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2025.04.20
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カテゴリ: 雑感
コロンビア大学 が、政府からの総額4億ドル(約600億円)相当の契約や助成金を打ち切られたと報じられました。その理由は、ユダヤ人学生への嫌がらせなど、キャンパスでの反ユダヤ主義的活動に対する大学側の取り締まりが不十分なためだとか。とはいえ、この件では既に学長が辞任に追い込まれています。が、それで話が済んだのかと思いきや、今度はDEI(多様性、公平性、包摂性)関連の取り組みも差別禁止法に反するとして排除を要求し、従わなければ助成金カット、という脅しに出てきました。これでトランプ政権の意図が単に反ユダヤ主義への制裁ということだけでなく、リベラルな価値観を推し進める大学教育そのものを弾圧しようとしていることが明白になったわけです。(最近ではハーバード大学も同様の脅しを受けたことが報じられ、ますます先鋭化しつつあります。)

亭主には、コロンビア大学が最初の標的になった理由に心当たりがあります。それは「 アメリカの反知性主義 」の著者、 リチャード・ホーフスタッター (1916-1970)がかつて教鞭をとった大学だからです。

ここで「反知性主義」は原語でAnti-Intellectualism、「知性」を否認しているのはではなく、「知性主義」に反対する/否定するという意味です。(「反」が「知性主義」全体にかかるので「反・知性主義」という風に中黒を打つのがわかりやすいでしょう。)

もっと砕けて言えば、 「反知性=バカな方がいい」ではなく、「知性主義に反対=知的エリートなんか糞食らえ!」という主義主張 です。この違いは極めて大きいのでよく押さえておく必要があります。

このような「反・知性主義」の背後に渦巻いているのは、相対的貧困にある中西部や南部の田舎の労働者たちの強い不満と、アイビーリーグなどの有名大学を出てハイテク・金融関係の大企業で働き「いい暮らしをしている」東西両沿岸部のエリートたち(〜民主党支持者に重なる)に対する彼らの怨念にも似た強烈な 嫉妬心 です。

米国ではこのような対立の歴史は古く、ヨーロッパからの移民・入植者が増え始めた18世紀ごろからありました。というのも、彼らの多くは本国の政治体制や宗教(=国家権威)からの弾圧から逃れ、思想・信仰の自由を獲得するために新大陸へとやって来た人たちでした。なので、 自分たちの思想・信仰に疑念を挟む知識(エリート)階級が、権威・権力を持って自分たちに何かを指図しようとする (=政府を牛耳る)ことは、彼らの自由に対する潜在的な脅威と感じられてしまいます。(このような感じ方は米国の福音派と呼ばれる人たちにも共通で、コロナ禍でのワクチンやマスク奨励に対する彼らの反応もこのようなメンタリティの端的な現れです。)

話をホーフスタッターに戻すと、そのような対立が先鋭化した近代の典型例が、東西冷戦が深刻になり始めた1950年代のマッカーシズムです。大統領選に絡み、「東側」のイデオロギーであった共産主義に理解があったリベラルな知識階級を議会(上院)が公然と弾圧(「赤狩り」と呼ばれた)するのを目の当たりにしたホーフスタッターは、そのような反知性主義をアメリカという国の宿痾(治癒困難な持病)とみなし、「知識人階級と大衆のあいだに横たわる巨大で不健全な断絶」という観点からアメリカ建国以来の歴史を再解釈していきます。



ホーフスタッターの著作は、この問題を考える上で原点ともいうべき重要な文献ですが、なかなか重厚長大で亭主もまだ前半に目を通したところです。これよりはるかに読みやすく、厚さも手頃なのが森本あんり氏の著作で、まずはこちらをお勧めしたいところ。これを読めば今米国で起きていることの背景がよく理解できます。



ところで、このような反知性主義は、特に米国に固有なのものではなく、いわゆる権威主義的な国家ではむしろ普通に見られます。例えば、旧共産圏時代のソ連では「インテリゲンティア(知識人階級)は無用の長物である」として大勢がシベリア(強制収容所)送りになりましたし、同じ時代の中国では「文化大革命」での知的エリート層への弾圧が夙に有名です。その理由も単純明快で、彼らは自分でモノを考える 健全な懐疑 の持ち主であり、政府の主張や方針に疑問を呈するなど、「為政者の権威に盾突く」厄介者だからです。

ところで、これら旧共産主義陣営では「労働者が幸福になる」ような国家運営が行われていたはずですが、実態はというと計画経済の失敗によって悲惨な状況になっており、労働者の間には大きな不満が溜まっていました。時の為政者は、このような不満が暴発して反政府暴動や革命にならないよう、また不満への対応をめぐる政権内での権力闘争の一環として、「いい暮らしをしている」知的エリート層(政敵も含む)への嫉妬心を煽り、労働者達の鬱憤ばらし(ガス抜き)をしていたわけでした。

要するに、こういった反知性主義キャンペーンは、相対的に貧困にある人たちが抱く現状への不満や怒りという感情をエネルギー源にしています。なので、この感情(=速い思考)がある程度収まらない限り、理性(遅い思考)の声を聴くことはないでしょう。

彼らが冷静になった頃に世の中がどうなっているか、ここは壮大な社会実験の成り行きを首をすくめて眺めいるしかなさそう…









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Last updated  2025.06.14 08:40:28
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