Oct 14, 2006
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※この2~3日は、『ブログを本にする本』は少しお休み。




部屋に入ると、オヤジは眠っていた。

寝ているとは思わなかったので、
オヤジの寝姿を見た時、
何だか覗き見をしてしまったみたいで
ちょっと嫌な気持ちになった。


起こさずにいた方がいい。

そう思ったら目を覚ました。





寝惚けた目が開ききるより前に、
言葉を発する。



「来たよ。大丈夫か?」



横たわったまま照れ笑いをして、



「はは、参ったよ。」


「疲れてんだよ。」


「うん、そうかもな。」


五十を超えてから随分老けたような気がする。
何だか小さくなった。オヤジ。







休憩の間に、弟だいから留守電が入っていた。


『まあ大したことじゃないけど、




入院が大したことないとはね。
大したことあるから入院したんだ。
休憩中にお昼寝しようと思ってたのに。

すぐに電話を折り返すが、繋がらない。
病室なら電話は無理か。


こっちは繋がった。



「もしもし?」



「おお」



「だいから電話もらった。大丈夫か?」



「とりあえず大丈夫だ。」



「すぐ行くわ。どこ?」



「大久保。慌てんでもいいで。
当座、頼むこともないし。」


慌てずにはいられるか。
ミツの声が落ち着き払っているものだから、
それがかえって不安にさせる。


「なんも出来んのは分かっとるわ。
すぐ行く。」



電車の乗り継ぎを調べないまま、
私は職場を離れた。
新大久保と大久保を間違えて、
余分に電車賃を払ったが、それこそ大したことじゃない。








病室にだいとミツの姿はない。
着替えを取りに宿に戻っていた。



「症状は?」

ベッドに横たわるオヤジを見たのはこれで二度目。
8年前に見た切りか。
何度もこんな景色を見ていないのは幸いだ。




「前やったヤツと一緒だ。胃潰瘍だ。
出血性の。」




「血は?」




「出たよ。
昨日はそんなことなかったのにな。
午前中気分が悪くてな。
10時頃トイレに行ったら、芳しくなくてな。

これはマズイなあと思ったら貧血起こして
横になっちょったんだわ。

そげしたら、今度はムカムカして来て、
トイレに行くの間に合わんと思ってな。
バケツを持って来させたんだ。

そこでな。」



「吐いたと。」


「おお。
周りはみんな心配しちょったけど、
俺は吐いて随分楽になったよ。
救急車の中では鼻歌だったわ。ははは。」



はははって。

オヤジは笑う。
でもその力の無さが、何だか。


参った。


血を吐くまで働くなよ。
これだ、と思ったら遠慮なしなんだから。
自分にも。

何だか労しいなあ。オヤジ。

俺、33か。
オヤジ、55。
まだ若けえよ。

こうやって、ベッドの傍らで見てると、
俺が入院した時に、親として随分心配を掛けた気持ちが分かる。
12歳の時に1ヶ月入院したな、俺。
その時オヤジは34か。



参ったなあ。



まあ、買って来た『あしたのジョー』と
『ゴルゴ13』と『サイバイバル』で
ここ1~2日は凌いでくれ。

その先は退屈させねえから。





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Last updated  Oct 14, 2006 07:47:56 AM
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さとう4632

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