窓をたたいたのは、だれ?
空腹が満たされると、チーちゃんとダイちゃんはフゴの上でうとうと
しはじめました。もう雛のおきている時間ではありません。
鳥籠にもどすと、二羽はピッタリ寄り添い、ふたたびうとうとしはじめました。
眠くて眠くてもうだめ、という感じです。私たち人間も、ほっとしたとたんに疲れがどっと出てきました。
台風が去ったあと、寝不足のうえにおそい朝食をとったきり食事らしい
食事もしないで、ヒヨドリ一家に一日中振り回されていたのです。「どれ、夕飯になる前に、お手柄ヌウの相手をしてやろう」
夫が立ち上がると、私の肩にいたヌウは畳にとびおり隣室に行く彼のあとを、
ちょんちょんホッピングしながらついていきました。私は、むき出しの雛たちの籠をおおうために、古いレースのカーテンと
少しかび臭い毛布をだしてきました。ガラス戸を閉めてもけっこう蚊は忍び込むし、夏とはいってもこの田舎では明け方近くになると肌寒いほど
気温が下がることもあります。鳥籠をすっぽりレースのカーテンでおおい、その上から、前面だけあけて
毛布をかけてやりました。
「チビさんたち、ぐっすりお休み。明日になったら、
またおかあさんにあえるからね」
そうささやきかけたものの、明日はどうなることやら...。四羽いたすべての子を巣から失った母鳥は、いまどんな思いで
過ごしているのだろう?
小鳥のことだから、もうあきらめてしまったのだろうか?
あの、Tさんちのベランダから消えた雛は、もう生きてはいないのだろうか?
父鳥はどこへ?いろいろな思いが頭の中をかけめぐり、ぼんやりしていたそのとき、誰かが窓ガラスを触れるほどに軽くたたいたような気がしました。
(だれだろう?)
音のするほうに顔を向けた私は、「あ!」
と息をのんで、そのまま身動きできなくなってしまいました。ガラス窓の木の桟に、鳥がへばりついて部屋の中をうかがっているのです。
なんと口には、羽のついた虫をくわえているではありませんか。
ボロボロで貧弱な尾羽がはっきりとわかります。
ヒヨドリのお母さんがわが子たちに餌を与えにきたのです。
私は感極まって、短い声を発し、思わず不動の姿勢を崩してしまいました。
とたんに母鳥は、背後の闇に姿を消しました。一瞬間の出来事でした。
隣室にいき、文鳥のお手柄ヌウをかまっている夫に、たった今の出来事を
夢中で話しました。彼は最初、いくらなんでもこんな暗くなってから
鳥が飛んでくるわけがない、雀蛾かなんかと間違えたのではないかと、
にわかには信じられない様子。
「もっとも、真っ暗ではないし、鴉や白鷺がこんなころ飛んでいくのを
見たことがあるから...」たしかに暗くなったといっても家々に明かりがともり外灯もついています。
母鳥は、自由には飛べないまでも、その明かりをたよりに、
ずっと気を抜かずに家の中の様子をうかがっていたのでしょう。
この分だと、明日も母鳥がやってくるに違いないと思いました。
私たちはその様子を見守るために、
そして一日でも早く親子を一緒にしてやるために、
一つ屋根の下で、そう、あばらになりかかった離れで、
チーちゃんダイちゃんと寝起きをともにすることにしました。
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つれりんさん