
空は何とか持ちこたえているものの
波は相変わらず高く水平線は霞んでいる
そこに遥か北アルプスの稜線が浮かぶ極限の蜃気楼
その稜線のサークルの中が世界のすべてだった頃を思い浮かべ
傍らに熾した小さな火に流木をくべながら
砂浜の座標にひとつ点を加える
結界でも張られているかのようにしんとして真っ暗だ
味噌樽の味噌と粕漬けの粕が混じり
そこへ何百年ものほこりが覆いかぶさる様な匂い
梁には誰のものか分らないが兵隊のヘルメットや水筒が掛けられ
農機具や使われなくなった家具やおもちゃ等が一言もしゃべらずに
そこで息継ぎの仕方を忘れたかのように泣いているおれを見ている
逃げ出そうと試みるも
厚さ10センチもあるような重い扉は
子供の力ではどうする事も出来ない
何を仕出かしたのかは忘れた
ここに入れられているのだから何か悪さをした事は間違いない
「土蔵に入れるよ」
言う事を聞かないと母はこの決めゼリフを使いおれを震え上がらせ
父は何も言わずに泣きじゃくり抵抗するおれを引きずり
いとも簡単に閉じこめて蓋をした
ひとしきり泣いて泣き疲れた頃
そのまま眠ってしまった事もあったかもしれない
きゅる、ぎゅるるる・・・
突然結界は破られたかと思うと
その重い扉は開けられシャバの光が差し込んでくる
外光に立ってこの幼い犯罪者を開放してくれるのは
大抵腰の曲がった祖母だ
その顔を見てまたぶり返したように泣き出すおれに祖母は
「腹へってねえか?」と
本物の刑事みたいだ
おれは心の中で
「腹へったよ山さん」と
ジーパン刑事のものまねでつぶやいた。
ミキオ October 25, 2006
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時間と感情のグラフ dot4 October 12, 2006
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