが…」不思議そうな表情で述べた。 鬼一法眼はかすかにほほ笑んで 「ふふう、牛若、あちこちにお前の守護神がおるようだのう」「あの方は、私の守護神ですか」 「どうやら、そのようだのう」 牛若は、首をひねる。その姿を見て、鬼一法眼は笑っていた。 今、牛若は毎日、下界の京都までかけ降りては、自分の武術を試し、鞍馬にかけ戻っている。 「牛若殿、またそのような乱暴狼藉を働かれて…」非難するような様子で、その若い僧は言う。 その源空げんくうという名の僧は、京都王朝の大学・学術都市である比叡山の僧坊に属しているのだが、ある時牛若と出会い、友達となったのだった。ゆっくりとお互いの身の上を話し合った。 源空は、じっとりと顔が濡れるほどに、牛若の身の上を案じてくれた。「何と、お可哀想な身の上なのだ…」 その若者らしい激情に、牛若もまた自身の身の上話に、ほほに涙をぬらすのだ。「牛若殿、仏に身を任せるのじゃ。そうすれば、おのが身、仏によって救われるであろう」いつも出会うたびに、言うのだった。が、牛若は仏を信じぬ。 牛若は自分の体は、戦の化身だと信じている。 なぜならば、父は源氏の氏長者うじのちょうじゃだったのだ。武者中の武者の血が流れているのだ。 それがこのような京都の外界、辺境に置かれようとも、いつかはこの世に出たい。源氏の若武者として、名を馳せたい。そういう願いが、牛若の心を一杯にしている。 そうするべきだという自身が、みづからの中から沸き起こるのだ。 若い血は、あの急勾配の鞍馬山を、毎日行き来することによってにじり立ち、若い体は強力な膂力を手に入れつつあった。そして、その若い力を、この無慈悲なる、牛若自身の力を理解しない世の中へ出て試したいと、希っていた。これは、世に対する復讐なのか 源空は、やさしくにこやかな表情でゆっくりと分かりやすく牛若に語る。 「およしなされ、牛若殿。、、、おのが身は、、、平相国そうこく、平の清盛様から助けられた命でございますぞ。、、、そのようなお考え、恐ろしいことは、お止めなされ」 と非難し止めるのであった。 なぜに源空は、私の心がわかるのか、、と 牛若は思った。 (続く)★2016改訂★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com
2021年02月17日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/4/源義経黄金伝説■第4回 西行法師は、北面の武士の当時に同僚であった平清盛を訪れ、ある人物を東北黄金王国の平泉へ送る事を約束する。源義経黄金伝説■第4回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com第1章永暦元年(一一六〇)今年42歳となった西行は、北面の武士当時、同僚であった平清盛を訪れている。京都六波羅かいわいは、まるで平家の城塞都市である。平家親戚一同が甍を並べ、藤原氏をはじめとしての貴族を睥睨している。平家にとって武力は力であった。 清盛と話す西行から、奥座敷の方に、幼児と母親がかすかに見える。(なにか、面白い話か、あるいは、わたしを陥れる奸計か。くえぬからのう、清盛は、、)こう考えていた折り、大きな陰が現れている。今、飛び鳥を落とす勢いの男が、仁王がごとく立っている。「おひさしゅうござる。西行法師殿、巷の噂、ご高名聞いておる。これがあの北面の武士、当時の佐藤殿とはのう」 今42歳同年の清盛は、若い頃、詩上手の西行に色々な恋歌を代作してもらったことを思い出して、恥じらい、頭を掻いている。「いやいや、北面の武士と言えば、あの文覚殿も」文覚も同じ頃、北面の武士である。「いやはや、困ったものよのう、あの男にも」「今は、確か」「そうじゃ、あの性格。、、よせばいいものを、後白河法皇にけちをつけ、伊豆に流されておる」文覚は摂津渡辺党の武士である。「あの若妻をなで切りにしてからは、一層人となりが代わりよったな」話を切り出してきた。背後から若い女御が、和子を清盛の腕にさしだしている。「のう、西行殿。古き馴染みの貴公じゃから、こと相談じゃ。この幼子、どう思う」「おお、なかなか賢そうな顔たちをしておられますなあ。清盛殿がお子か」「いや、違う。この常盤ときわの子供だ、名は牛若と言う」「おう、源義朝がお子か」 西行は驚いている。(政敵の子供ではないか。それをこのように慈しんでいるとは。清盛とは拘らぬ男よな。それとも性格が桁外れなのか)西行の理解を超えていることは確かなのだ。「そうじゃ、牛若の後世こうせい、よろしくお願い願えまいか。西行殿も確か仏門に入られて、あちらこちらの寺にも顔がきこうが。それに将来は北の仏教王国で、僧侶としての命をまっとうさせてくれまいか」「北の…」 西行は、少しばかり青ざめる。「言わずともよい。貴公が奥州の藤原氏とは、浅からぬ縁あるを知らぬものはない」にやりとしながら、清盛は言う。西行は恐れた。西行が奥州の秀衡とかなり昵懇な関係があり、京都の情報を流していることを知れば、いくら清盛といえども黙っているはずはない。西行は冷や汗をかいている。「……」「それゆえ、行く行くは、平泉へお送りいただけまいか。おそらくは、藤原秀衡殿にとって、荷ではないはず」しゃあしゃあと清盛は言う。西行の思いなど気にしていないようだ。「清盛殿、源氏が子を、散り散りに……」「西行殿、俺も人の子よ。母上からの注文が多少のう」 相国平清盛は、頭を掻いていた。母上、つまり池禅尼いけのぜんにである。清盛も母には頭があがらぬ。池禅尼が、牛若があまりにかわゆく死んだ孫に似ているため助けをこうたらしい。が、相国平清盛は、北面の武士の同僚だった折りから、食えぬ男、また何やら他の企みがあるかもしれぬが、この話、西行にとっていい話かもしれない。あとあと、牛若の事は交渉材料として使えるかもしれぬ。ここは、乗せられみるか。あるいは、平泉にとっても好材料かもしれぬ。ここは清盛の話を聞いておくか。この時が、西行と源義経のえにしの始まりとなった。平清盛はゼニの大将だった。平家の経済基盤のひとつは日宋貿易である。奥州の金を輸出し、宋の銭を輸入した。宋の銭の流入は日本の新しい経済基盤をつくろうとしていた。むろん、ここには平泉第の吉次がからんでいるのはいうまでもない。無論、西行もまた。新しい経済機構が発達しょうとしていいる。新しい職業もまた始まろうとしている。日本の社会が揺れ動いているのだ。続く2014改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com
2021年02月17日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/3/源義経黄金伝説■第3回 鎌倉八幡宮舞殿にて、男装の白拍子、静が舞う。源頼朝の面前で愛する義経がために源義経黄金伝説■第3回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com第1章 一一八六年 鎌倉八幡宮 1 文治二年(1186)四月八日のことである。 鎌倉八幡宮の境内、音曲が響いてくる。「京一番の舞い手じゃそうじゃ」そこに向かう雑色ぞうしきが仲間と声高に話していた。相方がこれも声高に答えた。「おまけに義経が愛妾とな」「それが御台所様のたっての願いで、八幡宮で舞うことを頼朝様がお許しになられたのそうじゃ」「大姫様にもお見せになるというな」「おう、ここじゃが。この混み様はどうじゃ」鎌倉の御家人たちもまた、この静の白拍子の舞を見ようと、八幡宮に集まって来ている。大姫は頼朝と御台所・北条政子の娘であり、木曽義仲の子供である許婚を頼朝の命令で切り殺されたところでもあり、気鬱になっていた。去年文治元年(1185)三月平家は壇ノ浦で滅亡している。その立役者が義経。その愛妾が話題の人、静。平家を滅ぼした源氏の大祝賀会である。その舞台にある女が登場するのを、人々はいまか今かと待ち兼ねて、ざわついている。 季は春。舞台に、観客席に桜の花びらがヒラヒラと散ってきて風情を催させる。その時、どよめきが起こった。 人々の好奇心が一点に集中し、先刻までのどよめきが、嘘のように静まっている。舞台のうえにあでやかな人形があらわれた。 舞殿まいどのの上、ひとりの男装の白拍子が舞おうとしている。 頼朝から追われている源義経の愛妾静その人であった。この時、この境内の目はすべて静に注目している。 衣装は立烏帽子に水干と白い袴をつけ、腰には太刀より小振りな鞘巻をはいている。 静は、あのやさしげな義経の眼を思っている。きっと母親の常盤様そっくりなのだろう。思考が途切れる。騒がしさ。ひといきれ。 静の母親の磯禅師は今、側にはしり寄って執拗に繰り返す。「和子を救いたくば、よいか、静、頼朝様の前での舞は、お前の恭順の意を表すものにするのです。くれぐれもこの母が、どれほどの願いを方々にしたか思ってくだされ。わかってくだされ。よいな、静」涙ながら叫んでいる。 が、静にも誇りはあった。 母の磯禅師は白拍子の創始者だった。その二代目が静。義経からの寵愛を一身に集めた女性が静である。京一番といわれた踊り手。それが、たとえ、義経が頼朝に追われようと…。 静は母の思わぬところで、別の生き物の心を持った。要塞都市、鎌倉の若宮大路。路の両側に普請された塀と溝。何と殺風景なと静は思った。その先に春めいた陽炎たつ由比ガ浜が見えている。その相模の海から逃れたかった。 かわいそうな一人ぼっちの義経様。私がいなければ、、そう、私がここで戦おう。これは女の戦い。知らぬうちにそっと自分の下腹をなででいる。義経様、お守り下させ。これは私の鎌倉に対する一人の戦い。別の生き物のように、ふっきれたように、静かの体は舞台へ浮かんだ。 しかし,今、舞台真正面にいる源頼朝の心は別の所にある。 頼朝は、2つの独立を画策していた。ひとつは、京都からの独立、いまひとつは、階級からの独立である。武士は貴族の下にいつまでもいる必要がない。とくに、東国では、この独立の意識が強いのだ。西国からきた貴族になぜ、金をわたさなければいけなにのか。だれが一番苦労しているのか。その不満の上に鎌倉は成り立っている。しかし、義経は、、あの弟は、、義経は人生において、常に逃亡者である。自分の居場所がない。世の中には彼に与える場所がない。義経は、頼朝が作ろうとしている「組織」には属することが不可能な「個人」であった。その時代の世界に彼を受け入れてくれる所がどこにもない。 頼朝はまた平泉を思う。頼朝に宿る源氏の地が奥州の地を渇望している。源氏は奥州でいかほどの血をながしたのか。頼朝は片腹にいる大江広元おおえひろもとをみる。土師氏はじしの末裔。学問を生業とする大江一族。頼朝は京から顧問になる男を呼び寄せる折、あるこだわりを持った。なぜなら、彼の曾父は大江匡房まさふさ。博学の士。八幡太郎義家に兵法を伝授し、奥州での勝利を確約したといわれている。頼朝はその故事に掛けている。奥州との戦いのために学問の神、大江家が必要だったのだ。さらに別の人物頼朝は眺める。文覚もんがくは十年前、後白河法王の密命を受けてきた荒法師で、が今は頼朝の精神的な支えとなっている。皮肉な運命だった。法王はそこまで、頼朝が大きくなるとは考えてなかった。 その想いの中を歩む心に、声が響いて、頼朝はふと我にかえる。「しずや、しずしずのおだまき繰り返し、昔を今になすよすがなる。吉野山みねの白雪踏み分けて、入りにし人の跡ぞ恋しき」 ひらひらと舞台の上に舞い落ちる桜吹雪の中、静は妖精のようだった。人間ではない、何か別の生き物…。 思わず、頼朝をはじめ、居並ぶ鎌倉武士の目が、静に引き寄せられていた。感嘆の息を吐くのもためらわれるほど、 それは…、人と神の境を歩んでいる妖精の姿であった。●続く●2014版作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com
2021年02月17日
YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/2/源義経黄金伝説■第2回 1180年(治承4年)四国白峰。西行法師が、北面の武士佐藤 義清の折、仕えた崇徳上皇の塚に額き、崇徳上皇を奉ずる約束。崇徳上皇の霊は日本を祟っている。源義経黄金伝説■第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/明治元年(1868年)よりさかのぼる事、690年前1180年(治承4年)四国白峰。老僧が荒れ果てた神社の鳥居の前に佇んでいる。鳥居から見える四国瀬戸の荒海はひゅひゅうと音を立てて荒れすさんでいる。「ようやく参りましたぞ、崇徳上皇様、しかし、この荒れよう、いかにかならぬものか。上皇様、上皇様、どうかお姿をお見せくださいませ。西行が、佐藤義清が参りましたぞ」西行は大声で叫んでいる。ここは四国の山中である。が、社殿は静まり返っている。その静けさが、何とも恐ろしい。「いかがなされました。何かご不満がおありになられるのか」「ふ……」どこからともなく、うめき声が、あたりの静寂を破る。突然、風が強くなってくる。空が急激に曇り始め、やがてポツリと西行の頬を雨脚が濡らした。「遅いわ、西行よ。朕を、何年待たせるのじゃ。さような奴輩が多いがゆえ、京都に災いの種を、いろいろ蒔いてやったわ。四つの宮、後白河もいやいや腰をあげたであろう。俺が恐ろしいはずじゃ。う、悔しや。もっとあやつ、、、、後白河法皇を苦しめてやるぞ」その声は恨みに満ち満ちている。「崇徳上皇様、お待ちくだされい。民には、何の咎もございませぬ。どうか、他の人々に災いを与えるのはお止めくだされい」「ふふう、何を言う。日本の民が苦しめば、あやつも苦しむ。もっともっと苦しめばよい。俺の恨みはいかでも晴れぬは」「お聞きください、崇徳上皇様。では上皇様のための都を新たに作るという策は、いかがでございますか」声が急に途切れる。「何、西行よ、お前、何かたくらんでおるのか。いやいや、お主は策士じゃ。何かよからぬことをたくらんでいるに違いない」意を決して、西行が顔をあげた。「崇徳上皇様、奥州でございます」「何、あの国奥州に」「そうでございます。この国の第二の都を。それならば唐国にも前例がございましょう」「何、平泉を、第二の京に。そして朕を祭ると、、そういうことか、西行よ」「さようでございます」西行法師は、顔を紅潮させていた。「西行、たばかるでないぞ。わかったぞ。朕は、少しばかり様子をみる事としょう。がしかし、再度謀れば、未来永劫、朕はこの国に、祟るぞ」風雨は、急に止み、天に太陽が姿を現す。汗がしたたり落ちている西行の顔は、まぶたが閉ざされている。体が瘧のようにぶるぶると震えている。腰は、地に落ちている。「これでよろしゅうございますか、兄君、崇徳上皇様に告げましたぞ。後白河法皇様。はてさて、しかしながら、恐ろしい約束事を…。この私が西行が、佐藤義清が、いかにしてか、平泉を第二の京にしなければなりませぬなあ…」ひとりごちている西行は、心中穏やかではない。西行は四国白峰にある崇徳上皇の塚にいる。崇徳上皇は「保元の乱」で破れ、弟、後白河上皇に流されたのだ。それゆえに弟、後白河上皇を憎みきっているのだ。そしてその配下も。東北の平泉は、源平どちらにも属さず、第3勢力の仏教王国として、産金王国として栄えている。その昔西行法師、佐藤義清は、北面の武士として仕えていたのだ。平の清盛の同僚のモノノフとして。(続く)20200701改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2021年02月17日
源義経黄金伝説■第1回 明治維新後 新帝は、白峯神宮の祭神、崇徳上皇(すとくじょうこう)。日本の大魔王に深々と、頭を垂れた。「源義経黄金伝説」とは■日本版三国志の物語。■時代は,源平の争いから、鎌倉幕府が成立しょうとしていた時期。■京都の陰陽師・鬼一方眼に、友人、西行法師は源義経の養育を依頼。その背景には、後白河法王、藤原秀衡が。■東アジアのフロンテイアである日本は、国家を成立。その象徴として黄金大仏を作り、国家の勢力をシンボル化。平安京に奠都した大和ヤマトは、日本を統一していくが、国家象徴としての黄金大仏は、武家革命勢力による内乱のため、消失。■その大仏再建を図らんため独立国家、奥州を併合、黄金を収奪しょうとする鎌倉武家革命政権。瀬戸内海荘園群を経済地盤とする、後白河法王を頂点とする貴族制西国王朝と新興勢力である東国騎馬武士団を率いる源頼朝。■古代よりエミシの血を受け継ぐ奥州に黄金・仏教王国を構える藤原秀衡。■「義経黄金伝説」は、一二世紀日本の三つの都市(京都、鎌倉、平泉)と三人の騎士の物語。源義経黄金伝説■第1回2018版改稿作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/京都市上京区今出川通り飛鳥井に京都市上京区に白峯神宮はある。祭神は崇徳上皇すとくじょうこう。日本の大魔王といわれている。幼き帝の手を外祖父、中山忠能がかしづき、新しく出来た神社に詣でている。「さあ。御君おんきみ、ご先祖帝さまにお願い申し上げてくだされ。これからの、御帝さまを中心とされる新しき政府に、崇徳様の怨霊がたたらぬよ うに、あたらしき政治をお守りくだるようにお願いつかまつれ。代々、外祖父、中山忠能が家、藤原本家に伝わりし、西行法師さいぎょうほうし殿との約束をお伝え下さいませ」この日、1日驟雨である。中山忠能卿のさし出される傘の中。御歳15歳の新帝は、手を合わせ、御願いを、なされた。「崇徳上皇殿下、お許しくだされ。我が王朝が武士から世辞を取り戻すに700年かかってしまいました。今にいたり、源頼朝、大江広元の子孫たる二家、薩摩島津。長州毛利両家をもって、武士どもの町、江戸と政庁江戸幕府を倒し、武士どもを根こそぎ退治いたします。この長き屈折したりし日々をお許しくだされ。そして、陰都かげみやこでございます。平泉王国は、いにしえに滅びました、それゆえ、代わ りに江戸を陰都といたします。平将門を祭る神田明神を持って、陰都の守神といた します。が、本来は、崇徳上皇様が祭神でございます。どうぞ、我が王朝が、江戸城をもっ て新しき王朝の皇居といたす事をおゆるしくださいまし」御年十六歳の帝は、深く頭をさげた。白峰稜前にある白峰寺木像(白峰大権現)が 讃岐(さぬきー香川県)から運ばれて来ていた。先帝孝明帝が望み、できなかった事をなしとがている 。「今、奥州東北の国々が、列藩同盟とか申し、昔の蝦夷どものように反乱を起こそうとしております。我が王朝の若い貴族を持って先頭に立ち、荒恵比寿どもをたいらげます」幼き帝は、再び深々と、頭を垂れた。崇徳上皇は、保元の乱ほうげんのらんの首謀者の一人である、後白河に敗れ、讃岐に流され、そのちでなくなり、白峰山しらみねさんに葬られた。讃岐は京都の南西の方角、つまり裏鬼門うらきもんであり、平泉は、京都から見て鬼門にあたる丑寅の方角である。突然、空から、驟雨の中雷光が、崇徳上皇の独白が落ちてきて響き渡る。「西行法師よ、長くかかったのう。いつまで朕をまたせたことやら。がしかし、その陰都もいつまでも、安穏とするかや。所詮は、東の幕府、所詮は、荒夷どもが都ぞ。朕が情念は、いつしかその都に吹くだすやもしれぬぞ。見ておれ」その時 雷光が風景すべてを白濁させ、消えた。残光が響き渡る。「不吉なり。。」思わず誰かがつぶやく。数人の供人が、島津家が源頼朝の子孫であると称し、毛利家が、鎌倉幕府、大江広元の子孫であることを想起した。あたらしい鎌倉幕府か?この日、元号が明治と改元された。(続)20190117改稿作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/新書1冊分 72回の連載です。
2021年02月17日
鈴木純子先生(神戸市出身)に、「西洋画風肖像画」(仮題)を描いてもらおう!申込み受付は2020年8月上旬の予定です。山田企画事務所HPから申し込めるようにいたします。(C)Suzuki junko/yamada-kikaku.com(C)Suzuki junko/yamada-kikaku.com(C)Suzuki junko/yamada-kikaku.com(C)Suzuki junko/yamada-kikaku.com(C)Suzuki junko/yamada-kikaku.com(C)Suzuki junko/yamada-kikaku.com(C)Suzuki junko/yamada-kikaku.com(C)Suzuki junko/yamada-kikaku.com
2020年07月21日
9VAe-iPhne/iPad版 animation制作無料ソフト 山田企画事務所はanimation制作無料ソフト9Vaeの普及に協力しています。http://9vae.com/ja/ 9VAeきゅうべえアニメ研究所よりの提供資料です。ダウンロードサイト情報です。9VAe-iPhne/iPad版(9VAeDangla)ダウンロードhttps://apps.apple.com/jp/app/9vae-iphone/id1482450143 9VAeでグリーンバック動画を作成してiMovieに合成する方法https://dnjiro.hatenablog.com/entry/2020/01/20/064450 プレゼン用動画素材の作成https://dnjiro.hatenablog.com/entry/2020/02/03/144517 トレス動画は9VAeきゅうべえで作ると簡単https://dnjiro.hatenablog.com/entry/2020/02/05/152910
2020年02月14日
岩佐又兵衛(荒木村重の息子)作の国宝を公開 福井県立美術館山田は伊丹の住民ゆえ、以下気になっておりました。荒木村重の息子、岩佐又兵衛(浮世絵の創始者といわれる)の墓は、福井市の観光地図にのっております。ありました。写真は後日公開。http://info.pref.fukui.lg.jp/bunka/bijutukan/tokuse…28_matabe/ ちょうど福井県立美術館にて岩佐又兵衛展http://info.pref.fukui.jp/bunka/bijutukan/bunka1.html 岩佐又兵衛作の国宝を公開 福井県立美術館https://www.hokurikushinkansen-navi.jp/pc/news/arti…0000007875 福井県立美術館(福井市)で開かれている岩佐又兵衛展で6日から、国宝指定が決まった「洛中洛外図屏風(舟木本)」(東京国立博物館所蔵)が公開。5日夜には、後期展示の目玉となる6曲1双の大作が会場に搬入された。展示は28日まで。」子、孫と福井藩の絵師として、のちには福井藩武士となったそうです。ーーーーーーーーーーーーーーー●福井県立美術館の岩佐又兵衛略年表より1578年摂津伊丹城主荒木村重の子として誕生。1579年9月、伊丹城落城。村重、又兵衛これを逃れる。1587年10月、秀吉主催の北野大茶会を見る。1616年この頃、越前北之庄(福井)に移る。1633年越前畠中専修寺と伊勢一身田専修寺の法門争いに付き、藩主忠昌への目安書を記す。1637年2月に福井を発ち、途中京都に立ち寄り江戸へ向かう。1640年仙波東照宮「三十六歌仙図額」制作。6月17日奉納。1650年6月22日、江戸にて没。
2020年01月07日
YouTube.com■山田企画事務所の3000種類のYouTube動画チャンネル山田企画事務所の動画整理■YouTube.com■チャンネルアドレスを短縮しました。3000種類の YouTube動画が入っております。ご覧ください。山田企画事務所のYouTube動画のチャンネルです。ーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/Ydd16m漫画の描き方 などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/CqyT9Q大阪・近江八幡・伝統的町並み風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/5jomdsメカムシ教室(クラフトアート)京都・大阪風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/V3atM4近江八幡・兵庫県武田尾温泉・兵庫県伊丹市風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/8B7dCJ金沢城・松山城風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/zyNTfS滋賀県高島市。琵琶湖風景などのYouTube動画
2019年08月11日
マンガと図解新・くらしの税金百科 2019▶2020本年も 山田企画事務所の提携作家 安達ルネが、マンガを担当させていただきました。公益財団法人 納税協会連合会 編新・くらしの税金百科 2019▶2020 発 行 : 2019年7月2日判 型 : B5判272頁 ISBN : 978-4-433-60559-9定 価 : 1,728円(本体1,600円)概要 ■身近な税金のことがよくわかる。みんなの税金入門書。最新の税情報から、税金の基礎知識、会社員や自営業者など異なる立場ごとの税金知識と資産を守るための税金知識について、マンガと図解でやさしく解説。目次 第1章 くらしの税ミナール 1 消費税率の引上げ 2 最新税金事情第2章 くらしの中の税金あれこれ 1 どれぐらい知っていますか? 税金のこと 2 もっとも身近な税金 所得税と住民税 3 こんなところでこんな税金第3章 それぞれの立場から学ぶ税金講座 1 会社員に伝えたい税金のイロハ 2 自営業者に必須の税金ノウハウ 3 会社社長が知っておくべき税金知識 4 シルバーエイジと税金の関係第4章 大切な資産を守るための税金講座 1 マイホームと不動産をめぐる税金あれこれ 2 他人事ではない相続と贈与の税金 3 資産の運用と保険をめぐる税金第5章 知っておいて損はない+α税金講座http://www.skattsei.co.jp/search/060559.html
2019年07月18日
山田企画事務所のチラシを作りました。一般配布用です。
2019年04月02日
光陽社さんの本年度アート年賀状発売!:2019年-亥年(いのししどし)https://www.koyosha-inc.co.jp/nenga_2019/index.html光陽社さんのアート年賀状はクリエイターさんには有名です。●山田企画事務所は、毎年作家さんの発見に協力しています。本年度の山田企画事務所の協力クリエイターさんで年賀状に採用された作家は、●鈴木純子先生 http://www.yamada-kikaku.com/suzuki-junko.html●岩崎ナギ先生 http://www.yamada-kikaku.com/artists/45-iwasaki-nagi.html●大石容子先生 http://www.yamada-kikaku.com/ooishi-youko.htmlの3人です。ごらんになってアート年賀状購入の程よろしくお願いいたします。お申込締切日 平成30年12月20日(木)午後4時ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2018年10月31日
源義経黄金伝説■第3回この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所第1章 一一八六年 鎌倉八幡宮 1 文治二年(1186)四月八日のことである。 鎌倉八幡宮の境内、音曲が響いてくる。「京一番の舞い手じゃそうじゃ」そこに向かう雑色ぞうしきが仲間と声高に話していた。相方がこれも声高に答えた。「おまけに義経が愛妾とな」「それが御台所様のたっての願いで、八幡宮で舞うことを頼朝様がお許しになられたのそうじゃ」「大姫様にもお見せになるというな」「おう、ここじゃが。この混み様はどうじゃ」鎌倉の御家人たちもまた、この静の白拍子の舞を見ようと、八幡宮に集まって来ている。大姫は頼朝と御台所・北条政子の娘であり、木曽義仲の子供である許婚を頼朝の命令で切り殺されたところでもあり、気鬱になっていた。去年文治元年(1185)三月平家は壇ノ浦で滅亡している。その立役者が義経。その愛妾が話題の人、静。平家を滅ぼした源氏の大祝賀会である。その舞台にある女が登場するのを、人々はいまか今かと待ち兼ねて、ざわついている。 季は春。舞台に、観客席に桜の花びらがヒラヒラと散ってきて風情を催させる。その時、どよめきが起こった。 人々の好奇心が一点に集中し、先刻までのどよめきが、嘘のように静まっている。舞台のうえにあでやかな人形があらわれた。 舞殿まいどのの上、ひとりの男装の白拍子が舞おうとしている。 頼朝から追われている源義経の愛妾静その人であった。この時、この境内の目はすべて静に注目している。 衣装は立烏帽子に水干と白い袴をつけ、腰には太刀より小振りな鞘巻をはいている。 静は、あのやさしげな義経の眼を思っている。きっと母親の常盤様そっくりなのだろう。思考が途切れる。騒がしさ。ひといきれ。 静の母親の磯禅師は今、側にはしり寄って執拗に繰り返す。「和子を救いたくば、よいか、静、頼朝様の前での舞は、お前の恭順の意を表すものにするのです。くれぐれもこの母が、どれほどの願いを方々にしたか思ってくだされ。わかってくだされ。よいな、静」涙ながら叫んでいる。 が、静にも誇りはあった。 母の磯禅師は白拍子の創始者だった。その二代目が静。義経からの寵愛を一身に集めた女性が静である。京一番といわれた踊り手。それが、たとえ、義経が頼朝に追われようと…。 静は母の思わぬところで、別の生き物の心を持った。要塞都市、鎌倉の若宮大路。路の両側に普請された塀と溝。何と殺風景なと静は思った。その先に春めいた陽炎たつ由比ガ浜が見えている。その相模の海から逃れたかった。 かわいそうな一人ぼっちの義経様。私がいなければ、、そう、私がここで戦おう。これは女の戦い。知らぬうちにそっと自分の下腹をなででいる。義経様、お守り下させ。これは私の鎌倉に対する一人の戦い。別の生き物のように、ふっきれたように、静かの体は舞台へ浮かんだ。 しかし,今、舞台真正面にいる源頼朝の心は別の所にある。 頼朝は、2つの独立を画策していた。ひとつは、京都からの独立、いまひとつは、階級からの独立である。武士は貴族の下にいつまでもいる必要がない。とくに、東国では、この独立の意識が強いのだ。西国からきた貴族になぜ、金をわたさなければいけなにのか。だれが一番苦労しているのか。その不満の上に鎌倉は成り立っている。しかし、義経は、、あの弟は、、義経は人生において、常に逃亡者である。自分の居場所がない。世の中には彼に与える場所がない。義経は、頼朝が作ろうとしている「組織」には属することが不可能な「個人」であった。その時代の世界に彼を受け入れてくれる所がどこにもない。 頼朝はまた平泉を思う。頼朝に宿る源氏の地が奥州の地を渇望している。源氏は奥州でいかほどの血をながしたのか。頼朝は片腹にいる大江広元おおえひろもとをみる。土師氏はじしの末裔。学問を生業とする大江一族。頼朝は京から顧問になる男を呼び寄せる折、あるこだわりを持った。なぜなら、彼の曾父は大江匡房まさふさ。博学の士。八幡太郎義家に兵法を伝授し、奥州での勝利を確約したといわれている。頼朝はその故事に掛けている。奥州との戦いのために学問の神、大江家が必要だったのだ。さらに別の人物頼朝は眺める。文覚もんがくは十年前、後白河法王の密命を受けてきた荒法師で、が今は頼朝の精神的な支えとなっている。皮肉な運命だった。法王はそこまで、頼朝が大きくなるとは考えてなかった。 その想いの中を歩む心に、声が響いて、頼朝はふと我にかえる。「しずや、しずしずのおだまき繰り返し、昔を今になすよすがなる。吉野山みねの白雪踏み分けて、入りにし人の跡ぞ恋しき」 ひらひらと舞台の上に舞い落ちる桜吹雪の中、静は妖精のようだった。人間ではない、何か別の生き物…。 思わず、頼朝をはじめ、居並ぶ鎌倉武士の目が、静に引き寄せられていた。感嘆の息を吐くのもためらわれるほど、 それは…、人と神の境を歩んでいる妖精の姿であった。●続く●2014版作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/http://plaza.rakuten.co.jp/yamadas0115/ 飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)
2018年09月30日
Rice granary of Meiji,Sakata, Yamagata 山居倉庫~明治の米蔵~山形県酒田市 025
2018年09月30日
Honma house old main residence Sakata,Yamagata本間家旧本邸 山形県酒田市016
2018年09月30日
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