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*****お断り*****ちょっと怖い話になっているので(初めだけ)、怖い話が嫌いな人は読まないで下さいね。*****本編はここからです*****その日は雨が降っていた。午前零時になろうとする頃、私は地下鉄の5番出口の階段を地上に向かって昇っていた。出口には小さな屋根が付いているだけで、最後の一段を踏んだ時には雨が靴を濡らした。エルメスのトートバッグから折りたたみ傘を出して歩き始める。駐車場までの近道の細い道を右に入った時から私の記憶は途絶えていた。事の発端は午後11時半まで遡る。「かったりーなぁ・・・。」亮二が呟いた。「なんか、楽しい事ないっすかね。」隼人が亮二の言葉に乗って言った。龍次は黙ったまま降り続く雨をただぼぅっと見ていた。そこに、雅史と隆志がやっと合流して来た。「わりぃ。遅れて。」雅史はそう言って空いている席に座った。隆志はニヤニヤ笑っているだけで雅史の隣に座った。ここは地下鉄の5番出口から横断歩道を渡った先にあるファミレスで、隼人を除いて高校を卒業しているのだが、進学も定職にもつかず2年を過ぎてもプラプラと毎日を過ごしているのだ。今日は週末で、高校時代からの仲間である隼人も加わっていた。この5人は、札付きの悪、と言う訳ではないが、万引きなどのそこそこの悪事は働いていた。そんな5人だった。「今日は雨まで降ってるしよ~。かったりーよな。」「街にナンパ、って気にもならねーしな・・・。」「金もあと少ししか残ってねーしよ。」口々にぶつくさと言い合っていた。今まで黙っていた龍次が口を開いた。「やるか。」その一言に4人の視線は龍次に集中した。隼人が聞く。「やるって、どうやってやるんっすか?」すると龍次は人差し指でこっちに寄れと皆に合図した。4人は龍次に寄って小さな円になった。「駅から出てきた奴がターゲットだ。」と5番出口にチラリと視線を送った。「俺が車で待っているから、駅から出てきた奴で目ぼしいのの後を追って、後ろからバッグだけひったくるんだ。顔を見られるな。」4人はごくりと唾を飲み込んだ。「失敗したらとにかく逃げろ。成功したらその金で今夜は遊ぼう。」こんな単純な計画から5人はファミレスを後にした。龍次は道路の脇に黒のシーマに乗って待っている。助手席には亮二が、改札口には隼人、5番出口には雅史と隆志がスタンバイしていた。目ぼしそうなターゲットの後を隼人がつけ、出口で雅史と隆志に合流し、機会を伺って引ったくり、龍次と亮二の待つ車までダッシュし逃げる、と言う設定だった。財布なんて開けてみないと当たりはずれは分からない。引ったくりは今まで3度しかしたことはないが、金持ちそうな身なりのおやじでも1万も入ってなかったことがある。5人はそう思っていた。最終電車がやってきた。隼人はまばらに改札口を出て5番出口に向かう人達を一瞬でターゲットを絞った。自分達とたいして年も変わらないくらいのエルメスのトートバックを持ったOL風の女の後をつける。5番出口まで階段を昇ると女はバッグから折りたたみ傘を取り出してさして歩き始めた。3人は気付かれないように女を囲んでチャンスを伺った。目配せするとバッグ側にいた雅史が女のバッグをひったくった。ところが、しっかりと肩にかかっていたせいか揉み合って女は転んだ。転んだ女と雅史はしっかりと目が合った。雅史は心臓が止まる思いでバッグを引ったくり、隼人と隆志も顔を見られたと思って無我夢中で女も車に乗せこんだのだった。私はぶつぶつと話し合う複数の声で意識が戻るのが分かった。「・・・・どーするんだよ。」「やっちまおうか?」「・・・そんなこと。」「やばいぜ・・・だけど・・」その声は次第にはっきりしてきた。そして、顔面に痛みも感じ、視界がはっきりしないと言うのも分かってきた。「顔見られたんだろう?見られるなって言っただろう。しかも、こいつ同級生じゃねーかよ!」「分かんなかったのかよ?」「あ、雨で傘さしてたし。顔も最初は分からなくて。」「免許書見るまでは俺もわからなかった。」「俺も、先輩達の同級生だなんて分からなくて・・・。」どうやら私はこの人達と同級生らしい。でも、こんな人達は私は知らない。そう思っていた。「雅史、お前がしくじったんだからお前がどうにかしろ。」雅史?「そうだ、お前の責任だろ。」「ま、待てよ。龍次。やろうって言い始めたのはお前じゃないか。亮二だって、車で待ってるだけでたいして何もしてないくせによ。俺だけに責任押し付けんのかよ。」龍次・・・亮二・・・。ああ、そう言えば柄の悪いないそんな名前の生徒がいた気がする。私はぼんやりとする頭で、顔面の痛みを堪えながら考えていた。「でも、このままじゃこいつ警察に行ったらやばいぜ。」「隆志。そんな事はさっきから分かってる。」「口封じの為に、みんなで犯っちましましょうか?」5人は隼人の言葉に黙り込んだ。手足はロープで縛られており、口にはガムテープが貼り付けられて声も出せず身動きできなかったので、私は逃げ出したい気持ちで殴られて腫れあがった痛い顔と血の味のする口でぐっと歯を食いしばった。どうすればいいのだろう・・・。自分の状況がだんだん飲み込めてきた。出口を出て、こいつ達にバッグをひったくられそうになって揉み合いになった。その後、顔面を殴られて無理やり車に乗せられたのだ。私はその時に気を失ったのだろう。そして、ここはよく夏になると肝試しに行こう、と話に出るあの有名な廃墟である事も分かった。以前は病院だったと言う噂だ。話に出るだけで、本当に幽霊が出ると噂されているこの廃墟は近くを通るだけで実際に中に入る人は少ない。しかし、今は幽霊の事よりも自分の身の危険の方のが恐ろしかった。そんな事が頭を駆け巡っていると沈黙を破る声が聞こえた。「駄目だ。」「り、龍次、何が駄目なんだよ。」「この女、逃がしたら俺たちのことしゃべるだろう。」「じゃ、どうすればいいんだよ。口封じすれば大丈夫だろうよ。」「逃がして口封じになんてなるかよ。」「龍次、お前何考えてるんだよ。」「殺るしかないんじゃねーの?」私はその言葉を聞いて体が硬くなった。「り、龍次。それもやばくねーか?」「何びびってんだよ、亮二。お前だってさっきまで俺と一緒になって雅史を攻めただろうが。雅史、責任とって殺れ。」「何言ってんだよ。そんなの出きる訳ねーよ!」「そ、そうだよ龍次。」「じゃ、隆志お前が代わりに殺れ。それとも隼人か?」「落ち着けよ。本当に殺っちまったら俺たち務所行きだぜ。」一瞬の沈黙を破るように龍次の怒鳴り声が聞こえた。「うるせーな!腰抜け野郎!どけ。」そう言うと足音がだんだん私に近づいてきた。私は叫ぶ事も逃げ出す事も出来ず、体をくねらせるだけだった。「お前も、さっきから聞こえてるんだろ?」と龍次は私の頭を足でぐりぐりと踏んだ。「こんな廃墟、誰も来やしねーんだよ。ロープで首絞めて、あそこの鉄筋に首吊り自殺みたいにしておいたって発見される頃には白骨死体で身元不明なんだよ。どいつも、こいつもびびりやがって。お前等がへまするからこんな事になったんだろーが!」ロープが地面をする音がする。私は恐怖で狂いそうだった。私はこんな事で、こんな奴等に殺されて死ぬのだろうか?仲間達が止めているにもかかわらず、龍次は振り払い私に近づきロープを首に巻いた。私は、精一杯もがいたが身動きも出来ず、声さえ出せずにただ恐怖におののいていた。 <つづく>続きが気になると思ったらランキングにあなたの1票をよろしくお願いします。励みになります!↓人気blogランキング*****ちょっと一言*****以前ショートストーリーでこのシリーズやっていたのですが、黒も前々から書きたいな~と思っていて書いてみました。ちょっとやばい展開ですが、興味のある方はつづきも読んでみてください。
2006/03/20
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長いこと続いていたお話、やっと終わりました。(^^;;もっと早く終える予定だったのですが、ダラダラとやっていて時間かかりました。途中放置ブログ化もしたし、さんざんだな。(笑)ラストが「え~?」って言われそうですが、自分でも「え~?」です。でも、シリーズ的に出会いから別れ、その後、って流れなので、こんなん出ちゃいました!と言う感じなのですが・・・。でも、誤解の無いように言っておきますが、別に病気を持っているからと言ってこのお話のようになってしまう訳ではありません。世の中には、どんな強い縁なのか困難を乗り越えて結ばれる方、そして今も支えあって過ごしている方々もいらっしゃるのですよね。あくまで想像の世界のお話なので、その点はよろしくお願いします・・・。自分だったら、どうなのかな~、と言う素朴な考えから書いていたのですが、みなさんだったらこんな状況だったらどうするのでしょうね?■惹かれ始て、肉体関係も持った時に相手に不治の病であると告げられる。見た目は普通の人とは変わらないがかなり重症で、最悪な結果も想像できる。■相手は口にはしないが、自分の事を心から思ってくれていることが分かる。簡単にあげるとこの2点かな~。私は多分かおるみたいに、お互いの気持ちを言わないまま続けて終わることは無いと思うのですが・・・。これが、女性が病気だったら男の人も押して、めでたくゴールインだろうな~などと思ったりしました。男性が病気だと、なかなか積極的になれないだろうし、恋愛においても中々進展しぬくいのでは?と思うのですが、何故かと言うと、やはり女はどこかで男にリードして欲しいと思う人が多いと思うからです。言葉やちゃんとした態度を好む女は、いくら相手の気持ちが分かっていても時間が経てば曇って見失ってしまうのではないか、と思うわけです・・・。別に病気でなくても何か大きな障害で良いのですが、直接命にかかわる「病気」の方のがピンときそうだったので、よく病気を使ってしまいます・・・。ただ単に他の障害が思いつかなかったとも言いますが・・・。それは反省・・・。あと、かおるの気持ちについては、読む人のご想像にお任せします。ただ、種明かしを一つすると、土曜のコンパですが、それは一番最初のコンパではありません。第一話では28歳で、第4話では25歳ですよ~。本当にコンパに行ったのか、行かなかったのか、他の男に交際を申し込まれているのか、そうでないのか、それは貴方のご自由にしてくださいませ☆てな、訳でやっと終わってやれやれです。(^o^)では、また。ごきげんよう!
2006/03/10
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俺は、かおるからリモコンを取り上げてすぐにチャンネルを変えた。咳払いをして、「今日のかおるは少し変だよ。ここは、もう出よう。」と言った。「私、いつもと同じだよ。変なのはそっちのほうじゃない。」ドキッとした。「お、俺だっていつもと同じだよ。」「嘘。」俺は頭を掻きながらうつむいた。「ねぇ。こっち向いて。」と、かおるは俺の顔を両手で優しく持って上に引き上げた。そして、唇まで俺を引き寄せ久しぶりのキスをした。かおるの柔らかく薄い皮膚に、俺の栄養状態の悪いガサガサした唇を合わせるのが申し訳なく思った。しかし、そんな雑念も次第に溶けて無くなっていった。今まで抑えていたものが全て崩れて行く様だった。ここまで来てもう後戻りは出来なかった。俺は次の瞬間かおるをベッドに押し倒していた。柔らかい感触に俺は溺れて行った。シャワーを浴びて無言のまま服をかおるは着ていた。その横顔は何も無かった様に冷静に見えた。ホテルを出ると以前と同じように日は暮れていた。自然に振舞うかおるを見ていると、ホテルでの出来事も何でもなかったように思えたりした。だんだん俺も冷静になり、何故かおるは俺に抱かれたがったのだろうか、と考え始めた。好きでも無い奴にわざわざ抱かれるはずは無い。そう思うのだが、また以前のようにただ楽しいだけの時間はもう過ごせないと感じていた。都合のいい時だけお互いに会えればいい関係にはなりたくなかった。それだけかおるの事を大切に思っていた。だが、あの時の俺は自分が思うよりも臆病だった。助手席でゆったりと寛いでいるかおるに、思い出したように自然に一番聞きたかった土曜の事を聞くことにした。これを聞かなければ俺の心は晴れない。「そういえば、土曜はどうだったの?」さり気無く聞くとかおるは「何のこと?」と言う様な顔をして俺を見た。「いい奴いたの?」かおるはぐっと両手を握って膝の上に置いた。その仕草が不自然に思えた。ほとんど車の止まっていない本屋の駐車場に着いた。入り口から一番遠い場所に車を止めた。かおるは何か考えているようにも見えたが、ずっと黙っていたので俺はこの2週間でやはり俺ではない他の男に惹かれているのだろうと思った。「いいよ。正直に言って。いい奴いたんだろ?」俺はかおるの反応を見て、今日の彼女の振る舞いに腹が立ってきた。かおるはうつむいて小さく頷いた。「付き合って欲しいって言われてる。」ハッキリ言われるとやはりショックだった。俺は気を取り直して「よかったじゃないか。」と言うのが精一杯だった。一瞬かおるの肩がピクンと動いて今度は俺をしっかりと見た。「彼と付き合うことになると思う。」そう言われて俺の胸は張り裂けそうだった。けれど、俺は何も言えずに、ただその事実を受け止める事しか出来なかった。かおるは俺をしっかり見つめたままでポロポロ涙を流しながら笑って「だから、今日でもう会うのは最後ね。」と言った。俺は言葉も出せずに頷くだけだった。そして助手席のドアをゆっくり開けて顔を歪めて無理した笑顔を最後に残して俺の元から去って行った。かおるの車が駐車場から消えて、俺は一人っきりになった。かおるが去ってから俺は一人で泣いた。子供の頃、かくれんぼをしていて、ずっと見つからなかった事があった。あの時も一人で狭い茂みの中で泣いていた。腹の減った鬼の俺は見つけたはずだったのに、なぜ泣いているのだろう?ふと、そんな事が頭に過ぎった。--------------------------------------------------最近、かおるの事を思い出す事が多い。かおると出会った季節だからだろうか?もう、1年経ってしまったのだ。俺達はあの日を境にぷっつりと連絡を取り合わなくなった。俺は、まだかおるの電話番号を消せずにいる。何度かけようと思ったことだろう。しかし、今更連絡を取ったところでどうなるというのか、と言い聞かせて過ごしてきた。今日は、3ヶ月の入院生活から開放される日だ。かおると過ごしていた頃は、不思議なくらい症状が軽かったのだが、やはり俺の病気はしっかりと巣くっていた。症状が悪化して入院せざる得なくなった。点滴だけの生活はやはり辛い。絶食なのに、入院中何度かナースに食事はどれだけとったのかと間違えて聞かれるのは辛いものだ。入院慣れした俺はナースステーションに寄って礼を言い病院の玄関を出た。外はむっと来る暑さで、暫くすると汗がじんわりと額から出てきた。真っ青な空に、勢いよく入道雲が浮かんでいる。病院の花壇には膝丈ほどのヒマワリが元気よく咲いており、セミ達は短い夏を精一杯生きる為に鳴いている。入院中によくかおると最後にあった日の事を考えていた。どうして彼女があんな行動を取ったのか。もしかしたら、あれは彼女の最後の賭けだったのかもしれない。あの時、俺の本当の気持ちを彼女にぶつけていたら・・・・。そんな考えがぐるぐる頭の中を廻っていたが、もう遅いのだろう。かおるは今どうしているのかは全く分からない。消せずに残っている電話番号ももう繋がらないかもしれないのだ。そう思い、俺はバッグの中から携帯電話を取り出してかおるの番号を躊躇わず削除した。それは、今までの自分との決別でもあり、今までの湿っていた心に新しい風が吹で気持ちが良かった。 <おわり>続きが読みたい・面白いと思ったらクリックしてね!励みになります!↓人気blogランキング*****ちょっと一息******やっと終わりました!
2006/03/10
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土曜の朝、仕事が休みでやる事の無い俺は、何となくイライラしていた。ぷらぷら街へ出かける気も出ずに、だらだらと家で過ごしていた。しかし、時計ばかり気になっていた。夕方になって、イライラはピークに達した。かおるに電話して今から会おう、と言いたい気持ちだった。それも出来ないから一人でイライラしていた。何となく腹もチクチク痛みを感じる気がした。そんな土曜を過ごして2週間過ぎた。俺から連絡するのもいやらしい気がしてかおるに電話出来ずにいた。でも、どうして彼女からの連絡が無いのかよく分からなかった。もしかして・・・と考えるのが嫌だった。そんな事を考えていた、その日の夜携帯が鳴った。かおるからだった。「もしもし。久しぶりだね。もう、かかって来ないかと思ったよ。」電話に出るなり、少しばかりの皮肉を込めて言った。「うん。ちょっと最近忙しかったから。」もしかして、が、やっぱりそうなのか?に変わる。「明日ね、私休みなの。久しぶりに会いたいと思って電話したんだけど。」一体どういうことなのだろう?今まであまりかおるの方から「会いたい」と言う様な言葉は少なかった。「いいよ。俺も久しぶりに会いたいと思ってたし。」電話は手短に用件を済ませる程度で、明日の約束をして切った。気になって睡眠不足の瞼をこすりながら、いつもの本屋の駐車場に着いた。約束の時間の2時よりも少し早い。本屋に入る気も起こらず車の中で待つことにした。2時丁度になった時、携帯が鳴った。かおるからだった。時間通りに来るのも珍しいな、と思った。その時、いつもと違う空気を感じて緊張してきて乾いた声で言った。「もしもし。」「もしもし。着いたよ。」「俺、今日は駐車場にいるよ。」「うん。分かった。」携帯を切って数十秒でかおるが現れた。かおるはいつものように助手席に乗り込んできた。「今日はどのくらい待った?」「待ってないよ。今日は時間通りに来てくれたから。」そう言うと、あはははと笑っていた。久しぶりに会ったので、かおるは機関銃のように話した。主に職場の話で、最近ずっと忙しかったとの事だった。でも、俺が聞きたい話ではなかった。かおるの様子も核心部分を避けているような感じだった。しびれを切らしたのは俺の方で、話し続けるかおるを制して今までずっと聞きたかった事を決心して聞こうとした。ところが、その前にかおるは屈託の無い笑顔でこう言ったのだ。「ね、ホテル行こう。」聞くチャンスを俺は失った。それとも、かおるが俺に与えなかったのか。しかも、意外な言葉を聞いて混乱さえした。「かおる、ホテルはよそう。」何とか俺は振り切ったつもりだった。しかし、今日のかおるは少し違っていた。「どうして駄目なの?友達だから?そう言う所は行っちゃいけないの?」強気なかおるにびっくりした。本来なら、女性からの誘いを断るなんて失礼な事だ。けれど、これ以上お互いに傷つきたくなかった。いや、お互いにと言うよりも、後々考えてみると俺自身傷つくのを過敏に恐れていたのかもしれない。流させるままに俺は車を走らせホテルに入っていった。駐車場のINのビニールシートのカーテンがフロントガラスに少し当たった。日曜の昼間だが、結構車が入っていて駐車するのに時間がかかった。階段を昇ってフロントに行くと2部屋空きがあり、かおるは迷わず安い部屋のボタンを押した。以前と変わらない行動に少し笑ってしまった。部屋のドアを開けると「ただいま~」と言うのも以前と変わらない。変わらないかおるを見て何だかほっとする俺がいた。「カラオケ歌いたかったの。」部屋に入るとマイクをセットしてペラペラとページをめくりながら選曲し始めていた。かおるは流行の曲を歌いたいだけ歌って冷蔵庫の中からスポーツドリンクを出してゴクゴクと飲み干した。「あ~、すっきりした!ごめんね。私ばっかり歌っちゃって。」「別に構わないよ。」そう言うと俺はリモコンを取ってTVのチャンネルを適当に変えた。かおるとは、もうsexはしないと決めていた心がこんな密室に2人きりになって揺らいでいたのを何とか誤魔化そうとして視線をTVにやった。「今日は土曜だしね。こんな時間にやってるって言えば再放送のサスペンスくらいじゃない?」と言って背中から覆いかぶさるようにかおるは俺の右手のリモコンを取ろうとした。背中に当たる柔らかい感触が俺をますます狂わせる。リモコンをかおるが取り上げた瞬間、俺の指はチャンネルボタンを滑るように押すとケーブルテレビのアダルトチャンネルに画面が変わり、お互い一緒に「あっ。」と小さく呟くと、ますます俺は気まずくなった。 <つづく>続きが読みたい・面白いと思ったらクリックしてね!励みになります!↓人気blogランキング*****ちょっと一言*****やっと終われそうと言いながら、前編だとぉ~?!
2006/03/10
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時が止まってしまったかと思うくらい見つめ合った気がした。「そんなこと、本当に出来ると思うの?」かおるにそう言われてはっとした。「そうした方のが、かおるの為にいいと思う。」「なんで、なんでそんな事言うのよ。」俺は本当はかおると一緒にいたい。けれど、きっとそれでは不幸だ。本当は、俺の子供を産んで育てて欲しいと思う。そう思うが、今は病状が安定しているが、この先病状が悪化して仕事にも行けなくなったら、かおるに頼らなければならなくなるだろうし、自分自身どこまで生きられるのか分からないし・・・。かおるも判っていると思うが、この先根治治療が確立されない限りいつまでも病気と付き合わなければならない。傍からは病気と上手く付き合えているように見えても、心の中はいつまでも葛藤して苦しいのだ。病状が悪化して入院するときなどは最悪だ。世の中にはいろいろな病気があるが、何ヶ月も絶食する苦しさは当の本人でなければ分からない。その苦しみを全て取り除く事は無理だ。支えになって欲しいと思うが、かおるのような人が傍にいたら、俺はまるっきり甘えきって、お互いに駄目になってしまうのではないか、などとも思ったりするのだ。考えすぎかもしれないが、慎重にならざる得ないのはやもえない事だ。もっと早く出会えていたら良かったのに・・・と思う。病気になる前に、そうだな近所の幼なじみとかだったら良かったのにな、等と思った。俺は、そんな気持ちを心の中でぐっと堪えて言った。「俺よりも、もっといい男のがいいと思う。かおるに幸せになってもらいたい。」かおるは泣いた。もともと小さい体をきゅっと丸めて、もっと小さく見えた。あの日、かおるはやはり何も言わずに歪んだ笑顔を残して去って行った。俺は、その日から、もう絶対にかおるに連絡しないと自分に誓った。ところが、翌日から毎朝かおるからメールが届くようになった。「おはよう。元気?」そんな一言のメールだったが、心が温かくなった。暫く、そんなメールのやり取りが続いた。そして、どちらからとも無くまた会う事になった。あんな事を言ってしまったのに、そう言ったさり気無いかおるの接し方にはとても感謝した。いつものように、俺達の中間地点の本屋で待ち合わせをした。しかしホテルには入らず、車の中でいろいろ話した。たわいも無い日々の出来事を報告しあっているだけだったが、楽しい時間だった。そんな事が続いたある日、「今度ね、友達にコンパに誘われたの。」とやや困惑気味にかおるが言った。俺は動揺を隠せなかった。「そ、そうなん?いいじゃん。行って来ればさ。」心にもない事を言うのは辛かった。「うん。そう言うなら行ってこようかな。」「行ってきたら、報告しろよ。」そう言うとかおるは笑っていた。でも、少し悲しそうだった。あの時、俺は自分の事ばかりで、かおるのそんな些細な表情に気付いていなかった。かおるは今週の土曜日に行って来るね、と言ってバイバイと手を振って去っていった。俺は、取り残されたようで胸にぽっかり穴が開いてしまったような気がした。 <つづく>続きが読みたい・面白いと思ったらクリックしてね!励みになります!↓人気blogランキング*****ちょっと一言*****次が最終話になります。やっと終われそう・・・。(汗)
2006/03/06
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俺は、あの日を境にバランスを失っていた。かおるはあまり以前と変わった様子はなかった。穏やかで、聞き上手で、どこまでも甘えさせてくれるような錯覚させしてしまうほどなのだ。かおるの幸せを考えると、俺みたいな奴とはもう会わないほうのがいいと思う気持ちと裏腹に、すぐに声が聞きたくなった。以前は誰でもよかったのが、今はかおるじゃなきゃ駄目だった。ただの、鼻たれ小僧の甘え虫になっているようで、またジレンマに陥って、でも最終的に携帯を右手に持っていた。コールが3回鳴った所でかおるに繋がった。「もしもし。仕事終わった?お疲れ。」「どうしたの?」と、少し驚いた声でかおるは言った。「声が聞きたかったから。」こんな言葉がするりと出てしまう自分に驚いたりする。「明日、休みなんだよね?何するの?」「明日は、ジムでも行こうかと思ってる。哲哉さんはお仕事でしょ?」「そうなんだけど・・・・なんか。なんかさ。話してたら会いたくなっちゃった。」「え?今から?」全く唐突な話だ。「今から会いたいけど、無理だよね。」「う~ん・・・。」かおるを悩ませている。やはり急になんて無理だ。「いいよ。ごめん。」「少しだけならいいよ。」思いもよらなかった言葉が返って来た。「え?ほんとに?いいの?大丈夫?」「うん。大丈夫。いつもの所でいい?」「ああ。」いつもの所とは名古屋と安城の中間地点にあるラブホテルの事だ。何となく、会う=ラブホ、と言う事になってしまっていた。普通の恋人達からすれば、とても妙な事なのだろうが、ただsexだけの目的ではないし、現にsexなしで出てくることもある。お互い自宅の俺達には気楽な場所なのだ。しかし、お互いの自宅に招かないのはやはり躊躇いがあるからなのだろう。約束の7時、ホテルの近くの本屋で待ち合わせをしていたので中に入って待つことにした。音楽や映画の雑誌のコーナーで立ち読みをしていると、後ろから背中をつんつんとされて、かおるが来た事に気付いた。だいたい、かおるは後ろからつんつんと指で背中をつつくのだ。「何時に着いた?待ってた?」少し遅れたのを気にしているのか、かおるが聞いた。「7時。」「遅れたこと無いよね。」と、かおるが言うと心の中で「早く会いたいからね」と俺はつぶやいた。本屋の駐車場を出て、俺の車に乗るとすぐ近くのラブホに入っていった。俺達は、まるで自分達の部屋のようにTVを見たり、映画を観たり、カラオケしたり、くつろいだ。かおるは時々今井美樹の歌を歌うのだが、それを聞くのが一番好きだ。かおるの声と合っている。でも、リクエストした事は無い。たまに聞けるのがラッキーなことに思えたりするからだ。こんな何でもないことが続けばいいのに、と思った。右にいる、かおるは今井美樹のプライドを歌っていたのだが、急に愛しく思えてぎゅっと引き寄せた。「最近なんでも突然なのね。」とマイクを持ったまま少しエコーがかかったかおるの声が部屋に響いた。まだ曲は終わっていなかったが、ソファーにかおるを押し倒してキスをした。お互いに優しく触れ合って俺はだんだん張り詰めていった。かおるの中に入る前にゴムを付ける。かおるに対しても絶対忘れてはならない行為だと俺は思った。薄い皮が被さった俺は、少し違和感を感じながらもぬるぬると快楽にはまっていく。けれど、その薄い膜が俺達の境界線のように思えて、頭のどこかは常に冷静だった。イク時はやはり以前と同じように痛かった。膀胱ろうのせいだろうか?たまに痛いと声を漏らしてかおるはびっくりする。かおるは両手を顔に当てて泣いているようだった。「かおる。ごめん。嫌だだった?」両手をそのままに首を振っていた。「じゃ、どうしたんだよ。」かおるは震える声で「時々、苦しくなるの。あなたは苦しくないの?」と言った。かおるも俺と同じように苦しんでいるのだと、その言葉を聞いて初めて思った。いつも、穏やかで何でも許してもらえそうな雰囲気のかおる。そんな彼女を不思議に思いながらも俺はやはり甘えすぎていたのだろう。「かおる。もう今日で恋人同士は最後にしよう。」「どういう事?」「次からは友達同士になろう。」まだ彼女に会いたい気持ちが「次からは友達」だなんて卑怯な言葉を口にしてしまった。そんな事が出来るのだろうか?とお互いの顔を見つめあった。 <つづく>続きが読みたい・面白いと思ったらクリックしてね!励みになります!↓人気blogランキング
2006/03/05
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かなり、放置していました。ブログ自体、最近放置ぎみなのですが、このブログはその中でも酷いですね。(笑)お話専用ブログなので、時間と気分が乗らないとこのブログにログインできません。いや、ほんとに。大してストーリーを練っているわけでもないのですが・・・・。趣味は気分がいい程度にしなきゃね☆ま、こんなスペースも無いとストレス発散も出来ないわけです。って事で、つづきを読みに来てくれている方、本当にありがとうございます。ラビュラビュです☆このブログに来てくれる人は、本当に貴重に思ってます。では、また暫く放置ブログになると思うので、よろしくです。(爆)
2006/03/02
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俺の横にはかおるが横たわっている。病気の事を告白してからも、かおるは俺の側から離れなかった。時々、夢なんじゃないかと思ったりする。けれど、こうして今日も会いに来てくれた事は夢じゃない。病気の事を告白してから1ヶ月が経とうとしている。不思議と症状はあれ以来出ずに治まっている。そう言えば、結婚したり、恋人が出来たり精神的に安定している時は、症状が出なかったり、出ても軽かったりすると言う記事をどこかで読んだことがある。そういうことなのだろうか?かおるを見つめて思った。すると、むっくりとかおるが起きて俺の方を向いた。彼女は今日夜勤明けなのだ。会うなり、そのままフリータイムでホテルに入ってしまった訳である。「今何時?」かおるはまだ眠そうな顔で聞いた。「1時だよ。」それを聞くなり、かおるはまた再び枕に顔を埋めた。「もうちょっと寝る。」暫くすると、寝息がまた聞こえてきた。俺はそんなかおるを微笑ましく思い、髪をしばらくなでていた。こんなデートのパターンが多いのだが、かおるは満足しているのだろうかといつも不安に思ってしまう。もっと、いろいろな所に遊びに行きたいのではないのだろうか?もっと、美味しいものを食べたいのではないのだろうか?口にはしないが、かおるは明らかに俺に合わせてくれている事が、俺には分かる。こうなる事は分かっていた。ずっと、引け目に感じる事が嫌だった。だから、どこにも納まらずに眠れない夜を彷徨っていたのだと思う。かおるには甘えられる。けれど、こんな風に続いたら負担になるのではないだろうか?もっと、彼女にとって幸せな道があるのではないだろうか?そんな事を思わずにはいられなくなる。やはり、あの時もう会わずに別れた方のが良かったと思う日が来るのだろうか・・・。俺の内心は喜びと戸惑いがミックスされて実は不安定に揺れている事を何となく察知していた。でも、今はかおると一緒にいたいと言う気持ちが全てのマイナス思考を打ち消していた。それから2時間後、かおるは目を覚まし、俺達は普通の恋人達のように抱き合った。シャワーを浴びて、身なりを整えホテルから出ると、もう日が暮れそうになっていた。車に乗ってエンジンをかけながら「腹減ってない?」とかおるに聞く。俺の病気の事を気にしてか、食事の話はかおるからは一切してこないからだ。きっと空腹に違いない。「うん。ちょっと空いてる。」とかおるは照れくさそうに言った。俺はそういった些細な事を何も聞かなかった。食事の話を何故しないのか、こんなデートでも何故不満を言わないのか、こんな俺に何故会いにくるのか・・・お互いに同じ気持ちなのだろう、と思いたいし、正直な話聞くのが怖かった。ただ、今は一緒にいられればそれでいい。その言葉でまた小さな不安を打ち消していった。その後も俺の休みに合わせてかおるは会いに来てくれた。休みの前の夜から、俺は待ち遠しくて電話をかけては長電話をした。ところが、日に日に恋愛による安定感と不安定な気持ちは大きく反比例して行った。嬉しいと思えば思うほど、その後に一人で地の底に落ちるくらいの勢いで落ち込んだりした。そんなある日、栄でデート中、ブライダルショップのビルに視線を向けているかおるに気が付いた。6階建ての小さなビルであるが、ウエディングのもの全てが揃うようになっており、2階にはウエディングドレスがディスプレイされている。その為、この通りを通る年頃の女性は視線が上向きになるのだ。かおるもそうだった。25歳だし、結婚を考えてもおかしくないよな。俺には、その時現実を叩きつけられた気がしたのだ。そこから、調子がおかしくなった。適当なところでカフェに入った。「かおるさ、結婚、したいの?」唐突な質問に「えっ?!」とびっくりしたようだった。言葉も出ないようだったので続けて言った。「さっき、ビルのウエディングドレス見てただろ?だから聞いてみただけ。びっくりした?」と言うとかおるはコクンと頷いた。その後かおるは何か言いたそうな顔をして黙り込んでしまった。駐車場までのろのろと黙ったまま俺達は歩いて運転して数分たって言葉が上手く言えない俺は言った。「結婚とか、選ぶ権利があるのはかおるだから。」俺はそんな事を言っておきながら、かおるの顔を見れなかった。かおるは終始何か言いたげだったが、何も言わず別れ際顔を歪めた笑顔で去って行った。そんな姿を見て、俺はあんな事を言ったのを後悔した。でも、もう取り返しが付かない。汗臭い青春ドラマか昼メロのように、今から追いかけて行ってかおるにプロポーズする事なんて出来ないのだ。そうなのだ。かおるとは結婚できない。この先、俺の方のが必ず先に衰えるだろう。遅かれ早かれ、誰かに面倒をかける事になると思っている。それを思うと彼女の人生を犠牲にしてまで、一緒になる事を考えると辛いのだ。そこまで、彼女を奪えないと、かおるがウエディングドレスに視線を向けていた時に悟ってしまった。もっと別の男と一緒になった方のが彼女の幸せのためだと思ってしまった。この病気を持った人間全てが結婚できないわけではない。俺は青春時代をこの病気と過ごした。その時に多くのものを失ったのだと思う。その一つに結婚も含まれていたのだと思う。情けないが、相手に強く望まれない限り俺にとって結婚はありえない事だと思っていた。俺は自分自身の思考回路と病気が憎くて車の中で一人泣いた。 <つづく>続きが読みたい・面白いと思ったらクリックしてね!励みになります!↓人気blogランキング
2006/03/02
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