眠れない夜のおつまみ

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2005/12/01
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カテゴリ: 小説
車で走り出して数分、かおるは窓の外を見ていた。
「座ってて疲れない?」
かおるがこっちを向いた。
「運転してる方のが疲れるでしょ。私は乗ってるだけだから。」
「いや、長いドライブは座ってるだけの方のが疲れるんだよ。」
と言うと大丈夫、とでも言うようにかおるはニッコっと笑った。

「切ない胸に風が吹いていた」

が流れてきた。
この曲は聴いているとまるで俺の事の様に思える。

しかし、そんな事誰も知らない。

鎮静剤が効いたのか、思い過ごしだったのかあの嫌な感じは出てこず、調子もまずますだ。
しかし、ここまで来て生駒に行こうと思った事を少し後悔した。
やはり遠い。まだ三重を出ていないし、行って帰って来るにしても夜中になってしまうだろう。
かおると長くいられるのは嬉しいが、俺自身、体力的にきつくなりそうだ。
そんな事を思うとだんだん気が重くなってきた。
「ねぇ、哲也さん。一番行きたい場所ってどこかある?」
唐突な質問だった。
一番行きたい場所・・・・。
「俺、あんまり遠くまで旅行とかしたこと無いんだよ。日本だって北海道も沖縄も行った事ない。」
病気で入退院を繰り返しているのだから仕方ない。

「そうなんだ。」
かおるはそんな事は知らず何の詮索もない短い返事をした。
「行きたい場所はいろいろあるけど、沖縄に行ってみたいかな。なんか、みんな長生きで健康そうじゃん。」
「ほんと?」
また、かおるの顔が輝き始めた。

「私も、私もなの。沖縄行きたいんです。」
「どうして?」
かおるはふふっと笑って
「今までも数回、行った事あるんだけどね、すごく海が綺麗で浅瀬でも綺麗な熱帯魚が足元にやってくるんですよ。以前行った時は、今日みたいな暑い夏で、地図で調べて穴場の海岸へ行ったら恋人同士なのかは分からないけど、男の人と女の人が2人でダイビングしていて、だんだん海水に沈んでいくのをずっと見てた。その姿が何故か印象に残ってって、私も沖縄の海の中を見てみたいな、って思うようになったんです。」
「へ~。」
ダイビングか・・・。俺の身体じゃ無理だなぁ。
「それから、夕焼けがすごく綺麗だった。オレンジからピンクに変わるグラデーションで今までに見たことのある中で一番綺麗だった。笑っちゃうのが、その写真フィルムを現像に出す前に失くしちゃって最近見つかったんです。実は今朝取りに行って電車の中で見てたんです。サザンの曲聴いてたらまた思い出して、沖縄行きたいなぁ・・・って思いました。」
「そうなんだ。俺もその写真見たいなぁ。」
素直な気持ちで言った。
「いいですよ。」
かおるは言った。

適当な場所で少しずつ休憩を取りながら目的地へ向かう。
コンビ二の看板が目に入ってきたので、かおるにお茶でも飲もうと言って右折してコンビ二の駐車場へ入る。
さっきの食事をおごってもらったから、とかおるが飲み物を買ってくると言ってコンビニに入っていった。
かおるは俺が頼んだお茶を2本買って出てきた。
お礼を言ってゴクゴクと喉に流し込むように飲んだ。
一息ついてかおるがバッグから写真の袋を取り出して中から1枚を俺に渡した。
俺の目は一瞬でその写真に釘付けになった。

果てしなく続くような水平線。
夕日で染まったピンク色の空は水平線に近づくにしたがってオレンジ色に変わっている。
よく見ると水平線の少し上には小さな面白い形の雲がいくつも並んでいてアクセントになっていた。

こんなきれいな夕焼けは実際に見たことが無かった。
1枚の写真でこんな感動するとは思ってもいなかった。
予想外の展開だった。

「とても綺麗だね。本当に綺麗だ。」
「でしょ。写真ってすごいよね。見ただけで、シャッター押した時の気持ちや、あの時の空気や、風や、温度なんか思い出したわ。でもね、この写真見るまでこんな綺麗な風景だったのに忘れてたの。そんな自分がちょっと悲しかったわ。」
俺はこの写真に嫉妬した。
いや、写真ではなくかおると一緒にこの景色を見た男にだ。
かおるのバッグの中の残りの写真にはきっと元なのか、現なのかは分からないが恋人と一緒に写っている写真が入っているのだろう。
なんて心の狭い奴なんだろうと思われようと仕方ない。
暫く写真に見入っていたのでか、
「この写真あげようか。」
とかおるが言ってきた。
「でも、大切な写真なんだろ?」
「焼き増しすればいい事だし。あげる。」
そう言われたので「ありがとう」と言ってもらうことにした。

やっぱり、かおるとあの夜景を見たい、と言う気持ちが急に強くなってきた。
今までの弱気な考えはどこかに行ってしまった。
俺はこの時、かおるの記憶に残して欲しいと思った。
俺が勝手に思っていた馬鹿馬鹿しいゲームもどうでもいい。
ただ、この人に俺の存在をこの沖縄の夕焼けの写真のように残して欲しいと思った。
いつか忘れてもいい。だけど、かおるのどこかに俺を住ませて欲しいと思った。

また新たな気持ちでエンジンをかけた。


                            <つづく>



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Last updated  2005/12/02 03:12:42 AM
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カオルって罪な女(´ー`)  
なんかこー、いろんな人がカオルのとりこになっていく・・・
ちょっとうらやましかったりして(笑)
それにしても彼は大丈夫なんだろうか・・・ (2005/12/03 06:59:50 AM)

Re:カオルって罪な女(´ー`)(12/01)  
ぼっつぇ流星号さん
>なんかこー、いろんな人がカオルのとりこになっていく・・・
>ちょっとうらやましかったりして(笑)

これが終わったらどこかでかおるの視点からも書こうかと思ってマス。

>それにしても彼は大丈夫なんだろうか・・・
-----
(2005/12/06 11:41:31 PM)

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