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2026.02.01
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カテゴリ: 雑感



実はこのシリーズ、亡父が大昔に購入したものが実家にあり、亭主もパラパラ眺めていました。中でも園山俊二は、学研の雑誌「科学/学習」に連載されていた「はじめ人間ゴン」などの作者として馴染みがあり、この本も読んだ覚えがあります。とはいえ、刊行された1970年には亭主はまだ小学校高学年。マンガが諧謔の中に忍ばせる深い風刺などはわかるはずもなく、娯楽として読み飛ばしたものでした。(そもそも大のオトナが文学全集のように立派に装丁されたマンガ本を読む、ということ自体をなんとも不思議に思ったことが思い出されます。)

ところが、以前 このブログ で林達夫の著作を取り上げた際に、文庫版の解説記事の冒頭で庄司薫氏が言及した「鳥が矢の名人に射抜かれたことも知らず満月の彼方に悠々と飛んでいく様を描いた園山俊二の漫画『名人伝』」をもう一度見たくなり、実家に問い合わせたところ「あ〜、ちょうど他の本といっしょにまとめて古書店に引き取ってもらった」とのことで、残念ながら後の祭りでした。

こうなってくると、どうしても気になってくるのが人情。というわけで、しばらく燻っていたところに現物を見せられてどうしても欲しくなり、衝動買いすることに。(それにしても、奥付けに1969年11月30日刊とあるのを見ると、あれから半世紀以上という時の流れに圧倒されます。)

本を開くと、件の「名人伝」は「読み切り傑作選」の項の2番目にあり、馬術、居合抜き、鎖鎌、槍、神童、と来て最後に弓術が出てきます。


この弓の名人のエピソード、置かれた文脈によって如何様にも解釈や教訓を引き出すことができる点が面白いところです。が、それにも増して感心させられるのは、作者が少ない線描を用い、たった8コマで主題を描き切っている点で、漫画という表現の威力を改めて思い知らされた感があります。

さらにもう一つ、本書を手元に置くことで初めて目にすることになった鶴見俊輔による巻末の解説記事、これがまた面白い読み物となっています。

「園山俊二集」に集められた漫画が世に出た時期は1960年代後半の高度成長期、大学進学率が急上昇するとともに学園紛争が盛り上がった時期でもあります。鶴見によれば、例えば一世を風靡した「ギャートルズ」(「はじめ人間ゴン」はその子供版として作られたとか)の背後には教育問題がある、と言います。

園山俊二(1935-1993)が早稲田大学で学んだ昭和30年代には日本の多くの大学で漫画研究会が生まれたことから、鶴見はこれを日本の大学生の間に「大学による近代的知性養成計画にたいするうたがいがきざしてきたこととからんでいる」と言い、「ギャートルズ」は、大学をふくめての現行の教育計画にたいする告発の書であるとまで言います。なぜなら「こどもをどう見るかが教育のはじまりにある問題」であり、「今の平均のおとなのように育てることにうたがいをもつならば、眼はしぜんに、今の社会以前の人間はどうだったのかにむけられ、原始人が眼に入ってくる」というわけです。これはフランスの哲学者ルソーの問題意識と軌を一にしており、鶴見は作者に対し「いつかは、園山俊二としての社会契約論あるいは社会再契約論をかいてほしい」と呼びかけています。

その当時に吹き荒れた学園闘争の嵐は、受験戦争を勝ち抜いて手にした大卒の学歴がエリートへの切符ではなくなり、社会ののコマになって働くだけの冴えない展望しか描けなくなった学生たちの異議申し立てでした。とはいえ、その後も大学受験を頂点とする教育システム、およびそれに裏付けられた学歴社会は変わらないまま現在に至っているように見えます。

ところが、ここに来て人工知能(AI)、なかでもChatGPTなどの大規模言語モデルの大成功により、少なくとも知識だけ見れば東大生レベルのそれを誰もが手にできる状況になりました。これはもしかするといよいよ学歴社会の終焉を意味するのかもしれません。

こうなってくると、これから人間に求められるのはある種の原始人のような能力、ということになるのかも?







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Last updated  2026.02.01 18:35:44
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