灯台

灯台

2021年05月20日
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チャットルームで、数年前かな、こんな話を聞いた。
宇宙人の知り合いがいる、と言う人。
出鱈目だろうなと思うけど、
付き合ってみたのは僕が超暇人だったからである。

内容は石川県で、詳細は伏せるけど、
とある森でUFOを見て、
その時、宇宙人と知り合ったというもの。

宇宙語の披露、
言語か図形かも怪しい文字の羅列を、
見せてもらい、
新聞の文字を鋏で切り抜いた脅迫文のようなものを思った、
あの日から―――。

  *


どうして福島の『UFOの里』へと来ているのか。
福島県飯野町一帯は、UFOの目撃情報が多発している。
UFOに便乗し、町おこしの一環として、
『UFOの里』なる展示施設を一九九二年に設立した。

不敵な笑顔を浮かべる宇宙人が出迎えている。
トビウオラーメン食べてそうな顔をしてる。

   *

入り口にはこれまで訪れたであろう有名人のサインの数々。
館内を進むとミステリーゾーンへの入り口!
突然何かの効果音が鳴り響きライトアップされた展示品。
千貫森周辺のジオラマ。
そして―――やっぱり宇宙人・・・。

ミステリーゾーンの次は展示エリア。
何だろう、このメイドインチャイナの、
偽物だらけのブランド品状態は。
アフリカの公式資料に、
味のあるUFOのイラスト。
イラストレーターが居眠りしながら描いたみたいに思える。
アメリカの秘密諜報機関であるCIAの秘密文書。
翻訳を載せるべきだと思う。
それにしても、どれもこれも胡散臭い。
精巧に作られたUFOの模型もあり、
カツラを被った宇宙人と記念撮影もできる。

千貫森で取れたピンカラ石。
叩くと金属音のような甲高い音が鳴る。
風呂に入れておくと湯がやわらかになり、
また、身体もよく温まるらしい。
それ以外については眼が情報を拒否した。

オススメは宇宙人は絶対いる―――、
と洗脳するがごとき3Dバーチャルシアター・・・。
ところで飯野町で撮影されたUFO写真は一度見る価値はある。
専門家ではないけれど、
めっちゃ合成臭い・・・・・・。

  *

あの日のチャットルームの彼も、
具体的な宇宙人情報の話になり、
円盤は隠して、地球を観察する仕事をしている、と、
尻尾も牙も隠した人畜無害を装った僕に教えてくれた。

そーなんだー。
すげー。
こんなことを書いた。
頭を空っぽにして文章を書くのはとても楽だけど、
何書いているか時々どうでもよくなるので注意。

ちなみに現地で暮らしているのだとも言う。
夢のある話だ。
あんまり日本語はうまくないけど、
人間にしか見えない。
でも、そんなのはリアリティーの延長線の紋切型である。

でも3Dバーチャルシアターが洗脳してくれるように、
銀河系には二〇〇〇億個の星があるわけだし、
千貫森周辺にある古墳や神社などの位置関係を調べると、
パワーライン(UFOうじゃうじゃわいてくる地域)になってる。
ふーんそーなんだー。
すーごーいー。

日本ピラミッド仮説よろしく、
千貫森はピラミッドのような形をしていて、
磁場が狂っている不思議な場所。
そーなんだー。
ぜったい、いるー。

などと言うと思ったら大間違いである。
僕はチャットルームの彼にたずねた。
ねえ惑星探査というなら現地の人と知り合うのは、
あんまりよくないんじゃないのと書いたら、
おそらく、観察だけでは足りない情報を、
自分から得ているのだろうと言った。

すご-い。
やっぱりしんじてたー。
僕の馬鹿っぷりをチャットルームの彼が、
どこまで信じたかはわからない。
でも、僕は淡い希望にかけてこのように褒めちぎった。
僕はこの言い方をしたことで、
彼が既に嘘を話していると正直言って思った。
この思考パターンは、よくある騙しのテクニックだった。
最低僕ならこういう書き方をする。
それは踏襲である。

それに僕は常々思ってる、
何故宇宙人がいるなら、
正体がバレることをそんなに怖がるのだろう、
彼等はとんでもなく進んだ科学力を持っているはずだ。
記憶だって消せるらしいのだ。
そもそも隠す必要なんか何処にもありはしない、
そんなの知られたところで世界に影響を及ぼすには至らない。
僕は宇宙人について考えていていつかその結論に至った。

会おうと思って会えない宇宙人は、
異形の映像よりもずっと人間的である。

   *


そして僕は標高四六二.五メートルの、
かなり微妙な山をのぼった。

宇宙人は聖ジョージ教会の、
白いマントをかぶった大量の幽霊みたいなものだった。
それは『UFOの里』が僕に教えてくれたことだ。
これがもしニューメキシコにある『UFO博物館』だったら、
僕はもうちょっと子供みたいなはしゃぎ方をしたかも知れない。

途中には宇宙人のモニュメントがあり、
頂上までの距離を知らせてくれる。
もちろんマムシ注意のポップ看板もある。

そして展望台付近には盛り塩がされていたり、
円盤に銀色の玉三つ囲まれていたり、
祭壇や、鈴のついたロープが張り巡らされていたりする。

  *

僕は『手かざし』について考えていた。
あれは神慈秀明会の街頭の布教で知られていた。
渋谷や原宿の繁華街で信号待ちしていると、
信者がやって来る。
「三分間、時間を下さい。
あなたの健康と幸せを祈らせて下さい」
と言ってくるのだ。
もちろん気味が悪いし、胡散臭いことこの上ないが、
承諾すると、三分間、『手かざし』をする。

このルーツは『世界救世教』から受け継いだもので、
どちらの教団でも『浄霊』と呼ばれている。
またそのルーツをさらに探ると大本、出口王仁三郎の、
患部に手をあてて病を治す手当て療法に行き当たる。

しかしこうした救済システムには特許や特別な修行もなく、
僕はいつも気功の手かざしについて、
それと似た疑いを抱いている。
そもそも詐欺というのはそういうものだ。
最初はきちんとしたものだったかもしれない―――、
と仮定する事自体、優しいかも知れない。
でも、超能力や霊能力による、信じられる類いの、
そういう話はちゃんとあるのだ。
(スピリチュアルを詐欺師列伝と僕はいうが、
スピリチュアルはまず、カルチャーである。
またその前提にある、スピリチュアルブックの大本と、
スピリチュアルはまったくの別物である)
教団の人々が研修会や講習会なりに出なければ、
本当の浄霊はできないといっても、
そもそも誰もが出来ることにどのような効能があるわけもない。

   *

チャットルームの彼に僕は言ったのである。
どういう情報が欲しいんだろうとさらに突っ込んでみたのだ。
そうすると、
標準的な日本人の考え方みたいなもの、
あるいは人間が暮らしているリアルな姿、と。
僕にはそんなのあんまり面白いようには感じられなかったけど、
これがゴリラの生態とかだったら、
全然意味合いが違ってくる。
ゴリラの話って僕はすごく面白い。
彼等は文化的に人間に近い。
だから、宇宙人にとってそういう感覚なのだろうと僕は、
かなり好意的に思った。
宇宙人にとって僕等がどういう風にして過ごしているのか、
というのは、興味があることなのだろう。

何故、コンビニへ行くのだろう?
何故、コーヒーを飲むんだろう、とか。
よほどの賢者や哲学者でもない限りは、
知らない、いや面倒くさいよお前と言われそうなことを、
いちいちご丁寧に答えたのだろう。
勇者である。

そのあと、絶対秘密だよと念を押されたあと、
その宇宙人の写真を見せてくれた。
乗って来たな、馬鹿が、みたいな感じ。
おっと、口が滑りそうだ。
パーカーにジーンズといった格好の、
表情らしい表情がない二十代の人だった。
眉に鼻があり、眼に口もあり、髪の毛もちゃんとあった。
素晴らしい。
でもそれは宇宙人と前置きされたからにすぎず、
たとえば普通の日本人を撮ったとしても、
本当のところはわからない。

仮に円盤内部や、宇宙人の本物の姿を見せられたとしても、
ムー読者でない限りはわからない。
わかる、ということがそもそも無理なのだと思う。
僕は最初から相手を信用していないからだ。
ムー読者は釣られやすいから、すぐ、本物だと言う。
ネット掲示板の読者なら喰いついてくれるかも知れない。
でも僕は違う。

   *

エバが蛇に騙されアダムが堕落した話は有名だ。
僕が一番興味深いのは、
実の所そこである。

知恵の実を食べたあと、
神に隠れた二人がいる。
神は何故隠れたかと尋ねる。
彼等は、
「食べてはいけない木の実を食べた」
とは言わずに、
「自分たちが裸なので隠れた」
とすりかえた。

神は聞く。
「あなたが裸であることを誰が教えたのか?
あなたは食べてはならないと命じた、
木から食べたのか?」と。

アダムは答える、責任を転嫁して非難する。
「エバがわたしに食べさせた」と。
エバは答える、同じように責任を転嫁して非難する。
「蛇がわたしを惑わした」と。

何故僕がこの話を興味深いというのか、である。
これには聖書が人類救済のドラマである、
という、きちんとした認識が必要だ。

でも聖書を知れば知るほどお分かりになっていただけるだろう、
その何処にも救済を示す価値などない。
もちろん、僕が言いたいのはこういうことである。
聖書もまた一つの文学にすぎない、
これは神が人類に与えたメッセージなどではない、と。

   *

だから、僕は、チャットルームの彼に、
究極の質問をしてみる。
僕は、会えないかなあ、と書いてみる。
そのための伏線でさんざん褒めたのだ。

そうしたら態度が急に変わって、
忘れてよ、ごめんね、とチャットが終わった。
それはもう仕方ない。
彼は宇宙人と友達なのだ、
仕方ない。
などと言うと思ったら、大間違いである。
もちろん、みんなも御存知の通り、
本当に嘘をつく病気、
虚言癖という人がいて、
その人もそうなのかも知れない。

宇宙人と会ったことがある、
でも誰も信じてくれない、
だから誰にも話さなくなった、
でも君になら話してもいいかも知れない、
―――こういうパターンだ。
オレオレ詐欺だって、
なりかわりを実演した人だって、
嘘の綻びになりそうなところは、
よほどの馬鹿ではない限り、
絶対に回避するだろう。
僕が逆の立場なら絶対にそうする。
何故そんなことをする必要があるというのなら、
あなたは人を信用しすぎである、
人は本当につまらないどうしようもない生き物なのである。

   *

かくいう僕も、残念ながら悪意を持った人間である。
そうなるだろうと予測していた僕は、
そう書かれた瞬間に、腹をかかえて笑ってしまった。
詐欺師の才能ないぜ、
そんなんじゃギャンブラーには絶対になれない。

   *


僕はエデンの園というのを想像している。

世界の奥へと目指す真実に完全な暗闇が溶け込む、       
昼の光みちてさみしきノアの方舟―――。



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最終更新日  2021年05月20日 22時45分46秒


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