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October 3, 2006
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カテゴリ: フィクション


DSC00496.jpg

空は何とか持ちこたえているものの
波は相変わらず高く水平線は霞んでいる
そこに遥か北アルプスの稜線が浮かぶ極限の蜃気楼
その稜線のサークルの中が世界のすべてだった頃を思い浮かべ
傍らに熾した小さな火に流木をくべながら
砂浜の座標にひとつ点を加える

結界でも張られているかのようにしんとして真っ暗だ
味噌樽の味噌と粕漬けの粕が混じり
そこへ何百年ものほこりが覆いかぶさる様な匂い
梁には誰のものか分らないが兵隊のヘルメットや水筒が掛けられ
農機具や使われなくなった家具やおもちゃ等が一言もしゃべらずに
そこで息継ぎの仕方を忘れたかのように泣いているおれを見ている
逃げ出そうと試みるも
厚さ10センチもあるような重い扉は
子供の力ではどうする事も出来ない

何を仕出かしたのかは忘れた
ここに入れられているのだから何か悪さをした事は間違いない
「土蔵に入れるよ」
言う事を聞かないと母はこの決めゼリフを使いおれを震え上がらせ
父は何も言わずに泣きじゃくり抵抗するおれを引きずり
いとも簡単に閉じこめて蓋をした

ひとしきり泣いて泣き疲れた頃
そのまま眠ってしまった事もあったかもしれない
きゅる、ぎゅるるる・・・
突然結界は破られたかと思うと
その重い扉は開けられシャバの光が差し込んでくる
外光に立ってこの幼い犯罪者を開放してくれるのは
大抵腰の曲がった祖母だ
その顔を見てまたぶり返したように泣き出すおれに祖母は
「腹へってねえか?」と
本物の刑事みたいだ
おれは心の中で
「腹へったよ山さん」と
ジーパン刑事のものまねでつぶやいた。






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Last updated  October 4, 2006 12:37:47 PM コメントを書く
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