眠れない夜のおつまみ

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2006/03/10
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カテゴリ: 小説
俺は、かおるからリモコンを取り上げてすぐにチャンネルを変えた。咳払いをして、
「今日のかおるは少し変だよ。ここは、もう出よう。」
と言った。
「私、いつもと同じだよ。変なのはそっちのほうじゃない。」
ドキッとした。
「お、俺だっていつもと同じだよ。」
「嘘。」
俺は頭を掻きながらうつむいた。
「ねぇ。こっち向いて。」

そして、唇まで俺を引き寄せ久しぶりのキスをした。
かおるの柔らかく薄い皮膚に、俺の栄養状態の悪いガサガサした唇を合わせるのが申し訳なく思った。
しかし、そんな雑念も次第に溶けて無くなっていった。
今まで抑えていたものが全て崩れて行く様だった。
ここまで来てもう後戻りは出来なかった。
俺は次の瞬間かおるをベッドに押し倒していた。
柔らかい感触に俺は溺れて行った。

シャワーを浴びて無言のまま服をかおるは着ていた。
その横顔は何も無かった様に冷静に見えた。
ホテルを出ると以前と同じように日は暮れていた。
自然に振舞うかおるを見ていると、ホテルでの出来事も何でもなかったように思えたりした。

好きでも無い奴にわざわざ抱かれるはずは無い。
そう思うのだが、また以前のようにただ楽しいだけの時間はもう過ごせないと感じていた。
都合のいい時だけお互いに会えればいい関係にはなりたくなかった。
それだけかおるの事を大切に思っていた。
だが、あの時の俺は自分が思うよりも臆病だった。


これを聞かなければ俺の心は晴れない。
「そういえば、土曜はどうだったの?」
さり気無く聞くとかおるは「何のこと?」と言う様な顔をして俺を見た。
「いい奴いたの?」
かおるはぐっと両手を握って膝の上に置いた。
その仕草が不自然に思えた。
ほとんど車の止まっていない本屋の駐車場に着いた。
入り口から一番遠い場所に車を止めた。
かおるは何か考えているようにも見えたが、ずっと黙っていたので俺はこの2週間でやはり俺ではない他の男に惹かれているのだろうと思った。
「いいよ。正直に言って。いい奴いたんだろ?」
俺はかおるの反応を見て、今日の彼女の振る舞いに腹が立ってきた。
かおるはうつむいて小さく頷いた。
「付き合って欲しいって言われてる。」
ハッキリ言われるとやはりショックだった。
俺は気を取り直して
「よかったじゃないか。」
と言うのが精一杯だった。
一瞬かおるの肩がピクンと動いて今度は俺をしっかりと見た。
「彼と付き合うことになると思う。」
そう言われて俺の胸は張り裂けそうだった。
けれど、俺は何も言えずに、ただその事実を受け止める事しか出来なかった。
かおるは俺をしっかり見つめたままでポロポロ涙を流しながら笑って
「だから、今日でもう会うのは最後ね。」
と言った。
俺は言葉も出せずに頷くだけだった。
そして助手席のドアをゆっくり開けて顔を歪めて無理した笑顔を最後に残して俺の元から去って行った。
かおるの車が駐車場から消えて、俺は一人っきりになった。
かおるが去ってから俺は一人で泣いた。

子供の頃、かくれんぼをしていて、ずっと見つからなかった事があった。
あの時も一人で狭い茂みの中で泣いていた。

腹の減った鬼の俺は見つけたはずだったのに、なぜ泣いているのだろう?

ふと、そんな事が頭に過ぎった。










最近、かおるの事を思い出す事が多い。
かおると出会った季節だからだろうか?
もう、1年経ってしまったのだ。
俺達はあの日を境にぷっつりと連絡を取り合わなくなった。
俺は、まだかおるの電話番号を消せずにいる。
何度かけようと思ったことだろう。
しかし、今更連絡を取ったところでどうなるというのか、と言い聞かせて過ごしてきた。

今日は、3ヶ月の入院生活から開放される日だ。
かおると過ごしていた頃は、不思議なくらい症状が軽かったのだが、やはり俺の病気はしっかりと巣くっていた。
症状が悪化して入院せざる得なくなった。
点滴だけの生活はやはり辛い。
絶食なのに、入院中何度かナースに食事はどれだけとったのかと間違えて聞かれるのは辛いものだ。
入院慣れした俺はナースステーションに寄って礼を言い病院の玄関を出た。
外はむっと来る暑さで、暫くすると汗がじんわりと額から出てきた。
真っ青な空に、勢いよく入道雲が浮かんでいる。
病院の花壇には膝丈ほどのヒマワリが元気よく咲いており、セミ達は短い夏を精一杯生きる為に鳴いている。

入院中によくかおると最後にあった日の事を考えていた。
どうして彼女があんな行動を取ったのか。
もしかしたら、あれは彼女の最後の賭けだったのかもしれない。
あの時、俺の本当の気持ちを彼女にぶつけていたら・・・・。
そんな考えがぐるぐる頭の中を廻っていたが、もう遅いのだろう。
かおるは今どうしているのかは全く分からない。
消せずに残っている電話番号ももう繋がらないかもしれないのだ。
そう思い、俺はバッグの中から携帯電話を取り出してかおるの番号を躊躇わず削除した。
それは、今までの自分との決別でもあり、今までの湿っていた心に新しい風が吹で気持ちが良かった。





                         <おわり>




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*****ちょっと一息******


やっと終わりました!





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Last updated  2006/03/11 04:37:15 AM
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ううう  
こういう結末とは知っていたけど悲しい(ノ_;)
でも彼が具合悪くなって死んじゃうとかいう
ラストじゃなくてよかった( ̄▽ ̄;)
(↑そうかなと思ってた笑)
やっぱり、男ならちゃんと言わなきゃダメだよね。
うーんかおるにとっても辛い別れだ・・・

長いシリーズおつかれさまでした!
おもしろかった(≧▽≦) (2006/03/11 09:39:57 AM)

Re:ううう(03/10)  
ぼっつぇ流星号さん

読んでくれてありがとうございました。m(_ _)m

>こういう結末とは知っていたけど悲しい(ノ_;)
>でも彼が具合悪くなって死んじゃうとかいう
>ラストじゃなくてよかった( ̄▽ ̄;)
>(↑そうかなと思ってた笑)

すぐに死には繋がらない病気のようです。

>やっぱり、男ならちゃんと言わなきゃダメだよね。

そうですね・・・。個人的には男の人に言って欲しいところですが、まぁこの状況では難しいのかな~。

>うーんかおるにとっても辛い別れだ・・・

>長いシリーズおつかれさまでした!
>おもしろかった(≧▽≦)
-----
ありがとう。
妊娠、順調みたいですね☆
(2006/03/19 02:07:42 PM)

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