ワルディーの京都案内

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2021/08/04
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テーマ: 京都。(6114)
カテゴリ: 若冲と応挙
【2021年8月4日(水)】

 5連続在宅日の最終日です。今日は、朝から良い天気で午前中から暑いです。もうじきエアコンオンしようかと思います。

 在宅が多いので、またご近所散歩を復活させていますが、暑いので朝散歩しています。「お通じ」が何か調子いいです。朝散歩の効果かもしれません。


 「若冲と応挙」第30回。応挙の円熟期の続きです。


◆第3章 円山応挙(続き)

3-5 円熟期(続き)

大乗寺 の次の襖絵は、応挙が最晩年に描いた、 「松に孔雀図」 (図1-1) です。金地墨画で、色調のわずかに違った2種類の墨が用いられ、青みがかった墨で松の葉が表され、それ以外の部分はやや赤みのある墨で描かれています。その違いは僅かなのですが、金地に描かれた効果も相まってか、松は青々と茂っているように見えます。


図1-1 大乗寺客殿「松に孔雀図」(部分)



 この絵が、襖がL字型に配置されることを利用して、巧みに立体表現をしていることは、一目瞭然です。右側襖には手前に伸びる枝、奥の襖には左に伸びる枝が描かれています。そして、よく見ると2本の松の右側の幹から、こちらに向かって伸びる枝を発見することができます。八方に枝が拡がる松をその場で見ているような錯覚にとらわれます。そして、奥の2本の松の幹の根元に地面が見えます。ところが、決して盛り上がっているのでなく、畳から連続に平坦に地面が繋がっているように見えるのです。観察者は襖の向こうに広大な空間を見ているような感覚にとらわれます。

図2-2「松に孔雀図」(部分)仏間を開けたとき
図1-2 が開けた状態です。松の幹は1本になってしまいますが、松の枝が見事に繋がっています。

 大乗寺は常時、客殿の内拝が可能です。内拝料は大人800円。詳しくは次のホームページをご覧ください。
http://www.daijyoji.or.jp/main/index.html

 この円熟期の代表作の筆頭は、 図2-1 「雪松図屏風」 でしょう。応挙生涯の代表作の筆頭といってもいいかもしれません。若冲・応挙の絵のなかで、唯一国宝に指定された絵です。この絵はいわゆる「金地屏風」です。それまでの画家の金地屏風の金地は、モチーフを引き立たせるためのものでした。ところが、応挙は、風景画においては、そのような効果に加え、金地で透明な大気を表わそうと意図しました。さきほどの 図1-1 「松に孔雀図」 もそうですが、本作品にはその意図がより顕著に表れているといえるでしょう。


図2-1 「雪松図屏風」上:右隻 下:左隻(国宝)三井記念美術館蔵




 構図に目を向けてみましょう。右隻の松は直線的で力強い老松で、左隻の松は曲線的で柔らかい若木です。右隻の松の幹は大胆に上下をカットされ、狩野永徳の大画面巨樹表現を思い起こさせます。やや下から松を見上げ、鑑賞者に迫りくるようです。右から左に伸びる大枝は、画面奥から手前に張り出してきています。一方、左隻の松はかなり下から見上げています。枝は手前から奥へ向かう方向性をもっています。右隻の松葉の一かたまりと左隻右の松の松葉の一かたまりの大きさを比べると、右隻の松の方が手前にあって、左隻の松の方が後方にあることが分かります。屏風一双を並べたとき中央に余白ができますが、その余白が左隻、右隻の奥行き差を強調しているようにも見えます.

 次に細部を見てみましょう。 図2-2 に右隻の部分拡大を示します。雪の部分は、遠くから見ると白色の絵具を使っているように見ますが、そうではなく、紙の地の色を残しているだけなのです。雪を描かずして、雪を描いているのです。雪の部分には一筋の筆も入っていません。それを遠くから眺めると「あら不思議」、幹や枝を柔らかく覆った雪に見えるのです。以前の回でお話しした 「遠見の絵」 です。樹皮は墨を何度も重ねて、ごつごつとした質感を出しています。これも近くで見ると筆が連続しておらず、粗い感じですが、遠くから見ると自然なゴツゴツ感になります。幹や枝は輪郭線を用いない 没骨(もっこつ)法 で描かれ、特に横に伸びる枝には、 付立(つけたて) の技法が使われていることが分かります。一本の筆全体に薄墨を含ませ、さらに先の部分に濃墨を含ませ、筆を横に倒して引くと、一筆の中で濃淡を表現できます。これが付立です。今風にいうと「グラデーション筆」です。近くで見ると粗い印象ですが、襖を鑑賞する位置から見ると、この枝が丸い立体となって見えるのです。これも応挙の「遠見の絵」理論を実践したものです。


図2-2 「雪松図屏風」右隻の部分拡大



「雲龍図屏風」 同様、屏風が折り曲げられた状態で見ると、さらに臨場感、奥行き感が増すのです。屏風の折り曲げも考慮したうえでの、立体表現が図られているからです。

 「雪松図屏風」は東京日本橋にある 「三井記念美術館」 所蔵です。「三井記念美術館」は常時観覧できますが、「雪松図屏風」がいつも観覧できるわけではありません。1年に一度くらい、期間を限って観覧できます。私も今回の研究で、2019年の「雪松図屏風」公開の折り、三井記念美術館を訪問しました。最も感動したのはやはり「雪松図屏風」でした。近寄って見ると粗いのですが、屏風を観賞する距離から見ると、同じ絵とは思えないほどの存在感が醸し出され、圧倒されました。

 興味のある方は、次のホームページで展示予定など確認ください。「雪松図屏風」以外にも多くの名品を所蔵しており、本稿でもすでにいくつか紹介してきました。

http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html


図3 左:三井記念美術館入口(東京日本橋)   右:筆者観覧の美術展パンフレット




 次回以降は、応挙の晩年、応挙ゆかりの地、応挙の名の由来などについて、述べていきたいと思います。


(続きます)


前回はこちら 次回はこちら



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最終更新日  2021/08/09 11:24:22 AM
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