眠れない夜のおつまみ

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2006/07/21
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カテゴリ: 小説
正志はTシャツにジーンズに着替えてアパートから歩いて数十メートルのローソンに向かった。ローソンは大通りに面しているが、正志のアパートは一本路地裏に入った所で案外夜は静かである。大通りまで出てくると、午前3時なのにも関わらず車が行き来している。昼間よりも空いている為かスピードを上げているように思える。
ローソンに入るとまだ原田は来ていないようだった。正志は道路に面した雑誌コーナーで今日発売されたばかりの情報誌を立ち読みして待つことにした。
待つこと10分。まだ原田は現れない。
あの電話は本当に原田だったのだろうか?
少し不安になってきた。

30分待って来なかったらアパートに帰ろう。

そう心の中でつぶやいて、また情報誌の続きを読み始めた。
それから5分経ってローソンの前に1台のタクシーが止まった。
正志は雑誌の後ろからタクシーから降りる人影を盗み見していた。

原田は見られている事に気づかず、こっちに向かって来た。
正志は原田に声をかけられるまでは何となく、気づいていない振りをする事を決めた。
「正志。久しぶり。」
原田は正志の肩を後ろからポンと叩いた。
正志は大げさに驚いた振りをした。
「あ、ああ。久しぶり。」
「こんな時間に本当にすまなかった。ありがとう。」
原田は学生の頃とあまり変わっていなかった。
神妙な顔つきで詫びる原田を見て、今まで正志の変に緊張していた気持ちが一気に溶けて行った。
「いや。本当に久しぶりだね。」
2人は何も言わずにローソンを後にした。

正志が206号室の鍵を開けると
「まあ、汚いけど入れよ。」
と原田を誘い入れた。
原田は部屋に入ると少し落ち着きの無いような素振りで胡坐をかいた両足はガタガタと貧乏ゆすりをし始めていた。
「飲む?」

「乾杯。」
と一応、8年ぶりの再会に乾杯をしビールをのどに流し込んだ。
暫くすると原田も落ち着いたのか口を開けた。
「今日は本当にすまなかった。突然押しかけてしまって。」
「いや。驚いたけど久しぶりに会えてよかったよ。あまり変わりないようだし。」
原田は学生の頃と変わらず男から見てもいい男だった。
学生の頃からよくモテていた。今でもそうなのだろう、と勝手に想像してしまう。
「実は、情けない話なんだが、今晩同棲している女に追い出された。そのまま出てきちまったもんだから持ち金も少なくて、携帯の電源も切れちまってさ。出てきてからどうしようかと思っていたら昔買ったテレカがまだ財布の中に入っていてさ。裏に正志の携帯番号がマジックで書いてあったんだ。」
そう言うとポケットからD&Gの財布を取り出して中なら1枚のテレカを取り出し正志に差し出した。
北海道の雪景色のテレカを裏返すとそこには確かに正志の携帯番号が書いてあった。
しかも、この字は正志のものだった。
「大学の時、1回みんなで北海道に行ったことあっただろう。その時のやつだよ。」
原田の言葉で思い出した。大学4年の冬、卒論が終わってみんなで北海道に旅行に行った。その時すでに携帯電話を持っていた正志は得意になって名刺代わりとテレカの裏に携帯番号を書いた気がする。
「ずっと俺持ったたの気づかなくて、急に懐かしくなってかけてみたんだ。まさか出るとは思いもしなかったけど。」
「ああ。変えていないんだよ、番号。なんか面倒で。」
「正志らしいな。」
原田はふふっと笑った。
「彼女と上手く行っていないのか?」
そっちの方が心配になって聞いてみる。
「結婚の話になるといつもこじれる。正志はまだ結婚はしないのか?もうてっきりしているかと思っていたけど。」
原田の母親は幼い頃男と駆け落ちして姿を消した。学生の頃から結婚なんて馬鹿らしい、とよく言っていたことを思い出した。
「彼女はいるんだけど。結婚はもう少し先かな。」
「そうか。」
いろいろもっと話したかったが、午前4時を回ってしまったので眠ることにした。
正志は今朝見た奇妙な夢のことなど、もう忘れてしまっていた。

翌朝、原田は正志のアパートを後にした。
もう一度彼女の元に帰って話し合ってみると言っていたがどうなのだろう・・・。
「じゃ、また。」
とお互い手を振って別れた。
急に訪れた懐かしい友は足早に去って行った。
正志の元には原田の携帯番号のメモが握り締められていた。



                                 <つづく>



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Last updated  2006/07/22 01:18:58 AM
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