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1888年4月、17歳の少女マリー・ヴェッツェラは
馬術場で、初めて間近でルドルフ皇太子を見て、胸ときめかした。
1888年秋、夏の家族旅行からウィーンに戻った彼女は
大胆にも皇太子に恋文を出す。
思いがけず、
会ってお話がしたい
との返信をもらい、有頂天になる。
1888年11月、運命的な出会い。
3か月ほどは、人目を忍びながらも幸福な恋愛の時期。
皇太子がローマ法王庁に離婚要請して拒絶されたことが
フランツ・ヨーゼフ帝に連絡され、皇帝の激怒はもちろんのこと
ふたりの関係は明るみに。
もはや臆面もなく
ドイツ大使主催の大夜会にマリーを伴って出席したルドルフは
ステファニー妃の目前で
マリーとだけ、踊り明かした。
1889年1月28日
皇帝と皇太子の激しい言い争い。
1月29日
皇太子は狩猟と称してひそかにマリーを連れて
マイヤーリンクにむかう。
そして運命の、翌1月30日。
侍従が施錠されたドアを破って室内に入ると、
朝の薄光に寝台に横たわるふたりの遺体を発見した・・・
『ルドルフ ザ・ラスト・キス』各国のミュージカルのワンシーン。
名曲ですね。
マリーは
貿易で財を成した
資産家の令嬢とはいうものの家柄は成り上がり男爵家にすぎず、本来王宮に出入りもできない身分。
ふたりの接点は無いにひとしいはずだったが、
社交的で人脈の広い彼女の母が
皇太子の従姉ラリッシュ伯夫人と懇意だったことから
運命が劇的に動き始める。
ラリッシュ伯夫人の手引きで逢瀬を重ねるふたり。
マリーは夢にまでみた憧れの皇太子殿下に夢中になり、
皇太子も自らを慕う乙女の純情に心うたれたことは想像に難くない。
・・・何冊かの本を斜め読みしましたが(笑)・・・
(彼女は、まるで『ロミオとジュリエット』のジュリエット姫そのままだなあ。)
と思いました。
現在ならばまだ高校生の年代。
現代のティーンエージャーが芸能界のスターや有名アスリートにあこがれるように
将校として軍に勤務する凛々しい皇太子に
恋焦がれたとしても何ら不思議でなさそう。
それがただの憧れですまなかったのは
むしろ悪因縁というべきか、
運命のいたずらとよぶにはあまりの激動。
実際にお目通りしてから正味4か月足らずの交際、
お互いを理解するには短すぎ、
またその必要もないほど恋に夢中だったのかなと思います。
『ロミオとジュリエット』は
出会って恋して結ばれて離ればなれになり、かなしい行き違いから
ふたりが絶命するまで、わずか5日間。
さすがに演劇よりは長いにせよ、
若さ、純情、あとさきかえりみずわが身を捧げてしまう熱烈な恋心
は重なってみえます。
世界のなかで貴方しかみえない
どころか
自分のことも相手のこともほんとうにはみえていない、
激しい恋の情炎
に身をやくことができるのも、若さの特権でしょうか。
(身を焦がす恋の炎がつきたあとに
のこるのが失望か、
幸運にも信頼と愛情かは、
人それぞれなので誰にもわかりません。)
いっぽうのルドルフ皇太子は、
政策や外交でことごとく皇帝と対立して
皇太子でありながら権力から遠ざけられ、
あろうことか反政府運動にも傾倒し、
結果とうぜん挫折し、
酒やモルヒネや女性関係に依存していた、
いわば鬱屈した貴公子
で、ロミオではなくハムレットに近いと感じます
(どちらも王子様だし)。
もちろんマリーは
政治的立場など斟酌するにはあまりにもおさなく、
憂愁の皇太子殿下の心癒したい優しさと恋情で
一途に慕っていたのでしょうか。
大胆なまでに素直な恋、
ひたむきで清らかな乙女心。
しかも可憐で
馥郁としたバラのつぼみのように美しかったのであれば。
マリーを思うたび
そのいじらしさ、
明日なき恋に怯まぬいさぎよさ、
死をも恐れぬ若さ・・・
いとおしさと切なさに胸しめつけられます。
マリー・ヴェッツェラ は ジュリエット なり。
と
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