灯台

灯台

2021年09月16日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
​​​​​​​​








かもちゃんは、川辺で、
突然化石になってしまったような衝動に駆られた。
海の匂いがしたのだ。
遠く向こうには、遠い山脈が見えるはずなのだが、
そこには、海の匂いがしていた。

遠くにはプテラノドンや始祖鳥が飛んでいたし、
ひょいと見ればカラスたちが、何してはりますのやろ、と、


「・・・・・・誰もいないダロ」

魚屋のおじさんや、市長さんのところへ行けば、
近所の仲のいい主婦や、遊び友達、
けれどもそうするだけの何かが満ちてきていなかった。
だから、かもちゃんは、予言や死の韻のように、
不思議な酔いの中で高くそそりたった世界の壁の中にいた。

静かな逓減。
静かな暫定。
かもちゃんは、血の流れの中に、
樹液のようなもの、汗の冷えたあとの冷たさを、
じっくりと感じた。

ゲームや漫画や音楽のことを考えた。
人生を豊かにする芸術、視座を養う学問、
無意識の中に横たわっている様々な人の心に、
濡れているような気がした。
そして、自分はその一個の卵のような、
そしてその卵が井戸の底にあるような、
そして井戸の底には妖精たちの気配がして、
世界中の何処にも見つからないような、
そんなメルヒェンの気配がした。

「世界は錆びついた金属板ダロ」

かもちゃんが、そう発しただけで、空気が乱れた。
空気の乱れは、夜の雨雲を誘おうとさえ、した。
そこには波長や周期という明確な概念があり、
あるいはその自然に生まれた感情だけが、
むなしいデッドレースを繰り広げていた。

かもちゃんが、そうしていると、
何とかお近づきになろうとしたらしい雀が、
ちょこんと、隣にきた。
かもちゃんは、よくはわからないまま、肯いた。
そのようにして時間の網目は解体されていき、
長い糸と短い糸の二つへと置き換えられていた。
そうして気が付くと雀は、
もう、一人の人間になっていたのだった。
見目麗しい、男性でも女性でもない、人間に。


人間は、空を飛ぶことができたし、
コンクリートを砕くことも、できた。
けれど、人間はそうしなかった。
そうせずに、やはり、かもちゃんのお腹に、
何か引き寄せられるような気がして、
眠った。
かもちゃんは、やはり、肯いた。
そうすると、人間は姿形もなくなり、
最後には、雀さえも消えていた。
しかし、そこに、勿忘草の花が残っていた。
それは―――神様の仕業だった。

「時計の針がものうく進むから、
世界はやさしいことを求めているのダロ」

かもちゃんは、その強力な共鳴感覚でもって、
世界の方向をしずかに引きよせていた。
引き寄せるどころか、円盤の群れさえ呼んでいた。
かもちゃんは、それを見て、やはり肯いた。
そうすると、円盤の群れは、様々な色を出して、
かもちゃんを喜ばせようとした。
宇宙人たちでさえ、何故喜ばせたいのかはわからなかった。
けれど、その必要性がそこにあった。
そうすると、かもちゃんが、嘴を上にあげて、
にゃおー、と言った。
そうすると、どこからともなく、たくさんの猫たちが、
川辺を目指し始めた。
世界に針が通されたからには、
糸は動かないわけにはいかなかった。
かもちゃんは、円盤がいつのまにか消えて、
猫が目指してくるのを感じていた。
なので、翼をばたばたはためかせ、
雨が降らないように、晴れるように、
随分と原始的な儀式による晴乞いをした。
それは、片脚で、くるくるまわる、素っ頓狂な踊りだった。
それは何か、夜の心臓を模倣している不思議なリズムを奏でていた。


「夜は永遠にやさしくなくてはいけないダロ」

かもちゃんがそう言うと、
それは本当にそのように思われてきた。
言葉は本来の姿を取り戻し、
空間を震えさせることなく、もっと別の次元で、
まったく別の色や形であったことを思い出し、
ただ、その夜のために燃え尽きようとした。
かもちゃんは、変な踊りをしていた。

世界には花火大会の予定もなかったのに、
何故か、花火が一時間も続いた。
それでいて、誰も苦情を出さなかった。
音が聞こえなかったし、
そもそも、最初から、見えなかったからだ。
それが見えた人達だけが、川辺へとやって来た。
そこには、市長さんも、魚屋のおじさんもいた。
いずうさも、いた。
不思議なことに、およそ季節外れなのに、
雪のようなものが降った。
みんな、笑った。そうすると、かもちゃんも笑った。

「お腹減ったダロ」

そう言うと、みんなが色んなツテで、
かもちゃんに色んなものを食べさせた。
かもちゃんがお腹いっぱいになる頃には、
まるでそのついでのように、
たくさんの人もお腹いっぱいになっていた。

不思議な秋の夜が、いたずらに始まり―――、
そして何の前触れもなく、終わった。

、、、 、、、、 、、、、、、、、、
秋の夜、流れ星が、いくつも空を流れた・・・・・・。
いくつもいくつも、魂が安らかに昇っていった・・・・・・。












お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021年09月16日 22時52分28秒


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: