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2月14日迷っている。二人とも「こなす」ほど器用ではないのはわかっていた。だからどっちとも10時にした薄氷のようなショコラ。安心感のあるチョコレート。ゆっくりと髪をとかして、めずらしくアップにする。鏡にむかって上目遣いになった自分の目に、気持ちが、見えた。「10時なんて時間にごめん。」「丁度、オレも忙しくてかえってよかった。」「こないかと、思った。」「どうして?」「あなたはいつも、大人でオレを振り回して、それでも余裕だから。」私は、わらった。「そう見えてしまうところが、子どもなんだよ。」相手を促して、ヒールを響かせた。「どこ行くの?」「チョコレートショップ。買い忘れたの。だから、いまから買うの。」「えー、でももうこんな時間じゃ空いているところなんでないと思うけど・・・」それでも強引に先を歩き、あのブティックのような店の前で私は止まった。「こ、このお店って、すっげー高いよ。ありえない値段だし。いくらなんでも 衝動買いには大胆すぎるよー。」私は目の端だけで笑って、ドアを開けた。クローズとなっているドアを堂々と開けた。「いらっしゃませ。お待ちしていました。」あの男は、表情ひとつ変えずに、丁寧に接してきた。わずかに目を細めた抑えた、感情の表情がとても官能的。多分ひとりなら、すぐにカウンターを越えてしまいそう。「チョコレートが欲しいんです。ショコラではなくて。チョコレート。 今の私と、この彼に合いそうなチョコレート。」男はすこし考えて、一つのショーケースからショコラを出して、しばらく背をむけた。「どうぞ」だされたものはホットショコラ。一口飲むとほろ苦く、そしてとろけるように甘く、最後にピリッとした刺激。「うわ、これさいごに辛いよ。」男は満足そうに、一枚のカードを差し出した。「このメニューの名前はチョコレートラブです。」苦く、甘く、刺激的。もう2度と名店と言われているこの店には足を向けることはないだろうけど、いいお店って、あした同僚に紹介しよう。私は、チョコレートの男と店を出た。「大人な店しってんだなー、ありがとう!でもさ、なんであんな時間に開いていること知っていたの?」「さあ、ね。」私の選んだ男はチョコレート。期間限定でしか手に入らない、焦燥感に駆られた恋はもういらない。「ね、そこのコンビニの新製品のチョコ、おいしんだって?買って帰ろうか?」「いいね、ついでにココアの素も買っていい?」「うん、いいよ。」ホットショコラはココアでいい、ショコラはチョコでいい。あたたかいチョコレートの男の手のひらを握り返して、私はすぐ手に入る甘いチョコレートを口いっぱいにほおばった。<了>
2005.02.14
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2月13日私の手には、ショコラの男の携帯番号が握られていた。14日の日に、あなたのためだけにショップを開けています。夜の10時にきてください。というカードが冷蔵庫のなかのショコラの箱の中に忍ばせてあったのに気づいたのは、ついさっき。顔が火照っているのは、強いフランボワーズリキュールの入ったショコラを立て続けに2粒食べたせいだけではないことは、わかっている。ゆっくりとワードローブを眺める。ストレッチのきいたモカブラウンのスーツをとりだす。ウェストが太ることを許さないデザインのそれは、いつも私が緊張したいときに身につける服。新しいストッキングをおろして、ふくらはぎに沿わせる。こまかなダイアクロス柄が浮き上がってくる。ヌメ革の仕事バッグをつかみ、わたしは仕事にいく。わたしはショコラを身にまとって街を歩いていた。「なんかきょう、すごくセクシーだね。接待でもあるの?」のんきにチョコレートの男が聞いてくる。「たまにはね。」「なんか、オレ急に子供じみてみえちゃうよ。一緒にあるいているとつりあわない。」チョコレートの男はむくれた。「しょうがない、だって君は学生なんだし。はやく追いついてきて。」さらにチョコレートの男はむくれた。「あしたさぁ、ちゃんとチョコくれるよね。オレ、ひとつももらえないんじゃ、カッコわるすぎてサークルいけねー。」私は、あいまいに笑って、そっとチョコレートの男の髪の毛の匂いをかいだ。「いいにおい」カカオの香りだけがいいにおいってわけでもない。「あした、ちょっと遅くなるんだ。10時でいい?」そういいのいいのこして、通勤電車に磨いたハイヒールを押し込んだ。
2005.02.13
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2月12日チョコレートの男は無邪気だ。ジャンクフードも大好きで、とにかくお腹が一杯なることが彼の幸せ。入ってしまえば、一粒500円のショコラも、一枚80円の板チョコも一緒。なんだか、デリカシーがない。昨日までは、その無邪気さが、愛しくてもっと一杯食べなよ、ってせかして笑っていたのに。私は、パンドラの箱になった冷蔵庫をあける。一粒500円する上等な男の手が作り上げた、最高級のショコラが冷たい香りを漂わせてたたずんでいる。昨日、食べた琥珀色のクリームのショコラはとてつもなく美味しかった。口の中でつかみ所なく、溶けていった。かすかにラフランスの香りがぬけるようなシャンパンのクリーム。同じ冷蔵庫には、製菓用のチョコレートもいる。とろかされて、私の思う恋の形に固められるのをまっている。アーモンドダイスとココアパウダーもある。奮発してかったカルピスバターもある。でも、きょうは台所には立たなかった。でも、きょうはショコラの箱も開かれなかった。
2005.02.12
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2月11日その男の手は、いつも甘くほろ苦い香りがしていた。男は、チョコレート専門のパティシエで、ショコラティエという職業をしているらしい。昨日、わたしがひきつけられたショコラの本店で働いていると、言った。私にしては大仰な店だった。チョコレート色の店内は、高価なセレクトショップのような内装で、完璧な温度管理されたショーケースに一粒ずつショコラは並べられていた。「何か、気に入ったものを試食してみませんか?」ふいに声をかけてきた、その男は昨日のカカオの香りの男だった。「昨日の・・・」「また、お会いしましたね。当店のショコラが気に入ってもらえましたか?」男はゆっくりと一粒、ショーケースからショコラを出した。「これ、ヴァレンタイン限定のものです。食べてみてください。」磨き上げられた、デコラティブな銀皿にショコラを載せて、器用な手さばきで二つに切り分けた。とろりとした琥珀色のクリームが現れた。「いい香り・・・」私は、ショコラを切り分けた男の手の香りに、そう言っていた。スマートで、いい声。大人で、静謐。私が、求めていた理想の男だった。「チョコレート」をあげようとしていた相手が、急に色あせた。いけないと、思った。チョコレートの男は私に平穏で安定した時間を与えてくれる男だった。ショコラの男は、謎すぎて苦くて、甘くて、私には高級すぎた。
2005.02.11
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2月10日去年は、駅ビルの雑貨屋の輸入チョコレートを大量に買っていた。デパートのとってつけたようにできた、特設コーナーの上等なチョコレートには目を向けなかった。今は、上等なチョコレートのことをショコラと言うらしい。おしゃれだし、フランス映画のよう。自分用に買うのもいいわけだ。今年は、そのショコラを買おうと思う。もしかしたら、真夜中にとろりと湯煎することになるかもしれない。私のショコラをあげたい相手は、どちらかというとチョコレートの方が似合うかもしれない。それも、プラリネとかリキュールとかはいっていなくて。ナッツとかパフがみっしりとはいったボリュームのあるようなもの。本当は、うすーいカードのようなカレドショコラをぱりりと噛んで、エスプレッソを一緒に味わうようなスマートな人がよかったはずなのに。多分どんなに高級なショコラも、ばりばりとペットボトルの緑茶と一緒に一気に食べてしまうのを見る羽目になるのだ。私は、かすかなため息と一緒に、飾り立てられたショケースに向かった。甘く、濃いカカオの香りが漂う売り場で、つややかにテンパリングされたショコラがシンとケースに収まっている。そのひとつに引き寄せられた。ひときわつやつやとして、一目で上等で途方もないほどに手をかけられたものとわかった。「そのショコラが気に入りましたか?」背後から、カカオの香りのするような声がした。
2005.02.10
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すこし仕事もきまって落ち着いたので、短編からリハビリしようと思います。今回は14日までのチョコレートをめぐる、ちょっと切なくも痛い恋のお話にしようと思います。よろしくです!
2005.02.09
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無事円満退社できそうだ。今の会社の後ろ向きな仕事に憂鬱になって仕事を探し始めて思った。結構、育てられていたんだなって。案外スムースにいった転職活動も、しっかり自分の専門分野を持たせてくれて、男女の差別なくきつい現場にいれてくれた上司のおかげかも。ひとりひとりはみんな良い人。でもやはりお金や売り上げがからむと、うまくいかなくなることもある。上司には親のように心配してもらったり、しかられたりで申し訳なく、もったいないくらい。感謝しています。新しい職場でも感謝の心をわすれないように、育ててもらった力を生かしたいと思います。そんな殊勝になった一日でした。たくさんの流れが押し寄せてきてるとおもう。また流されて、困ったら今度は、ちゃんと助けを求めようとおもう。自分で抱え込んで、具合悪くなるようなことはもうしないようにしよう。あたらしい、人生の会談で思いました。
2005.02.02
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