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2007年10月12日
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カテゴリ: 読後感想文




この読後感想文にはネタバレの記述が含まれています。

もしも、

これから読みたいと思って、

内容を知りたくない方は

この日の記事はスルーしてください。






あたしの好きな作家の一人に

宮本輝がいる。

「にぎやかな天地」という題のこの本は、

日本の発酵食品を豪華限定本として作りたい、

という依頼主から

編集・制作を請け負った主人公が

発酵食品の奥深さなどを通じて、

その面白さに引き込まれていく、という話だ。


発酵食品というものが人体に与えてくれるメリットなども

分かりやすく書かれているが、

特に、子どもに食べさせるものについて

考えさせられた。


よく考えてみると、あたしたちの食卓には

発酵食品があふれている。


主人公は、発酵食品を知るためにと、

自分でぬか漬けを作り始める。

新巻きサケの頭を香ばしく焼き、ぬか床につけると

4日ほどで跡形もなくなくなってしまうそうだ。

魚の煮汁を入れたり、

驚くようなものを入れることは知っていたが、

鮭の頭のことは、この本で初めて知った。



安く手に入る「花かつお」と呼ばれるかつお節は、

4つのパーツに切られたかつおを茹でて、

小骨や皮を取り除き、焙乾(ばいかん)する。

焙乾とはかつおを乾燥させて燻煙する事なのだが、

本枯れ節、と呼ばれるかつお節は、

ここからまだ手間をかける。

カビをつけて、かつおの水分をカビに吸収させる、

という工程をこなすのだ。

大体かびの寿命は20日くらいなのだが、

その後も2番カビ、3番カビとつけていく。

1番はじめは青かったカビも、

つける回数が増えるに従い、

だんだん茶色く、短いカビに変わっていくという。


芯のほうから完全に水分が抜き取られたかつお節は

割ると、中があめ色で、魚、というよりも鉱物だ。

叩くとカーン、というきれいな音がする。

そして、これだけ手間がかかって作られた本枯れ節は、

確かに、驚くほどうまい。


カビ、というと厄介なものだと思っていたのだが、

人間は長い歴史の中で、こうした利用法を

経験から学んでいった。

【枕崎産★全国送料無料】

かつおぶし(本枯れ節)2本・削り器(薩摩おごじょ)




夕食は

●あんこう鍋

 また新たな風邪を拾ってしまったようで、

 くしゃみの連発。

 体の芯から温まるには鍋物が一番。

 具は白菜・ニンジン・ごぼう・えのき・シメジ・

 豆腐・糸こんにゃく・ねぎ・ほうれん草・アンコウ。

 だし汁に酒とミリン・砂糖・味噌。

 隠し味に醤油を少々。

1011




今、技術の向上から、安価な本が大量に作られている。

自分が目指している製本技術で一本立ちをする、という

仕事の不安から、ゆるぎない信念に結びついていく過程や、

この主人公が生まれる前に

不慮の事故で亡くなってしまった父親、

祖母の平坦ではない悲しい運命と

その血脈などを横糸にして、

相変わらずの運命の不思議を絡めて綴られた本だ。


主人公が亡くした父親は、ある不慮の事故で

命を落とした。

結果的には父親が死んでしまった、

その原因を作った相手に対する

心のこわばりはいつの間にか解け、

その思いを昇華し、その家族と会い、話した部分や、

自分の中に新たに湧き上がった気持ち、

そして祖母の血脈、

めぐり合わせの不思議が違和感なく読めてしまうのである。



微生物のざわめきから、生と死、

死を恐れていた人間が、

死を恐れなくなった悟りを書いた古代ラテン語の文句、

いつ読んでも深い含蓄に納得してしまう記述が

たくさん散りばめられている。


あたしは

人生の最後に死が待っているものではなく、

一枚の大きな布の上に

死が散らばっているんだと思っている。

だから、どこかを歩いて

たまたま死にぶつかってしまう、という事が

ありえると思っているので、

まだ30代だが、

いつ死んでもおかしくないと思っている。




「死というものは生のひとつの形なのだ。

この宇宙に死はひとつもない。

ならば私は不死であるはずだ。」



この命題が

死してもなお、発酵という、

形を変えた生へと導かれているのかもしれない。








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最終更新日  2007年10月12日 13時11分05秒
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