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カテゴリ: 白銀の炎
*****

 外に出たシフィルは驚いた。雪が膝の上辺りまで積もっている。こんなに降っていたなんて。診療所の明かりを映して、外は白く明るい。
「……よくここまで来られたね」
「ああ?」
 スコップで豪快に雪を浚いながら、シイナが返事をする。
「こいつで除けながら歩いて来たんだよ」
 シイナは腕を止め、肩にスコップを担ぐ。以前は大剣をこうして肩に抱えていたものだけど。こういうものを肩に乗せているシイナもなんだか妙に似合う。シフィルはくすりと笑ってシイナに言った。
「なんだってわざわざ、こんな日に」
 しかも夜中に。わらうシフィルに、シイナは困ったような顔で言う。

「うちに酒は無いよ。アルコールは、消毒用しか」
「飲むかよそんなもん。酒は売ってもらった」
 店は閉まってたけどな、シイナは言った。やたらポケットのついた上着が、膨らんでいるのはそのせいか。シフィルは思った。
「この雪じゃ、繁盛はしないだろうからね」
「おまえんとこもな……おまえはこれ、やらねえのかよ」
 スコップを雪に刺し、肘をついてシイナが言う。シフィルはにこやかに答えた。
「あいにく道具が無い」
「おまえらなあ」
「本当に助かるよ。わたしは非力だし、グレンもああいう状態だからね」
苦笑しながらシフィルは言った。シイナはむっつりしたまま言う。
「出来ることと、出来ないことが解かっているのはいいことじゃねえか」

「おまえはそりゃ非力だけどよ、医者としては有能だ。俺には人を斬れても、斬られたもんを助けることはできねえよ」
 シイナはふうっと溜め息を吐いた。
「そう、グレンだよ、グレン」
 浚った雪をわきに放り投げながら、シイナは言う。
「カイル様と話してたときに、グレンがここにいるって聞いてよ」

「シイナ……」
「あん?」
「カイルのことを、カイル様と呼ぶのは、何故だろうね」 
 考えたこともなかった。シイナは思う。皆がそう呼んでいるからだ。
「なんか、いつの間にかそうなってたな」 
「ヨギのことは、なんと呼んでいる?」
「ヨギ」
 質問するシフィルに、即答するシイナ。
「おかしいとは思わないか?」
「そういや……そうだな」
「わたしもグレンに言われて、おかしいと思ったんだ。シイナはどう思う?」
「そうだ、グレンだよ、グレン。なんでこの国にいるんだよ」
 聞いたことに答えていない。印象に残ったことしか、頭に残らないのだな。シフィルは溜め息を吐いた。
「わたしはおまえとグレンが、知り合いだったということも知らないのだけれどね」
「……そうだったか?」
「おまえがここに来る前にどこにいたのかも知らないよ。グレンのことよりも知らない」
「……まあ、別にいいじゃねえか」
 よっと、シイナは雪のかたまりを放り捨てる。
「……では、グレンのことも、別にいいとは思えないかい」
 シイナは言われて、考えるようなそぶりをしたが、すぐにもとの表情に戻って言う。
「そうだな」
シイナはスコップを持って、玄関へと歩いた。
「こんなもんでいいだろ。もう入ろうぜ」
 シイナがスコップを雪に突き立てて、言った。
「そうだね、グレンも待っているだろうし」

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最終更新日  2010.01.18 16:28:47
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