「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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2021年09月16日
かもちゃん、夜の心臓を越えれば
テーマ:
★つ・ぶ・や・き★(576167)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
かもちゃんは、川辺で、
突然化石になってしまったような衝動に駆られた。
海の匂いがしたのだ。
遠く向こうには、遠い山脈が見えるはずなのだが、
そこには、海の匂いがしていた。
遠くにはプテラノドンや始祖鳥が飛んでいたし、
ひょいと見ればカラスたちが、何してはりますのやろ、と、
「・・・・・・誰もいないダロ」
魚屋のおじさんや、市長さんのところへ行けば、
近所の仲のいい主婦や、遊び友達、
けれどもそうするだけの何かが満ちてきていなかった。
だから、かもちゃんは、予言や死の韻のように、
不思議な酔いの中で高くそそりたった世界の壁の中にいた。
静かな逓減。
静かな暫定。
かもちゃんは、血の流れの中に、
樹液のようなもの、汗の冷えたあとの冷たさを、
じっくりと感じた。
ゲームや漫画や音楽のことを考えた。
人生を豊かにする芸術、視座を養う学問、
無意識の中に横たわっている様々な人の心に、
濡れているような気がした。
そして、自分はその一個の卵のような、
そしてその卵が井戸の底にあるような、
そして井戸の底には妖精たちの気配がして、
世界中の何処にも見つからないような、
そんなメルヒェンの気配がした。
「世界は錆びついた金属板ダロ」
かもちゃんが、そう発しただけで、空気が乱れた。
空気の乱れは、夜の雨雲を誘おうとさえ、した。
そこには波長や周期という明確な概念があり、
あるいはその自然に生まれた感情だけが、
むなしいデッドレースを繰り広げていた。
かもちゃんが、そうしていると、
何とかお近づきになろうとしたらしい雀が、
ちょこんと、隣にきた。
かもちゃんは、よくはわからないまま、肯いた。
そのようにして時間の網目は解体されていき、
長い糸と短い糸の二つへと置き換えられていた。
そうして気が付くと雀は、
もう、一人の人間になっていたのだった。
見目麗しい、男性でも女性でもない、人間に。
人間は、空を飛ぶことができたし、
コンクリートを砕くことも、できた。
けれど、人間はそうしなかった。
そうせずに、やはり、かもちゃんのお腹に、
何か引き寄せられるような気がして、
眠った。
かもちゃんは、やはり、肯いた。
そうすると、人間は姿形もなくなり、
最後には、雀さえも消えていた。
しかし、そこに、勿忘草の花が残っていた。
それは―――神様の仕業だった。
「時計の針がものうく進むから、
世界はやさしいことを求めているのダロ」
かもちゃんは、その強力な共鳴感覚でもって、
世界の方向をしずかに引きよせていた。
引き寄せるどころか、円盤の群れさえ呼んでいた。
かもちゃんは、それを見て、やはり肯いた。
そうすると、円盤の群れは、様々な色を出して、
かもちゃんを喜ばせようとした。
宇宙人たちでさえ、何故喜ばせたいのかはわからなかった。
けれど、その必要性がそこにあった。
そうすると、かもちゃんが、嘴を上にあげて、
にゃおー、と言った。
そうすると、どこからともなく、たくさんの猫たちが、
川辺を目指し始めた。
世界に針が通されたからには、
糸は動かないわけにはいかなかった。
かもちゃんは、円盤がいつのまにか消えて、
猫が目指してくるのを感じていた。
なので、翼をばたばたはためかせ、
雨が降らないように、晴れるように、
随分と原始的な儀式による晴乞いをした。
それは、片脚で、くるくるまわる、素っ頓狂な踊りだった。
それは何か、夜の心臓を模倣している不思議なリズムを奏でていた。
「夜は永遠にやさしくなくてはいけないダロ」
かもちゃんがそう言うと、
それは本当にそのように思われてきた。
言葉は本来の姿を取り戻し、
空間を震えさせることなく、もっと別の次元で、
まったく別の色や形であったことを思い出し、
ただ、その夜のために燃え尽きようとした。
かもちゃんは、変な踊りをしていた。
世界には花火大会の予定もなかったのに、
何故か、花火が一時間も続いた。
それでいて、誰も苦情を出さなかった。
音が聞こえなかったし、
そもそも、最初から、見えなかったからだ。
それが見えた人達だけが、川辺へとやって来た。
そこには、市長さんも、魚屋のおじさんもいた。
いずうさも、いた。
不思議なことに、およそ季節外れなのに、
雪のようなものが降った。
みんな、笑った。そうすると、かもちゃんも笑った。
「お腹減ったダロ」
そう言うと、みんなが色んなツテで、
かもちゃんに色んなものを食べさせた。
かもちゃんがお腹いっぱいになる頃には、
まるでそのついでのように、
たくさんの人もお腹いっぱいになっていた。
不思議な秋の夜が、いたずらに始まり―――、
そして何の前触れもなく、終わった。
、、、 、、、、 、、、、、、、、、
秋の夜、流れ星が、いくつも空を流れた・・・・・・。
いくつもいくつも、魂が安らかに昇っていった・・・・・・。
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最終更新日 2021年09月16日 22時52分28秒
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