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2026.05.09
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 アシャは満足していた。


 もたらされる結果も、それによって噛み締める後悔も、考えることなく、初めて自分の全ての力を解き放った。


 世界を破滅させるための兵器と化した自分は、魔性にしか過ぎない。


 けれど、その自分を確実にユーノが屠ってくれる。


 最後の一滴まで力を搾り出し、ボロ切れのようになったらユーノを探せばいい。


 ユーノの剣の下に頭を垂れれば、速やかで安らかな死を導いてくれる。


 何という安堵。


 向かってくる気配に容赦なく炎を放つ。焦げ崩れる姿を何度も焼き払う。


 『太皇(スーグ)』の積み重なる記憶の中でさえ、アシャのような存在はいなかったらしい。『人』の姿を模した天の雷、終末を知らせる炎を溜め込んだ体を、あえてかつての記憶で探すなら、天空に浮かんでいたと言う巨大な道具だろう。


 その道具は空も地上も、『人』も太古生物も分け隔てることなく、凄まじい熱量で貫き灼いたと言う。


 放て、放て。


 これが終焉、美しく輝かしく、世界に君臨した『ラズーン』の末路。


 黒く焦げた大地に、命の燃え滓が灰色の塊として積もる光景の中、アシャは微笑みながら彷徨っている。


 何も残すな。


 この後の世界は、ユーノ達『人』の世界となる。


 ぎりぎりで生き延びられる数しか残っていないだろう。


 未来を脅かすような存在は、今ここで全て消滅させておかねばならない。


 ユーノを護る。


 ユーノが守ろうとする『人』を護る。


 遠く彼方に自分を呼ぶ声がした。


 懐かしい、甘い、切ない、愛おしい、大切で、かけがえがない、声。


『違うっ! そっちじゃない、こっち! 私だ! 私に向かって撃って、アシャ!』


 ああ、ユーノ。


 何と正しく的確にアシャの本分を望んでくれるのか。


「もちろんだ、ユーノ」


 微笑み頷く。


 ユーノのためなら、骨が折れ、肉を突き破り、ただの血肉の塊となろうとも、敵を屠ろう。


 全開にしたのに、ほんの僅かだが力が絞り切れなくて、アシャは煙る世界の中で立ち上がる。自分の中に燻る悪夢の炎を使い尽くそうと、内側から自身に炎を放とうとし……体から力が抜けた。


 ミネルバのように『運命(リマイン)』狩に世界を巡るはずだったのに、自身への過大評価だったのか。命が揺らぎ細く頼りなく小さくなっていくのが分かる。


『っ、アシャ!』


 ユーノの声が耳元で聞こえる。


「随分優しいじゃないか」


 自分を生み出した存在に苦笑いする。


「命の最後を、彼女の声で送ってくれるとは」


 満足感がなお広がる。


 深く柔らかく、重く静かな闇。


 アシャは微笑みながら沈んで行った。


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今までの話は こちら

次は新章、『新たなる国』の予定です。






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Last updated  2026.05.09 00:00:07
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