PR
Category
Free Space
Freepage List
夏休みなのに、空いた阪神電車の中。
窓の外には、やわらかな光を返す瀬戸内のエメラルドグリーン。
指先でなぞるスマホの画面。短い言葉を選びながら、どこか少しだけ迷っている。
サリーゆりこ(61歳)。
還暦を過ぎているとは、誰も気づかない佇まい。
揺れる車内で、過去と今が重なっていく。
あの人と別れて、少し軽くなったはずなのに。胸の奥にはまだ、名前のつかない感情が残っていた。
だから今日は、少し遠くへ行ってみる。
あの楽しかった頃の自分に戻るために。
その日、彼女は淡いブルーの リネンカーディガン を肩に掛けていた。
冷房の効いた車内でも、その柔らかな素材感が妙に似合っている。
足元には、歩きやすそうな 厚底サンダル 。
若作りではない。だが、“今の自分を楽しむ女性”だけが持つ空気感がそこにはあった。
途中で降りた小さな港町。
海沿いのカフェから聞こえてくる古い洋楽。
ゆりこは窓際の席に座り、ゆっくりアイスコーヒーを口に運ぶ。
スマホには、送信しかけて消したメッセージが残ったままだった。
「元気にしてる?」
たったそれだけの言葉なのに、送れない。
カウンター横には、小さな ワイヤレスイヤホン が置かれていた。
昔の曲を聴きながら海を見る時間だけは、誰にも邪魔されたくなかった。
窓の向こうを走り抜ける車。
静かな港。
そして、ゆっくり流れていく夏の時間。
若い頃には気づけなかった“何もしない贅沢”を、彼女は少しずつ覚え始めていた。
夕方。
オレンジ色に染まり始めた海辺を、ゆりこはゆっくり歩いていた。
潮風で揺れるショートヘア。少しだけ細く見える背中。
だけど、その横顔はどこか晴れやかだった。
「まだ、ちゃんと笑えるじゃない」
誰に聞かせるでもなく、彼女は小さくつぶやく。
遠くでは、子どもたちの笑い声。港には、ゆっくり帰ってくる小さな船。
過去は消えない。でも、人は少しずつ前へ進める。
そんな当たり前のことを、61歳の夏が静かに教えてくれていた。
他の作品も一覧で見たい方はこちら
【美魔女ラボ】エレガント聖子、ミスティ… 2026.05.14
【美魔女ラボ】カミーユ紗和 No.026|箱根… 2026.05.10
美魔女ラボ】シルヴィア麻由 No.025|海辺… 2026.05.10
Keyword Search
Calendar
Shopping List