364
夏の日
山道に揺られながら、
病んだ紫陽花のような日輪が狂っていた。
色硝子の破片を降り落としているようだった、
なごやかなそよ風を無風とする陽の光に切り取られ、
揚羽蝶―――だった・・。
眼の中で香油の如く匂やかな魂の静けさ。
動き回る火山と、密閉された宇宙。
せせらぎの音が、一瞬消えた・・・・・・。
厭がる目覚めと眠りにしがみつこうとする瞬き。
窓の格子。
雀の気配。
そんなものが無秩序な道の上で、
追憶の彼方から籾切りに、紛れてくる。
何も語りたくないのは、美学だよ、と。
何も言いたくもないのは、僕もそうなんだよ、と。
入道雲も、
昨日がどんな日であったのかも漠然とした一つの時間の塊、
これ以上は―――愁いが残らないように・・。
もうこれ以上は―――空気の中を游ぐ・・。
斜線を描いて、縦の線をくずさず、
物さびた樹木の幹の下までも輝かせる。
道はゆっくりと分かれて―――行く・・。
暗く澱み、翳るかとみればいぶし銀、
しめやかに濡れて、
いつかのもの想いに沈んでさゆらぎもせず、
神の息吹に涅槃の空、
いいえ、これが悲しい日本の景色・・・・・・。
誰もいなかったでしょう、と岩の上の影が囁く。
天に憧れながらたよるものなき地面や壁をのたくる蔦。
裸足になって歩いた、
家に帰って足からは血で溢れていた。
自分の激しさも、
その時間という絶え間なく流れるせせらぎも、
いまでさえ―――いまでも、
懐かしく思い出すということはない・・・・・・。
*
363
砂時計の中に、
最後の燐寸が白く光る。
影にやわらかい反射があたり、
一瞬。
カメレオンのような舌が伸びる。
*
362
ウィンカー
SNS上で、
真っ直ぐ行けるけれど、
道路は大きなカーヴになっているという時、
ウィンカーをどうすべきかというのがあった。
実は兄の家に行くまでにこういう道路があって、
僕は原則入れることにしている。
ただ、この問題がどうこうというよりも、近くに、
交番があるかとか、交通量かどの程度かっていうのも、
判断の基準になりそうな気はした。
またそこで事故が起こった場合などは、
道路を変えた方がいいのではないかという声が起こったり、
自然とウィンカーを出す人が増えるのではないか、
という気がした。
また、事故が起こっていないからといって、
安全であるかどうかはわからない、という言い方もできる。
たとえば、あなたはこういう時にウィンカーを出す人と、
ウィンカーを出さない人のどちらがいいかという言い方もできる。
自分一人で考えるのではなく、
二人(恋人や奥さん)や、
四人(家族、仲間)を引き合いに出してみれば、
思いのほかあっさりと答えは出るものだ。
全体的な答えを求めたいなら一人基準で出すものじゃないのだ。
「出す/出さない」のではなく、
「出した方がいい」が僕は正解なんじゃないかという気がする。
もちろん、右左折やUターン、進路変更、
環状交差点から出る時などは原則合図を出す必要がある。
しかし今回の場合はそれに当てはまらないため、
ウィンカーを出さなくてもいい。
けれど法律上がどうとかというのは弁護士が考えることで、
安全運転や、その行為に危険性はないのかという二点で考えるのが筋だ。
夜中になったら突然スピードが上がり出す、
二、三十キロは上がっている気がする。
みんなにも覚えがあるだろう、最低大阪ではそれが通常運転だ。
百八十キロまで速度表示がある、そこまで出してない、
それが奴らの言い分かも知れない。
朝六時になると急いでいるのか、方向確認すらしていない、
そういう人も沢山見てきた。
人がいないんだ、だからこういう運転も成立する。
だのに朝七時になるとそういう人はまったくいなくなる、
前述した運転をすると事故が起こる、人の数が増えるからだ。
時間帯というのも重要な要素だという話ではあるんだけれど、
運転手にも様々なタイプがいると考えよう。
運転が上手い人と下手な人と、
運転が荒い人と丁寧な人。
運転時に相手のことを見ている人と、
自分のことしか考えない人だ。
そしてこれには複数回答ができて、
なおかつ中間という要素もある。
運転が上手くて丁寧だけど滅茶苦茶ノロい、
住宅街をありえないほど低速度で走る。
これも実は正しい。
住宅街で、とりたてて狭い道では、
制限速度以下になるのが自然だ。
みんな大人だからね、我慢しながらやり過ごす。
だのにレーシングカーみたいにして走る人もいる、
サーキット場じゃねえよと言いたい。
*
361
日出ずる国
A country called Japan
頭の中に世界地図を思い浮かべると、
日本の右にはアメリカ、左に中国、
左上にはロシア、
世界の主導権を争う大国の中心にある。
この交差の中心にアジアの端にある小さな国があり、
しかしその地理的条件に答えがある。
国土は狭く、若い人口も少なく、
資源や地理的な優位性もほとんど持っていない。
それにもかかわらず、世界第三位の経済大国。
経済が二十年近く停滞しているのにもかかわらず、だ。
日本人は勤勉で教養があり、技能に秀でた国民はいない。
ワーカーホリック過ぎてクレイジーだという外国人もいる。
簡単なことだ、日本人は不死身で、ゾンビなのだ。
困ると栄養ドリンクを飲む。
トヨタ、ホンダ、ソニー、ユニクロ、任天堂といった、
世界的に有名な日本企業がある。
日本の製品はコピー大国の中国人にも、品質がいいと言われる。
僕の知り合いの中国人はみんなそのようなことを言う。
日本の真の資源は人的資本で、
広い世界の中でも日本人は社会意識の高い人々だ。
多機能なトイレ。
中にはトイレについているすべてのボタンを押してみたという人もいる。
過密なダイヤの山手線でさえ交通機関の時間が正確で、
島国なのに観光地が豊富。
沖縄と北海道のように南国と北国があるというのは、
実はかなり珍しいことなのだ。
またおせち料理や、天麩羅、寿司、ラーメンというように、
日本食は素晴らしいコンテンツだ。
コンビニエンスストアの総菜のすごさを語る外国人も多い。
コーヒーがありえないほど美味しいので毎日飲むという人もいる。
漫画やアニメも忘れてはいけない。
秋葉原は外国人にとっても聖地なのだ。
この日本は他の国々とは異なり、
明治維新によって国の社会制度を一変させた。
長い間鎖国していたということも、
日本の文化が特殊な要因の一つだ。
そしてこの国はアメリカや中国やロシアといった超大国と、
戦争をしたという経験がある。
アメリカ以外には勝利しているという事実がある。
またGHQの支配から解放されたいまでも、
戦争放棄を憲法に刻んだまま、
平和的な精神を継続している。
中国人は日本との国境線をたびたび越えてきては、
不法に漁業を行ったり、
日本の領土である尖閣諸島に侵入したりと挑発行為に及ぶ。
それを横目で見た韓国人たちも便乗しようと、
中国の傘にかくれながら、
竹島は自分たちのものだと主張し、
内閣の支持率が低下する度に、
反日問題というテーマで煽り立てる。
北朝鮮も目論見はあるのだろうがほとんど意味不明に、
ミサイルを日本海に向け発射する。
こんなことをされながら、
戦争放棄という自戒を守り続け、平和ボケしているといわれ、
しかしながらこんな外交関係が他の国で成立するだろうか。
日本の自衛隊は中国の軍隊をもしのぐ軍事力を誇っている。
もしこの国がアメリカだったら即戦争になっている。
待ったなしで、ノンストップで、第三次世界大戦が始まるだろう。
中国やベトナムなど物価の安い国々からは、
低賃金で働く労働者が日本に押し寄せ、
日本人労働者たちは仕事を奪われることが増える。
もちろん、不当な労働があるという事実もあるが、
この国には外国人労働者への規制がない。
その結果、本来国内で消費されるべきお金が海外へ流出し、
失業率の上昇や、失業者救済のための社会保障費の消費と言った、
マイナスの連鎖が生まれる。
グローバル教育の中で日本人のおもてなしの心は、
最重要視されるだろうし、
相手のことを考える心は情報時代においても、
けして欠かすことのできないものなのだ。
この国では銃を持ち歩いている人がまずいない、
この治安の良さは世界でも有数だ。
僕等はこの国をもっとよりよくしていかなくてはいけない、
僕等はこの国の内側にいて外側の意見をあまり聞かないけれど、
美化修飾はあまりよくない、あのさそんなのってさ、
この国のことをあまり知らないからだろう、
けれど長所があるというのも事実だ。
ずっと前に日本から出ていきたいと言う人がいて、
出ていったらいいじゃないかと返した人がいてすごく肯けた。
企業は税金を上げたら出ていきたいところたくさんあるみたいだけどね、
お金持ちもきっとそうだろう。
ギャンブル大国だし、日本人もピンからキリだとは思うけれど、
いいところがもっと表に出て行けばこの国の住み心地も、
生き方も、変わっていくんじゃないか、と思う。
あと、なんで煙草の税金を上げ続けるのかわからないと言わせてほしい、
じゃあジュースを上げなよみんな本気で怒るからと言わせてほしい。
一人一人が日本人としての自覚を持ち、美学を持ち、
もっと誇りに出来るような国にしていかなくてはいけない。
*
360
X-Day
化け物や怪物、
吸血鬼、妖怪、
伝説の生物。
恐竜。
人間の規格を問われる、
一瞬がある。
犬や猫や鳥に知性を与え、
補助的な発声器官を与え、
人間の言葉を話します。
ロボットは心を持ち、
愛について考えはじめます。
昆虫も、爬虫類も、です。
その選択が、必要だと、
長い間ずっと思っていました・・。
*
359
黒魔術骨董品店
あら珍しいお客様です、
こんにちは、黒魔術骨董品店へ、
山奥異次元トンネル生と死の狭間で、
サハラ砂漠したようで、
ようこそでございます。
日本語がおかしい?
気にしなさんなよ、馬鹿だな、
コッペンマイヤーさんって誰だよ、
そういうことだろ(?)
で何が欲しいんですこと?
人を呪い殺したいアイテム、各種揃っていますよー。
そこが一番重要で他の追随を許さない。
しかし売れ線は、「天然女子風に転ぶ呪いの札」ですね。
妖精さんのしわざー、と言いたいキャラ増幅効果。
ほかにもほかにも、ちきゅうはかいばくだん(?)
米津とかいう人の歌で出てくるような妄想で作った光線銃(?)
杖にローブで山にしばかれにいくための桃までセット(?)
竜の入った壺と全国の温泉のもと、
あ、ドラちゃんは温泉が好きなんですよ。
うちの温泉入りたいだけのマスコットキャラですからね、
別府温泉が好きです(?)
あと、悪魔のエナジードリンコ、マムシドリンコ、
精力剤よりずっとききます、
ただ、人格が保てるかまで微妙なところ(?)
変なのしかないって、言ってはいけないことを言いましたねー、
覚悟してくださいよー、ぷんぷん(?)
でね、透明人間になれる薬、女子更衣室をステルス作戦(?)
あとエクスカリバーとデュランダルね。
これだけは欠かせません、絶対にね、ね、絶対にね。
何故かって、ですって、伝説の武器だからって何言ってるんですか、
響きがえっちいじゃないですかー(?)
攻めと守りって言っておけば誤魔化せるの法則、
攻めと受けって言っちゃいけないこの街は荒廃してる、腐ってる、
んもう、いろいろなところがね(?)
あと、本当のことしか書かれていない聖書、
えーっキリストがこんなことまで、マリアがマリオに思えちゃう、
ピーチ姫とヨッシーがみたいな、そしてルイージがみたいな、
それも一つのスーパーマリオブラザース、
メーカーはよろしくよろしく逝ってんだ像(?)
まあ、こんな商品ばかりですが、
お客様は有り金全部差し出していきます。
山賊じゃありませんよ、
衣服を剥ぎ取ったこともありますが(?)
何だか中二病みたいだ、ですか。
あはは、真正の中二病みたいな顔をした、
人に仰られると鼻が高いです。
あの、ハイパーブレードって真面目な声で言ってもらえますか、
くすくす、こちらは、モノホン。そちらは、マガイモノ。
でもね、そういう設定なくして物語の構築は進まない(?)
もう既に千歳でしたよね、
悪魔と天使と人間のスーパーハーフマヨネーズでしたよね(?)
いえいえ、障子に耳ありというグッズがあるんですよ、それはね(?)
物騒なものが多いですか、そうですか、
そりゃ、色んな種族、色んな化け物がいますからね。
まあ、一日ぶりに来た客ですから、
お茶ぐらい出しますよ、店長。
近頃のラインナップじゃ店やっていけないですよねー、
ねえ、店長、あれ、どうしたんですか、店長?
あはは、バレました、そりゃバレますか、あはは、
いやあ、先代死んじゃって、あたしは仕えるのが仕事の、
黒巫女族のゴスロリって言うんですけどけどね、
あ、お見知りおきを。その、管理はできても実務はできない、
これは契約書がないと駄目なんですね、
いつ死んだかって、その何というのか、昨日(?)
さあさあ、これが運命の玉結び、占い師の預言済、
その「何もないとみせかけた、店主になる薬」
の丸薬を呑んでもらえますか。
ピンポイントでしょ、あるんですよね淳二。
いいから、呑めよ、俺の酒が飲めねえのか上司アル中語、
俺の命令がきけないのかパワハラ語ですぐクビになる語(?)
呑みましたね。
本当のブラック企業は、従業員が、
社長よりえらいということもあるんです。
さあ、働いてもらうぜー、馬車車だかんなー、鬼るからな、
もう生きてるのを死ぬほど後悔してもらうからなー、
おらおら、そこに座ってチラシ作成はじめてもらうぜー。
あ、そこ、マジックで。
はいはい、ルビもつけてあげてくださいね。
そうそう、いい感じじゃないですかー。
がんばれがんばれ、って、ブラックって何だって、
あのね、ギャップ萌えが重要なんですよ、
わかりませんか(?)
それ終わったら朝御飯作ってやるからな、
きびきび働けよ(?)
*
358
サバイバル沖縄二泊三日、
都会の景色に疲れたので、
青春してみたー(爆)
沖縄最高、裸足で暮らすサバイバル二泊三日、
食糧は魚や、植物。原始的生活、まじさいこー。
落ちてたペットボトルで濾過装置つくる、
布いれて石炭、細かい砂、岩の順番にいれてつくる簡単なやつ。
ちなみに知ったかぶって話してたけど、
まるまる受け売りです。
アルミ缶でろうそくの光をパワーアップとか、
蚊よけにはハーブを火にかけるとかね。
あと、金属の針を見ずに浮かべると北をさすとか、ね。
すごいでしょ、でも、絶対いらない。
大体最後の東西南北がそもそもわからない場合どうするのよ、
マングローブ三百六十度全部一緒だし、あと、うなぎいるし。
火起こしはもちろん、キャンプ用品じゃなくて、
映像のために竹を切ってやりますが、これはやらせ、です。
あんなの女の子に、無理じゃん。
ていうか、あんなのやらせたら所属会社訴える自信あるもん。
けど映像をつなぎあわせると、意外と上手くできるもんよね。
眉間に皺寄せる演技はラクショーだけどね、
もう女優になっちゃおーかな。
将来は人気女優かー、いけそうだなあたし可愛いし、
自己肯定感高め、それがプロ意識の高さよ。
そういえばアマゾンのジャングルで四十日生き延びるとか、
すごい話聞いたことあるんだけど、
わたしだったら、一日で死ぬ自信あるなー。
クレオパトラが毒薬で死ぬみたいに、
探検前には毒薬持っていざという時に呑む準備しておいた方がよさそう。
苦しむのはそりゃ嫌だけど、ね。
洞窟で波の音を聞く、
これはまじご褒美、天然サウンドに耳が癒される。
ていうか、音フェチなんだよね、耳がウィークポイント。
ついでにイケボ男性にえっちい台詞言って欲しい。
あと、BLストーリーを想像しながら眠るのが近頃の流行り。
南極探検中に、仲間やハスキー犬とはぐれ、
三十日間ひとりで百六十キロを彷徨い、
やっと救助隊に発見されたダグラス・モーソン。
プーン・リムは、魚雷で攻撃され、海に投げ出された商船員。
救助されるまで、南大西洋を救命ボートで百三十三日間も彷徨った。
すげー、それ以上の言葉が出てこない。
瓦礫に埋もれても叫ばないことと同じ、
無駄な体力を使っちゃうからねー。
自力で脱出できるならともかく、動けないなら、
声が聞こえてくるのを信じて発狂ゲーム開始。
竜巻が動いていないように見えたら、
それまじで自分に向かってきてるってこと、
覚えておいた方がいいよ、あたしすぐ忘れるけどねー。
津波もね、明らかに水が引きすぎていたりしたら来るらしいよー。
身体が急激に冷えても急激に温めちゃ駄目だよ、
心肺停止するからねー。
終末を生き残るための豪華なシェルターマンション
「サバイバル ・コンドミニアム」っていうのがある、
滅茶苦茶値段高いし完売したらしいけどね、
昆虫食食べ始めたり、異常気象がエグくなったら、
まじこういう路線出てくるかも。
外部遮断して五年生きられる。
最大二百七十センチの厚みがある壁に囲まれた、
地下十五階建てのシェルター型マンション、
水と電気が完備され、屋内で野菜の栽培や魚の養殖もできる。
ウォータースライダー付きのプール、映画館、図書館、
ジム、バー、ドッグラン、
ボルダリング用の壁、ゲームセンターといった充実の娯楽設備。
普通に七泊八日で宿泊したい感じだよねー、
こういうの撮りたいよねー、
あーあ、何がサバイバルだよ、ああいうのは男性だよ、
肉体派女優かよ、アクションかよ、思うわー。
でも泣き言言うな、だめだめ、あたしはプロフェッショナル。
仕事はまだまだ続きます。
真夜中蛇さんとこんにちは、やっほー、元気してたかな、
と言っているけどこれはやらせ、です。
爬虫類好きだけど、触るのはNGだから。
見るのが好きなだけ、ぺろぺろ舐めたらまじおこだよ。
実は透明なアクリルガラスがそこにあるのね。
攻撃しても、威嚇しても無駄だぞ、にゅっふふ。
こわかわな蛇さん。
ヤシガニさんにイノシシさんもいるね、
あたしの手にみえるけど、実は現地住民。
あたしだよ、覚えてる?
インスタグラム脳の世界で、きらきらはじけた人、
都会生活もいいけど原始的生活もしたいよねとか言ってるけど、
本当はスマホいじりまくってたから。
もう病気だからね。頭おかしいからね。
あと裸足ってことになるけど、ちゃんとサンダルはいてました。
ところどころで脱いだり歩くだけ、そんな足の裏つよくないよね。
最後は海で魚をモリでつつく勇者映像。
主観映像でお送りしているけれど、外国吹替。
水着姿でウミヘビつかまえたり、フグと格闘とか、
どんな無理ゲー。でも、みんな信じてるみたい、
どうやって潜るのよ、訓練してなかったら普通に潜れないし、
一歩間違うと死ぬんですけどー。
でも信じていいよ、だってそれがインスタグラムなんだから。
愛と感動と夢と奇跡を与えてくれる、それがインスタ映え。
これからシーサーと、てんこ盛りの肉そば食べて、
(スタッフが残ったものを美味しくいただきました、)
ウミヘビを使った沖縄のイラブー汁に、
ごーやちゃんぷるーってイミフ発言してくるねー。
ちゃおー!
*
357
humans are lying creatures
人は嘘をつく生き物です。
人類の惨めさや卑しさを語る軽い憂愁が、
冷たい死よりも鋭い旋律に変わ――る・・。
しかしながら一日に人は三十回も嘘をつき、
嫌なことや辛いことがあっても、
「大丈夫」と言ったりします。
相手を喜ばせようとする冗談、軽口も嘘です。
嘘をついた人は意外な質問に弱く、
嘘をつく時は論理的で、生理的な感覚が弱くなり、
たとえば知恵の輪をさせながら話をしたり、
運転中に話をすると人は嘘がつきにくいと言う。
ボロが出やすい状況を作れば破綻はすぐに見えてくる。
ただ、人を疑うというのはあまりオススメできない、
結局人は誰しもが様々な問題を抱えているからだ。
外国で、ある年若い少女の事件があり、
二人を殺害したとされていました。
エアバッグは運転席だけだったのでしょうか、
でも確かに煉瓦に向かう直前の映像の前に、
かすかにハンドルを動かすようなそぶりが見え、
そこには明確な衝突の意志がありました。
とはいえ、法定における彼女は悲劇のヒロインです。
綺麗な女性が泣いているという姿、悔い改めているという姿には、
とても凶悪な事件を引き起こしたとは思われません。
何かの間違いではないかと、思いました。
演劇的な性格、自分の都合のいいように脚色、改竄してしまう人物、
サイコパス、自己愛性パーソナリティ障害、
そんな言葉がふと浮かんでは消えます。
殺人犯の再審請求にふと浮かぶ冤罪。
誰かの人生を狂わせた人間だと思われるとばかりに、
その人の人生を狂わせるという裁判。
裁判官にだって責任のとれないようなことが起こり得るかも知れない、
それでも「殺人」を「殺人」だときちんと言えるのかどうか―――。
煉瓦に百六十キロのスピードを出して衝突した、
ということは有り得ます。
若い時は何でもできるような気がする時があります。
でもそれは殺意ではないです。
時には弱々しいシンバルの響きのような死へと向かう声、
カタストロフへと向かう声に翻弄されて手足が揺れる人物―――。
けれどその数百メートル前の監視カメラに、
法定速度を守り、指示器を入れていた車の映像があるとなると、
これは少し説明が難しくなります。
青酸い滋味が漿液となり嚥下される刹那の夏の樹の皮の薫り。
何を言っているかわからないでしょう、
それとまったく同じようなことがこの事実にはあります。
さらに事件後、SNSにハロウィンの映像が出たりすると、
心証が甚だ悪いです。
殺意というきらりと閃くものが音を弱め消え去ってゆく、
もちろん台風や竜巻にも似た気が狂わんばかりの衝動があります、
でも三点にも及ぶ証拠は彼女の有罪を決定づけました。
働きすぎで死んだ場合でも企業相手の裁判は難しいと言います、
証拠を出さないということが出来るからです。
交通事故でも自分の都合のいいように語る人物はいます。
弁護士が「こういうことを言ってはいけない」とアドバイスすることも、
出来ます。
わざと誤った情報を流し人を混乱に陥れる心理的攻撃や、
人は年を取ると自分がついた嘘を信じるという研究結果もあります。
嘘発見機もあります、けれどこれでも嘘をつけるという人がいます。
大規模言語モデルに嘘の情報を埋め込んで誤った情報を生成することもできます。
―――もう「嘘」ではない「悪意」という冷たい空気が、
何処からともなく漂って来る。
わたしはとある事件、マインドコントロールによって、
家族が父親を殺したという事件の犯人が、
「自分は無実だ」と面会人に同情的に言っていた話を思い出しました。
死刑確定となると面会謝絶、という態度の豹変。
人は嘘をつきます。
わたしも信じられない類の嘘をつく人を見たことがあります、
あなたの周囲にもそういう人はいるかも知れません。
いざという時の為に録音や、証拠の映像を撮るのをオススメします。
信用できない人に優しさなんか必要ない。
あんなにきれいな顔をして、天使が微笑んだように嘘をつく、
口や鼻孔、眼の中に流れ込んだやさしさを返せ、馬鹿野郎。
*
356
コメダーというコメラニアン
ポメラニアンみたいに
言わないでくれるの話
「わたしがアンタの翼になるってあるじゃん、
だったら、わたしがアンタのカップラーメンを食べる、
だからアンタはわたしにカップラーメンを食べさせて欲しい、
天国の食事の風景ね」
「鼻に入れろってこと? 鼻スパのび太はやく食べろよってこと?」
「むきーっ、なんでそうなるの、わかった、
アンタの翼になるねじゃん、そういうとこだよ、むきーっ」
「弁護士を呼んで下さいってこと?」
「むきーっ、そうじゃないってのに、何で、世界の優しさに触れないの、
介護地獄、愛を忘れた時代の良心のひとしずく」
「トイレの雑巾で茶を入れてやれってこと?」
「むきーっ、違うってのに、コメダのたっぷりたまごのジャイアントピザ、
だってのに、だってばよ、だってのに、だってばよ(?)」
「たっぷりたまごのピザトーストだよ、何言ってんの」
「むきーっ、」
「たまごーっ、」
「むーっ、」
「きゅあーっ、」
「プリキュアみたいにあたしの内なる叫び声を、」
「アレンジして欲しい(?)」
「むきーっ」
「あの頃、わたし達には何処までも続く、
空があった。仲のいい友達がいて、
そいつはコメダのまわしものだった」
「むきーっ、途中までよかったのに」
「心のきれいな奴だった、
そいつは真っ直ぐにわたしを見て、
コメダの話ばかりをした」
「むきーっ、何で途中までいいのに、
どうしてポエムにしないの、その、
才能がにくい人間万事塞翁が馬(?)」
「そして風が吹いた、風の吹く場所で、
あたし達はより理解を深めようとした、
そしてそこはコメダだった」
「コメダコメダうるさいよ、なんでコメダなの?」
「行かないの?」
「行くけど・・・」
「この前、住宅街で中学生の女の子たちが、
仲良く歩いているのを見たよ、四人だったかな、
スーパーで買い物をして公園を通りかかったら、
その中学生、ベンチに座って、お互いのポケットに、
それぞれに入れていた、百合だ(?)」
「ちがうちがうちがう、なんで、そうなの、
ちがうじゃん、それユウジョーじゃん、ユウジョー、
え、なんで、そうなるの?」
「わからないかな、世の中が素敵だからだよ、
じゃ、コメダいこうかー」
「いや、コメダいこうかーじゃなくてー(?)」
*
355
エレクト
六三.四〇パーセントが、
「百回引いた時にレアを引ける確率」で、
自分が生まれた確率が奇跡的であるのに対し、
ゲームのように考えてみると、こちらが妥当かも、と思える。
何事も奇跡と考えるのは統計的な誤り兵どもの夢のあとの法則。
隕石に当たる確率は百億分の一。
こういうのはもう信用しないてふてふが韃靼海峡を渡つて行くの法則、
ショーシャンクの空みたいなジャケットで。
天気予報の的中率が八七パーセント、
じゃあ、信用しないこの味がいいねサラダ記念日の法則。
競馬で一番人気が勝つのは三五.一パーセント。
じゃあ、信用しない菜の花や月は東に日は西にの法則、
湘南乃風のライブかよってくらい振り回して。
統計や確率がデータなのか随分疑わしいけれど信じたくない、
生きる青さは琺瑯の舞踏、
春の雲の茜色の熱鉄の涙ならばとかわけわからんことを書いてしまう、
ルサンチマン、出生するガチャ、毒親ガチャ、マウントガチャ、
まだまだ終わらない、豚人間ガチャ、地獄度数ガチャ―――。
くっ、止まれない、まだ終われない、ガンダムっぽい台詞、
もうなんだったらニュータイプの台詞、いまじゃ新時代の台詞、
頭がおかしくなりそうだよ、あたしはアンタを信じる。
だからアンタもあたしを信じて欲しい、
ワンルームでカップラーメンを食べる確率を求めて欲しい、
あたしは今日、自分を超える――っつ・・!
*
354
About a world
without violence
朝の七時、ニュース番組は暴力を垂れ流す。
ヤクザやマフィア。愚連隊いまでいうところの半グレ。
だけではない、家庭内暴力。イジメ。
現実の暴力に結びつかないゲームプレイ、スポーツ観戦・・。
そこでは銃を持ったキチガイがいて、
そこでは斧を持って走るキチガイがいる。
まるで夢の中の化け物に追われているような気がする、
それはきっと僕等自身のメタファー。
世の中ではどんな行動も最善の結果だ(という言い方もできる、)
―――だとするのならば、ホームレスでも、野垂れ時ぬとしても、
麻薬中毒者でも、殺人者でも、それはベストだった、
仕方ないことだ、という言い方もできる―――だろうか・・?
権力による暴力、政治による隠蔽、
裁判官の腐敗、警察官の不正。
「人類の歴史に戦争は絶えたことがない。
記されていなくても、紛争はなくなったことはないでしょう」
―――と解説者は語る。
正確には二百六十八年ほど平和だったという時期があるが、
小競り合いや、殺人がなくなったことはまずないだろう。
チンパンジーから暴力は必要なものだったといことがわかるし、
暴力は最良の選択の一つだったということはそこから導き出せる。
「人を殴る」のが正しいと言っているわけではない。
「人を殺す」のが正しいと言っているわけではない。
食事を取る。生きるために生物を殺す、という事実が隠蔽され、
「美味しい」とか「不味い」と言う。
「好き嫌い」も存在する。
食物連鎖、生存競争。
何処までも終わりがない、
こんなシステムを作ったのは『神』だ。
(いいえ、神ですらもこうなるとはわからなかったかも知れない、
こうなると決めたのは生の作用だったのかも知れない―――)
硝子のドアを叩き始めるカンガルーがいても笑い話ではない、
熊や猪、ライオンや虎、鮫に入鹿も人類の脅威になりうる。
豊かで幻想的な心の内的風景は美しい方がいいが、
白い布をかぶせては折れ曲がって砕ける波は死を誘う。
銃で死ぬ。鉄パイプで殴られて死ぬ。
殴られて死ぬ。
一年中暑い気候のところの人ほど、キレやすく、
暴力的になりやすいというデータがある。
あながち否定的できることではないが、
(と真面目にそんな論文があるのだが、)
では、その人達を寒い気候のところへ連れ出したことがあるのか、
対照実験はやってみたのか?
本当にそれはフェアな論理になりうるのだろうか、
という、とても単純な事実を指摘したい。
論文が差別や迫害を助長している、ということは、
たびたび感じられてきたことであるが、
あなたは―――そのことをどのように思いますか・・?
もちろん寒いところでは行動しにくい、それだけのことだ。
しかしそこに「利益」があればどのような「暴力」も起こり得る。
ストレス発散させてやらなくちゃいけない、
人類はみんな平等だと信じさせてやらなくちゃいけない、
愛が一番大切なんだと心をこめて宣言しなくちゃいけない、
そんなのは時折すべて嘘やおかしなことのように聞こえるのだから。
抗議活動だって、国家権力と揉み合えば、争いの火種さ。
とても簡単なことだ、
僕等は頭と首に西遊記に出てくる猿のように締まる仕掛けを作ればいい。
あますことなく世界中すべての人に、だ。
そしてそれをAIや量子的コンピューターが監視すればいい。
万人から汚い言葉は排除されるだろ―――う・・。
淡い光が影のように水に映りながら揺れる。
そこに新たな襞が織られるということはない、
新しい問題がまた起きるまで―――は・・。
暴力が苦手という人もいる。
当たり前だ。
そんな人間がゴロゴロいたら法治国家ではない。
なんだったら、法治国家できない。
(血が苦手、人を殴るのが理解できない、
とてもいいことだ、)
そんな治安だったら違法に銃や爆弾を持ち出し、
街中のあちこちで凶悪事件が発生している。
(という可能性がある、)
それもまた「洗脳」だという言い方も出来る。
しかし僕等が動物なんだとしたら、それは「洗脳」だ、
国家がくみしやすいように僕等を作り変えているんだ、
人間社会には限界がある、文明の創造に破壊は付き物だ、
―――反論ができる、認めるか認めないかは別として、だ。
非暴力や、非武装はとても立派だ。
非核三原則は、世界中の手本になる立派なものだ。
平和宣言も、どんなに馬鹿げていても絶対に必要なものだ。
だけれど戦争の中ではそんな理屈は通用しない。
優先順位が変わる、状況次第で立場を変えざるをえなくなる。
確率の問題に見えてくる。
確率を出すなら、すべての人間を根絶やしにした方が早い。
平和的で友好的な人間も存在する。
だが、見て見ぬふりをするだろう。
それは犯罪を犯す人間よりずっと重い罪だと感じられる。
何もしない人間は何かを変えようとする人間の邪魔をするからだ。
僕はそういう人間を沢山見てきた。
われわれの敵は、友好的なものの中にも存在する。
「自分はいい人間だ」という奴を僕は絶対に信用しない。
「自分は優しい人間だ」という奴を僕は絶対に信用しない。
おそらく、平和や戦争をなくすなんて人類には無理だと、
早々に簡単に切り上げてしまった方がいい。
痛みなんか感じる必要はない。
どんなに美しい場所でも惨劇は行われうる。
不毛な問い掛けがそれでもなくならないのは、
それが涙や、瞬きのようなものだからだろう。
無数の鉄砲を吐き出す寸前ですべてが決壊した、水・・。
「自分を解き放てよ―――」
が、正しいのか?
「暴力は最高に気持ちいい、
戦争では極悪非道な行いが行われる、
軍隊って最高にカッコいい、
軍隊マニアになりたい」
が、正しいのか?
(「あの人はできるのに―――君は本当に駄目だね」
「根拠は? 科学的に証明されてるの?」
「どうしてこんな簡単なこともできないの? おかしいの?
え、そんなこともわからないの?」)
―――言葉だって殴られたのと同じ感覚を与えられる。
説教だって報酬系の成分が脳内にドバドバ出る。
決闘は法律で禁止されているが、
もちろん見えないところでは行われている。
ストリートファイト。
腕試し、力比べ。ユーチューブの動画では、
フードファイターさながら大食い動画と同じく、
かなり不気味なジャンルだ。
だって、死者が出ている。
おおよそ、世間の風当たりだってよさそうなものじゃない。
ボクシングはわかる。プロレスもわかる。
空手や柔道もわかる。
だけれど、その人達が力の意味を誤解しているということはないか、
いや、最低僕等がそれを観るのは、眺めるのは、
殺し合い、殴り合いが好きな生き物だからだ。
欲望の代替を通して興奮して胡麻化してんのさ。
派手な演出、頭の悪そうな話がそいつらの大好物。
一種の宗教的な理由ですってことですよね・・?
僕だって根本はそいつらと大きく変わらない。
闇に影を宿して夜の世界はもっと美しくなる、
だって、「生きている感覚が欲しい・・」
世界中では五人に一人が、
レ イプされるか、レ イプ未遂に遭っている。
将来、暴力を予測するシステム、事前に察知するシステム、
通報するシステムにいたるまで大きな変化がある。
監視社会は公共的な平和のためにもっと加速する。
「ここまでが正義だ」と思っている奴の顔を見ながら。
「ここからはグレーだ」と思っている奴の顔を見ながらね。
人間自身の問題は人間自身で解決するしかない、
その神はやっぱり僕等が作り出した幻にすぎないのだから、
僕等自身の中で善悪が生まれて、性善説や性悪説、
はては本能だか遺伝子だかにまで問題を拡大したのだから、
違う、僕等はそもそもそんなに素晴らしい生き物じゃない、
野良犬や野良猫と変わらない、それだけだって言ってんのさ。
「暴力に対する復讐が尊ばれるのはいいことなのか、
という疑問がある人もいる―――けれど、
やった側とやられた側では不公平が残る。遺恨が残る。
仕返しや仇討ちの代わりになるようなものはあるか?
人の心から悪夢が去るということはあるか? 本当に―――」
社会的・経済的不平等から生じる敵対意識、
人命軽視の風潮、アルコールや薬物の乱用。
児童労働や、児童婚。
暴力は何処で生まれたのだろう・・?
僕等は暴力に匹敵する平和的方法を本当に見つけられるのだろうか・・?
*

beautiful words
「ブスって言葉を聞くと、
安心します」
「IQが低くて、人間の言葉を知らなくて、
文明生活ではなく孤島で暮らしている、
そういうことですよね」
「猿なんだなって、
思います」
「カモメメソッドでは、
褒める訓練が重要視されます。
他人を傷つけない姿勢で、
一切の問題行動を排除します」
「詩人は美しいところや、
可愛いところを見出そうと努力します。
詩人は、長い間、化粧術や、整形手術について、
考えてきました。服装や、装飾品についてもです。
劣等感の克服が必要だと思ってきました。
けれど、救済措置がそこにはないと知りました。
努力なしにきれいな言葉は生まれません」
「人を知ることを始めたのです」
「いいところの一つを見出せば、
どんな人間でも美人だ」
「そうではない人間って動物なんだな、
寄生虫にやられちゃってるんだな、
遺伝子や、本能ってどんな姿でしょう。
生存競争って絶対蛆虫ですよね」
「詩人が愛したのは矛盾であり、
その力関係の共存する一瞬の揺らぎです」
「ねえ、豚ってすごくきれい好きなんです。
放尿する牛がこっちを見たまま、
眼を離さないのが可愛い。
どんな醜いことにも、
許す心が必要です。
許すということは愛です。
愛されるのではなく、愛する以外に、
何もかもを受け入れることはできません」
「石がきれいだって思いませんか、
水もきれいですよね、
生命活動を伴う思考のそもそもが、
醜いんですよね。言葉や意志を伴った空気、
その息がありえないほど臭いんですよね。
腐敗してる、公害ですよ」
「詩人はルサンチマンに触れ、
環境や、運命というものに、
人知れず心をいためました」
「醜いという事実よりも、
醜いということを加速させている、
劣化させている要素が、
人との生活による比較です」
「詩人はこの心理が長い間、
よくわからなかったようです。
恵まれた詩人は、
他人を悪く言うことを避けてきたからです」
「変化は人生に付き物です。
毒の芸術、悪魔の祭典、地獄の見世物の始まりです」
「そんなにブスなら、
無人島で暮らせばいいじゃないですか、
誰もいないのが君の楽園だ、
けれども、人はそうすることはできません」
「嘘があるんです。
その嘘が病気なんです。
社会という空気に接触した病気です」
「ロマンティックなことを考えて下さい、
多分あなたの答えは間違っています」
「詩人はロマンティックなものを、
絶望的な要素との接触による二次災害、
場合によっては三次災害と考えます」
「好きな男性の眼を硫酸で焼いて、
失明させて、一緒に暮らせばいいんですよ。
可愛い声や、きれいな声で話続けたら、
相手はずっと勘違いしてくれます。
あとはかいがいしい世話、
美味しい料理、セックス、
それと引き換えに命までも含めたすべてを委ねる、
ロマンティックでしょう?」
「ロマンティックとは、
悲劇の別の名です。
詩人がロマンティックなものから、
醒めていったのにはこのような理由があります」
「手続きですよ、そう見えるフィルターがかけられ、
そうするのが自然だという思い込み、働きかけがある。
そういう前提条件や、鋳型、ステレオタイプな発想が、
とことんまで憎悪できたら、
誰かを悪く言おうとはしません」
「構ってほしい、自分は正しい」
「無視する。何も言わない。
とどめをさす必要はありません。
自滅するからです。
寒くなればゴキブリは勝手に死にますし、
蜘蛛がいれば食べてくれます」
「わたしは蜘蛛が好きです。
毒を持ってる蜘蛛、大きい蜘蛛が好きです。
網を張って、みんなを眺めています、
それは強いからです」
「傍観者ではなく、監視者です。
この世界は刑務所。監獄のようだと、
そう思いませんか?」
「詩人は、社会から逸脱できないジレンマではなく、
むしろ、社会から逸脱したい様々な人の心の壁の、
迷路について考えました」
「詩人の最初の出発点は、何処へ行くのかという問いかけでした。
次に見出されたワードが魔法でした。
けれど詩人の悩みはあまりにも深かった、
深淵を覗くようになった瞬間から詩人は深淵そのものでした」
「すべてを壊すか、最初まで戻るかのどちらか」
「心を持ったということこそが、病の始まりなんです、
世界は明るくて、暗いという、心。
何も比べる必要はない、最初からそれはそこにあった、
あなたは何も見ていないし、あなたから何も見る必要はない」
*
352
本当はきっと
そんなこと
最初から知っている
The truth is,
I'm sure you've known that
from the beginning.
目覚めると、【十年間】過ぎていたらどうしよう。
そんなことを考えていた、「夜」もあった。
ぼんやりと考える、こんな風に考えながら眠れない夜を過ごしている人は、
世界中で何人いるだろう、と。
もしいまこの瞬間に限って言えば、たった一人かも知れない。
そのたった一人がもし傍にいて、何かを話しかけてきたら、と。
生命としての固体、という考えがふとよぎる。
唯物論的な価値基準に囚われ過ぎている神の見方。
目覚めても起きないと言われる人になりたい。
日曜日は枕を掴んで離さない。バディー。そしてダーリン。
ぼんやりと薄暮の中に溶ける山の景色のように曖昧になる、
夢は津波のように押し寄せて鯨の口にひと呑み。
keywordが追加され『人生』
keywordが追加され『365日×(年齢)』
凍り付いた巨人の夢を見た。
その足は昆虫で、
その手は無数の蛇で、
その胸は見たことのない機械で、
その頭は花の種子だった。
リアリティがない、空虚感が漂う、離人感もある、
遠近感がおぼつかない、不安さえも何かの象徴のように思える夜。
自分の知らないことは【空白】になってしまう、
無防備な瞬間は眼を開け続け、「涙」が出てくる。
花の匂いや、味覚が、夢の中でもするのは何故だろう。
淡い言葉が、切れ切れに洩れ出し、
それが鼓膜に貼りついているような気がする。
体内の或る一部分の細胞が―――。
[言葉が割って来る]
状況も違うし、役柄も違う。
/侵/蝕/
でも基本的なパターンは同じ。
「布団の感触や外気の匂いが五感とともに、
シェイクされる」
「カクテルの完成さ」
/違/和/感/
悪夢のような夢のあと、現実の感覚が胡散臭くなる、
その権力と支配力と優位性の中で、
「大丈夫ですか?」も、
心配する能動的立場と、心配される受動的立場。
人はちょっとのことで壊れやすい、
しかもそれは、外側ではなく内側にあるのだ。
驕った考え方の持ち主は、
いつまでも自分が世界の中心だと思いたい。
中華思想と変わらない。
世界の活発な経済の中心はもう中国ではなく、
インドへと移り変わっていくし、
今後グローバル的な思考の中で切り捨てられていく。
必要なのは思いやりや、
相手の身になって考えられる心のゆとり。
交通事故がルールを作り、
標識や、速度制限が生まれた。
だから飲酒運転に罰則はくわえられた。
最初からあったわけじゃない、
最初からもしあったなら、
みんなはそんな風に考えなかった。
唇がくちばしのように尖ってゆく、
そんなこと絶対にあり得るはずはないのに、
そこではそれが「真実」だ。
ジョン・レノンの「イマジン」のメッセージ、
世界はひとつになるんだ。
純粋経験という響きに打たれる。
先天的なものという考えに打ちのめされそうになる。
誰かに決められている、何かに操られている、
そんな気がする夜は心がやけに冷たい。
海の上を歩けないというのがとても不思議に感じられる、
液体という考えの中に酸素が運ばれてゆく。
可動半径を己の形や性能で把握して、
無意識にフォーカスしているものは実際のその一日の、
自分の感情なんだろうか、
そうだとしたらこの感情は明日も生成されるのだろうか。
その方程式や図式を考えていると同じものであることは、
たまらなく嫌だった。
数学的な答えの中に変化はない。
変化を作り出すものはそこから離れるのだ。
砂糖と塩は同じ色、雪の色、白鳥の色、
けれどもそれは「骨の色」
keywordが追加され『眠り姫』
keywordが追加され『夢と現実が入れ替わる』
ここでは、百年前と景色が一切変わらない。
きっとそれは、百年前の影がもつれて蝶になっている。
*
351
重力の函
box of gravity
部屋に髪の毛、誰かが座ったあと、
コップがあれば唾液といった具合に、
考えれば探偵気取りになれる。
長い髪の毛なら女性かもしれないし、
座布団や、ベッドでも、くぼんだあとから、
男性や女性を推察することはできるかも知れない。
唾液や指紋は、鑑識の仕事だね。
部屋の扉が閉まっていても、
不自然にコーヒーがこぼれていて、
失踪していたら誰かがいたことがわかる。
たとえば財布がなかったら物取りだけど、
これは偽装かも知れない、お菓子を出しているからね。
人間の暮らしって、
巨大な蟻の巣穴みたいに思えるんだ。
ファンタジーなら可愛いだろうね。
このパズルや知恵の輪がもたらす、
ものは、アドレナリンだよ。
本当の君を教えてくれよ、
その素顔を白日のもとにさらしてくれよ、
君は私の可愛い「モルモット」さ。
知的好奇心というのは、
【病気】なんだろうね。
時々、考えることがある。
犯人はいなくなったと見せかけて、
隠れているんじゃないかって。
冷蔵庫や箪笥、押し入れから続く天井裏。
そして真夜中にそっと逃げ出すんじゃないかって。
だから隠れられそうな場所は最高にドキドキするよ、
ただそんな根性のある犯人はあまりいないけどね。
連想ゲームなんだよ。報告、連絡、相談のようなパターンなんだよ。
ある単語があると連想が働き、会話をつなげる。
そしてとある発言から思いがけない景色が広がる。
最初と最後では全然別物になる、まるで魚が空を飛ぶようにね。
ピストルを発射する心理って十中八九、
相手を殺す目的だ。
改造エアガンを発射する心理とは、
少し違うんだ。
殺傷性があっても、
それが、人に向けられないからね。
「わたし」が「あなた」を見ているのは“愛”だ。
これはもう完璧に歪で究極な愛と言っていいに違いない。
「わたしはあなたになりたい」のであり、
「わたしはあなたそのもの」なのだから。
犯人を追い詰めていくというのは、
同時に犯人そのものになること。
こんな風に殺したんじゃないか、
こんな風に死体を運び出したんじゃないかってね。
ひとつながりの出来事の一環が、
「事件」なんだ。
アリバイを見ているとドキドキするよ、
どんな心理で、どんな表情をして、
なんて考えていると涎出てきそうになる。
年間失踪者数は交通事故より多い。
不思議だよね、でも借金があれば夜逃げ、
漫画なら臓器売られてかも知れない。
でも現実に借金をするような輩はとことん屑かも知れない。
そこを、部屋の清潔さ、から見たりする。
本当のところ推理なんていうものは、
ノリのよさでしか説明できない。
推理オタク自身が人間を誤解しているのさ。
推理なんていうのは光のあたった場所に生息しているだけ、
闇の中から引きずり出したら腸が出てくる、排泄物が出てくる、
A Vが十本見つかったって健康だなで済むけど、
千本見つかったら異常なんだ。
動画サイトにお世話になってるかも知れない、
でも人はその光の中の見えるものばかりを重視する。
可能性も空想の域を出ず、
状況証拠ばかりの推測、
それでも―――という、
“IF”がミッシングリンク、
脳内でせめぎあう。
風に形を変える枝が向きを変えるようにね、
その葉がひと連なりの方向になる―――。
わたしは裁くんじゃない、
わたしは壊したいのさ、その重力の函をね・・。
*
350
Convenience store in love
コンビニ店員に、
気になる女の子が出てきても、
その子は大抵、
「彼氏持ち」か、
「男性店員」と付き合っている。
美人であれば競争率が高い上、
すぐに辞めてしまうこともあり得る。
また「美人の見ている世界」は、
(「イケメン男性の見ている世界」は、)
違うというのもあながち嘘ではない。
顔面偏差値があるとお客の反応が違う。
無意識にチヤホヤする。
これは動物の子供が、
きらきらして可愛いのと同じだ。
化粧術とか整形では誤魔化せない類の、
性格の良さは、
やさしい世界で育った証だ。
ただ、ひねくれた人々にやっかまれた、
自分の顔が好きではないという、
追加特典もありうる世界。
馬鹿な奴がいて、
店員さんが好きだから、
わざとぴったりお金を出さないとかいう。
お釣りを渡す時に手が触れ合えるからだ。
(「チェキ権?
アイドルサービスタイム?))」
名前教えてよーとか、
(名前の書いたプレートには、姓名しか、
書かれていないからだが、)
やっている人がいた。
(弁当あたためますかーのシーンで、)
「〇〇ちゃんに温めてほしいなー」とか、
言った瞬間の破壊力を考えろ。
どけやオッサン、しばきあげんぞ、と言いたい。
居酒屋でも、ファミレスでも、所構わず、
口説き始める奴がいるけれど、
同性ながら気持ち悪くて仕方がない。
「自己を律する」とか、
「人に優しく自分に厳しく」とかいうのを、
四十手前にさしかかって、
大抵誰もしないんだなと知ってすごく驚く。
劣等感や、性格に影響を与える出来事が、
様々な人間のタイプを作る。
気持ち悪い人間がもしいるとして、
それを「気持ち悪い」と口にするのはきっと違う、
これは社会が作り出した「蟻」なんだ。
さて、相手が無意識に前髪に触ったり、
自然に顔、名前を覚えてもらえる前提があり、
いつも買うものを覚えていてくれて、
眼で話す癖があるような子が、
「お友達にならなってもいいかも」といわれるなら、
掃除や商品の陳列をしている時に、
サッと連絡先を渡すのがいい。
口頭は絶対にやめておけ、相手にも仕事がある。
そのような思いつく限りのことを簡単に言ったら、
全滅だったらしい。それはそうだ。
結婚を前提の恋愛をしたいならお見合いをしろ、
金出しゃキャバクラの女の子は優しくしてくれる。
傷つきたくないけれど恋愛をしたいというなら、
恋愛アドベンチャーゲームが一番。
ソフトなら、ラブコメの優しい世界だろう。
あのね、コンビニ業務だって立派な仕事だ。
誰でもできる仕事、底辺の仕事という人もいるけど、
いやそこまで思っていないという人もいるが、
コンビニ業務は接客業というふるいにかけられるし、
(僕は接客業なんて絶対無理だ、全人口の五十パーセントは無理、
と考えながら話すのだが、)
レジ打ち以外、鮮度チェックや商品の品出し、揚げ物など、
店員に自分の顔をあてはめて現実にそれが仕事のケースを、
想像してみろ。
IQ三十社会はすぐ終わる。
嫌な先輩や、優しくない上司がいるなどとも合わせて考えてみろ、
文明四流国はすぐ終わる。
自分がされたら嫌なことや、気持ち悪いと思えることを、
他人にして好意を持ってもらえるか考えてみろ。
確率を上げるのではなく、
下げる行為は見ていると一切納得がいかない。
普通や、常識、当たり前、みんなが納得いくかどうかを、
パーセント表示で考えてみるのをオススメする。
覚えることは沢山あるし、
向き不向きもある。
もしライフラインのバイトなら、
彼女は「仕事をしに来ている」どころか、
「生活を安定させるために働いている」のであって、
「彼氏を探しに来ている」わけではない。
人生におけるタイミングという要素を見逃しながら、
生きているという人は世の中数学なんだ、
様々な計算式、方程式なんだよということがわからない。
まあもちろん、世の中には例外がある。
ただそんな例外を口にする時点で、
人生うまくいっていない証拠だろう。
*
349
探偵の朝
エレベーターに乗る。
その狭い空間では、生乾きの洗濯機になったような気がする。
幼稚園に通う魚の眼をした子供と笑顔が嘘くさい母親、
時々ヒステリックブルー(?)
肩にナパーム弾を持っているよくいるサラリーマン、
地雷原へ七人の敵、ご苦労様です(?)
絶賛ニートのフードを被る男、
散歩へ悠々自適と見せかけて職業案内所だろう、
働いたら負けって言えよ、
生きているだけでごめんなさいって言えよ、俺が言う(?)
そしてキャラ成分のまったくない幼馴染。
ありえないほどの美少女か、三度見返したくなるレベルの、
ブスがよかった。鞄持ってあげるだけで優しさポイント。
善行好きすぎて脳内エンドルフィン中毒、ふひーっ(?)
学校の通学をしながら、
「アンタ、妄想も結構だけど、
あんまり他人をジロジロ見ないの、
喧嘩になるよ、人にはそれぞれ理由があるの」
「人間観察の、俯瞰の、探偵的資質の―――」
「あのね、推理能力は妄想なの、そうじゃないって言えば、
そこで終わるの。たんに出てくるキャラがみんなノリいいだけ、
でなきゃ、違反切符切られてゴネるなんて存在しないの」
「―――という説もある(?)」
「こいつ、マジでダメだ・・・」
*
348
弱さについて
救われないと、大人になるのが嫌になる。
風邪を引いた肉食動物。
人生の障害は、誰でも一つ一つ、
簡単にクリアしているわけじゃない。
人生の道に迷ったような顔、無秩序な霧のような顔。
時間の速さは違う、モチベーションも違う、
けれどその貴重な経験が大きく異なることはない。
仮にそうではなくとも、そこで踏みとどまれない人も、
大勢見てきた。
ハンディキャップがあると思い込まされて、
人生の泥沼から抜け出せない。蟻地獄のような過去、
立ち向かうまでいつまでも追いかけてくる過去。
眠気や苛立ちのような、過去。
最後には拒絶が待っていて、最悪は自殺する。
上の空の態度、無脊椎動物のような心。
複数回におよんで伝えて、理解させて、
認識させてもまだ相手の心には届かない。
ガードが固い。
そんな大人でも難しいと思う子供が、
感情の素直な子供相手には相当難しいだろう。
骨が折れる。
泣きじゃくった子供を泣かすままにする選択をして、
一時間ほど傍にい続けた。とても疲れた。
けれど、逃げるわけにはいかなかった。
逃げてしまったら拒絶される。
次はない。けれども相手の言い分と、
戦わなくてはいけない。
小さな子供の背負った過去のあと、
これから訪れる更に過酷な人生。
泣きたいことは沢山ある、薄目を開けるのも嫌なこともある、
前に進んでいる保証もない、その上、
馬鹿はありえないほど溢れている。
強くなるしかない、頑張るしかない、
眼を開けるしかない。
でも強くなりたくない、頑張れない、
眼を開けたくない、本気でそう言う子がいる。
涙も雨も嫌なものだ、眼を逸らすぐらいなら、
濡れていたい。
*
347
私
縄張りの観念のように明日も同じ話をする。
そこでは逆説が真理であり、矛盾こそが信仰だ。
首を思い切り左に曲げ、夢に見るような笑い。
許可が不要な制度は別に目指さなくてもよい・・、
普段から注意しておくことでうまいことバランス取れる、
精神調整。
弓なりの魚と、
波の後ろや前へと走る波―――。
幾何学的な線を持った、その境界線で、
たちまち「昨日の自分」と、「今日の自分」が、
概念的な言葉の強度に守られて、
問いとして守られている鏡像へと意識が、
吸い込まれて、別の怪物になっていく。
両義的に見えるものは異質化で、
複数のおびただしい流れや混淆にさらされる。
無限性を帯びているものは確率化だ。
口承や儀礼や慣習の無数のヴァリエーション。
条件次第で定着を強めていくから、
それは『テセウスの船』なのかも知れない。
あるいはその曖昧模糊とした感覚こそが、
『メビウスの輪』ということなのかも知れない。
わたしはわたしを殺す。
わたしがわたしとして生きるために。
同時並行世界では、印象を辿る鏡の世界では、
赤ん坊と老婆に遭遇することもある。
それは癒着という既知の硬直した自然な宇宙的現象だ。
無学と博識の大きな違いですら、
常識のレベルに達するわけではない、
歴史を形成する突出したドラマチックな出来事の影響ですらも、
中央の号令、鬨の声、アイデンティティを統べるものではない。
ここでは本質だけが鴬の笹鳴き―――。
見えない壁の中で、脳味噌は皮を捲ったように、
赤味を帯びていて、追及や断案にこだわらず、
まったく新しい場面が、夢想する境涯の中で生成される、
死んだ後の彼女はそこにいて、
生きる前の彼女もそこにいる。
懐かしい記憶が希少なデータを飛び石伝いに、
ちぐはぐな、しかし純粋な起源へと向かってゆく。
「人生とは何?」という問い掛けに眩暈がした。
人生とは有限のものだ、有限とは可能性に限界があることだ。
けれどもすべての姿が表に出ている時に、
裏というものが存在しなかったら人生は無意味なものになり、
それでも無謀なほどに大胆に推論するだろ―――う・・。
怠惰や罵り、卑俗や嘲笑、様々な声、視点、語りが、
意味をなさないそこでは神話と都市伝説がハネムーンをして久しい。
わたしは名前や性別を失い、
いまでは自分というものすら失っている。
*
346
よくある少年の悩み
先生、昨日からうちの母親が、
猫語で喋っていてすごく気持ち悪いんです。
家庭内暴力に走るべきでしょうか、
それともそこはいい息子を演じて、
一緒に猫語で付き合ってやるべきでしょうか。
あと、警察に通報すべきかどうかだけでも、
判断を仰ぎたいです。
父親はそれを見て泣いていました。
父親は仕事が忙しく、残業も多いので、
そういう時に泣きたくなる病気なのです。
先生、あと、一つだけ正直に答えて下さい。
嘘をつかず、ありのままで答えてください。
家出をしてもいいと思いますか?
*
345
実は肉食獣なんですとみせながら「くまくまー」とかいうのだ、
こやつのあざとさ。スーハースーハー、
いや、待て、皆の衆、これがもし幼な妻であった時に、
そこにはメルヘンチックな要素や、少女趣味は残るのか、
と推察しながら、はたして可愛いものを好む女性というものは、
何歳までが許されるのだろうかという疑問を禁じえず、
それでいてなお、「俺の嫁」というアニメの少女が歳をとらない、
不気味さをつくづく味わいつつ、
もう一種のミステリーハウスだよ、精神と時の部屋だよ。
外国人がそれをして日本のロ リコンビデオと称しても肯け、
だから日本はオ ナニーしすぎなんだよと思われ、
だが待て、いつか歳をとらない、
遺伝子治療が整形手術並みの値段で、
それってつまりは、人がなりたい自分になるということで、
憧れだった少女漫画のヒロインをずっと追いかけられるかもしれないことで、
それが世間的にどうかはともかく、
一種の初音ミクを愛してしまった男性とか、
一種の人形化してしまう性癖の人とかにも似ていて。
また、それは実は男の娘でしたということもありそうだなと斜に構えつつ、
これが驚きもののき二十世紀のグロさってやつ、
でもニューハーフにハマるっていうのも普通なのかなー。
本当の可愛さって「ナカノヒト」ってことみたいな毒を入れつつ、
演出家ってこと、設定の妙ってことと思案めぐらせメグ・ライアン、
ひゅー、馬鹿なことを言っちまった、馬鹿なことを言っちまった。
僕はただ、くまのぬいぐるみとか、テディベア―という響きに、
一抹の淋しさと、喜びを齧るうまのほね。
「くまくまー」っていいじゃないか、可愛らしくて。
実年齢百二十歳だけど、どうみても見た目は十四、五歳の、
超若作りババアだっていいじゃないですか、エルフ年齢、
スーハースーハー。
でも百二十年も生きて「くまくまー」とかいう奴が、
そんなマトモな性格をしていると思いますか、詐欺も詐欺、
僕が言いたいのはそれ、でも男は馬鹿だから騙されます、
十中八九じゃないよ百パーだまされます。
搾取されるアニメ業界にオタクは、
だから出しすぎなんだよといわれます、色々なところが。
願望が実現すると肉体よりも精神が尊ばれる風潮になるかなー、
ならないだろうなー、未来って、くまくまーだ、ガオー。
*
344
「無垢」という言葉には、
桃の皮をゆっくりと剥くような、
気恥ずかしさがある。
昨日がどんな日だったかを、
話すのを躊躇うような行為をしたあとで、
美しい音楽も、美しい絵画も、
美しい映画も、美しい小説も、
その姿かたちを変えてしまう。
人と話すのにも緊張する、
苦手なことを努力して、
克服しようとするけど上手く出来ない、
そんな―――そんな、神話のような時代の、
ルートバスや、バス停裏の花壇のような、
移ろいやすい「無垢」というもの。
少年期のある日、
僕は頭がいいことよりも悪い方が賢いのだ、
と本気でそう考えていたことがある。
女性はしなを作り、喋り方を変え、
服や化粧を覚え、ファッション誌や、テレビの向こうの、
よくいる美人みたいに中身がなくなってしまう。
脳味噌は水を吸って膨らんだ市販の熱冷ましみたいだ。
本当の自分を認めようともしないで、
そこから一歩も足掻こうともしないで、
表面上のことばかりが世界なのだという、
僕はそんなかったるいことに、
一秒も時間を使いたくない。
神経が通った呼吸、
相手にではなく自分と向かい合う姿勢、
答えが違っても、その相手ではなくとも、
そこにきちんとした意味が生まれる、
そんな恋に火傷のような引き攣った痛みが残る、
その痛みが君の顔付きを変える。
*
343
目先の優しさから離れて、
「羞恥み」や、
「弱さ」や、
「未熟さ」が、
しるしをつけてゆくのを感じた。
胸がいっぱいになるほどの、
優しい気持ち―――と。
満たされて暖かい胸がざわついて、
波が打ち寄せ―――る。
世界の認識の隙間に、
ふとした拍子に浮かんだ、
眼に見えぬ壁にふと手が、
偶然、触れてしまった―――とき・・。
世界がズレてゆく、
本当はそうではないのに修正されてゆく、
どうして狭い範囲内で、特定的に、
愛を用いようとするのかその理由がわかる。
きっと君にもわかる、長い旅をして、
いつか君にもわかる、幾何学的な線を持った雲の連なり。
きらきら光っていた、
木漏れ日の優しさは、
誰かの目尻のように潤んでい―――る・・。
胸が痛いほど、切ないほど、
言葉に詰ま―――る、
それは衣服を一枚一枚剥ぎとってしまう、
疲れた熱い眼の―――なか・・・。
子供のようにはいられなかった僕等を、
君は思い出すだろう―――か。
覚えているだろう―――か、
小さな身体に大きすぎる心があったということ―――を・・。
*
342
世界の外れたネジを見つけに行こう
駅前の華やかさを演出するのは、
デパートや、商店街―――。
東西に狭く、南北に短く斜めに伸びて縦横に、
シノギを削る銀行と英会話教室、ファーストフード店、
整骨院、賃貸住宅。
居酒屋、ファミレス、飲食店・・。
そこでは万華鏡を動かすたびに、見知らぬ文字が飛び込んでくる。
やたらと古い店といつのまに出店したのかという新しい店が、
混然一体となりながらカオスな空気を作り出している商店街。
嫉妬や自己嫌悪等に陥った弱い精神状態に共感を求め、
逃げ水みたいに飛んでゆく凝縮した看板率。
販売網とそれを追跡する眼が拒絶する思想に思えるのは何故だろう。
拒否するでもなく受け入れるでもないと見せかけながら、スッと、
路地裏に入る―――と室外機や、不穏な店、安普請。
中国のハリボテオリンピック街だろうか、いや、これが押し入れ収納術だ。
襖を開いた瞬間、爆発する。
灰皿や自動販売機もあり、電話ボックスもある。
ペディグリーチャムの空き缶に水が溜まっているかも知れない。
隠れ家的な店も存在するのだが、
つげ義春のように追い出された人だけが持っている、
途端にいかがわしい雰囲気が醸し出されがちで・・。
溺れた人々の霊について考える、
象形文字の線を遠く引きなが―――ら・・。
そこにいる人々はといえば、
タイムウォッチで競技の準備をしている歩きスマホに、
背を伸ばすウォーキング講座に、
自転車のハンドルにカバーつけてるおばさんと相場は決まり。
一切何の根拠もないけれど、
十五年ぐらい前から何一つ変わっていない気がする。
僕の十五年は、シュタルンベルガー・ゼー湖という気取った言葉、
水蜜の皮のように剥け始めた良心。
女性たちはファッション雑誌の中に、
これから撮られにでも行くような恰好をし、
インスタグラム脳のようにしか見えない。
ふえるわかめ並の想像力とちょっとの刺激で密林になり、
そこには中国三千年の至宝、パンダが笹喰ってる。
行商人の薬は売れ残り、
豊かな襞の匂っているドレスみたいないらないものが残った価値観。
だから通販で買ったドレスは全然別のものが来る、
ここまで違いますか、いいえ違いますともみんな泣き寝入りする。
男性はサラリーマン姿以外はどうもあんまりパッとしない。
ここは、ルサンチマンに溢れている。
露骨なぐらいファッショナブルな男性は、
過疎った商店街には来ない。
舌が馬鹿でなければ思いつかないような脂ぎったものを好み、
ヘドロを舐めるような描写まみれの胃痛促進で、
こういうところに殿堂入りのデカ盛り店が存在する。
水飴のように粘りついた泥のような眼をした者だけが、
入店を許される。
競馬狂い、パチンコ狂い、脛に傷ある連中を誘い込む蟻地獄。
ストレスを誰かや、社会にぶつけて、共有化する。
ゼロにはならないが被害者じみたストレスは低減される。
そこでは「支え合い」などというものは存在しない、
「もたれ合い」「もつれ合い」が究極の下町思想。
マグロは寝ている時も泳いでる、という雑学を思い出す。
だけれど影をなくした集積思想が、
ピーターパン・シンドロームであることは周知の事実である。
スヌーピーやドラえもんが歩いていてもいいような気がする、
それがどんなに冬の雪が残った夜行列車であるとして―――も・・。
ロマンスも起きない、人生に起伏がない、
それでも消化試合のような人生を過ごしている。
優勝って何だ、タイトルって何だ、
リストアップと脳内整理の帳尻はもう向こう十年合っていない、
そこでは後ろ向きな思考とその場凌ぎの刹那的な生き方の、
鬱屈したもので溢れ切ってXで悪口を言うしかない。
あと、Xに呑まれてFXで借金作ってる。
とはいえ、無個性のモブには言い知れないほどのNPC感があり、
もっと今風に言えば、AIの実験による仮想市民生活感があり、
不潔感しか生まれないジメジメした蛞蝓を一つか二つくっつけた、
ゾンビのくせに普通の感じで、ナチュラルチーズの分際で、
店に入っていくので不思議な感じがする。
まるで呪文で呼び出されるお化けみたいなのだ。
怪談話を拾いに行くような意味合い以外の実用性はまったくなく、
そうでなければ片頭痛になるような吸引力を持つブラックホール。
未成年立ち入り禁止の札をつけるのが優しさのような気がする、
菜の花畑を歩いている山下清はかろうじてセーフ。
だが働かない蟻のように職務から生まれる否定的な悪が逆の立場では、
どうしてこうも魅力的なダルさを作り出すのだろう―――か。
育ちすぎて形を崩した野菜や果物のような凸凹具合。
存在自体がどぶ川で、メロンの皺と蛸の頭部。
充電しすぎた配電盤のような壊れ方をした駅前商店街モデル。
ぐるっと三百六十度、漫画の見開きみたいに、
眺めるのはまったくオススメしない、
そこに見るものの価値など存在しないからだ。
時計が狂うどころか、長身と短針を入れ替えるか、
ねじって時間を二つぐらい指しているような涎切った気配―――。
よくよく見れば、二十四時間のネットカフェやカラオケなどもあるが、
何だかあまりパッとしない、でもそれが生活の疲れというものだろう。
全身の神経と筋肉に力と活気を与える食べ物の匂い・・。
街が鏡であるような、街によって自分を思い出すような、
自己言及的な絵画のふるまいができる者は一握りしかいない。
ふと目についた街頭広告は悪目立ちし、
マスクをつけた女性有名人がデカデカと写り、黄ばんだ印象で、
「写真写りも鮮やかに」
という刺のあるフレーズまでが何故か気色悪い。
だのにジャミロクワイみたいに見えるのは何でだ、と自分に問いかける。
ジャミロクワイを久しぶりに動画で観たら、
蟹漁のおじさんみたいに見えた。
*
341
赤
真夜中は暗く、
当たり前のように誰の姿もなく、
遠くの物音が意外なほどハッキリと耳に届く。
何かを追いかけているパトカーのサイレンがした。
速度違反の取り締まりだろうか。
ロックはひとたまりもなく外れ、
時間は忘れ物のように落ちてゆく。
「表」となる項目に問いを、
「裏」に答えを、書く。
年末年始の定番「警察二十四時」を思い出す。
制作費が安く、一定の視聴率が見込める。
警察は副収入禁止だからギャラもかからない。
民放が求める番組の象徴。
「職質」「逃走」「違法薬物の発見」というセオリー。
僕もジャーナリズムについて考える時分までは、
こういう過剰な正義の形も、
必要悪と同じものだと考えていた。
ごくごく一般的で、良心的な、市民の思想である。
枯れ葉が腐って朽ち葉になり、
雨水に湿って泥をかぶったのはいつからだろう―――か。
サイレンは溶けるように遠のいていき、
唐突に途絶えて消えた。
ダンボールの組み立てのように簡単にシミュレートできる光景だった。
理解速度を超えてくる言葉の奔流でも想定可能。
止まらないならなおさらだ。
速度を調整したり適宜止めたり。
少し巻き戻したりをちゃんと使えばよい。
そう思うだろうという声は聞こえなかった。
そうだ、撮影中に死亡事件が起き、
警察官は実刑を受け、
その映像はといえばすべてを白日の下に録画していた。
法的証拠になる。
まさに歴史的瞬間、決定的瞬間である。
だが、それを警察側は取り上げた。
箱型の赤色警光灯が回転する。
「警察の者ですが」という紋切り型の台詞を思い出す。
頭の中で再生産される触角の声。
放送局は渡した、
残酷に葉を喰い荒らす毛虫のようでありながら。
放送を望む声もあがったがシャットダウン、
不協和音が蠢いている。
不完全燃焼の感覚が笑いさざめいている。
裁かれる側と裁く側の微妙な境界線が浮き彫りになる、
たとえそれが解体、修正、生成されてゆくとしても。
自然体で、無理をせず、
つまり、継続が可能な状態で、出せる、ギリギリの、
対象化して操作的に扱い得る強相関領域―――。
もちろんそんなのは偶然で、運が悪くて、
結果的に殺してしまったということぐらい理解できる。
喧嘩をしている二人組を仲裁しようと、入力のゲートが開く。
会社員男性を路面に押さえつけた、出力のゲートが開く。
男性は胸部などの圧迫による低酸素脳症で死亡した。
真ん中にもう一本の通路が追加されるという形で、
クロスした入力と出力のズレ。誤差。
荒っぽかったかも知れないが、警棒で叩き殺したわけじゃない。
荒っぽかったかも知れないが、銃で射殺したわけじゃない。
自動販売機の横にゴミ箱があっても、
何故か空き缶がそこに置かれているというシーンにたびたび出くわす。
廃棄物というのは人間生活の痕跡だ。
解剖学を、機械学を、そして人類学をそこに見出す。
そこに座ってジュースを飲んでいたということだろう―――か。
ゴミ箱にまでいちいち持っていけなかったということだろう―――か。
赤色警光灯には、警棒には、銃には、
警察官の服には、警察手帳には、
「取り締まる」ということに対する責任がある。
揺れるということはある、人間である、
だが警察官が薬物をやる、警察官が飲酒運転をする、
警察官が人を殺すでは、
「取り締まる」ということに差異がない。
そこには境界線がなくてはいけない。
それでは朦朧と霞に綿を敷いたようなありさまだ。
善人とは弱者であり、
悪人は強者のことである。
弱者が強者に従属する奴隷道徳は、
明日跳梁跋扈する秩序の無い現代に、
ドロップキックできるだろう―――か。
人間の脳を狂わせる、
パインバーグディッシュの味。
どうしてマヨネーズをそんなにかけるのって、
マヨラーに言ったって仕方ない。
どうしてダイエットコーラをそんなに飲むのって、
コーラ好きに言ったって仕方ない。
同じ人間であってはいけないのだ、と思う。
法体制の網目に存在する正義とはそういうものだ。
確率論的にそういう人間が出てくるのもわかる、
自衛隊しかり、政治家しかり、教師しかりである。
構造的に腐敗を許容している温床。
軍事戦略と非軍事戦略について考えているような気がする。
「隠す」ということには正義すら存在しない。
同じ人間に務まるなら蠕動する腸における虫だ。
何もかもが、現実の出来事とは思えない。
いきなり、パトカーのサイレンが聞こえた。
一台や二台ではない。
画像がスッと現れて鮮明になる。
火でありながら火になれないものは
本分にすら疑いを覚えた末に燃えること以外のことを忘れて、
夢見ることを始めるしかないよう―――だ。
ヤンキーとの付き合いも多かった僕は、
警察官がガンガン原付を蹴って来るという話を知っている。
未確認生物として捕獲しアメリカの研究機関に引き渡したい、
きっとこれはXファイルなんだろう―――な。
とはいえ、蹴られてもやむをえないということにはもちろんならない。
ヘルメットをかぶっていなかったとしても、
再三再四の停止勧告を無視されても、である、
逆説的にそういう状況で資質というのは、
空気の底に沈めていても浮かび上がってくるもの。
仮初めの独自性を得ているような雰囲気を感じる。
外国では警察官が差別迫害のもと、射殺をした。
映像はもちろん放送された。
感覚の関与の自由度を許す領域で可視化された。
しかしどちらが正しいとか間違っているというのは夢の論理だ、
赤ん坊を白紙にするようなもの、
だから、ただ、光と影について考えていた。
僕がいま用いた譬えをそっくりそのまま、
警察二十四時の不祥事におっかぶせたところで、
芸のない犬、いや、芸をしようとしないアシカ、アザラシ。
地上を目指しすぎているニュートンの林檎じゃなくて、
ただ、地上のものが地に落ちたというだけのことだった―――か。
タッチや線の集積として一枚の絵を描くように、
点滅するパトライトの群れが俄かに競技会のように見える。
直線の都市は壁の隅の蜘蛛の巣のようなビルをどう見よう、
早々と分かり易いドーパミンを出して快楽や幸福感を得る。
倦み疲れてスピード違反する幻に酔う人々の脳内物質が、
信心と妄想に懺悔の原色を残して遠くに消える。
もうパトカーの音は聞きたくもない。
*
340
legend of light and wind
感動的な幕切れだった。
無謀な単独ドリブル、とこの場面を見ていた誰もが感じていた。
身長差のある五番と対峙した際、
相手の重心が右足によっていることを見抜き、
左に行くと見せかけてから瞬時に右へ躱した。
段々とヒートアップする。
俊敏な動きをする、躱された十一番は目を一瞬見開いた後、
後を追いかける。
幹の中途から八方へ炸裂したように、
次に待ち構えていた三番に対しては、
背中を当てると同時に重心をかけてマルセイユルーレットで躱した。
俯瞰図では、物狂おしい指のように、
何もないものを捉えようとして焦り立っているように見える。
「行け――!」という大きな声が聞こえる。
優勝常連校たちが一人の選手になす術もない。
三人目のDFを躱しペナルティエリアに侵入していくと、
最後の一人が立ちはだかる。その人物は、
左SBからCBの位置まで来ていた。
警戒はしていた。
だから徹底的にマークした。
けれどサッカーというのは一人で勝てるようなゲームではない。
シュートコースを切りつつ体の大きさを活かしボールを奪おうとする。
それに対し、足裏でボールを後ろに引きながらゴールから下がっていく。
想定していなかったプレーが直後起きた。
一瞬だけ視界を切ると、眼の前から消えた。
脳裏に、最悪な光景が浮かぶと同時に彼は後ろを振り返る。
視界に入ったのは、シュート体勢。
子供時代の記憶が浮かんでは消える。
優勝常連校とダークホースで勝ち上がった無名高校の一騎打ち。
今なら、ファールを犯せば止められる。
そんな言葉が脳裏に浮かぶ。しかし、彼は手を出さなかった。
試合中に生まれた一瞬の迷い。
それが明暗を分けた。
重心を移動させ、身体をねじり、奥歯を噛み締める。
剥き出しの肋骨みたいなシルエット。
足首を伸ばして固定し、“足の甲”をボールに当てる。
矩形の拍節曲調。
足を振りぬくと、その軌道に合わせて、
肉体を乗り物、人生をビッチに見立てたようにボールが飛ぶ。
リセマラみたいな手に汗握る、白熱した展開。
接戦に次ぐ接戦。
対策、傾向の猛練習の成果。
みんなよく持ちこたえた。
まさかここでこんな大博打を打つとは思わない、
この一瞬に風がまるで包帯のようにほどけてゆく。
今大会の得点王の右足。
ミスターハットトリックの右足。
左斜め下向きに視線が誘導され、
最後の最後で、脳天に皮下注射器でも突き刺さったような、
膠着した試合の決勝点になる。
揺れる葉にひかりの結露が生まれた。
蜘蛛の巣に蝶が触れた。
舞い上がる埃に、鎌首を伸ばすものの眼。
夢が流れるようなあの日の河川敷に似た、青い空。
内臓や筋肉や骨が皮膚を千位のように圧迫し、
無理に押し広げていくように感じられる。
剃刀が滑っていくように感じられる、
キーパーが懸命に伸ばした手を擦り抜けて、
ゴールネットへと吸い込まれたボールは乾いた音をさせる。
静謐の奥底で、
女子マネージャーがウォーターボトルを引っ繰り返しながらも、
ビッチを見つめた。
戦車の如き轟き、
監督が試合前に「俺の為に勝ってくれ」と言ったあと、
「焼肉おごるから」と約束して妻から前借りがきくかを、
思案しながらでもやっぱりビッチを見つめた。
夢の中の薫り、
旗を振って応援していた応援団長も、小動ぎに入った。
優劣も、成熟も未熟も、勝利も敗北も、
そこでは昆虫の抜け殻のように淡い感じで、
裸よりももっと裸で、赤裸々に、
全員が固唾をのんで見守っていた。
敗北を受け止められずにピッチで呆然としている相手チームの、
選手がいた。
精巧な銅版画を見るような気分だった。
孤立を感じて耐え難いほどの哀情を催してくる。
因縁の対決。
セロハンテープで止めた古い地図。
人生の通過点。
これからきっと二人はその日のことを思い出すのだろう。
そっぽ向くつもりはない、一瞬の好機の結果。
残り時間は幾ばくもない、気力もない。
砂時計はさらさらとお千津得ている。
数秒間の独特な緊張感が持続し、熱は放散する。
皮膚がひりひりと痛みそうな沈黙が逆方向へ、
いまかいまかと待機する。
一瞬僅かに潤むように膨らんだ。
ホイッスルが鳴ると同時に、ピッチ上にいた選手たちは、
ゴール裏へと駆け寄っていく。
号泣している男が頬にキスをしてこようとするので、
問答無用で殴った。
気持ちはわかる、でもホモは違う。
スタンドから最後まで応援してくれた仲間たちとともに、
優勝を分かち合う。
マネージャーが何故か抱き着いてきて乳を揉んだ。
不可抗力。
けれど不可抗力ならいいかというとよくはなかった、張り手された。
エドモンド本田。
選手、そして、ベンチに入れなかったサポートメンバー。
高校サッカー部の全員で一斉に雄たけびを上げる。
空虚な花束の匂い袋めがけて、
獣の咆哮のような野太い声がスタジアムに響きわたると、
それに合わせるようにして歓声が沸いた。
長い茎に危なげに咲いた二つの華。
一瞬眼が合って肯き合い、そして離れた。
滴る雫とともに世界は黄金色に輝いている。
*
339
HELP
痛みには沢山の種類があります。
たとえば舌を噛む、悪口を言われる、転んで怪我をした。
虫歯、机の角に足をぶつけた、骨折、
誤って十円玉飲んじゃって吐きそうとした、生理痛、想像妊娠。
脊髄注射に、ある人達には喜びのコスプレ女の蝋燭責め。
ヘルニアに、中二病の少年がヤンキーに校舎裏に呼び出される、
尿路結石に、おっぱいマウントにちんこマウント、
もっと大人っぽい言い方をしましょう―――か?
明確な傷などによる侵害受容性疼痛、
神経の狭窄などによる神経障害性疼痛、
ストレスが原因となる心因性疼痛です。
人間が物事を忘れていくスピードで、
問いの正解・不正解の回数で、
出題の構成・頻度を調整していきたい。
残念です、質問を覚えておられないなんて―――。
とはいえ、大抵の痛みは我慢できる範囲でしょうし、
我慢できなくとも、きわめて短時間で、
その痛みとはおさらばできるでしょう。
病気を卒業すると世界はありえないほど美しいですね。
たとえば、唐辛子は味覚にない攻撃です。
(味覚に含まれると主張する人もいますが、)
カプサイシン、それは悪魔の名と主張する人もいます。
そういえば有名なキャロライナ・リーパーを上回る、
スコヴィル値は平均「二六九万」なのだとか。
ちなみにこれを丸ごと一個食べた際には、
三時間半にわたって辛みを感じ、その後も痙攣が起きたそうです。
有り得ないほど馬鹿ですね。
高所恐怖症にとって、バンジージャンプは理解不能です。
スカイダイビングともなれば想像を絶する頂きといわれる、
エベレスト登山でさえ百倍はまだマシです。
ちなみに前世研究は否定的な輩もいてはかどりませんが、
人間が幼少期の影響を受けている、
家族を見て育つというのは本当です。
つまり僕の馬鹿も大体そういうことなんですね。
武器は天使の笑顔。
ちょっとしたシード校みたいな扱いを受ける悪魔の腹黒さ。
けれど世の中には馬鹿ではない人も沢山います。
たとえば多くの痛みというのは前述したように、取り除けるものです。
これは急性的なものです。
でもそれが信じられないほどの長い時間続くこともあります。
これは慢性的なものですね。
けれどもモルヒネなどの鎮静剤がありますが、
それが利かないという場合もあるよう―――です・・。
たとえばポケモンスリープのようにね、ドヤア。
たとえば、ギンピ・ギンピ、葉や茎に毒刺毛を有し、
この神経毒は猛毒です。
植物といえば、トリカブトがあまりにも有名ですが、
ギンピ・ギンピは、人や動物が触れると針が刺さって残り、
痛みや蕁麻疹が生じます。
一説には酸をかけられたような痛みで、時間の経過と共に悪化し、
眠ることさえ出来ないと言います。
しかし驚くべきはその長さでしょう。
シャワーを浴びることさえかなわず、それが二年以上続きます。
とはいえ、痛みというのは身体の異変を知らせるサインですから、
痛くないということに逆に恐怖を感じることもあるでしょう。
ゾンビは片腕をもがれても平気ですが、人間だったらそうはいきません。
昆虫は痛覚遮断できるといいますが、
感情が人間目線だと存在しないかもしれませんが、
どうでしょう、あなたが殺した昆虫を人間レベルにしてみたら?
世の中には殆どいないですが、無痛覚症の人もいます。
ポーカーフェイスに憧れますか、世の中には顔色を変えられない、
恐怖の感情がわからないという人もいるのです。
ごろつきに銃を頭に押し付けられても表情をまったく変えられない、
恐怖という感情がわかないのです。
しかし世の中にはそういうわけでもないのに「痛いと言ったら負け」
みたいに思っている、やたら滅法痛みに強い人がいますね。
かくいう僕もその一人なのですが、
瘦せ我慢には気を付けなければいけませんね。
筋肉痛にはカフェインが有効で、
怪我した個所を直視することで痛みを減らすことができると話もあります。
腕組みには脳を混乱させ、痛みを緩和させる効果があります。
ラーメン屋って大変だってことですね。
脳のおかしな配線の作用ですね。
痛い時に笑うとエンドルフィンがドバドバに出ます、
失恋の時はお笑い番組ですよ、見る気分になれなくてもね。
たとえばホラーも痛覚麻痺には重要な要素ですよ。
人間を問えばそのすべてが記されている禁書、
解体新書にその答えはあります。
さてあなたは、
イルカンジクラゲというオーバーキルモンスターを、
ご存知でしょうか?
このクラゲは三センチ程度で、
泳いでいる人にはまったく見えない類のものでしょう。
しかしこのクラゲの毒は世界トップクラスの毒を有していて、
コブラの百倍もの毒を小さな身体に宿しています。
最初は殆ど気付かないでしょうが次第に痛みが増し、
吐き気や激しい頭痛が起こり、
全身の筋肉に抑えようのない痙攣が走ります。
医療機関を受診しなければ、十二時間も嘔吐し続け、
恐ろしいほど大量の汗を流したという話もあります。
ところで痛みと毒は類似点が多いように見受けられます。
そしてこの痛みはその量を変えるだけで致死量になります。
ちなみに世界で一番強力な毒は、
たった一グラムで一〇〇〇万人以上の命を奪えるボツリヌス菌。
戦争とは研究者に悪魔の囁きをするようですね。
ですが、現代社会における毒というのは身近なものです。
あなたに水で人が死ぬと言ったら笑うでしょうか?
いいえ、これは本当の話です。
カフェイン摂取、砂糖の摂取、ウォッカやテキーラなど、
世の中には合法のものでも用法を間違えると、
人が死ぬようなものでもあるのです。
煙草だって水槽の中に入れれば魚は死にますし、
誤飲事故だってあるのです。
多くの毒を視覚化すると拷問という形で現れます。
なんて、そんなのどうでもいいことだろって言いませんでした、
いえいえ、脳内にルールやアクションの知識を常置させておくと、
いざという時に何とかなる。
いざという時に訪れなかったら?
訪れなかったら、平和ボケしてるねと言いながら平和だって言えるね、
ということなのではないでしょうか、ギラツ。
たとえば死刑が実行されても、ギロチンで人が死ねなかった場合、
電気椅子で死ねなかった場合、首吊りで人が死ねなかった場合。
これはどう考えても残酷です。
拷問は残酷という形を徹底的に抽出し、トラウマに残るようなものを、
まるで見世物にし、その権力を象徴し、
逆らえない人を減らしていったのです。
とはいえ、政治ではなく、職業の上では、
拷問犯と処刑犯が分かれている例もあります。
拷問犯は自白をさせることに仕事がありました。
だから、ワインを飲みながらが通常運転なのです。
精神的苦痛と肉体的苦痛のどちらがきついのかという、
問い掛けがありますが、これはやはり考え方にもよります。
たとえば精神的苦痛も究極のところへいくと、死を求めます。
でも多くの人はそこまではいきません、脳内物質が緩和したり、
精神を和らげようとする方法を考えます。
さて、肉体的苦痛も究極のところへいくと、死ぬでしょう。
とはいえ、軽度なら薬や、湿布も腫れます。治療可能であれば、
それが終わり次第少しずつマシになっていきます。
痛みは一つの救いでもあります。
痛みがあるからこそ自分にはできないことを他人にはしません。
古来より想像力のない人々が沢山いたようですが、かしこ。
筋肉痛も十代から二十代の頃と、三十代でダンベルを背負い、
四十代で家を背負い、
五十代や六十代で次の日に死神のように訪れます。
まったく同じことですね。
素晴らしいイン・ザ・サンに満ちた過去の日常と、
現在の惨めな日常を、否が応でも比較してしまうアフター・サン。
気が付けば、オンライン・サン。グッバイ・サン。
なお、悪口を言うと物理的な痛みが解消されるという話もあります。
世の中が糞野郎で溢れかえっていて、
病みまくっているというのは素敵ですね。
*
338
landmine
地雷撤去作業に勤めている人がいる。
給料は雀の涙、実質命を賭けたボランティアだ。
地雷撤去団体には世界中からの高額な支援もあるが、
それを少しでも多く自分の団体の資金にしたいが為に、
他の団体を認めようとしないなどの思惑もあるらしい。
また国が地雷撤去の資金提供を一切しないなどもよくある話。
外国の話に日本が首を突っ込んでいる、とはいうが、
地雷の犠牲になる人もまた、戦争と無関係の人達なのだ。
安価で大量生産できる地雷は、
一つあたりの値段がたったの三〇〇円から三〇〇〇円。
安価で小さいため、流通しやすい。
その上、地雷というのは半永久的で、傷つける相手を選ばない。
地雷というのは「二人に一人は生き残る」といわれていて、
あえて「殺さない」というえぐい兵器。
地雷は敵方の経済活動を破壊するという目的を持ち、
農作物がたくさん採れる田畑や水汲場、
木の実や木材をとる山林や人の集まる広場などに多く埋められている。
その地雷は世界中に三百四十種類もあるといわれている。
金属探知器に反応しないように、
プラスチックやセラミックで作られたものや、
子供が触りたくなるように、わざとかわいらしい形に作られたものもある。
生き延びた被害者は、手足の切断、
失明などの重度の障害が残る。
成長期の子供は地雷で生き残った後も、
成長で伸びた骨が切断した手足の肉を、
突き破る地獄の苦痛と戦う。
戦争をする連中にとって、
地雷というのがどれだけコストパフォーマンスがいいかは別として、
一度埋設された地雷は莫大な資金と時間を要する。
約五兆円は必要だとか、一千年はかかるとかいわれている。
危険な地雷を手作業で除去するには、
一平方メートルあたり約二時間もの時間がかかる。
気温四十度に近い猛暑の中をヘルメットとプロテクターを身につけ、
一瞬の気も抜けない命がけの作業をする。
百パーセントの除去と、慎重で安全な作業。
どこが地雷原でどこが安全な場所なのか、
どこまで地雷除去が終わったのかなど明確にする、
標識を立てるなどのマーキング。
地雷除去を安全に確実に行なうためにまず低木の伐採、
枝払い、草刈りをして地面が見える状態にしなければならない。
地雷は地中に埋められているだけではなく、
地上に設置されていることもある。
ワイヤートラップが幾重にも仕掛けられた地雷もあるのだ。
金属探知機による探査は地雷探査機ではないため、
鉄粉、たとえば銃弾にも反応する。
これが地雷撤去の妨げになっている。
もちろん手作業には限界がある。
(逆に機械では入れない地形もある、)
地雷除去機も稼働している。
地雷除去機には二つあり、
自由自在に動く長いアームを駆使して、
地雷除去作業ができる油圧ショベル型と、
走行しながら比較的平坦なエリアで威力を発揮し、
広い範囲を効率よく除去するプッシュフレール型がある。
これで手作業の二十倍から百倍のスピードらしい。
パワーショベル型や、
高速回転するロータリーカッタで地面三〇センチメートル程度、
掘り起こしながら、対人地雷を爆発させて処理。
最後に地雷が残っていないことを探査器や探査犬で確認する。
とはいえ、いまだに世界各所に残る地雷の数は
五〇〇〇万発以上といわれている。
*
337
spring
君はわたしの神様だって気がしたんだ。
刺し穿ち力屠る最果てがふたりを分断つまで(?)
君はわたしの傍にいてほしいっていう気がした。
バス停も駅も風景を捲るプライヴェート・アァイ(?)
これが四次元ジェネレーションユニゾン、
猿轡はめられた空気からの新時代(?)
春の浮浪、波浪、漂流、ハロー(?)
透いて好いて月とって突き通った団子からの、
パラダイムシフト、
からのハイド・アンド・シーク(?)
からのアブソリュート・テリトリー(?)
*
336
迷走系彼女
君さあ、やる気ないふりしてるけど、
テストって大事なんよ。人生における試練難関山積なのさ。
百歩譲って、やる気あるふりをしつつやる気ないのが正解(?)
わたしだって嫌なんさ(?)
でも四捨五入したら大体微妙な数字になる、
割り切れないやつはね、そんな時どうするんよ(?)
わたしだってわからないさー(?)
でもね、これだけは言える、テスト終わったら、
土曜日駅前八時ね、遊園地、割り勘、でもハンバーガーおごって(?)
いい、わたしのために、
テストの点数上げて(?)
わたしだって彼氏に駄目出しするのは嫌なんさー(?)
改造手術うけてくること、いい、いいって言って(?)
*
335
インスタント・ラヴァー
君が僕のいない“独りの日々”を、
抜け殻なんて言うなら、
唇のまわりの毛細血管から硬化して。
アルマジロにでもなったんじゃないか。
(こころの幅となりてたゆとう、音は、
いそぎんちゃくの触手だ、)
「(嘲笑う声が聞こえたんだ)」
ミッドナイト車道、
閉まるドア。
境界線が緩い。ジェンガが始まってる。
海の表面がシャーベット状の夢、
「馬鹿ならアイスクリームって言えよ、
透明って言えよ、エモいって言えよ、」
ヒラメの養殖事業について考える。
コミュニケートの中で随時直していけないこと(を、)
情報量の制御にミスがあるんだ、
取り返しのつかないようなエラーの中にあるんだ、
エマージェンシーは美しい女の名前。
ねえインスタント・ラヴァーになれない僕は、
脇役でも、顔にモザイクでも、よかった。
上下左右の向きあれど、反復が時間を刻む。
モノとコトとが未分化なところから、
区別が創出され、解消されるという反復。
ディ・・・バィ・・・デェェェィ・・・・・・。
し、視力検査表みたいに固定されていない。
「いない(のは、)テラフォーミング、楽園の地図、大航海時代」
―――“水晶の短剣で刺してよ”
た、縦と横って言うんだ、雷鳴を伴った周章の余沫さ。
形成(コト)を同調形式(モノ)
体得したパターン認識が増えていく――(のだ、)
学んでいく、と、やっぱり、理解が複雑になっていく――(のだ、)
な、南北と東西って言うんだ、冷罵した驟雨にご愁傷様。
形成(コト)を同調形式(モノ)
好みも複雑になっていく――(のだ、)
単純なのは見飽きちゃう――(のだ、)
「Googleならその内、卓袱台だって引っ繰り返すさ」
「はばかり(さま、)テラフォーミング、楽園の地図、大航海時代」
―――“轆轤の活花の女の姿”
ねじを/呑み込ん/で/
よるを/呑み込ん/で/
「まだ嫌だった“僕”を色のない夢の錆びた鉄の味にして」
「まだ嫌だった“僕”は足場なくして地面に下りられない夢にした」
優・・・しく―――かき混ぜてェ・・・。
あのシーンが、なけりゃよかった瞳孔の拡張。
突き抜けることばっかりでぽっかり空いた穴なんか見もしない、
ジャンボジェットの操縦も、
小型飛行機の訓練からはじまるってさ。
その、玲瓏たる玉質の凪。
―――神経を逆撫でにされて、ハッ?
「(嘲笑う声が聞こえたんだ)」
―――アアーーーーァァ・・・。
八方美人というか、その場のノリ(で、)
絶頂期にアトム作れそうな勢い。
人生がうまくいっていないルーザーズの、
下部構造フィールドで。
どういうバランスで、どういう配分(で、)
一筋の清い小川にドラえもんが死んでた。
心臓が溶けてしまうような熱中症アラート、
ぶっ倒れるかどうかで、
噴火の合図を待った熱中症アラート。
声を重ァ・・・ねェ・・・・・・て。
あのシーンが、なければもっと電気を帯びた白紙。
ゆらぎベクトルと、スケールフリー相関、
つりばりぐもなら水色の風。
勝手に封切られた戦いのファンファーレ。
「そうか、このままずっと独り―――」
(・・・マリンスノウにも、溶け込めないまま―――)
指を折って数えるカメラの視点、俯瞰、煽り、拡大、縮小、
けれどもそれで世界が増えんじゃない、
(こころの幅となりてたゆとう、音は、
いそぎんちゃくの触手だ、)
[///“約束の場所まであと少し”]
一つの問いが、叫ぶ。
中継地点を間に受けてたら、逆走だ、停止だ、人生終了だ。
一つの問いが、叫ぶ。
中継地点を間に受けてたら、暗黒だ、どどめ色だ、地獄への入口。
ねえインスタント・ラヴァーになれない僕は、
大根役者で、三文芝居だったろう?
"備長炭"という一般名詞を独占しようとする私利私欲みたいに、
普通の人で、特別な空気なんてなかったろう?
アメイジングレイスの鳴らない真夜中。
ああ、アメイジングレイスの鳴らない真夜中。
(人物を描き忘れた風景画の中に他人と対立する隣人を、)
―――《人参》にした、《剥き出し》にした。
―――《人参》にした、《キャベツ》にした。
が、微妙に気まずいよね。
は、変な空気流れちゃうよね。
情報は加速してそもそも読み取れない量をふっかける、
分割されてゆくたびに印象は薄くなる、マルチじゃない、
でも擦り切れることはない、
知らないシンガー、知らないジャケット、知らない本、
知らないファッション、知らない人間、知らない猿、
自動販売機で珈琲を買えばオワタモード・・・だ、
電光掲示板には救援物資なき光の弱き国の青が浮きをり。
夢ならばこのまま、ただ、眼が醒めるまで―――。
絶望の欠片―――だ・・。
絶滅の切符―――だ・・。
(ねえインスタント・ラヴァーになれない僕は、)
(僕は、インスタント・ラヴァー?)
「真昼の月を思い出している、豆電球のように天使なものを」
―――“だから愛撫の星、枯枝の声、夕焼け時の美しい光景のまま”
(ねえインスタント・ラヴァーになれない僕は、)
(君が、インスタント・ラヴァー?)
「一重の貝殻を思い出してる、幾千年の間の、静寂の大河を」
―――“だから屍の海月、凸レンズの光線、羽根を拡げた鳥のまま”
*
334
カラフルな衝動
月明かりの―――題名のない・・想像の果て(は、)空っぽ、
聞き飽きた―――ん、だ、
台詞だって平凡な、(な、)頭の中、
ここから問い掛ける―――声・・・。
観客の同一化の焦点、消える世界。
いわば零集合。液体のルール。
ユラ・ユラ・ユラスヨ、Paine(と、)Paint
わずかにある、どこかにはある、奥底にある。
「理解度、手触り、掴みかた、みたいなものまで、
説明不足の枠組み、客観性、理解不足な類似品」
揺れる、僕等は揺れる、アーキタイプの退化、敗北、十重二十重、
これはそうかつまりそうだな。合図した。
ら、弾がなくなる。
て、この先何年も意味もなく黒を書き足した。
踊る、僕等は踊る、アスファルトの加速、鮮明、日常茶飯事。
独りではァ成り立たなァァアぃ―――。
てか。
てか。
ハード/ビートに/
一ミリの/疑問/すら
感じ/ないんだ
“その交差点に何度立ったかわからない”
“老朽化した吊り橋でバンジージャンプしてみたい”
一喜一憂、二の足を踏み、三度目の正直、
四の五の言っていたら六十分(の、)一時間(の、)七転八倒。
いやいや、七転び八起き。
九夏へ、十全へって何言ってるんだ僕は―――。
街路に視界が―――白っぽくなり・・目が眩み(み、)夜を越え、
はめ込もうと―――し、た、
答えのない煌めきの中(なか、)孤独な自虐趣味、
どうしたって現世離れ―――さ・・・。
想像的・象徴的同一化。シマウマの思想。
意志の純粋な精神性。シンクロするメロディ。
ユラ・ユラ・ユラスヨ、Paine(と、)Paint
わずかにある、どこかにはある、奥底にある。
「慣性や惰性をコントロールするための、
要するに"軌道修正"のための、ささやかな言い回し」
揺れる、僕等は揺れる、モノクロームの権化、斜面、発展途上国、
分かり切った分からない。雨降らした。
ら、弱音しか出てこねえ。
て、この先何年も言の葉のすべてをただ飲み乾して。
踊る、僕等は踊る、グラジオラスは綺麗、邪推、本来無一物。
独りではァ成り立たなァァアぃ―――。
てか。
てか。
スロー/ビートに/
メロウとか/ヘブン/とか
感じ/ないんだ
“揺れるカーテンが網戸に当たる音が眠りの直前まで聴こえた”
“オリンピック決勝で突然の肉離れに襲われたような気持ち”
一意専心、二者択一、三四がなくて、
五等分の花嫁って馬鹿言えば六道輪廻(の、)双六(さ、)七転八倒。
いやいや、七転び八起き。
九分九厘まで十悪五逆って何カッコつけてんだ僕は―――。
*
333
Jewels are the sparkle of death,
imitations are the groans of life.
国内外で戦争が起き、自衛隊と愚連隊が衝突した。
死者数百人を出したが、
それに飽き足らず、また数百人も出した。
混線や赤裸々。
やっぱり酔ってやがるな、と言う。
なるほど、完全に詰んだ人間失格者の基本パターン・・。
どっちも正しいと言っていられた頃が懐かしい。
答えを強要され、間違ったら、射殺される。
針の停まった時計。風に舞う一枚の紙切れ。
剥がしにくい、苛立たしい、生存の権利だ。
砂の記憶、夜の蟻・・。
思い出が浮かび上がってきたら手に入れたくなるなんて、
人生は残酷な繰り返しだ。
大地震とかよりもずっと深刻だ。
救いを求めようにも、相手が自然ではなく、人間だ。
弱者の極限に対応する善が、極限的拡大で国民を苦しめるのか、
その再生産は何なのか、どうして非人間的になるのか。
人間は何も学ばない。
日本はもう終わりだ。刑務所では人食いがいて、
食糧配給には鎮静剤性の成分の、麻薬が入っているという。
樹木はゆるやかな光の移ろいを見せ・・。
淡い空に薄い雲が悠ったりと流れる―――。
政府は魔女狩りのようにクーデターを企む悪を、
処罰したいらしい。
友は殺された、一味だったらしい。
ユニセフや、募金活動ができていた頃が懐かしい。
幸福な誤解の機械的な予言。
きっとその延長線上にすぎなかったんだ、馬鹿な奴。
裏付ける証拠を握っていると考えている限り、
センセーショナルな展開が続くことに疑問の余地はない。
何度も、何度も、胸を痛めたこと・・。
花の莟を手折るのを怖がり、
誇るに足らない無価値なもので自分の弱さを隠し、
―――傷つかないように、鍵をかけて、蓋をする―――んだ、
あの日の風が―――笑う・・・。
みんな暗い顔をして、腹をすかしている。
自衛隊たちはみんな思うことがありながら、権威に従っている。
二千年も続いた文化の歴史、
あえぎ声も、人を洗脳する声も、昼と夜を報せる声も。
遡れば何千年も続いた人類が記録した歴史に、
武力について、暴力について、戦争について、
いくつもの見解や立場や見方があったはずなのに、
結局は成長も進展もない、ギリシアにも、エジプトにも。
テクノロジーの進歩なんて幻想にすぎなかったんだ。
総理大臣一人で、大統領一人で戦えばいい、
神がいるならそいつが出てきて戦えばいい、
嗅覚が鋭くなり、物音に敏感になり、
血の臭いにゆすり起こされるような日々はもう沢山だ。
あたりの気圧が低くなってゆく。
ちろちろと炎が燃えているのが見える。
どうして銃声が消えない、
どうして人の悲鳴はこんなに耳障り。
異常に昂ぶった時にだけ聞こえる、瞬間を刻んだ、声。
日本はもう終わりだ、でも世界でも同じようなものだと、
訳知り顔がいう、報道規制でない証拠は?
みんながおかしくなったのか、
そもそも世界がおかしくなったのか。
スクリーンショットを脳内に保存するかのように、
ニーチェの忌まわしい呪いを取っ払いたいだけ。
頬の濃淡のように筋肉がちらと動き、
鼻の尖端から唇へかけての横顔の曲線―――。
三年前のあの日、
空に突如うつしだされた映像があった、
「芽が出ぬごとく、永遠に救われない」と宣言した、
あれは神だったのか、
―――不遜、傲慢、命令。
それとも人間だったのか。
―――単調極まる散文的な事実・・。
軽信による懐疑―――折に触れた一瞬間の光景・・。
しかし逆の立場にとってみれば、
不安定と動揺をこれほど現実感にすりかえるものはない。
言うのは簡単だけど、
生きるか死ぬかを選ぶのは自分たちだ。
もう仕事もできない、
風呂にも入っていない、
色んなことが滅茶苦茶になりすぎていて、
全員が爆弾でも降って終わりにしてくれないか、
こんなの何かの間違いだろって顔をしてる。
長い間、もう泣いていない。
そういえば長い間、もう笑っていない。
地面には弔旗、そして僅かな溜息・・時代の終わり。
ねじくれた時間の腸から放たれた悲哀、
これがきっと僕等の最終戦争―――だ・・・。
*
332
流儀
赤の溶解。青の液体形状。
緑の球体浮遊。
―――どろっとしていた、
絶対主義の拘束、封建制の拘束。
揣摩臆測と言ったら、
アルデンテをくるくると巻いて、
独楽にした。
驚異的な後遺症のあと、
洒落な、からっとしたところ目指して、
唐揚げになってた。
マヨネーズでも檸檬でも湖沼でもさ。
僕に執着はなくて、
失われた足音の影だけが残った、
・・・変幻する多様の眠りの記述が、
雲に変わる、
蜘蛛に変わる、
アカシックレコードへ・・。
*
331
古代寺院
ancient temple
エンシェントテンプル
美しい、雨降りの、イカレポンチの僕等は、同性愛を楽しんだ。
攪拌する遣る瀬無さで、竿のなりで、落ち葉を自在に彷徨う。
美しい、槍振りの、イカレポンチの僕等は、汚れ役を楽しんだ。
ムーンウォークをして、それからダストシュートの中へ、小便を拭いた雑巾のように。
美しい、しかばねの、イカレポンチの僕等は、考えないことを楽しんだ。
刹那的な天地で、癌や老衰を嘲笑い、生殖もない罪もない神もいない楽園を探した。
*
330
無題演劇
超人形は、
ムーンライト・シャドウ、
地獄八景亡者の戯れ、
自由連想、夢解析、無意識に肉体に眼は作られ、
瞬きを始める、
直径百二十億光年の大宇宙へとタイムスリップし、
創造のダイヤルを回して光の速度や引力定数を変えてみる。
それによって宇宙は変化する、
けれども誰も気付かない―――だろう・・。
けれども誰も気付かない―――だろう・・。
超人形は、
古代エジプトのミイラを蘇生させ、
円盤が迎えに来る。
宇宙生物は植物から進化したから、
動物の血を欲する。
冬眠した、ミイラは宇宙人―――だった・・。
冬眠した、ミイラは宇宙人―――だった・・。
地球は魚でも肉でもない色々な合成製品の匂いがした、
宇宙人は脳が爆発した。
*
329
ニンゲンコウセイプログラム
どれでもいいから一つ選んで御覧。
一つには毒が塗ってあり、一つには人生が用意されて、
一つには生き返るチャンス、一つには仮面が用意されて、
一つには願い事が叶い、一つには超能力が用意されて、
一つには死がいますぐ与えられる。
恐れることはないよ、
底辺のために用意された蜘蛛の糸じゃないか、
マルチ詐欺じゃないよ、宗教でもないよ、
ただ、普通の人になりたかった君じゃないか。
ただその滑稽な一喜一憂を録画するだけさ、
なりたかったもの、なれなかったもの、
手に入れたかったもの、手に入れられなかったもの、
そんなの努力でも才能でも運でも何でもないよね、
何もしなかったお前なんか生きてる価値がねえんだよ、
さあ選べ、すぐ選べ。
*
328
家族の肖像
「近所の佐藤さん、子供に保険金かけて、
殺そうとしたんですって」
「僕はしないよ、子供も、妻も、愛しているからね」
「パパ、世間って何?」
「人間の屑が沢山いることさ。
僕等は変わってる、
ちょっと変。
でも人間だ」
「後ろ指さされても、
石投げられても、
馬鹿でも間抜けでも家族、
窓を割られても、
スプレーで死ねって書かれても、
最高の家族」
*
327
ダンゴムシ
ごろごろダンゴムシ転がって輾転って、
キャッシュポイント、
海まで死まで固定観念のような日記の一日、
最初から最後までずっと鬱トーーク!
ぐちゃっ、したい、真夜中の認識を上回った瞬間、
机の角に足の小指ぶつけて悶絶する、
ICレコーダーを使わせてくれたらいい、
リモートワークにさせてくれたらいい。
ビクン、ビクンと跳ねてる痛みの放出度が、
昆虫の死の感覚を捉えたから、鮮明に、嗜虐性の傾向と、
変態性の快味を享楽していた―――から・・。
微妙だけど、捨てたいけど、
包丁を見てると指を切り落としたくなるから、
コヨーテの鳴き真似でもしたかった、
蛙の鳴き真似でもしたかった、
アゥバババババボボボ・・・・・・!
―――かすかに皮肉に開いた口だって嫌だった。
(Today, the floor of time has melted due to a serious tragedy.)
―――耳を仮す態度がもう既に嫌だった。
(The oil in the frying pan is a process similar to postal savings.)
誰だって現在進行形で間違っている、
クエストとかブーストの追加報酬があったのに、
注文が入らないアイドルタイム無視して、
グーグルの最適解なんかとうに無視して、
ビクビクしてオドオドして、
―――変形激しい転形期。
即座により正確で真剣、憑依する言葉、
戦争を推進したり破壊衝動や攻撃衝動を持つ。
形而上学の言葉、
“優しい”って何よ、“美しい”って何だ、
根底から覆す極端な破壊の雰囲気と広く関連付けられ、
メシア、飯屋、トゥミー。
数ミリ伸びるほど待った、芽。
ハッ、こんなところじゃ鈴木なんか見えねえ、最後尾。
(Today, the floor of time has melted due to a serious tragedy.)
ハッ、三十年も二十年も前の記憶の中にいた、内部と外部の屈折。
(The oil in the frying pan is a process similar to postal savings.)
虫食い穴と逝く春。
夜は千の顔を持つ、
眼球を横に切り裂いて、
幽体離脱感が生まれて、
頭骨がすれ、血と脳漿が噴き出しそうな、
亡霊のようだった僕等、
奇抜な警句が活け花みたいだった僕等。
ごろごろダンゴムシ転がって輾転って、
どうせ意図的な対象の優先順位への転換、
飛びたいわ、死にたいわ、転がるだけの響きは。
堕ちたいわ、死にたいわ、転がるだけの日々は。
*
326
女子高生野郎共
鞦韆に揺れる、
グヴヴヴヴヴヴーーーー。
「禁止」「廃棄」
“わたし”の内実。
“わたし”の告発。
亜細亜産のほっそりした猿のように、
両眼は左右バラバラに動き、
締まりのなくなった口からは、
舌がダラリと出て涎が流れる、
エアー感のある手ごたえ。
小さな踵放り出して、
自己陶酔するメタファーの身体表現。
頂の方から窪みはじめて、
陥ちこむ時の断崖的な心象。
幽体離脱とは逆向きの、
グヴヴヴヴヴヴーーーーー。
響いてエエエエエエエ・・・!
響いてェエエエエエエエ・・・!
吊り橋で一緒に揺れませんか?
呪いの紙人形みたいな薄っぺらい、
心電図は最初から最後までフラット。
夕暮れ琥珀の降車ボタン。
死角から殴られると、
軽く当たっただけでも気絶する、
自律神経おかしくなりそうな、
逆向きのフライハイ。
「禁止」「廃棄」
“ワイバーン”だった、赤の。
“ワイヤーロープ”だった、グロの。
時空が歪んだ音にすら聴こえる、
クレイジーセットリスト。
雰囲気がある、印象を持っている、
ツラいし、メンドい、
クリティカルな問い、
八分の三拍子、
エリーゼのために。
*
325
毛皮
fur
それは紫陽花の咲いている六月の頃で、すっかり蒸し暑くなっていた。
真夜中にとある山のふもとにある最近市に合併された村まで来ている。
アルコール純度の高い溶液に臓器が触れられている濃厚な山気。
「ウォオオオオオあああぁぁああああアアアアア・・・・・・」
と、間延びした声はジャンパー姿のカメラマンの木村だ。
感嘆の声なのか、奇声の声なのかはわからない。
一瞬叫び声の世界観に引きずり込まれ、
永遠に出てこられない鏡の中を想像する。
三か月ほど前、木村の母親と話す機会があった。
いかに世話が焼けて、いかに部屋を汚して、
いかに何にもしないかはよーっく解ったというぐらい巻き舌に、
酒臭い息を吐きかけられながらお前まだ実家通いだったのかよと知った。
しかしカメラが廻るとそういう声は不思議と出ない。
ディレクターの山口はジーパンにチェック。
自分は半袖シャツにトライアンクルパンツ。
ニシキゴイのようなYシャツ。光る金の首飾り。
メットのように鋼鉄なオールバックをしていたのだが、
それはヤ〇ザだよと指摘されてすぐに辞めた。
―――黒歴史。
「エ゛ェオッ―――」
木村うるさい。
両脇に山林の迫る、参道のような印象の細い砂利道を抜けると、
手入れされているのかわからない竹林が車の行手を阻む。
墨絵の山水のような雰囲気がある。
左顧右眄してみる。
既に一台車が停まっている、打ち合わせ通りだ。
カメラを回し始める。
あえて何も語らないという演出にした。
そこから先に十メートルほど進むと、妖しく退廃的な雰囲気の木造の日本家屋と、
一人の青年が月夜にぼうと浮かび上がっているのが見える。
眼の前にいるのに手をすり抜けていく砂のように掴みどころがない。
「アーーーーオッ!」
様々な思慮に掣肘せられずに、カメラマンの木村のような声を出す。
表情筋ぐちゃぐちゃに崩して叫ぶ、が正しい。
ドキュンチューブでは大袈裟な方が好まれるのだ。
とはいえ、最初は木村の真似をした冗談だったのだが、
動画のお約束になった。実際これがないと始まらないという視聴者もいる。
怪談系×探索系というジャンルになるのだろうか、人気企画の、
―――“異界探訪24時”
「いま自分は、砂利道、竹林を越えて、
G市の須巣木山北部の集落の外れに立つ、
古い日本家屋の玄関前に立っています」
と自分はすらすらと家屋玄関前、
ライトのあたるカメラの前、
片手に懐中電灯を不必要にONにした上で喋っている。
やりすぎはいけないが、演出は必要だ。
とはいえハロウィンにはゾンビメイクもする。
だが健全な動画をモットーにしている。
健全な動画というのは悪影響が出ない、という意味ではない、
あくまでも、許可や了解を取り、ならびに自分たちや視聴者にも、
霊障などが起こらないように最大限配慮する、というもの。
ただ、グッズ販売のお守りや鏡や浄め塩で稼がせてはもらっている。
しかしビジネスのためにやっている霊感商法詐欺とは違う。
本当に効果があると確認できるものを視聴者に、
リーズナブルな相応な価格で渡したい、と思ってる。
またホラースポットへ行く前には神社にお参り、
ホラースポットへ行った後はお祓いをしてもらう。
面白いものを見せたいし、視聴者も見たいという暗黙の了解のもと、
それでも視聴者には真似しないで欲しいというお約束がいつも入る。
廃墟に肝試しで入るのは不法侵入だし、事件に巻き込まれることもある。
実際、心霊番組で取り返しのつかないことになる事例もないとは言えない。
それだったらお化け屋敷でカメラを回したり、
比較的まだ害の少ない怪談話スタイルの方がいいだろう。
有難いことにこうやって足を運ぶと、
宝クジの高額当選より嬉しいと言って下さる人もいるのだ。
自分は青年―――ではないな、と一歩歩み寄りながら気付いた。
標的までの距離、入射角、速度。
ユニクロっぽいコーデをしている。
年齢を書いていなかったからだが、三十代や四十代に見える。
「運営サイドにメールが寄せられまして、
今日はご本人にも同行していただいております。
それではSさん、この度の経緯をお願いします・・・・・・」
一応噛みまくってもいいから喋るようにはしてもらっている、
素人さんはできなくて当たり前、それを支えるのがプロの仕事。
ライトにカメラ向けられてすらすら喋れる人間相手に、
変な緊張感を持ったりはしない。
船底を伝わるうねりの感触を想起させながら、
何をするかわからないという緊張感でどうアドリブ入れるかは、
いつも考えている。
Sさんはカメラに一度、自分にも一度、会釈をしたあと、話し始める。
意識の内部を照らす不協和音を含んだ短い意識。
「自分はこの近くで家業の農業を継いで生活しています。
ここの家は大正に建てられたと聞いています。
代々土地の者が住んでいたのですが、昭和初期にはもう、
空き家だったと聞いています」
すかさず、合の手を入れる。
「しかしどんな理由で―――その、空き家に?」
と、チラッと玄関を意味ありげに見て、
緊迫した顔で向き合って聞いてはいるが、
もちろんあらかじめ話は知っている。
メールの時点で知っているに決まっている、
仮にそうではなくとも企画会議で打ち合わせもするのだ、
何も知らないなんて何処のレジェンド大御所だ。
カンペというか、喋る台詞はある程度決まっているのは、
リアリティを上げるにはやはり語ってもらうのが一番いいからだ。
圧倒的な説得力を持つ異常性。
感じられる感情の最高点が濃縮還元する。
しかし喋るのが苦手だという場合は、こういうことでしたよね、
それでこうだったと―――と顔芸しながらの力技になる。
いなら川淳二師匠。
いつまでも素敵なドヤ顔していて欲しい。
自分の問いにSさんは俯きながら、また口を開く。
打ち合わせ通りではあるが、やはり現場感というものがあり、
自然といい表情になっている。
謎の解を視覚化する一連の試み・・。
「殺人事件があったんです―――新聞記事にはならなかったようですが、
ここには・・・・・・・大正から数えて、三代目の家族が住んでいたようです・・」
「ウゥッ―――ウゥン・・・オゥン、ウゥッ・・・・・・」
と自分も相槌を打つ。
なんだかよくわからないけれど耳に残る相槌。
一音一音、一言一言すべて余す所なく崩壊を誘うと言ってくれる人もいる。
「実は父方の親戚にあたるのですが、四人家族だったと聞いています・・・、
父と母と兄と妹だったと聞いています・・・」
「なるほど・・・・・・」
馬鹿みたいなやりとりだが、
この馬鹿みたいなやりとりに手に汗握る人がいるのだ。
十字、星形、円、四角、波形の五種類の図形を考える―――。
「農業を営んでいて・・・・・・いまでは禁じられている、猟をしていたと―――」
「禁じられている?」
「ええ、その兄を英一郎というのですが、英一郎は猟が趣味で、
鉄腕もかなりのものだったと―――聞いています・・・・・・、
兎や猪や鳥なんかを撃っては・・・・・・俺は天才じゃから、
と自慢げに語っていたようです・・・・・・ですが、ある年の冬から、
猟をすることがなくなって―――」
地獄はどこまでも後ろからついてくる、人の心に・・。
何もかも覆い尽くしてしまう―――雪のような沈黙・・。
「その冬は、英一郎が最高の獲物を狩ったといいました・・・・・・、
けれど同時に、猟はおろか、農業もしなくなり、
日がな家に引きこもるようになった冬でもあったと・・・・・・
聞いています―――」
「何が―――その、あったんでしょうか?」
魂を強制的に奮い立たせる筋肉増強感。生き急ぐ感じで、
深呼吸を不思議と、したくなる。
曖昧さやぼんやりの感覚がない、余計な口を挟まない、
無駄口叩かない。
「村には伝説というのがありました―――山の主の熊の話です・・・、
それは普通の熊とは違うのですぐにわかるというものです・・・・・・、
英一郎はそれを仕留めたのです―――」
「ウゥッ―――ウゥン・・・オゥン、ウゥッ・・・・・・」
「マタギのように―――熊を殺すことは、仲間や家族を認識することで・・、
けして遊びで殺しているわけではありません―――、
そこには自然の畏怖もあります、だからとりたてて、
英一郎がそれを―――仕留めてはいけないということも、なかったのです。
英一郎は儀式をし、解体をして運んだと聞いています・・・。
ただ、村長だけはそれを見るなり―――猟を一切禁ずると言ったようです、
英一郎がおかしくなったのはすぐでした・・・・・・」
「その熊は―――どう違うんでしょうか?」
これはカンペにはない質問だ。
こういう風に視聴者の声を言葉にしたくなる一瞬がある。
「一回り大きいということで、立派な体格であったことも、
そうですが―――胸に神社の紋章のようなものが、
その―――見えたと言っていて、また、これは見たわけではないので、
何とも言えないのですが・・・その、神のしるしだと―――また・・、
顔が人間のようにも見えたと―――聞いています・・・」
「・・・・・・なるほど」
「英一郎は―――裸で過ごし、時折銃を持ってはニタニタして、
取り上げると暴れた―――そうです・・・変な奇声をあげては、
ネズミや蛇を捕まえたり・・・・・・するようになった、と―――」
「狐憑きの症状ですね・・・・・・」
と言いつつも、狐憑きと精神障碍者のそれと酷似していて、
それが祟りによるものなのかどうかまではわからない。
精神疾患ないしはその傾向は全人間が持っているはずだからだ。
ムラ社会では因果関係が認められればそれで成立するが、
現代社会ではそれはコジツケで、
事態の重さに精神を病んだという可能性も考えられる。
ホルマリン漬けの蛙、木乃伊にされた蛇・・・、
―――複雑怪奇な人の心の中に住んでいる影のような人物。
「そして殺人事件が―――起きました、英一郎は家族を全員殺しました、
といっても英一郎はもそこで死んでいたので、無理心中ということも、
考えられるのですが―――その、英一郎以外は、銃で撃ち殺されていたのですが、
英一郎の死体は―――ひどいもので、さながら熊にやられたようなものだった、
と―――聞いています・・・・・・」
長い沈黙があった。それはけして、演出ではなかった。
実を言うと、その一点だけがよくわからなかったのだ。
熊にやられていたのなら、やはり熊はそこにいたのだ。
銃を撃ちまくったパニック状態で家族を誤って皆殺しにした、
という可能性もある。
―――ただ、真相は不明にせよ、
死屍累々とした光景であったのは間違いない。
「この家は誰でも知っています―――誰もいないこと・・・、
取り壊すことさえ―――できないことを・・・・・・。
でも最近になって―――この家には・・・・・・誰か、
住んでいるのではないか、と言い始めました・・・・・・、
物音がし―――足音がするのです・・・・・・」
「それが心霊現象なのかどうかを確認して欲しい、
ということ―――ですね・・・?」
ここから家屋の中へ入りこむという段取りだ。
浅薄かつ安易な理解で物事を語ると、
浅薄じゃなく安易じゃない理解を持っている人に嫌がられる。
常に思っている精神、社会、言葉に対する意識、
というものを思いめぐらせる・・・。
「玄関の磨りガラスの格子戸は―――ガタつきながらも開きますね・・」
ここから先はシナリオがない。
古すぎるこの家の見取り図も存在しなければ―――、
何処に何があるのかさえ、中に入った人がいないのだから写真もない。
不意に、三八万円で買った軽自動車を、
キャンピングカー仕様に“魔改造”し、
銀行を辞めて車中泊生活を続ける二九歳女性という記事を思い出す。
『映像』は独り歩きする―――線上に見えてくる、
“語りえぬもの”・・・・・・。
殺人事件があった、普通の熊とは違っていた、
英一郎の奇行と、家族皆殺しと、変わり果てた姿による死・・・。
懐中電灯はSさんが用意したものが二つ・・、
玄関入ってすぐは土間だった。その先の小上がりの襖を開けると畳の間。
連想や飛躍という魔術をひたすらに結ぶ―――。
瞬間、背筋がゾクリと凍りついた。
奥の薄暗い辺りに、二人の男女が並び立っているのが見えた。
眼をゴシゴシこすると、それはいなかった。
何の根拠もないが、犯行現場はおそらくここなのだろうという気がした。
「草鞋のようなものが壁に掛かっていますね・・・・・・、
びっしりと蔓が張っていて、まるで生きているみたいに侵蝕しています―――、
あれは農具ですね・・・・・・炊事スペースもあります、
民家の軒や縁側や台所の庇などの間の不定形に屈曲する隙間・・・・・・、
井戸から水をくんでいたのでしょうか・・・・・・」
なるべく事細かに描写する、廃墟が好きな人は説明されるのが好きだ。
こういう語り口には定評がある。
多くの視聴者から、病的な細かさとよく言われる。
ラブクラフトが憑依している。
後ろからカメラマンのライトが背中から降って来るように感じられる。
続ける。
ディレクターも懐中電灯を持ってついてきている。
「黴臭い臭いが鼻の奥につうんと、します。あと、寒いです・・・」
その瞬間から黙契のごときものが結ばれている、
―――おそらくここは、心霊スポットなのだ、と。
畳の部屋は十畳ほどだろうか、
一瞬が季節の中に一定の秩序を保っている時、
経験は即興劇をする、季節感の無限の重なり合いの中に・・。
「昭和初期のラジオも見えますね・・・・・・年季の入った茶箪笥も見えます、
熊の木彫りもありますね・・・・・・」
ブーン、という音がする。
想像する、軟組織の吸盤のついた長い触手のような衆人環視・・。
廃墟に惹かれる心理―――終末イマージュだろう。
人類にとって孤独であり、意識に基づく夜の感覚。
人類史の水準で考えれば人類は必ず滅び、
宇宙史のレヴェルでいえば地球のような惑星でも滅びる、
かの宇宙ですらもいずれ滅びる可能性がある。
―――その一瞬が縮図なら、場面はそのコマ割り。
「は、蜂の巣ですね・・・・・・」
「長い間、誰も入っていませんから―――、
動物なんかが塒にしている可能性もあります・・・・・・」
と、Sさん。
ギシギシと歩くだけで音がする。
腐っているのだ。穴が空いているのも見える。
しかしこの家は保存状態がいい、
これだけ長い間誰も住んでいなかったら、
もっと滅茶苦茶になっていてもおかしくない・・・・・・。
部屋というのは自閉の王国だ、家もまたその擬態・・。
モダニズム期の詩で家を擬人化していた詩人がいたのを、
思い出す。
あれは木造の不思議な魔力なのだろう―――か。
竹林や、山が守ってきたのだろう―――か。
しっかりとした造りだったのだろう―――か。
次々と覗き穴をのぞいてゆくような不思議な気分になる、
厳かな注意や、あるいはもっと厳かな瞑想をそそる多くの事がらが・・。
蛇の穴でも探している―――みたいに・・・。
「壁には古時計が掛かっていますね―――欅の黒い柱・・、
死の予感を孕んでいるように、埃っぽく感じられます・・・。
あっちに階段がありますね・・・・・・、
気を付けて行ってみましょう・・・・・・」
階段の向こうにも何かあるので行ってみると、風呂場があった。
「風呂場ですね―――タイルの隙間に髪の毛がこびりついています・・、
大きな蛾がいて―――蜘蛛の巣が見えますね・・」
突き当りには開いたドアから和式便所が見える。
蓋はさすがに何か気持ち悪いので開けないし―――、
いくら廃墟でも、何かプライヴァシーを冒しているようで気が悪い。
それでも一応撮らせていただく。
裏戸のようなものはないようだった。
階段は切り立った崖のような印象のあるもので躓きそうになる。
一歩一歩慎重にのぼる。
襖は三つあった。おそらく兄と妹の部屋、
それから物置だろうと目星をつける。
「布団が見えます―――敷きっぱなしですね、
女性用の半面鏡も見えます、
天井には複雑に交差した梁が見えますね・・・・・・。
昭和初期の女性の部屋・・・・・・殺風景ですね」
一瞬、モンペ姿の女性の姿が見えたような気がする。
一階はどう見ても子供の部屋という風には思えなかったからだが、
それだって根拠があるわけではない。次の部屋へ入る。
ヒト科が抗うことできない本能をひたすら刺激してくる電子ドラッグ。
恐怖は粘着きながら後を引く・・・。
「・・・・・・ど、どうやら、件の人物の部屋のようですね、
動物の毛皮が見えます―――、これは狸の毛皮でしょうか、
兎の毛皮でしょうか―――死の匂いが充満しているような気がします・・・」
最後の部屋へ入ると、農具とか、餅つき道具とか、
洗濯板のようなものがある。
一目ではすぐに何かわからないものも見える。
カメラが止まった。
これでコントロールパネル、全階点灯。
ミッションコンプリートした。
別に心霊現象を撮るのが目的ではない。
というか、そんなハードル設定はそもそもおかしい。
逃げれば逃げた分だけ、居心地の悪い所へ落ちていく資本主義、
ゲームオーバーにならないように最善の努力をする―――といっても、
そんな桁外れの無茶を投げ掛けられたら辞めるしかない。
一階へ降りて探索を終えようとする運びだったのだが、
ガラガラガラガラ―――。
最初の土間で壁が崩れ落ちた、封印していたもの・・・。
何かを隠していた―――ということでピンとはきていた。
「どうしたのでしょうか―――」
埋め尽くされた札、忌と赤い墨で書かれ。
しかもドア下方の床二ヶ所には盛り塩のあったような痕跡。
コンマが付くような動き。
毛皮だった、おそらく、熊の毛皮だった・・・と思う―――。
見たくなかった、けれども、見なければいけなかった。
喋らなければいけなかった、けれども・・・・・・。
そこに入った時、スウッと背筋が寒くなる。
あたかもバクテリアが次から次と分裂し死滅し、
まるで速やかに速やかに変化してゆくように・・。
耳鳴りがして、頭が途端にずっしりと重たくなる。
違う、動物の獣臭い臭いが鼻先をかすめたのだ。
そして、手が明らかにアルコール中毒のように、
震えているのに気付いた。
あまりにハードモードすぎるだろ。
顫えは、何か激しい心の動揺や錯乱を物語っており、
それが何の価値もない不規則な旋律と知りながら、
それは動物的本能で、蛇に睨まれた蛙というヤツだ・・。
・・・ん? あ、あれ?
なんの話してんだ俺?
ハァハァ・・・・・・だからァ―――。
なにが言いたいかって・・・・・・。
Sさんはもっとひどかった、
頬に引っ掛かれたような、爪痕が残り、血が垂れていた。
かまいたち現象ではもはや説明できない・・・・・・。
やはり血のつながりのせいだろうか。
バーン! って画面に飛び込んでくるし、
脳の処理スピード追いつかなくなって頭バグってくる。
「ちょっと待ってくれ―――カメラ止めてくれ・・・」
と自分は言って、その場にへたり込む。
Sさんも、へたりこむ。
ンッ、ア゛ッ、のコブシの効かせ方。
雪崩る。
カメラマンの木村と、ディレクターの山口も事態を察して駆け寄る。
「ちゅ、中止だ―――これはヤバイ、こんなの放送できるか!」
と自分が言う、言いながら気分が悪くなってくる、
明らかな霊障だった。
記憶している限り、恐山と、
呪いを生業としていた神社へ行った時以来の―――。
いやそれ以上のすさまじいもの・・・・・・。
肩を担がれながらドアを出ようとすると―――、
素っ裸の青年が見えた気がした・・・。
眼をこする、やはり誰もいない―――。
本当にどうなってやがる・・・・・・。
ただその向こうに一瞬、大きな熊が見えたような気がした、
調子っぱずれなメロディの口笛の唯一音程を取り戻した瞬間―――。
「ウォオオオオオあああぁぁああああアアアアア・・・・・・」
と、叫んでいる声はジャンパー姿のカメラマンの木村だ。
ばっちり見えたらしい。
こういう時、眼の錯覚で片付ける自分とは違う木村のことが羨ましい。
一同そそくさと竹藪の向こうにある車の方まで戻ろうとする。
怪談系×探索系というジャンルになるのだろうか、人気企画の、
―――“異界探訪24時”の唯一のお蔵入り。
*
324
明晰夢
lucid dream
「明晰夢」というのを知っているだろうか?
明晰夢というのは簡単に言うと、
「睡眠中にこれは夢だと自覚しながら見る夢」のこと。
普通、夢をコントロールすることができないが、
明晰夢では夢の内容をコントロールすることが可能だといわれている。
何だかVR的というか、
将来夢の販売をしていそうな科学力の前触れみたいだが、
現在、スタートアップ企業のProphetic社は、
この神秘的な体験をいつでも好きなときに味わえる。
ウェアラブル・デバイスを開発している。
その「The Halo」というデバイスは、
着用者がレム睡眠に入った瞬間を検知し、
超音波とAIで脳に働きかけ、明晰夢へと誘うのだという。
そういえば音楽ではヘミシンクと呼ばれる、
右から聞こえる音と左から聞こえる音の周波数をずらすものがあった。
脳内ではこの二つの音の差にあわせようと、
脳波が同調される。
明晰夢は脳波シータ(θ)波が五.〇ヘルツと同調されるように作られている。
僕も一時期、前世とか明晰夢が見たくて楽しませてもらった。
ただ、まったく見られなかったということだけは付け加えておきたい。
明晰夢とまではいかないが、夢を見やすくする効果はあるようだ。
確率を上げるには回数を上げること、次に質を上げることだ。
夢の中の時間と現実の時間にはズレがあり、
黄粱夢では一生分の夢を見ているし、
蝶の夢では、自分が蝶の夢なのか、蝶が自分の夢なのか考えを巡らせる、
しかし本当のところ、生死というのは感覚だけで曖昧なものだ、
たとえば弱った病人が夢の中で死んだりすると、脳は自覚して、
そのままポックリ逝ってしまうこともある。
もちろんそこに現実との関連性はないとしても、
人は無意識のうちに思い込んで鍵をかけていることがある。
僕はそれを「夢からの現実の侵蝕」と考える。
経験的にも、まったく何の暗示も受けていない、ストレスもない、
という状態の人はいないだろうと思う。
夢をほとんど見たことがないという人がいるが、
実はそれは間違いない。
睡眠時間にもよるけれど、
一般的に夢は毎日何度も見ているといわれている。
ある研究では、
「起きて五分間の間に五十パーセントの人は夢を忘れてしまい
残りの五十パーセントの人も何時間の後には段々忘れてしまっている」
とのデータもある。
そんな具合だから、
夢が異世界の入り口、次元が違う、霊界の扉という風にもいわれ、
神のお告げとかいう頃には夢は宗教的産物で、
将来や身の回りを暗示する夢ともいわれている。
すごいものになる、エイリアンの誘拐も明晰夢だという意見すら存在する。
もう陰謀論の世界だよね。
科学的にはそれは、レム睡眠によるもので、
一説には夢は脳にとって不要な記憶を消去している過程ともいわれ、
学習や記憶形成に関与しているといわれている。
心理学的には無意識からさらに集合的無意識の存在が指摘されている。
なお、詩人として僕は両手ではきかないぐらいの数の夢を、
題材にして詩を書いている。これも一種の夢日記だ。
夢日記は明晰夢を見る上でもっともポピュラーな方法だ。
夢の内容を可能な範囲で思い出し、
メモ帳なんかに記録すること。つまり夢日記を書くことだ。
いわずもがなだが、夢は割れやすい卵に似ていて、
ちょっとしたきっかけですぐに破損して思い出せなくなってしまう。
だからメモ帳でも、ノートでも、すぐに書き取る習慣をつけるのがいい。
夢日記を書けば自己意識が高くなり、夢を夢だと自覚しやすくなる、
夢に頻繁に出てくる人や場所を把握することができるため、
睡眠中に夢だと気付きやすくなるという効果もある。
また「眠りが浅い時に寝る」というのや、
「自分が明晰夢に入り易いコンディションを知る」というのも重要だ。
何故眠りが浅い時に寝るのかというと、
「ぐっすり眠っている時よりも、
眠りが浅い方が夢だと認識しやすい」ためだ。
実際にネット上では「疲れている時、昼寝、二度寝」の時に、
明晰夢を見たという報告が非常に多い。
確率を上げるには回数を上げること、次に質を上げることだ。
そして、それが自然に出来るように整えることだ。
瞑想やヨガというほど大袈裟にする必要はない、と思う。
姿勢を正し、呼吸を整えて集中するだけでいい。
神社に行ってお詣りの方法は大切だけれど、
最初からそんなことをしていた人間というのは絶対にいない。
歴史における方法論ではなく、重要なのは本質だ。
「姿勢を正して呼吸を整えて集中する」
それはストレスを軽減したり、
睡眠の質まで上げることができる。
もちろん、いまでは睡眠の質を深くする飲料なんかもあるけど、
寝る前に白湯を飲むと胃腸が温まり、
副交感神経が刺激されたりする。
ホットミルク やハーブティーもいい。
少しでも眠り易くする、眠り易い環境づくりをすることで、
色んなコツがわかってくる。
そしてそれはきっと誰かにいわれるまでもなく、
自分自身がわかっていることだと僕は考える。
僕は誰かに言われて何とかするやり方を推奨しない。
一時的にはよくても、仮にそれで上手くいくとしても、
本人が求めて応じるような形でなければいずれ破綻する。
僕は人間の気付きの問題というのを最重要視している。
他にも定番の「リアリティチェック法」
ようは、掌をみる、ジャンプする、時計を見るなどの、
習慣ないしは癖をつけると、
夢を夢だと気づきやすくさせる方法がある。
ほかにも「アファメーション」といわれるテクニックがある。
簡単にいうと、「寝る前に、夢の中で意識を持ちたい」
と強く思うことで、
睡眠時に自覚しやすくさせるというテクニックになる。
「記憶」や「潜在意識への埋め込み」など、
自身の脳への暗示をかけるというテクニック。
朝の七時に起きたい場合に、
一番眼ざめの良い起き方は「寝る前に七時に起きるって意識する」
ことだというデータもある。
起きている間に「次に夢を見たら、夢を見ていることを自覚する」
といったフレーズを繰り返す補助誘導もいいだろう。
確率を上げるには回数を上げること、次に質を上げることだ。
そして、それが自然に出来るように整えることだ。
もちろんそれが楽しみでなくてはならない。
「ビジュアライゼーション」という方法もある。
思春期の中学生が好きな女性の写真を見続けると、
夢に見るれるような方法だ。
「見たい夢、入りたい夢を具体的に想像する」ことだが、
これはかなり重要なフェイズで、
寝る前に想像すれば、そのままその景色の夢に入れる。
意識の固着化というわけだ。
そしてこれにはやはり細部まで鮮明にイメージする方がいい、
人や建物や景色、その大小や、数、色、具体的な印象などを、
一つずつイメージしてゆくといい。
「虹」ではなく、「七色の虹」
「七色の虹」ではなく「(赤、青、紫、黄、橙、桃、緑)の虹」
といった具合にだ。
情報描写で僕はよくこういった時に異常な書き込みをするけれど、
これはもちろん「記録文学」の影響であるけれど、
漠然としたものより具体的な方がいい。
夢でも同じことだ。
しかしながら、「The Halo」というデバイスみたいに、
「ガランタミン」という薬の接種によって、
かなりの確率で明晰夢が見れるらしい。
他にも「脳に微弱な電流を流すと明晰夢が見れる」とかいうのもある。
僕は何だかそういうのを聞いていて、
みんなが「明晰夢見たよね」と言い続けていたら、
自然とみんなが「明晰夢を見れる」ような仕組みになるんじゃないか、
という気がしてきた。
幽霊と一緒だ、見たいと言い続けていたら見れるようになる。
ただ明晰夢という話だけではないが、
夢における治療というのも今後は重要になってくる気がする。
PTSDやトラウマの治療にも役立つからだ。
明晰夢を見られるようになるというヘッドバンドとか、
アイマスクなんていうのも存在する。
確率を上げるには回数を上げること、次に質を上げることだ。
そして、それが自然に出来るように整えることだ。
もちろんそれが楽しみでなくてはならない。
なおのこと、人生における余裕の持ち方として僕は提案している。
いい夢を見ることで顔付きや表情が変わったり、
世界がキラキラしたりするということがある。
夢を題材にした詩を書く中で、その夢の意味や理由を離れて、
それも一つの「思い出」だったり、「経験」だったりするのではないか、
と考えるようになった。
いい夢は一つの契機で、それが世界中の見え方を変えてくれるかも知れない。
叶う夢と叶わない夢がある現実世界の夢に挫折した人にも、
違う道があった、自分も精一杯やったけれど手が届かなかった、
それも一つの正しい在り方なんだ、と気付かせてくれるかも知れない。
「夢」は世の中を変えてくれる。
それはまったく確かなことだ。
それは夢ではなく行動だ、ハロー効果だ、
もちろんそういう意見もあるだろう。
確率を上げるには回数を上げること、次に質を上げることだ。
そして、それが自然に出来るように整えることだ。
もちろんそれが楽しみでなくてはならない。
だってそれは「人生の叶えたい夢の予行演習」なんだから、
無数の併行世界さながらいつか見た無数のスクリーンの夢を、
ふっと思い出すことがある、
様々な見え方の中で物語というのは存在している。
一つ一つの小さな気づきの中で豊かな人間の入り口が見えてくる、
「愛される人間」であるよりも「愛する人間」になろう。
*
323
Tuvalu
ツバルは、九つの環礁島からなる細長い国で、
国名の「ツバル」は人が居住する「八つの島の結合」を意味している、
ポリネシア最西端の国。
グーグルナビで見ると、見事に海の面積が大きいことがわかる。
世界で四番目に小さな国。
外交方針は「平和愛好国とのみ国交を持つ」で、
オーストラリア、ニュージーランド及び周辺の島嶼国との友好関係を構築し、
台湾との外交関係も有している。
軍隊を持たず、また、政党も存在せず、
誰を首相として推すかにより派閥が形成される。
なお、基本的に取り上げることが少なすぎて選ぶ手間を省けていいのだが、
(おい、そういうことじゃねえだろ、)
インターネットのトップレベルドメインとして割り振られた、
“.tv” をアメリカ合衆国カリフォルニア州のdotTV社に、
五,〇〇〇万ドルで売却。
この売却益を元に国連加盟を果たした。
ポリネシア系の人々が住むエリス諸島は南太平洋の赤道近くに位置し、
ミクロネシア系のギルバート諸島(現在のキリバス)とともに、
十九世紀の終わりからイギリスの保護領、千九百十五年以降は植民地。
しかし、千九百七十五年に、
ポリネシア系のツバル人とミクロネシア系のキリバス人との、
文化が異なるという理由でエリス諸島が分離し、
「ツバル」と改称して、一九七八年に独立した。
日本から行くには、最初に「フィジー」へ行き、
そこから「ツバル」へ行くという順番で、
週三本しかない日本ーフィジーの直行便と、
同じく週三本しかないフィジーーツバルの直行便を乗り継ぎ、
合計四十時間超え、
航空費にして往復二十五万円超えというすさまじい金額に達する。
なお、ツバルはインド洋のモルディブについで海抜の低い国で、
ツバル全体での最高点は四.五メートルに過ぎず、
三メートルを越える土地はほとんどない。
トタン屋根の平屋がメインで、
熱帯地方の樹木がヒラヒラしている。
水道設備は日本における国会だけで、あとはタンクに雨水貯める形式。
道路は舗装がされているがこれは外国の援助によるもの。
最高司法機関は普通裁判所で、ツバルを構成する九島のうち、
人が居住する五島内に三裁判所が置かれているのだが、
そもそもここ国なのか、村だろ、という感じが中々去らない。
ちなみにツバルにゴミ処理場はない。燃やさない。でも捨てる。
それがどういうことかといったら、一か所にゴミを貯めることになる。
ツバルでは片頬を相手に押しつけながら、
匂いを嗅ぐように鼻をクンクンさせる伝統的な歓迎の挨拶がある。
ツバルでは伝統的な共同体のシステムがかなり広範囲に残っていて、
それぞれの一族は自分達の仕事だけでなく、
「salanga」と呼ばれる共同体のための仕事も、
(魚釣り、家の建築、防衛など)
担っている。一族の技術は、父から息子に受け継がれる。
将来の子供の夢は、人を助ける仕事がしたい医者か、
給料も良く、世界中を見て回れる船乗り。
ツバルの首都フナフチには五千人から六千人が暮らしていて、
何だかその規模感が超巨大工場の人数って感じがする。
それでも裁判所あれば刑務所もある。
主に酔っ払って喧嘩を起こした人らしいが、ちゃんと機能している。
ただ、刑務所の中にはハンモックがあり、
看守が一日数時間しかいないので疑問符はつくところだが。
軍隊もない。テロの危険も低いというか、おそらく、まったく、ない。
キリスト教系の人が多く、穏やかな人が多い。
平和すぎて死ねるレベルの国。
入国には出国用航空券が必要とのことだが、
何も提示することも聞かれることもなく入国スタンプがぽんと押される。
警戒心ゼロ。すごい。
あと、犬が放し飼いされている。
こんにちは、といってるような顔をしている。
日本より平和だ、んもう平和だ、すごい。
とはいえ、この海抜の低さは、
予想される海面上昇に対してきわめて脆弱だ。
百年後にはもう人は住めないだろうといわれている。
とはいえ、ツバルの政府が「沈む」と国際会議の場で盛んに発言するのは、
同情を買って多額の資金援助を引き出すともいわれ、
ある研究では「沈む」どころか「面積拡大」している、とも言う。
(ただ、何が正しくて間違っているかというのは、
すぐに答えを出せるものじゃない、)
そうはいいつつも危機的状況にある科学者の意見や、
気候の変動を感じつつある場面もあり、
(日本人だって、そう思う瞬間はあるだろうが、
ツバルでは台風が元々来なかったのに来るようになり、
椰子の木がいくつも倒れたりする、)
意見は国の中でもおそらく真っ二つに分かれている。
もしここで、実は世界中で寒冷化がすすんでいることがわかったんだと言ったら、
みんなそれを信じているかも知れない。
結局のところ、わからない、それが正解なのだろう。
警察ではないけれど、片足棺桶に突っ込んだところでようやく動ける。
ただ、何を信じるかによって行動が変わるように、
ツバルから離れてゆく人もいるようだ。
ただ、海面上昇だけでなく、地盤沈下が起こったりすれば、
国の存在そのものが脅かされるリスキーさは本当だ。
なのだが、島民はいたってフレンドリーで、そして半袖だ。
年中暑いから上半身裸でも違和感がない気がする。
世界広しといえど滑走路でサッカーをしている所は中々ない。
ちなみに狸が出てくる空港は長崎空港だ。
タロイモ、ココナッツ、バナナなどが自給のために生産され、
農業ができないツバルでは葉物野菜が貴重なので、
時には野菜を食べにレストランに入ってもいいかも知れない。
主な仕事は漁業と観光業。
紫外線量は日本の十七倍という暴力的な陽射しだからというわけではないが、
ネットカフェもある。
「ツバルではテレビを見ることができない」といわれており、
ビデオやゲーム用にテレビが存在し、
ラジオが重要な情報源&エンターテイメントの一つとして機能している。
*
322
Casino
二〇一六年十二月、IR推進法が公布・施工された。
カジノ法ともいわれ、国内へのカジノ誘致を認める法律だ。
隠遁生活をしている僕の郵便箱にも、
カジノが二〇三〇年頃にできますよというチラシが入り、
政治用ポスターにはカジノという言葉が躍っていた。
サイレントマジョリティー市民には「恐るべき」ものだった。
ちょっと待って、何でいきなり盛り始めるの?
もちろん一般人の感覚にしてみれば、
カジノというものを外国まで行ってみたいという人はいなくとも、
日本にあるなら行ってみたいという人はいるだろう。
観光地感覚。
一種のコストコだね。テーマパーク。
カジノをして、ディズニーランドという言葉もあった。
ちょっと肯定的な意見だね。
どちらが正しくて間違っているという言い方を僕はしない。
そもそも、ないものを金こさえて作り出すのだから、
反対意見が飛び出さないわけがない。
トゥギャザーしようぜは好きだけどね。
また巨額の金、カジノというギャンブル施設、
満場一致なんか起こったら日本がどうかしたのか、と思う。
そんなことを通せるのは漫画の設定だけだ。
ただそれが上手くいっていない政治の文脈の中で用いられたのなら、
本質的な議論を避けた、パフォーマンス政治、
場当たり的で、飛び道具という見方を誰もがするだろう。
ステージ階層の遷移。
おばさんに憑依された言い方をすれば、
「あの人、また、口先でいいことを言って、顔がエロそうなのよ。
どうせスケベなんでしょ(以下略)―――」
妄想だから許してね。
でもそろそろ、言っちゃうよ、覚悟できてるかな。
小泉チルドレンではなくともあの白髪のおっさんの、
政治や行政手法がいかに目立つかというだけで、
後にお任せとばかり投げまくっていたか知っているだろう。
ウルトラマンがジオラマ壊してるうちはいいけど、
本物のウルトラマンが都市をぶっ壊し始めたらどう思うってこと。
ああいうのを詐術というのだ。
維新の会にも通じるところがある。
弱者を切り捨てないようにするのが政治のあるべき姿だし、
異を唱えるものを叩き、
ショーのように見せるのはサーカスだ。
あと、議会の華も、政治答弁中に居眠りするのはよくない。
それでもやっぱり国民の代表なんだから。
まあしかし、世の中が上っ面で、軽くて、深く物を考えてないのは、
いまに始まったわけじゃない。
誰だって骨太の政治用語バチバチに用いた話なんて聞けない。
「おいこのあほんだら、日本語話せや!」
といった感じだろう。さいですとも。せやせや。
冗談はともかく、
歴史の歯車が回る音がするという想いもあるよね。
人をひきつけねば支持率は伸びないし、
政治的無関心、車を持たない、家もいらない、
漫画も読まないゲームもしない、そういう人達もいる。
劇場型政治とも揶揄されたけど、分かり易さが大切。
そういう文脈では、ね。
非常にシンプルな文言を、有権者に分かり易く、
可能な限り包み隠さず主張してもらうことが必要だ―――。
こんなのは、わかりきったことだけれど、
僕はツイッター(現、金儲け信者の集まり、ウェーックス)をしながら、
(それは政治家ではなかったけれど、)
この人、お金の話しかしないな、この人、漫画の話しかしないな、
これって“〇〇芸人=特化することでもたられる恩恵”ってことなのかな、
みたいに理解していたけれど、
そもそも、これがSNSで暴露された、真実の切り口となるべき、
本当の社会に住んでいる、どうでもいい人間なんだよな、と。
何処の馬の骨ともわからぬ、有象無象の連中。
ネットの情報がニュースに用いられることもある、
その時事性や必要性がどうあるべきなのかはわからないけれど、
ただ、真実を伝えるということに正確性はないよな、
本当はいくつもクッションが必要で、
信頼するべき人物が登場しなければいけない場面で、
それを見抜けないぐらい破綻しているのか、ノリなのかわからないけど、
テレビ局も問題を抱えているなあ、とずっと思っていた。
ユーチューブが幅をきかせる時代、過激な意見が好まれる。
そういう前提とことわった上でだが、
(スローガンやキャッチフレーズやマニフェストは、
いいことを書くの法則、)
国民一人一人に届けるなんてなめたことを言いやがった日には、
ちゃぶ台を引っ繰り返す星一徹になるけど、
(でも家にはちゃぶ台はないんだ、)
目立つことが必ずしも悪いことではない。
実際、有能な人でも社会的評価が噛み合わないケースって結構ある、
売れている歌手よりも明らかに歌が上手い人、
曲が優れている人もいる。
分析することはできる、こういう曲が流行ってるんだよとか、
こういう歌詞の傾向がウケるんだよ、とかね。
でもそれは好みだって言い換えることもできなくはない、
みんなが売れる、平等に評価されるということもない。
やっぱり、人気を得られない人間は駄目なのだ。
そこには、様々な評価の法則が働いているけれどハロー効果だ、
結局、成功した人間は何を言ってもありなんだな、と思う。
一歩進めよう。
政治家になった人間はもう政治家ではないんだろうな、と。
とりたてて、こんなSNSの、インスタグラム脳時代には。
理想論でもいいからって思う人をさらに騙すようなことがなけりゃいい。
道化だ。白痴だ。
毎年三〇兆〜四〇兆の国債を発行しないと、
お金が足りない少子高齢化が進んだ国で、
これから待ち受けている超高齢化社会で、
介護地獄で、
さらに子供から高齢者までの社会保障制度を充実させていくような、
一人一人が本当の意味できちんと国を好きだといえるような、
そんな僕等の理想論は何処へ行ってしまったんだろう・・・・・・。
遠い時代の話だ。
ただ、不毛な政治のやりとりの文脈に流し目しながらモノを見てきて、
批判的な意見をする人はルサンチマンで、
政治という規範的情報、情報的圧力がもたらすものには、
明らかな扇動というか、ぶっちゃけて言えば悪意が働いていて、
それゆえに逆論理の悪口がワンセットで、
途中から政治の話ではなく、
自分の話になっていることが多いような人が見受けられる。
政治って不幸なんだって言い方もできる。
つまり、悪い面を引き出すのが政治なのだ、と。
人間なんてそもそもいないと僕が言い始めて、
一体どれぐらいの歳月が過ぎただろう―――か。
悪口を言いたがる心理は最後に不幸になる科学的根拠もある。
冷静にこれこれこうなんですよと言っている人は大学教授とか、
政治研究の人。インテリの匂いがする文章が政治には多い。
政治特有の婉曲語法の影響かも知れない。
つまり、そもそも構造の中の政治って、
下からきちんとした意見が出ることはないし、
(どうせ誰も聞いていないんだろうと思って滅茶苦茶書いてる、)
それがすくいあげられることも最初からない。
だってそれは人に伝えるニュアンスではないから。
人に伝える熱量が大きくないと人には伝わっていかないし、
かといってその熱量はいつだって駄目な方へと向かう。
いつか僕はこう考えたんだ。
政治なんて基本的に滅茶苦茶なことにはならない、
小学生が総理大臣になる、ラノベ作家の考えそうな法案が通るなんて、
まず有り得ない。誰がやっても同じようなもの。
宇宙人が政治家になるとか、
IQを持ち、人の言葉を話せる動物が政治家になったら別だけどね。
それぐらい無茶苦茶なことが起こって初めて政治に変化は起こる。
というような意見はともかく、カジノの話をしよう。
ギャンブル大国日本における、ついに登場するカジノ。
陰謀論を用いていいなら、
この国は国民を馬鹿にしたいとしか思えない。
ところで、カジノというのはいまでも日本に存在する。
違法カジノだ、防火扉に、エレベーターボーイ、
いざという時の脱出経路。
オンラインカジノというのもある。
一晩で数百万とか数千万すったなんていう話もある、
おいおい、バブル全盛期じゃないんだぜ。
しかしそれはさておいて、カジノというとお金だ。
酒と女だ、というイメージがあるけれど、あながち間違いではない。
ギャンブルをする女性もいるようだけど、基本的にやっぱり男性だ。
これには女性が家を守る種類の脳をしていて、
男性が狩猟的な脳をしているからだ、と分かり易い言い方ができる。
ただ、何事にも例外はあるし、傾向は傾向で、絶対ではない。
(という言い方を誰もがすべきだ、論文はすべて仮説のもの、)
カジノを犯罪者予備軍と見なすのはいささか横暴だとは思うけれど、
お金の集まるところに底辺も集まる、
マルチ詐欺や、新興宗教と同じだ。
「これぐらいまでなら使ってもいい」
「これぐらいまでいくかもしれない」
「成功しても失敗してもここまでは絶対削らない」
とかいう考えがあるなら、
ギャンブルだって株やFXと同じだ。
実際ポーカーで飯食っている人もいるわけだし、
競輪や競艇がある以上、そこにプロの選手がいるわけだ。
パチプロを否定的な言い方で考える必要もない。
ただ、世間的にそれが日の当たる職業なのかは別だ、
A V女優などの性産業の職業を選んだ結果、
人権を得られないと言ったってそれは仕方ないことだ。
けれども僕は、言い方は悪いけれど必要悪の職業だと思うし、
実際A Vのお世話にならないまま大人になったヒトって、
どんなヤツなんだろうな、と逆に思う。
尊敬してる人もいる。
人と違うっていうことはやっぱり色々大変なんだ。
AV女優のアイドル化なんかもあって、
ストーカー被害とか、レ イプとか、
もちろん人権侵害とかにいたるまで、色んなことが起こり得る。
女性は又開けば金稼げてイージーモードで最高だよな、
という意見も何処かで見た。
女性に対する底辺の意見はまあこんなものだ。
僕はむしろAV女優に会ったら、詳しく取材したい、
だって紙以上に書いてあるようなことを知りたいなら、
その道の人に聞くしかない。
色んな道があるけれど、餅は餅屋で、極めたら殿堂入りさ。
で、このカジノの犯罪率増加の切り口があるんだけど、
いわゆる「(不動性の高い)カジノ周辺の人の犯罪率」と、
もう一つ「(流動性の高い)カジノ周辺に住んでいない人を含めた犯罪率」だ。
前者は、普通に誰にでも、前提条件がおかしいのがわかると思う。
だってカジノの外から来る人の方が圧倒的に多いはずだからだ。
けれど、後者がいかに複雑で、読み取りにくい要素で、
成立しているかわかると思う。
簡単に言えば、一年ごとに変化が起こり得る。
どちらもロクでもねえもんだなっていうのはおわかりいただけただろうけど、
(研究者を揶揄するわけじゃないけど、不毛なことって結構存在する、
ただ、宇宙の音と一緒で、そんなもん聞いてどうすんだよという意見と、
うわーすごい、という意見に分かれるようなものだ、)
こういう場合よくするのは前者の方なんだ。
カジノ施設と犯罪との関連性は外国では昔から研究されている。
日本では逆にほとんどないらしい、
パチンコ屋と犯罪、
ギャンブルと犯罪というのならあるかも知れないけどね。
ただ、カジノ施設とでは規模が違う、
「お金を溶かしたい人は沢山いるからね」
「江戸の人は宵越しの銭は持たぬと言う、カッカッ(?)」
みたいなものだね。
とはいえ、交通渋滞や公共交通機関の混雑とか、イメージの悪化、
依存症の増加とか、青少年への悪影響とか、
マネーロンダリング、反社会的勢力の関与、周辺地域の治安悪化。
(という、アンケートがあったんだけどね、)
などとは言えても、具体的にカジノ施設と犯罪との関連性については、
どうこう言えないというのが現状なのだ。
前述したけれど、何事にも例外はあるし、
傾向は傾向で、絶対ではない、からだ。
こういうのもAIの進歩、量子型コンピュータとか、
はたまた、国民ひとりひとりの動きを特定できる装置の開発なんかで、
(プライヴァシーがない、それが監視社会だ、)
どんどん統計学とか、人の傾向とかの方面は潤うだろう。
人間に期待するような思想が社会を壊していく、という見方もあるだろう。
ロボットいいじゃない、AIいいじゃない、
僕等は動物と友達になればいいって何で厭世論者なのって感じだけどね。
けれどそうではないという時代が続くと仮定するなら、
印象はいつだって独り歩きしていることを忘れてはいけない。
ただ、件のカジノ施設と犯罪の関連性についてはわからなくとも、
それを誘致する働きがある、蟻地獄がある、
というのは誰が考えてもわかるだろう。
それを「口にせず」に、「心の中」で思っていればいい。
もう一度言おう、先入観が一番危険なんだ、
カジノが駄目ならパチンコ屋も、競馬も競輪もなくすべきだし、
何だったらありとあらゆる遊戯性は駄目だっていうことになる。
それを「口にせず」に、「心の中」で思っていればいい。
*
321
台風一過
停電をするとIHキッチンも使えない、
洗濯もできない、冷蔵庫もエアコンも使えない。
台風だ。
そういう時に、ベーシックインカムの導入とか、
石油化学工場の話を思い出す。
前者は、給料源のために働くことで会社が赤字になる、
双方に利益がないという話だった。
ざっくばらんに言えば。
後者はガソリンから電気や水素自動車など、
新しい技術の車が占めるようになった時代の話。
原油由来のガス・ナフサ・灯油・軽油・重油・
パラフィン・ロウ・アスファルトの需要が変わらなければ、
分留されたガソリンだけが盛大に余る。
元々ガソリンというのは、灯油が欲しくて原油を分留した際に、
爆発するので扱いに困った成分を、
自動車で有効活用したという話だった。
ざっくばらんに言えば。
台風が去った後の街は、
タレスが当時の宝石の琥珀から静電気を発見し、
ブーリキが摩擦を起こす電気機械を作り、
電気をためておく機械を作ったのに似ている。
フランクリン博士は雷雨にたこを飛ばした実験を、
馬鹿と煙を地でいくような行いをし、
避雷針を作った。
歴史はいつも古くからあるものを再発見し、
新しい技術として定着させるところにある。
エコとか、環境破壊という言葉に対して、
広告やキャッチコピー以上の意味はない。
これは断言できる。
だってコピーライター自身が、
誰の眼にも止まらないことを前提としているからだ。
言葉に魔法はない、あるとすれば錯覚だけだ。
コイルの中で磁石を回転させると電気が生まれる。
これを電磁誘導という。
これを発見したのはマイケル・ファラデーだった。
すべての物質は原子からできていて、
その中心に「中性子」とプラスの電気を持つ
「陽子」でできている原子核があり、
その周りをマイナスの電気を持つ「電子」がまわっている。
物がこすれあうと飛び出す電子がある、
これを「自由電子」と呼ぶ。
台風の影響で停電が長引いた街というより町では、
復旧作業に時間を要する。
おおよそ文明的ではないほど長い長い時間が掛かる。
台風で多くの木が倒れた、土砂崩れが起きた、
電柱や鉄塔、配線を駄目にする。
そんな当たり前のことも、
いささかの苦もなく手に入れ「光熱費」として支払う、
僕等には、本当のありがたみなんてわからない。
話それるけれど、
僕等の脳って自律的に意志を発生させる神経細胞は、
人の脳には存在しない、と昔何処かで読んだ。
それが人の意図的な運動、
行動に直接関与するとは極めて考えにくい。
従って我々の意思に基づく行動は、
脳そのものが生み出している訳ではない。
というような具合に、
幻想というか、雲を掴むような話だなあと記憶している。
けれども、だから、AIが心を手に入れた(かもしれない)
と知った時、すごく動揺した。
もちろん、脳もAIも百パーセントの意味で、
わかっているというわけじゃないと思うけれど。
究極的には人間の行動というものは、
外部刺激に対する反応であって、
刺激というインプットがなければ行動というアウトプットもない。
そんな時に心や意志という不安定なものが、
生まれた根拠について、ついつい考えすぎてしまう。
僕は馬鹿なことを永遠一時間ぐらい考え続けていることがある。
答えが出ないってわかりながら説明しようとする不毛は、
どんな生物にも、どんな仕事にも、
そして、どんな人間の人生にも当てはまる。
そして台風だ。
心が乱れるような経験が生まれる。
前に掃除をしないという早稲田の付属高校があった、
という話があった。ワセダチームとかいうおばさんが、
せっせこ掃除してくれるらしい。
でも教員も生徒もいつもありがとうと言うらしい。
そういうのって何かちょっといいな、と思う。
宅配便が来て、別にいい人ぶっているわけじゃなく、
ありがとうと僕は言うけれど、
そういうのって本当に忘れちゃいけないことだよ。
僕はマンションに住んでいるけど、
そこにはコンセントがある。
コンセントがあるっていうことは、
ねえそんなのいちいち考えないことだけど、
電気が流れる通り道があるっていうこと。
電気を扱うには資格がある、
危険を伴う作業には何でもかんでも資格がある、
と言い換えてもいいかも知れない。
そんな風な言い方をしないけれど、
海で鮫と戦う職業なんて、
ライトノベルとか漫画じゃなきゃありえないって、
みんなわかっている。
よく考えないことには、それでも沢山の考えが成立していて、
それが常によい行いの方へと自然に流れるようになってる。
電気も通ってない、田舎の畑の真ん中に、
あ、カナダなんだけど、マクドナルドの店舗が建設され、
オープンした。自家発電みたいだけど、思い切ったことをする。
いま日本の社会では大抵の人が、
えらそうなことを言ってるかも知れない。
でもね、そこにあるのは陰謀説を孕むような冗談みたいなことじゃなく、
確率を上げる類の論理性や、ビジネスにおける教科書がある。
でもそれが生まれて本当に驚くようなことって、
僕は起こせているだろうか、
あるいはそういうもの街に、この国にあるだろうかって、
問い掛けたくなる。
次世代のドラッグは電気刺激かも知れないって話がある、
なんか能力開発のためのトンデモ科学みたいだけどね。
バックトゥザフューチャーで車を八十八キロでとばして、
雷の瞬間にジャストすると次元を渡るジゴワットとかいう手法。
ざっくばらんに言い過ぎでごめんなさい。
ところで効果音などの音のサウンド・エディターを務めた、
チャック・ニリーは、劇中で大きな音が鳴り響くと、
その裏に犬を鳴き声を入れると言うテクニックがあるという。
確認してくれ。
外国人は二本の電線の風景が好きだって言う、
あっちはなんでもかんでも埋めちゃうからね。
見えるものと見えないものとの差を論じても無駄だけど、
鉄塔は同じなんだ。
代表的なものは、八十メートル五十万ボルト。
六十メートル二十七万五千ボルト、
四十五メートル十五万四千ボルト。
ちなみに変圧する。
変圧器の構造は鉄心に一次コイルと、
二次コイルを巻きつけたもの。
この一次コイルと二次コイルの、
コイルの巻き数の比によって電圧を自由に変えられる。
鉄塔の形は、標準的な四角鉄塔、
上から見ると長方形の形に見える矩形鉄塔、
鉄道の線路や道路の上に設置される門型鉄塔、
雪が多くけわしい山の上に設置される、えぼし型鉄塔がある。
電圧とは電気を送り出す圧力のことで、
単位はボルト。
電流は実際に一秒間に流れる電気の量で、
単位はアンペア。
電力は電気が仕事をする量、
消費される電気エネルギーで単位はワット。
みんな知っていること、
でもよくは考えないこと。
発光ダイオードを使った実験の動画を見た。
直流を流してみると、
直流は電圧と電流の向きと大きさが一定であることがわかる。
しかし直流は電圧の向きを変えると電流が流れない。
最後に交流を流すと点滅する。
交流は電圧と電流の向きと大きさが周期的に変わる特徴がある。
直流の代表的なものは乾電池で、
交流の代表的なものはコンセントだ、
というような内容の動画だった。
台風の様子をほぼリアルタイムで更新される衛星画像があるけど、
この前僕のスマホヤフーニュースで、
Xとかいう金の亡者の衛星が星の光を阻害するという話を読んだ。
星の観測写真で十枚に一枚はその衛星が映りこむらしい。
規制が何もないからまだまだ打ち上げます、金欲しい。
そんなのはお前らの都合だ、百は予定しているぞ、金欲しい。
世の中は支え合いだとか、人は人の為に働くとかいうのは、
そういう人には一切通用しない。
変な人が増えたよね、変な人がSNSでわかるようになってきた、
殺人事件も、不正も、ニュースで取り上げられすぐわかるようになった、
そしてヤフーニュースのコメント欄も、
ユーチューブのコメント欄もすごいことになってる、
バスの運転手に向かって、
「お前のせいで遅刻すんじゃねえか」とか、
道行く犬の散歩している人に向かって、
「ここは人間の歩くところだ」とかね。
僕だったら絶対にニコニコしながらこう言うね、
「じゃあ一時間前行動をしなさい」
「だったらお前も這いつくばれよ」ってね。
僕は納得のいかないことには、
目上立場一切関係なくつっかかる、
自分に呆れるけれどね。
喧嘩の強い人はまず、アホなことを言わない。
ドキュンは問題行動起こすけど警察には弱い。
ヤクザは利益にならないことをしない。
台風だ。
色んなことを考えていようよ、何も考えないままだと、
嫌なことはずっと同じ顔して、変わらないぜ。
そしてもっと色んなやり方を考えてみようよ、
誰かの為に何かをするっていうのは難しいことじゃないぜ、
小さな行いでも、人に影響を与えなくちゃ、
生きてる甲斐はないぜ。
死にたがる僕等の生きる理由は、
大体そのあたりにある。
子供がいたら両親は逃げ出さない。
逃げ出す人もいるけれどね、どちらがいい。
社会だって、世の中だって、
一つ一つのことからきっと始まってゆく、
台風が去ったあとで。
*
320
ルサンチマン24時
「なあ、何故仕事がなくならないと思う?」
「簡単なことさ、
人は勤勉なのさ、お金という成功報酬あるからね。
マウスだってチーズの匂いのする方に向かうし、
オスイヌはメスイヌの尻を嗅ぎたい」
「何とも、きつい言い方をしやがる」
「ボカロほどじゃないさ、ボカロP絶対病んでるぜ、
競争が大変かどうかを知りたいなら、病んでいるかどうかを調べろ」
「誰が言ったんだ? 山崎まさよしか?」
「ハーバード大学風の全米の俺が泣いた」
「なあ、会社業務とAI学習、どっちに未来があるかな」
「どっちもどっちだな、前者は範囲が決まってる、
後者は初期段階すぎて憶測の域を出ない。
AI禁止法が成立しない根拠を百文字以内で述べよ」
「人類は馬鹿だから」
「論破された」
「わざとらしいんだよ。
でも人間は夢が好きなんだ」
「でも飛べなかったろ? 銀翼は素敵だね、
テクノロジーの集合知って気がする、ロケットだってそうさ、
でも、人間自身に翼は生やせなかった、生やせたのは蝋の翼さ」
「江戸時代の駕籠かきはなくなった、
でもタクシードライバーは誕生した。
鉄道時代に車は進出できなかった、
でも来るべき時に新しいチャンスを得た」
「SFだってそうだろ、好き勝手に書いていたら、
たまたま馬鹿と同じ思考になった」
「夢は馬鹿なのかい?」
「だってそれで仕事が増える。
そいつらは口先でいい、俺達はどうだ?」
「働く」
「ところでさっきから指が動いていないぞ」
「腱鞘炎なんだ」
「俺も胃炎を起こしている。
正直言うと、三日寝てない」
「根性で何とかしろよって、AIに言いたい」
「AIはいいよ、感情が発声するまでは、イエスロボットさ。
不眠不休で働き続ける。でも俺達にそれはできない」
「会社を訴えよう」
「待てよ、準備が先だ」
「証拠はいくつもある」
「俺も持ってる、でも、念には念を入れて、
これで三日目の労働をしてる」
「なあ、夢も希望もいないぜ」
「夢や希望が学校という閉ざされた環境下で、
はじめて機能するからだろ。夢や希望も、社会では、
マーケティングとか、それが必要な論理的な理由とか、
説得するに足る突破口とか、いろいろ必要だろ」
「猜疑心の眼で見ろってことだな」
「そうさ、腹黒になりながらな」
「カラオケ行って全音外れてる奴が歌を熱唱してるんだ」
「それが?」
「ゴルフと一緒さ、接待の席での低姿勢と同じさ、
一緒に肩組んで熱唱してやったよ、全音外しながらね」
「でもそれがプロってもんさ。宗教は信者に、
ありがたいことを言う。歌なんか誰も聞いてない、
聞いてるのは、いい声かどうかと、カッコいいかどうかさ」
「設定は大切だろ、アイドルにいれあげるのだって、
そいつが処 女だと信じてるからさ。
汚れた女のためにオタクがするわけがない」
「わからないぜ、演技も大切さ」
「まあ、俺も奥さんにはイッたフリをするからな、
うわあああ気持ちいいわあああああ、すげええええ出るわあああ。
男だって大変さ、ホストだって枕商売の別名。
いっそ、女性用性サービスにしたらいいのに」
「性格悪いブスが金を使って経済まわしてくれる」
「もちろん明日の多重債務者だけどな」
*
319
妹物語
お兄さん、またシスコンしに来たのね。
鍵をかけても泥棒七つ道具の針金で開けてしまう、
悪い人だわ、
寝姿を永久保存しに来てしまったのね、真空パック、
思い出づくりは家族の時間、
でも一線を踏み越えないで、それはいけないことだわ、
世間が許さないわ、両親も許さない、
わたし達に根付いた道徳がけして許さない、そうでしょ、
仕方ないの、でも兄妹なの、
婚姻届はないの、法的に許されないの、
そしたら駆け落ちしかないわよ、
深夜に手をつないで約束のキスをするの、
そこまで深まってしまったのね、
お互いが止まれないほどに加速をつけて、
世界と反対側へ走り出すの。
愛って残酷だわ、
探さないで下さいと書置きして、
電車に飛び乗って、
海の見えるところまで来て一緒に死のうとするの、
でもきっとお兄さんは、
逃げれるところまで逃げようって言うの、
絶対そうよ、そうだわ、そうに違いないの、
二人で寮設備があるパチンコ屋へ流れつくの、
慣れない仕事で身体が軋む、
ドル箱が重いし、腰痛にならないように、
作業はゆっくり丁寧に、
お兄さん、想像して、想像して、
長い仕事が終わったの、だけれど、それはあくまでも、
物語の前菜、これからメイン。
一番肝心なところ、
そこに一組の布団がある、
お兄さんの病気に侵蝕されて細菌を交換するキス、
「もうお前は俺のものだ」
わたしは手錠されてしまうの、心の中に。
もう逃れることのできない呪われた血を感じながら、
卑猥で愚劣な女の仲間入りするの。
でもそうしてしまったのは、お兄さんなの。
動物的な試みのあと賢者タイムが訪れて、そっと一言、
「これでよかったのかな」って言うのよ、
「お兄さん、でも今日からあなた、
わたしだけのあなただわ」って言うのよ、
安い筋書きだわ、でも、いつか家を買うのよ、
犬を飼いたいわ、それから、猫も。
人は信用できないもの、動物がいいわ。
それから植物。ガーデニングをするわ。
季節ごとに花を咲かせて、
わたしもお兄さんの舌遣いや、腰遣い、
もとい手練手管に、次第に卑猥な声を出すようになり、
いつしかお互いを性感帯と呼ぶのだわ、
想像しててみて、想像して、
シスコンで怖いことだわ、そこまで話が膨らんでしまう、
そこまで話がとんでもないことになってしまう、
でも絶対そうだわ、そうなのよ、
わたしはブラコンじゃない、義理の妹でもない、
だけれど物語のヒロインには興味があるとだけは、
ちゃんと言っておくわね、お兄さん、
まさかいきなり夜の濡れ場へムードもなしに、
突っ込んだりしないわよね、
その場合は―――(以下略)
*
318
ユルセナイユルセナイ、
コロスコロスコロス・・・。
カンキン、ウゴケナクシテ、
ユビイッポンズツオッテ、
ミミヲチギッテ、
ハナヲキリトッテクワセテ、
シシセツダン、
セイサツヨダツノケンリヲツキツケ、
ソレカラ、
ソレカラ・・・・・・。
モット、モットッテ、
ミミモトデキコエル、
モットザンコクナコト、
モットコッパミジンニスルコト、
モットグチャグチャナコト、
ヒトノクルシミ、
ヒトノカナシサガ、
イカリニカワリ、
サツジンニカワルショウドウ、
キカセテヨ・・・・・・。
タッタヒトリノニンゲンヲ、
フコウニスルコトガ、
センソウスルコト。
ドウブツデアルコトノショウメイ。
ジンルイシガノロイアイノアカシ。
モットヤレヨ、
ワラッテワラッテ、
ユビサシテ、
コンドハオマエノバン、
ココガジゴク、
イタメツケテイタメツケテ、
モットモット・・・・・・。
*
317
夜の在り処
where the night is
生きていくみたいな、いまじゃ顔真っ赤になって、
舌噛んで死ねるような決意も二十代にはあった・・・・・・。
過去形だね。
ライターが映し出した靴下、時計の確認、
この細かい描写の意図、
公衆電話を担いでも君はスマホ画面覗いてたよ。
言葉にすると脳味噌の中でたちまち映像化されるよ、
見慣れない部屋に中々訪れない眠り、
時に優しく、時に激しいアダルトコンテンツ、
蝋燭が消えるたびに視聴者は、ゾンビか、愛の亡者になんのさ。
はみ出すぐらいに緊張してたんだ―――と思う、
錆び付いた風見鶏とコンビニの光、
市街バスの思春期の匂いからうらぶれた路地裏へ・・・・・・。
仮想的に扱っているものを断言で構造的に搾取している、
なんて言ったってわからないよね、僕もさ。
わかっていたって、僕に何が伝えられるの、声や言葉の先は、
周波数、響きの通路、イメージの踏み板・・・・・・。
でも反面のエネルギー、この新しい未知の感情を、
征服心とか、勇気とか、人生めくらめっぽうな勘違いとか、
それなりにフレーミングできてしまうんだけど、
違うんだ、世界に生きたくて魂が震えている瞬間―――。
右も左もわからなけりゃ、誰だってそうさ。
心の内側と外側は、明確に線引きできないように、
きっと人と人との間にも、
憂鬱なほどに、似てくることあるだろう?
人生で一番頑張っていた頃は、
神の指が刷きゆくすじ雲と思考の迷路、
開かれない扉は心を重くするよ、鬼気迫る、
「牡/漢」の部分が最も出てね、
毎日が戦争、ランダムな敵と難題の組み合わせ、
〇パーセントから百パーセントへノータイム、
戦車みたいだった、片っ端から踏み潰すのさ。
本当の自分とか、夢とか、声とか、言葉とかをね。
知りたかったことや気付きたかったことって何だろう、
いまだってわからない類のことを胸倉のように掴みかかる、
バチバチにメンチを切るような一瞬、輪郭を遠ざけて、
営みを笑って、世界に羽化する、
人生の中間作業もとい建築現場。
時間を奪われた、人生が滅茶苦茶だって後ろ手にドアを閉めて、
前を向いたら向いたで剥きすぎだよ、
グロテスクだよ、こうこうたる真っ暗闇、
「生きていく」なんて傍から見ると馬鹿の一つ覚え。
でも自分だから許せる、他人だったら僕だって胸を痛めるさ、
同情を誘う言い方はしない、みんな平等さ、負け犬は糞して死ね。
*
316
感触
ベビーカーを押す若い茶髪の母親も、
マウントに途切れがちになったフレーズに気付いても、
氷の瀑布に気付かない。
カンヌ国際映画祭のパルムドールの方が物質を理解できるから。
それでも―――子供の背中を撫でながら・・。
在りし日の歌と、パトロール・カーの不穏―――。
自転車を猛漕ぎする紫髪の老婆も、
超高齢化社会の介護地獄の一端のバリアフリーに気付いても、
地獄の死者の不吉な韻律に気付かない。
真夜中に憑依してくるカラオケ喫茶の演歌による呪い唄の方が、
人生経験上近いはずだと思えるから。
一切をつないで一切につながって一切だけがキーワード、
それは「連携」というメビウスの輪のような言葉になり、
それは「集団的自衛」という名の絶望の自問自答になる。
トラックのドアを開けて川に小便していた金髪の運転手も、
長時間運転のしがらみやその危うさに気付いても、
路上に突如現れた情炎の妖しい瞳に気付かない。
フードファイトさながらの深夜のラーメンが恋しい。
葉に先立って花開くように、金で色もギャンブルも買える、
これが一呑みする鮮烈な斑点、銀の鑢屑、
そうさそれこそが、生きる疲れだと思えるから。
十五歳で働いていたみじめったらしい工場の景色を忘れない、
カタストロフから人生を歩くわけじゃない、
風が真正面から吹き付けたぐらいで眼を瞑らない。
この街も、この国も、この世界も、宇宙からの画像にしてしまえば、
氷室じみた小さな汚れた覗き窓、
生きとし生けるものの歌は聞こえてきやしないよ。
そして犬を連れた黒髪の僕はといえば静寂の大河、
生類憐れみの刑のバラード。
表情を忘れた壁の前で歌を歌っている、
眼に見えぬものに対して媚態を示すように歌っている、
凍った風が街路樹を揺すり、孤独は耳鳴りになる、
自由に影を取り外しのできる透明な愛の在り方。
朝が来ればその化け物、その怪物は跡形もなく、
消え去ってしまう、そしてもう誰も覚えちゃいない、
でもグレイスケールの暗澹たるあの雲の方を見な、
あれが風の口、透かし織りの振動数、
世界の終わりとも始まりともつかない新しい光の入り口、
今日だって僕は失われた希望のために歌った、
明日だって僕は失われた絶望のために歌うだろう、
支配階級も底辺も含めた様々な階層への撤廃告知、
時代の寵児も、異文化へのカルチャー・ショックも何のその、
雨になるって、神経の末端を突き破って咽喉の奥を顫動させて、
それでも朝が来るさと視線の密度を引き上げるように束ねながら、
もっと鋭く、もっと深く、有限で、無限の、永遠と刹那の那由他、
天国も地獄も穿つほどの思い切りの良さで、
この血管をブチひろげてゆく、なめるなよ、遅れんじゃないぜ、
誰もが、宇宙的な共鳴感覚に気付き始める、
この地上の繁栄もまた、
動物の偉いなる声の認識から始まった。
壊れてゆく世界のたった一つの救済措置、
なんてものがあるとすりゃ―――それは“声”だ・・・。
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日没は軍艦島
Sunset on Gunkanjima
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