灯台

灯台

2024年03月01日
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立ち入り禁止の廃工場。
台形に切り取られた夜空。
三角の窓。
四角の扉。
世界の妙に、歪な、不可思議な、傾き。
「い・・・・・・や・・・・・・」
眼の下をくまどるそばかす・・・。
ジグザグな展開、様々な信号、視線の痕跡。

氷山の一角の無意識的レベルの説明・・・・・・。
「タ・・・・・・す・・・・・・ケ・・・・・・て・・・・・・」
瞳のクローズアップ。
明晰夢のような感じ。
指がやわらかい蟹の甲羅。
角膜の表面へのアップ。
チーズが溶けて―――ゆく。
よくわからない小さな橋を渡った。
らんらんらん―――。
らんらんらん・・・・・・。


―――行方不明。



胸が高鳴っている。
混沌。
ノイズ。
名詞が、形容詞が、動詞が、接続詞が、
ごちゃごちゃに入り乱れて、まりもみたいに・・・。

「・・・・・・行方不明?」
金網の向こう。
町はずれの。
速射砲のような会話のキャッチボール。
反応する義務はないが、愛想笑いしながら答える。
十代の蜘蛛の巣のような薄膜状のヴェール。
あやふやに生まれ、あやふやに消えてゆく、
跡形もなく―――。
「数年前から、たびたびあるのよ」


―――アルのよ。
(ミミからテがデる・・・・・・)
(クチから、アシが、アシが、アシが―――)


夜が来る・・・・・・。
空気は蜃気楼にゆらゆらと揺れ動き、
その先に見える景色が現実から引き剥がされそうになる。
【寄生虫】みたいなもの。
(「裂」)けたい・・・。
コンビニの帰り。
【刺激】が足り、な、イ。
(「弾」)ケ、た、イ・・・。
五分とかからない、か、ラ。
焼却場、公衆電話、彼岸花、
白い角砂糖のような建物である病院。
その先に深紅に染め上げられた人工の構造物が現れる。
非現実な―――アンバランス。
唇がすぼまったり、横に広がったり・・・。
蜜蜂を迎え入れた夏菊の花。
異世界のような―――夜は濃いミルク・・・。


ミ/ル/ク


退屈しかもたらさない闇。
何者かの気配を感じた、
誰も、何も、いるはずのない、
い、な、か、っ、た・・・。
「帰ろう・・・・・・」
何処か、か、ら。
空気は重く、澱んで濁っている。象徴的に、濃密に――。
「ァ、ァ、ア・・・。」
キノセイ。
キノセイ、だ。
ぶんぶん手を動かし、その場から離れようとする。
何も見ていないし、何も聞いていないし、何も知らない。
ワタシハ。
踏み出す一歩が、何百メートルにも感じられる。
何千メートルにも感じられる。
何万メートルにも感じられ―――る。
らんらんらん―――。
転ぶ。
目がバッキバキで。
餓えた獣―――のようデ。
焦ったのがいけないの―――か。
滑る。
髪の毛が足に絡まっている。
追いかけてくる、目に焼き付いて離れない。
(どんどん近付いてくる、
すごいスピードで、ありえないほどの速度で、)
焦点が合わない、顔が地面にすりつけられる。 
一突きしたら汁が流れ出るみずみずしいトマト。
ヤメテ。
イヤダ、ヨ。
ァ、ァ、ア・・・。
らんらんらん・・・・・・。
手首に。
(手に生命線が―――ナイ・・)
首に。
フィルムを逆に回した風景の波紋。
「あ―――暗闇・・・。」
プ―――つん・・・。
ツウ・・・・・・。
ツウ・・・・・・。
ツウ・・・・・・。
ツウ・・・・・・。


―――行方不明。


惰眠を貪っているのにも―――嫌気がさし・・。
何度、連絡しても電話がつながら―――ない。
スマホやテレビを見る―――気分にも・・・。
(じ・ぶ・ん・の・つ・み・を・
わ・す・れ・る・な)
憤怒や苛立ち、愚痴や泣き言、言いようのないさみしさ。
アイデンティティをギリギリ保ってる・・・・。
地獄絵図のように彩色されている。
部屋の中をあちこち歩き回りたくなる、不安。
(行方不明・・・・・・)
あんなことを―――言うんじゃ、な、か、っ、た。
「(非常に思いつめてた眼をしているから言うけど、
忘れろとは言わないが、なるべく気にするな)」
《何か》にぶつかった。
あんなことを―――言うんじゃ、な、か、っ、た。
「(オマエのせいだ)」
《何か》はスローモーションのように―――。
やみくもに走っていた。
物音や、ラップ現象。
そのリアルな恐怖。
その、圧倒的に何かを吸いこんでしまう、寂寥感。
怯えているのか、わからないまま、走っていた。
玄関のドアが叩く音。が―――。
シタ。
インターフォンを鳴らさない。
警察、それとも近所の人―――だろう、か。
らんらんらん―――。
え?
ドアスコープを覗く。
活字が吸い込まれて―――ゆく。​
迷っている頭の中はそれでいっぱいだった・・。
すうっ、と鍋が空中に浮かんだ。
らんらんらん―――。
立ち入り禁止の廃工場。
台形に切り取られた夜空。
三角の窓。
四角の扉。
世界の妙に、歪な、不可思議な、傾き。
意識が飛ぶ寸前。
思い出せない類の悪夢が不意に明晰になる。
人影が見る間にムクムクと膨れ出して―――。
人影が見る間にムクムクと膨れ出し、テ―――。


「あ―――暗闇・・・。」
―――アルのよ。
(シルがデてくる・・・・・・)
(シボりあげられてゆく、ナニかが、ナニかが―――)



  *


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 The sky I once saw


 コックピットに乗って、鉄の翼を拡げた猛禽類の演武。
 高出力エンジンのパワーを駆使して戦闘機動を行う。
 頭のゴーグルをずり下ろして装着する。
 (・・・・ランウェイ三四レフト。風向二四〇度、
 風速四ノット。離陸後に通信切替、出発管制・・・!)
 バシュウウウウ、と一気に加速する。
 報告が入る。敵味方不明を示すシンボルが六つヒットした
 翼を鋭く翻す。
 超音速の弾丸の如き戦闘機の奇襲に、
 重たい爆撃機は反応することが出来ず、護衛機銃の弾幕も空しく、
 数機が火達磨になっている。
 (天塩をかけた作品があんな風に壊れてゆく・・・)
 敵編隊の中へと突っ込んだ。
 (馬鹿らしいと思わない―――のか・・?)
 音を立ててひび入り、生き絶え絶えに、
 その流路の妨げられる働き。
 太陽の前で、蝋の翼をくねらせる。

 <――敵機、飛来! 
 ・・・・・・なんだたった一機か、たった一機で何が出来る>

 傍受。
 技師の友人と話した言葉が思い出される・・。
 声は天使のファルセットのように優しく耳に流れ込む。
 (プレスしたフィンをシリンダに常温で固定する方法はないか・・?)
 全身の毛孔という毛孔から、内部と外部の食い違いを自覚する。
 (フィンを除いた気筒の本体部分をあらかじめ鋳造して・・・、
 はめ込み穴を作って―――)
 深く戦争の無意味さを教えてくれた友人。
 祖父がヒロシマに住んでいたらしく、原民喜を愛読していた。
 人間というものの悲しさが浮雲のように頼りなく感じられる。
 洗練と複雑化による秩序の枠で、開発の魅力、整備の魅力を語った男・・。
 ジェットエンジンについて造詣が深すぎて、
 酒を飲まなければ聞けないほど饒舌。
 でも正直―――羨ましかった・・・。
 (それだと、フィンと気筒の間にぐらつきが出る・・・、
 厚みを薄くして最終部分で―――)

 思考を停止する、集中しろ、と思う。
 ―――眼に見えぬ重力の手に引かれ、
 その加速から生じる暴力的な気流を全身で感じる。
 五感を研ぎ済ませ、凶気しか感じられないような激震の渦中。
 奥歯を噛みながら、愛機を左にロール回転させ、
 雲海を頭上に見上げながら、ぴたりと回転を止めて背面飛行に移る。
 操縦桿を握りしめ、ヘルメットに装着している、
 ヘッドマントディスプレイに映るデータを眼で追う。

 カメラ起動、衛星送信オンライン接続、
 データベース照会解析へアクセス開始―――。

 その時、割れた硝子のように覗いている空はおはじきのように見える。
 その直後、寸分の躊躇もなく黒い雲海を突き刺すように、
 機首を真下へ向ける。
 様々な他の機能が盛り土のように盛り上がるカウンター・エリア。
 起死回生の一手。
 額に青筋を漲らせ、眦を釣り上げ、唇をひん曲げる。
 世界が傾き引力が失われ。
 たまらず肩から叩きつけられるような感じを覚え。
 敵機が追撃ミサイルを撃って来る。数十発の乱れ撃ちを巧みな誘導。
 こちらは機関銃を撃っているがはなから命中するなど思っていない。
 こちらに出来ることは―――。
 (訓練が思い出されてくる・・操縦桿の倒し方、タイミング、
 教官にどやされながらいつのまにか眼を閉じていても、
 右や左を見ていても、闇を見つめている・・・・・・)
 ―――心の中でそれは起こっているんだ。
 高低差を利用しながら上へそれから真下へ錐もみをする。
 追撃ミサイルはまだ追いかけてくる。
 しくじればお陀仏と知りながら三半規管の揺れのさざなみ。

 レコードからのサンプルに混ざったスクラッチノイズのような、
 網膜に一瞬映り込んだ光・・・・・・。
 顔の筋肉が緩むと頭の重さを支えられないような気が―――するんだ・・。
 「(誰かを殺すのが嫌だと泣いていた同期がいる・・・)」
 ―――答える義務を感じながら、何も言えなかった。
 今日は何故か、色んなことを―――思い出す・・。
 カメラがロック・オンされている。
 タイミングを合わせている。
 そこから機体を安定させ、一気に敵機の真下へと移動し、
 キーンと耳が鳴る。
 スロットルを最大まで押し込んだ状態で、操縦桿を手前に引く。
 雲ベイパーを引き、しなる主翼と共に、
 ふわりと一瞬上に持ち上がるような機動。
 グッと唾を飲み込み、急浮上する。
 敵機のパイロットの姿も見えた。
 電車同士が行きかった時のように、
 時が止まっているように感じられる。
 傍受した声は恐慌状態になっている。
 「機関銃の装備は必須だったな・・・・・・」
 翼はどこまでも鋭く空を切り裂く。
 足元から迫り上がってくるのを如実に感じたのだろう。 
 追撃ミサイルがそのまま敵機に直撃する。
 木っ端微塵に弾け飛ぶ。激しい火の粉をまき散らしつつ、
 吸い込まれてゆく。
 底潮のような崩壊感覚が巻き起こり、通信に答える。
 眼の中に、重く、鋭く、身の置きどころのない悲しみを見ていた。
 白く濁った海原に呑みこまれていく。
 離れているにもかかわらず断末魔の叫びが聞こえてくる。
 やらなければやられる、という理屈も。
 暴力とかいう復讐という感情すらも陳腐だった。
 そんなもの―――そんなもの、どうでもよかった・・・。

 ―――今日は敵襲によって故郷で亡くなった、
 彼女の誕生日・・・。


   *


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orenoane


あたしは高校一年生、一つ上の姉がいる。
どじで、小さくて、可愛い姉が。
時々、鼻血を出してしまいますが、
貧血のせいだということになっている、
猛牛があなたを撃つ、
居合いの構えでジリジリ近づいてきて、
どの程度デキる奴か測ってくる感じ、
でもね! あのね!
倫理観ならもうブックオフに売った(?)

妹たるもの、スマホの待ち受け画面、
ロケットで姉を確保し、国の管轄外エリア、
そう、プライヴェートエリア。
朝の洗面所では歯ブラシを寝ぼけたふりしながら、
"(あなたが)○○を××する"は、
"○○があなたを××するへと倒置完了し、
しゃこしゃこし、
下着は間違えたふりしてよく着ます。
音程のズレによって点数が左右されまくる、
ダムの採点基準より、
過剰なビブラートやしゃくりをするだけで、
点数が取りやすいジョイサウンド、
つまり―――これが本当のシスコン、
世界を滅ぼしかけた(?)

可愛い姉という生き物を思うたび、
萌え萌え・・・ビィ〜〜〜ム・・・が炸裂する!
コーヒーを入れて引っ繰り返す、机の角で小指をやる、
コンピュータがモニターのあなたを見ている!
性知識が小学生以下で、箱入り娘状態、
お茶の間でテレビがラブシーンに突入したときの、
家族みたいな動きをする両親尻目に、
スーッ、ハーッ、スーッ、ハーッ・・・。
し、死ぬ、なんという、破壊力、なんという破壊兵器、
もう、天然記念物か世界遺産認定すべきだと思います。
俺の嫁というのがあるなら、
俺の姉というジャンルも必要です、
Tシャツがあなたを着る!
可愛いは正義(?)

だからあたしは今日も、
未成熟な姉の靴下を食べたり、
ロリ体型の姉の下着を食べたりします。
はく、かむる、たべる、つかう、
観測範囲が、人間的良識範囲内である限りは・・、
ってケースバイケースなんだよね、
いちいち常識押し付けてこないでほしいヤフコメ、
腕に蛇のタトゥーとか入れる感じのガールズトークな、
天下布武があなたを敷く!
この四点活用法(?)

たとえば透けブラを見る。
けれどそれは下着姿ではいけない。
そこには「見えてはいけない」ものが、
「うっかり見えてしまった」という、
北斗百裂拳、ほぼ無制限、てか問答無用、
何故? ホワット? ホワイ・・?
予選から積み上げられた合計ポイントの上位三名が、
最終決戦に進出できる、
そのチャンスを棒に振るっていうの・・?
正気なの、あなたは人間なの・・?
ニット帽なんてかぶろうものなら静電気プラス湿気のコンボで、
一瞬にして髪の毛ビッグバン覚醒(?)

解説書と攻略法を並べてはしご酒するように、
脱衣所のすりガラスのシルエット、
どんな湿地帯もアマゾンも、
エクストリームスポーツの前では、
マトリックスのイナバウアーができる、
シャワーの音という興奮の作用、
それは夏休みの自由研究
「シスコンそれはシュタインズ・ゲートの始まり」
致死性の病であるが速攻吸収性による回復薬が存在し、
それは腕についてる、デュエルディスク・・、
その間、ATフィールドが発動する(?)


  *


465







北朝鮮のミサイルについて


北朝鮮から日本へは、弾道ミサイルの可能性のあるものが発射されている。
多くは排他的経済水域外に落下し、
日本への直接的な被害はない。

しかし昨年一年間で延べ三七回に亘って約七〇発ミサイルを発射した。
その中には昨年一二月一八日に発射された、
固形燃料用ミサイル「火星18」を含め三種類のICBM(五発)
が含まれていた。

北朝鮮は、一九八〇年代からソ連が開発した、
「スカッドミサイル」の発射実験を行い、
技術を蓄積してきた。
一九九八年八月には、北朝鮮が開発した「テポドン一号」が発射され、
津軽海峡から日本列島を越えるコースを飛んでいる。
二〇〇〇年代に入ってから、ミサイル発射はさらに活性化。
二〇二二年は毎月のように発射実験。
このような行いに国際社会からは非難の声があがり、
安全保障理事会も石油供給の制限という経済制裁措置をとっている。
アメリカは北朝鮮向けのすべての品目の輸出禁止。
それでも北朝鮮はミサイルの発射実験を止めない。

それを紐解くには一九五〇年六月に始まった朝鮮戦争まで、
歴史をさかのぼる。
前提としてだが、朝鮮半島の歴史は高句麗、新羅、百済の、
三国時代から国土の統一を目指してきた、ということを忘れてはいけない。
北朝鮮と現在の韓国が、どちらが朝鮮半島の主権を握るかという、
民族同士での争い。
長年続く戦争になった理由は、大国が介入したからである。
北朝鮮には社会主義のソ連と、その同盟国の中国が後ろ盾に回った。
一方、韓国の支援にまわったのは、資本主義の大国であるアメリカ。
つまり社会主義国VS資本主義国。

一九五三年七月、
北朝鮮はアメリカを中心とした国連軍と休戦協定を結ぶ。
そして休戦時に戦線があった北緯三八度線を境界線として、
今現在の北朝鮮と韓国とに分かれた。
だがそれはあくまでも休戦中であって、終戦はしていないので、
七〇年以上にわたって戦争中なのだ。
これは資本主義と社会主義の構図でも同じことだ。

資本主義陣営の韓国は経済を拡大し、豊かな国になり、
しかし一方の社会主義陣営の北朝鮮は、発展が遅れ、貧しい国のまま。
北朝鮮には外国に誇れるような新しい技術などの決め手がない。
外交に武器がない。
そこで武力を外交のカードにし、
ミサイル開発と発射実験による威嚇ないしは牽制を行っている、
というわけだ。

北朝鮮は二〇二一年九月に、国防五か年計画を発表し、
核戦力強化を図ると明言している。
自国を守るという意味合いもあるが、
核を外交の切り札にしようという狙いがある。
もしアメリカの言うことを聞き、
北朝鮮が素直に軍事縮小に向かったとする。
そうすると、資本主義陣営のアメリカはその世界一の軍事力を背景に、
「北朝鮮の自由化」を求める。
そうなると独裁者にとって立場が脅かされる。
いま現在北朝鮮では金一族による独裁体制が敷かれ、
国民が不信感を抱かないようにと外国の出入り禁止をし、
情報を遮断している。
「北朝鮮の自由化」となれば国民は国外へ出たい。
だから北朝鮮が軍事拡大する狙いは、
アメリカとの交渉を有利にするため。だ。
そしてミサイルを頻発する目的も、
どれだけ危険な国かを証明するためだ。

二〇二二年九月に、北朝鮮は核兵器保有国だということを、
公式に宣言している。
これは非核化について諸外国の交渉の可能性を最初から排除する宣言だ。

一九六〇年代から七〇年代には、
近距離ロケット砲。
一九八〇年代から九十年代には、
短・中距離弾道ミサイル。
これは日本と韓国を射程圏内におさめる兵器で、
準中距離ミサイル「ノドン」
韓国や日本の都市に照準を合わせて、
攻撃できる体制が整ったということだ。
二〇一〇年に公開された改良型ノドンは、
射程距離を約一六〇〇キロまで伸ばしている。
これは沖縄の米軍基地も射程圏内におさめる距離。
こうなってくると北朝鮮のミサイルは脅威だ。
進化は止まらず、
二〇二〇年には大陸間弾道ミサイル「ICBM」が公開された。
火星17と呼ばれるそれは射程距離が一五〇〇〇キロで、
アメリカ年を射程圏内にし、攻撃できるというもの。
長距離弾道ミサイルは高い高度までうちあげ
放物線をえがきながら目標地点を攻撃
そうなると落下角度が鋭くなり、
都市の上空で追撃して撃ち落とすことが難しくなる。
だが、高度まで上がるのでレーダーに察知されやすい欠点がある。

北朝鮮は、長距離巡航ミサイルの開発に力を入れる。
巡航ミサイルとは、飛行機のように翼を持ち、低高度で目標へ
真っ直ぐに飛ぶというもの。
そのためレーダーに察知されにくい。
さらに北朝鮮のミサイル運搬技術は世界でも高いレベル。
二〇二一年の発射実験では列車に弾道ミサイルを積み、
トンネルから出ると、
列車の天井部分が開いてミサイルが発射された。
この運搬技術があればレーダーに察知されにくく、
いろいろな場所からの発射が可能だ。
攻撃される側からすれば、
いつどこから発射されるのか予測できないというのは、
とてつもない脅威だ。

日本はJアラートによって緊急情報を受ける。
Jアラートに対応している災害は、
「国民保護関係情報」「地震関係・気象の情報」の二つに分けられる。
国民保護関係情報は、弾道ミサイル情報、航空攻撃情報、
ゲリラ、特殊部隊攻撃情報、大規模テロ情報がある。
着弾する可能性や攻撃された場合にJアラートが鳴る。

それは二四時間、三六五日監視している、
自動警戒管制システムJADGEのミサイルが日本に落下しそうだと
判断した場合、発信する。
JADGEのミサイル攻撃が来ますよと通達がきた場合、
迎撃ミサイルがイージス艦に装備、
舞鶴、横須賀、佐世保でスタンバイ。
それが仮に外れても陸上自衛隊のパトリオットミサイルが「PAC3」がある。
この二段構えで、迎撃する体制を取り日本の安全を守っている。
とはいえ、ミサイルを外交カードとして使う以上、
それはまだ最終段階ではない。
つまり核や化学兵器を搭載して遠くまで飛ばすことを
目的としているからだ。

北朝鮮にはVXガスがある。
VXガスは人類が作った化学物質の中で、
もっとも毒性が強い物質の一つといわれるもの。
体内に取り込まれると数分で突発的な痙攣を起こし、心臓が停止する。
こういう化学兵器をミサイルの弾頭に搭載するとどうなるか?
迎撃されても空中にガスが攻撃目標に大きな損害がでる。
それは卑劣な地雷のようなものだろう。

だが北朝鮮がそれを実行する可能性は「かなり低い」
ロシアとウクライナの戦争のように
攻撃を仕掛けたロシアには非難の声があがり、制裁を受け、
北朝鮮が日本に攻撃を仕掛ければ「報復」される可能性が高い。
北朝鮮を攻撃する大義名分ををアメリカに与えてしまうことになる。
そうすれば北朝鮮は追い詰められることになる。
自らそういうリスクを起こすとは考えにくい。
だから日本に落とさないように細心の注意を払いながら、
ミサイルの発射実験をしているといっても過言にはならないだろう。
しかし、絶対に攻撃をしないという保障はない。

労働党中央委員会総会で金総書記は、
北朝鮮の今年の闘争方針を打ち出していたが、
米国に対して金総書記は、
「朝鮮半島地域の情勢不安定を誘発させ、
引き続き悪化させてきた米国は一年が暮れていくこの時刻も、
我が国に対する相異なる形態の軍事的威嚇を加えている」
との認識を示した上で、
「敵(米国)が何を企もうとそれを超越する超強硬対応で、
いかなる選択をしてもそれを圧倒する強力な実力行使で制圧していく」
と、強対強、正面勝負の対米・対敵闘争原則を貫くとし、
今年も米国とは一切交渉せず、
断交状態を続けていく意思を鮮明にしている。

これも色んな読み方があると思われるが、
二〇二三年、九月一三日には、ロシアのプーチン大統領と
北朝鮮の金総書記が直接会談を行った。
そこで金総書記は「プーチン氏のすべての決定を支持する」
とまで強調している。
ロシアが北朝鮮の宇宙開発を支援し、
北朝鮮からロシアへは武器供与などで合意となった可能性が高い、
とされている。
ロシアと中国の後ろ盾がなくなれば経済活動もままならなくなる。
それは独裁体制の維持にも影響があり、
ロシアの意向には逆らえない。

そしてロシアはウクライナとの戦争で極限にまで追い詰められた場合、
北朝鮮を動かし、核兵器を使い資本主義国へ攻撃を仕掛ける、
というシナリオもゼロではない。
個人的には様々な思惑や条件が重なるようなことよりも、
その前提となっている緊張状態が引き金の直接的要因だと思う。
それを取り払えない以上はどんなことでも起こりうると言わざるをえない。
北朝鮮は建国以来、政権は三代変わっても、
本質的には何一つ変わっていない。
さて今年は北朝鮮が何発ミサイルが飛ぶのだろう―――か。



  *


464









泥人形



ゴーレムとはユダヤの伝説に登場する、
土でできた人造人間もしくは泥人形のこと。
ヘブライ語で、「無形」「胎児」を意味する。
十六世紀のプラハで、ユダヤ教の宗教的指導者である、
ラビのユダ・レーヴがゴーレムを作って、
ユダヤ人に対する攻撃を防いだという話がつとに有名だ。

「形成=編成の諸規則の考古学的分岐は、
画一的に同時的な一つの網ではなく、
時間について中性的なさまざまな関係・枝脈・派生が存在する」
という中村雄二郎の難しすぎる翻訳が思い出される。
局所的最適化に走りがちな日本の風土における蟻の穴のような言葉。

ゴーレムはヴルタヴァ(モルダウ)川の土から出来ていて、
ラビのユダ・レーヴを唯一の母とした。
主人の命令には忠実だったが考える能力に欠けていて、
水を汲んでくるように言った時は、
街の半分を水浸しにしてしまった。
ゴーレムの噂を聞きつけたスペインの将校は、
ゴーレムを軍に加えたいと大金を積んだが、
悪用されることを恐れて断り、土に戻してしまった。
現実には巨悪より小悪党の方が厄介だ、
インターネットにおける誹謗中傷罵詈雑言はその証明をしている。

ところでこれはルドルフ二世から始まる文脈なのかも知れない。
ラビのユダ・レーヴこと、
イェフダ・レーヴ・ベン・ベザレルは、
ルドルフ二世を聴衆に加えた説教をしている。
その時、皇帝が熱中していたカバラに関する話題だ。

ルドルフ二世は政治にあまり興味を示さなかった。
その代わり文化を大いに奨励した。
音楽に絵画や植物学や動物学のほかに、天文学とりたてて占星術、
また錬金術やカバラに強い興味を示した。
そしてこの街プラハは危険なもの、不穏なものを隠したような、
過去の栄光に満ちている。
いいですか、十六世紀という時代には、
まだ魔術と化学の境目がはっきりせず、
物質の変化といえば化学ではなく錬金術の世界だった。

そして何故だろう、
僕はアールデコの寵児、
エルテという生粋のロシア人のアーティストのことを、
思い出してしまう。
二つの変数x、yがあって、xの値が決まると、
それに対応してyの値が一つ決まるとき、yはxの関数である。
僕はそこにプラハの不思議な幻影を見たのである。

僕は不意にルルスという十三世紀のカタロニアで、
神秘体験をした学僧のことを思い出す。
ムスリムなどの異教徒をキリスト教に転信させるため、
「アルス・コンビナトリア」
という思索連合術のような方法の開発に取り組み、
六系列からなる一種の範疇表を作成して、
そこにBからKまでの九個の文字を用いて、
絶対的述語、相対的述語、問い、主語、徳、悪徳などの、
プラトン的な九個の範疇を図形的に動かそうとした。

そのうちの絶対的述語と相対的述語は、
字母Aと字母Tの円に配当されて、概念が主語から述語へ、
述語から主語へ置換できるようにした。
驚くべきは、第四図と称されたクアルタ・フィグラが、
三つの同心円で構成されていて、
そのうちの内側の二つの円が回転することによって、
三個ずつの文字のすべての組み合わせが得られるようになっていること。
ルルスが開発したのは、限定されたいくつかの用語を使っての、
あらゆる問いに応じ、
そこから各種の学を構成することが可能な、
「ローギッシュ・マシーネ(論理機械)」だった。
思考改進のための演算器とでもいえばいいだろうか。
スペインからイタリア・ルネサンスへ、
フランス・イギリスへ、そしてそれらが瀘過され尾鰭をつけて、
ついに最も濃いものがドイツへと波及した。

その資料と資料のあいだに沈みこんでいた、
社会や文化の動向に無意識的ともいうべき構造を、
見いだせるようにすることが、フーコーの「知の考古学」
とはいえ、認識には限界があり、
認識は何によって認識されるかといえば言語で、
この認識というのは言語の構造そのものを鏡の矛盾とする。

暴力を必然化する起源がそもそもは「文明の初動」や、
「神との関係」から生じていた。
世の初めから隠されたこと、それは暴力の正体と欲望の本質だ。
「神」(God)に大文字が付いていることや、
主君に対する「しもべ」を「僕」とあらわすということを、
われわれは歴史的には訂正できない。historyにstoryが入っていること、
「ものがたり」に「もの」が入っていることも拒否できない。

さてゴーレム伝説にはユダヤ神秘主義が深く関わっており、
ゴーレムを作れる者はラビのみで、
作る過程では宗教的な一連の儀式を伴う。
そのもっとも特徴的な儀式は、虚実皮膜ぎりぎりの中心、
言霊思想と大きく関わっている。
形成された土人形に生命を吹き込む際に、
その額にヘブライ語で「真理」を意味する四字を刻むこと。
逆に生命体としてのゴーレムを機能停止させるには、
四文字の内の一文字を削り取り、
残る三文字がヘブライ語で「死」を意味すると、
ゴーレムは土に戻される。
ユダヤの人造人間ゴーレムは、
その存在が言葉と不可分という属性を賦与されている。
ちなみにチェコ映画『巨人ゴーレム』や、
『轟轟戦隊ボウケンジャー』
『ナイトウィザード The ANIMATION』
ではこの設定が採用されている。

ところで世界のゴーレムファンに教えなければと、
思って書いているのだが、
モンスターファームのゴーレムというのは、
「でこぴん」をする、これがもう信じがたい威力である。
「竜巻アタック」にいたってはゴーレムを、
ロープをのぼる蛇のロボットもしくは、
レゴの親戚とでも思っているのか、
身体のパーツを分離させて竜巻となって襲い掛かり、
相手をグシャグシャにかき混ぜるというド迫力の技。
でもそんなことに僕はいちいち喜んでしまうのだ。

ゴーレムと関係ないが、
プラハと言えばカフカだ。
そのカフカがプラハについてこんなことを書いてる。
「ぼくたちの内部にはまだ薄暗い片隅が息づいている。
秘密めいた路地、曇った窓ガラス、薄暗い中庭、
騒がしい居酒屋、無愛想な食堂が。
ぼくたちは改装された街の広い大通りを行く。
けれどもぼくたちの歩みと眼差しは不確かだ。
心の中ではぼくたちはまだ震えている。
悲惨な旧い路地にいるように」


  *


463








イフユーライク


君の価値は何打?
代打。
(その、感電感電状の、)
生きている意味、つまり、
労働の開始と終了を知らせる鐘、
安楽から浄土へのランデブー、
ドゥユーリメンバー、あす?
―――「安定した世界の絡繰り(へ、)」

そうだね、
まあ、一つ言えるとしたら、
葛藤が途絶えた、疾風怒濤の言わぬがフラワー。

天井の地面から歪む畦道が見えてきた、
残響性の踊り織り成す折り紙のような、
(ランダムランダム状、)
ストーンの上にスリーイヤーズ、
言っちゃうよ、一寸先はダーク。
フェアじゃないことはマウンテンのよう、
世界はペテン、焼け石にウォーター。
ヘイ、君は何の為に生きる?
―――「新しい砂漠の案内人になる(さ、)」

そして、裸の付き合い。
もうね―――もうさ、隠すものがない、
スリーデイズヒップにファイヤー。

真理とはいつの時代も、
ミッドナイトアンダーグラウンドサンシャイン。
まるでナスカの地上絵、
吐きそうな作家を思い浮かべるカフカの海辺、
類のフレンドコールインフォメーション、
(落ちてく光と落ちてく闇のエターナルモード)
九兆回転してる、
マリワナ海溝でも、ムー大陸でも。
―――「即興即興即興劇(さ、)」

きれいごとから、
瓶詰の天使が生まれて、
それをプレス機にセットするのさ。

あばよ、って言ったら、
もう殺さないでねって子供が言うのさ。
(ああ、詩のよう、教訓のよう、物語のよう、)
って勝手にホラーにするんじゃねえよ。
って勝手に物語の方向性を変えるんじゃねえ!
―――「遺伝子組み換え技術なんだよ」

リズムに乗って左右に揺れ始める、
レントゲンサーチライトから、
浮かび上がったゾンビ徘徊の深夜二時。

言うね、藪からシーラカンス。
もどがしいから、ミサイル。
(無価値無価値の行進、)
無限を感じさせる天体の軌道のような弧線を描いた、
社畜、地上の監獄、豚小屋、掃き溜め。
それは、寝耳にウォーター。
狂おしいほど、バズーカ。
―――「届かないから美しいはずって(ね、)」

「殺してみたらわかるよ、
だから空を見上げて微笑んで、
澄んだ眼をしていた―――んだ・・」

君とカフェでお茶でもしたいよ。
砂糖を入れてミルクと。
(その、感電感電状の、)
ふわふわのパンケーキと。
鮭もいないのに。
猫つれて。
よんどころない事情があって。
―――「海へ(へ、)」

殺しにきたぜ、アイラブユー。
バイ、愛しい人。
“続いてる、終わらないんだ・・・”
アデゥ、愛しい人。
“A4サイズの書類が入るバッグの中・・・・・・”


  *


462









花の迷路


花の薫り花の夢
花の障り花の揺れ

一つ一つを星にして
一つ一つが生まれて消え

陽に病み
死に化粧をして
うしろすがたが
火になるまでの時間

花の溺れ花の国
花の迷路に花の中

靴箱に
吐き捨てられてゆく
文字列
川のようにおしながされ

一つ一つを星にして
一つ一つが生まれて消え



  *


461








水族館


待ち合わせ時間十分前。
日の光を浴びる、
チェッコ・ボナノッテの彫刻のような人々。
車が停車する。マフラーがアップになる。
フロントガラスアップ、
ハンドルに寄りかかりながら頬杖をつく。
水族館へ来た。
入り口のところで、彼女がそわそわしている。
イソギンチャクに寄生するカクレクマノミ、
カクレクマノミは一番でっかい魚がメスになる。
残りは全部オス。
そのメスが死んだ場合、二番目にでかい魚がメスになる。
性転換という概念が打ち砕かれるような話だ。
何処かで読んだ。

待たせたと言ったら、手をあげて、
不良のように肩で体当たりしてきた。
無口で、恥ずかしがり屋だ。LINEは普通だが、
典型的なコミュ障だ。
隠そうとすればするほど可愛い、不思議な性質を持ってる。
けれど、嫌われてるわけではないとわかっているから、
というのはある。
慣れるとよく喋るらしい。

水中の世界の不思議な美しさ、
色と光と音楽のハーモニーだ。
水族館のチケットは、
館内のかわいい生き物達の写真が、
数パターンでプリントされてる。
受け取った。
こっちのと見て、自分のと見比べる。
欲しいのかも知れない。
あとであげよう。

ふっとカピパラを思い出す。
水族館にいるのだが、水掻きが得意らしい。
思考はチェック・インした鍵になる。

西洋絵画のように優雅な水族館。
ほのぐらい灯が、
アクリルガラスの向こうの波のように冷たく揺らいでいる。
ここには季節がない。
(そこが、ロンドン橋でも、アレクサンドリア大燈台でも、
―――心の中の一番大切なものと向き合う時、)
それは3D映像やドルビーサウンドの臨場感と同種の、
イリュージョン的な効果を持っている、
『“フレーム”に入らなくなった自分を探す』・・。
トンネル状になった水槽。
カタログにあるような名前も知らない魚。
(逆方向、ローアングルで撮った二―・ショット。
時計 の 針 か ら ――― じ っ と ・・波音 を 辿 る ・・)
淡水魚、深海生物、くらげ、イルカとペンギンコーナー。
アシカやマンボウ。
太平洋と大西洋、熱帯雨林に南極大陸。

シャチのことを思った。
シャチはサメやイルカやあざらしなんかを、
食べてしまう。場合によっては水族館中の生き物を、
全部食べてしまうかも知れない。
タツノオトシゴは小さな甲殻類を吸い込んで食べる。
そしてタツノオトシゴは、オスが出産する。
約二〇〇〇匹を。
“敵”―――“障害物”
誰かを守るってどういうことなんだろうと考えて―――いた。
付き合う、一緒に生きてゆく―――とは・・。
何度も耳にした、口にした彼女の名前・・・・・・。
(あの手の感触、唇に触れた時の感触・・)
(何一つ違和感がないのに、ハッキリと覚えているのに、)

彼女は見る角度を変えたり、踊ったりしていた。
・・・・心は満たされることと虧けることを繰り返してる、

プランクトンという言葉が浮かぶ。
プランクトンは泳がなくて基本的に漂っているという括りで、
そこではくらげも、マンボウも、プランクトンということになる。
南極が沙漠みたいな言い方だ。
あのくらげのふわふわした動きは心臓の拍動―――。

立ち止まってじっと見たりしている。 
―――さしづめいまの僕は<レゴマスタービルダー>か、
<プロの金庫破り>なんだ・・。
ポケットに手を入れながらペンギンにウィンクしている。
螺旋の夜空の壊れた頁のまま、
僕は彼女の一喜一憂する顔をずっと見ていた。
時々視線に気付いて、後ろを振り返り、
ぷいっと顔を赤くして眼をそむけ、バッグを投げてくる。
恋人らしさは遠いのかも知れない、保護者面は全力で拒否される、
でも、好きな人をじっと眺めていたい気持ち、だ。
楽しいから透明なドアを開ける―――。


  *


460








everest climbing


ヒマラヤ山脈に聳えたつ最高峰、エベレスト。
この頂にのぼらんとする登山家は毎年後を絶たない。
実はノアの箱舟実在をしめす超大陸の痕跡がある場所で、
UFOの目撃情報もある。
イエティの足跡の話は有名だが、熊である可能性もあるそうだ。
そんな八八四八メートルという壮大な高さを誇エベレストの山頂は、
人が容易に踏み入れるべきではない過酷な場所。
もちろん険しい地形や雪崩。
経験豊かな登山家であっても予測不可能な天候やわずかな油断が、
致命的になり、絶対に下山できる保証はまったくない。
何しろ三〇〇人以上が死んでいる山なのだ。

エベレストはヒマラヤにあり、いわずとしれた世界一高い山だ。
(海に沈んでいる部分も含めると、
地球で一番高い山はハワイ島にあるマウナ・ケア山だし、
宇宙では標高二万メートル超えの太陽系最高峰「オリンポス山」
が控えている、)
生涯の目標にする登山家も多い。
実際、長期間のトレーニングは欠かせないし、精神力も必須だ。

エベレストの難易度は低いという話があるが、
エベレストの登頂成功率は過去三十年で二倍になったこと、
一九九六年後月に嵐が原因で発生したエベレスト大量遭難事故以降、
エベレスト周辺の天気予報が劇的に改善され、
登頂者がより多くの情報を得られるようになったことが要因の一つで、
人気のあるルートはしっかりと開拓され、
登山用のロープも配備されている登り下りが非常に楽になっている、
こういうところからの意見ではないだろうか。
だが、登頂成功率に比べて死亡率はまったく変わっていないという事実。

もちろん登山に必要な技術という観点だけでみれば、エベレストより、
高難易度となる山が多く存在することは間違いない。
しかしそれはあくまでも必要な技術にのみ着目している上に、
そもそも標高の高さから来る危険が大きすぎる。
そして必要なのはトレーニングだけではなく、
現実的にはかなりの額のお金が必要となる。
まず山に支払うための入山料。
多くの人が入山するネパール側の場合、二〇二三年には、
一万一〇〇〇ドルとなり、これが百五十万円以上。
二〇二五年には一万五〇〇〇ドルと、
大きな値上げが予定されている。

エベレストの麓に行くまでの旅費も必要であり、
テントやブーツ、防寒着などの登山用具なしでは登頂など夢のまた夢。
ほとんどの場合酸素ボンベも複数必要となり、
呼吸同調酸素供給調節器を使うと時間が二倍や三倍に増えるが、
こんな物を持っていく人はいるのだろうか。
現在は単独での登頂はネパール政府により禁止されているため、
付近に住むシェルパのガイドも必須。
二種類ほどいて、荷物運びをする人と、
高所でのガイドを出来る人がいる。
これにより合計費用は六百万から一〇〇〇万円以上は、
かかることは覚悟した方がいい。
場合によっては三〇〇〇万円以上となることもある。
こうなってくるとエベレスト登山というビジネスである。
しかし安全を期すならこの値段もけして破格ではないことがわかるし、
逆に言ってしまえばお金で安全を買うという言い方も出来る。
お金もそうだが、登山にかかる時間は一か月以上にもなるため、
おいそれと挑戦できるものではない。
こういう前提のもと言うのだが、シェルパのガイドは世界一の登山者揃いで、
カミ・リタ・シェルパさんは二十七回も登った世界記録を作っている。
なお、シェルパは少数民族の名前で、ガイドとか職業ではない。

さて、人間の身体はエベレストを登る時のような、
急激な気圧の変化についていけないことを、多くの人がご存知だろう。
多くの登山者が最初の拠点とするベースキャンプは、
標高五四〇〇メートル。
この時点で日本の富士山頂よりも高く、
気圧は海抜〇メートルと比較しておよそ半分。
気圧が減少するということは、
人体に必須である酸素もそれだけ減少する。
仮に人間が突然気圧が半分となるような環境に放り込まれた場合、
すぐに酸素不足に陥り、場合によっては気絶する。
登山者がそれでも平気なのは、人体の酸素不足を検知することにより、
酸素を身体中に運ぶ赤血球の数を増やしたり、
より多くの血液を循環させようと心臓の鼓動が速く変化するためだ。
通常の呼吸回数は毎分二、三〇回だが、
これが八〇回や九〇回にまで増える。
一説には枕を顔に押し付けて坂道を全力疾走している状態。

様々なルートがあり、計画通りにいくとは限らないが、
標高約五三〇〇メートル、次が六〇〇〇メートル、
その次が六四〇〇メートル、次が七〇〇〇メートル、
そして八八四八メートルの頂を目指す。
また、食事は高所へ持っていくためフリーズドライが多い。
インスタントラーメンを持っていくこともあるそうだ。

さて、前述した反応は数日や数週間経過しないと発現しないため、
必然的にベースキャンプに辿り着くまでも、そしてそれ以降も、
ゆっくりとしか進めない。
急いては事を仕損じるという言葉があるが、
山ではどんなに準備をしていても天候の影響で進めないこともある。
また一般的にキャンプを出発し、より高い標高まで一時的に進んだあと、
その日中に再びキャンプに戻り、身体を薄い空気に慣れさせるということを、
何回も繰り返して最終的に山頂を目指す。
現代人は合理的で、なるべく早くを欲するものなので、
その感覚するといささかクレイジーな感じもするが、
そうでもしないと人体が耐えきれない。
だからベースキャンプに到達してから、エベレスト山頂まで、
一か月かかることも珍しくない。
しかしそれでもエベレストの魅力は
多くの人を惹きつけてやまない。
二〇二三年には、約六〇〇人の人間が山頂に到達している。
ちなみに内訳はは、登山者が約二五〇人で、
シェルパのガイドが約三五〇人だ。

記録が残っている限りでは、
登頂に成功したのは現在までで六〇〇〇人以上。
近年においては、エベレストは観光地化が激しく、
山頂付近は多くの人が列を作り、非常に混雑していることもある。
これはエベレスト山頂のベストシーズンは五月下旬のせいぜい数週間と、
非常に限られているのに加え、ベストシーズンにおいても、
天候が良い日でないと山頂を目指すことは難しいという事情がある。
そのため年によってはわずかな晴れの日を狙って多くの人が、
登頂を試みることで、山頂付近の大混雑を招くこともある。
これはエベレスト山頂の環境の過酷さの裏返しでもある。

標高八八四八メートルでは気圧は海抜ゼロメートルと比較して、
三分の一しかない。
五月の平均気温はマイナス二五度。
風速は二〇メートルを超えることもしばしば。
賢い人は知っている通り、温度と体感温度は異なる。
もちろん嵐などではマイナス二五度よりも下回る、極寒である。
極寒の地では脳や内臓に血液が集中し、
手足があっという間に凍傷になる。
少しでもベストシーズンを外すと頻繁に嵐が吹き荒れるようになり、
新幹線より速いというジェット気流が襲い掛かる。
しかしベストシーズンであっても夕方以降は嵐が発生しやすいため、
午後二時以降の登頂は基本的に避けられている。

近年ではエベレストを軽く見た人が経験不足のまま登頂に挑戦し、
命を落としてしまう事例が多発し、問題視されている。
とはいえ、登頂者は専用の高所用ウェアを着込み、酸素ボンベをする。
頂上のアタックには身体の負担を減らすため最低限の装備しかできない。

エベレストの山頂付近で最も心配しなければならないのは、酸素不足。
エベレスト登頂を目指すには徐々に高度を上げていかなければならないが、
一般的には標高七五〇〇メートルから八〇〇〇メートル以上では、
「慣れる」ということが不可能だと考えられている。
この領域はデスゾーンと呼ばれ、
身体が少しずつ死に向かっていくと表現される。
この領域での滞在時間はなるべく短くすることが鉄則で、
酸素ボンベを抱えていくのも悪い考えではないが、
今度はボンベが空になった時に身体が薄い空気に対応しきれないことがある。
もし山頂付近で長く過ごしすぎた場合、高地肺水腫や高地脳浮腫となり、
席や頭痛に襲われるかも知れない。
酸素が圧倒的に足りていない中、
心臓は懸命に全身に血液を送ろうと拍動する。
しかしそれにより血圧が上昇し、その影響で、肺の中に水が溜まる。
そうなると余計に酸素が足りなくなり、
あなたの身体は急激に衰弱していく。
脳に酸素を送ろうと脳内の血管が拡張することにより、
脳が腫れるのが高地脳浮腫。
発症すると最初は頭痛や気分の変化などに始まり、
最終的には意識障害なども生じ、
立ち上がることすらできなくなってしまう。

ここまでくると、
救助なしでは命を落としてしまう。
そしてその救助が存在するのかどうかが問題。
標高八〇〇〇メートル以上においては、
ヘリコプターなどの乗り物での救助が難しく、人力に頼ることとなる。
しかし他の人にとってもこの環境は命に関わる。
賛否両論はあるが、救助が必要そうに見えても、
眼を瞑ることもしばしば行われている。
だが、命の危険が眼と鼻の傍にあるデスゾーンで、
他の人を助けるなんていうことはまず出来ない。
一般的に登頂を目指す登山者は一九キロの荷物を背負う。
身にまとう衣類約五キロ、身につける装備約六キロ、
ザックに入れる持ち物が約八キロ。
テントや酸素ボンベなどで総重量二〇キロを超える。
またヘリコプターの救助も現実的ではない。
ヘリコプターがアクセスできるのは六四〇〇メートルまでで、
それ以上になるとまず不可能だ。
山岳救助におけるヘリコプターには、高度な操縦技術が求められる。

運悪く誰にも救助されなければそのまま酸素不足と、
低体温症で命を落とし、登山は終わる。
デスゾーンでの死者が頻発する以上、
救助は九九パーセント不可能だと思った方がいいだろう。
エベレストの山頂付近では一年中氷点下を下回る。
エベレストほどの標高がある場所でさえ、
人間の痕跡が凍結したまま存在していて、
細菌が残っているという研究データがある。
そう、この遺された遺体は、
冷たく凍り付き、腐敗もほとんど進行しない。
エベレストで命を落とした登山家のうち、
その多くは遺体が生前そのままの姿で残されている。
蝋人形のようだとも言われる。
多くの遺体はそのままエベレストに捨て置かれ、
場合によっては登山する人に目撃されるようになる。

  *



459







アイヌ


札幌、知床、小樽、富良野。
これら北海道の地名はある言語が元になっている。
ちなみに、ラッコや、シシャモ、トナカイもそうだ。
これらの言葉はある言語が由来している。
北海道の地名だよな、北の国からだよな、
―――そう、アイヌ語だ。

伝統的なアイヌ民族は文字で言葉を表す文化を持たず、
そのため彼等の立場で書かれた歴史的記録がなく不明な点が多い。
のちに日本語の仮名文字で記されるようになったが、
本来であれば音だけで伝えられるアイヌ語を話す者は一握りしかおらず、
消滅が懸念される危機に瀕する言語である。
とはいえ、YouTubeにはアイヌ語を紹介する動画や、
アイヌ語弁論大会、
かなり貴重な音声記録を紹介するものなどもある。
興味を持って東京と札幌にアイヌ文化交流センターがあるのを知ったのは、
そういうことだ。でもアイヌ語は確実に失われてゆく言語だ。
語学を修得してもそれがアイヌ語を話しているだけにすぎない、
という見方もやはりあるだろう。
それでも残すというのは多かれ少なかれそういうものだ。

アイヌと聞いて、ゴールデンカムイを想像する人もいるだろう。
漫画の情報伝染普及力は凄まじい。
また、ウポポイ(民族共生象徴空間)がオープンしたことで、
興味を持つ人もいるだろう。
しかし評判はあまりよくない、展示物が出鱈目で、アイヌの人が怒っている。
なおかつ、いいところしか見せようとしない、と。
日本にはすばらしい文化多様性がありますよと立派な旗を揚げて、
観光客がたくさん来てくれれば北海道が儲かる、
という仕組みを作りたいという意図もあるのだろう。
儲けを度外視すると正常ではないし、
儲けに走りすぎると敵を作りすぎる。
テレビ番組で意図せず、
アイヌ民族の差別発言があったりなど、
認知度にはばらつきがある。
知らないということがいい方向に働いている場合もあるし、
もちろんそうではない場合もある。

これで思い出したのはテレビ番組のことだ。
日本のテレビ番組はサービス精神が旺盛で、
実のところ、世界的に見ても質が高い。
ただ、今現在のテレビ番組が面白いかどうかは別として、だ。
日本のテレビ番組は世界だ一と日米二か国で番組制作に携わった、
ディレクターは言う。
ただ、それがヤラセなどの問題を生んだ。
制作現場の構造的な問題と視聴率が与える強いプレッシャーは、
捏造ともいわれる過剰な演出に行き着く。

メディアリテラシーの教育も本当は必要だ。
いまはビデオジャーナリズムという考えもある。
いずれにせよ、プロの人達が作るものだけではなく、
素人の人達もまた作るも、敷居の低さ、手軽なものになりつつある。
その為に、迷惑系ユーチューバーが誕生し、
スシローペロペロ事件のようなことが多発する。
でもテレビ番組だって通ってきた道である。
組織か、個人の違いだけだ。
そしてその要因は「手軽な面白さの追求」からきている。

テレビでは時期を外すと賞味期限切れのものは放送されない、
けれど、素人の間ではそういう制約は存在しない。
無難なもの、手間暇をかけないものは中身が薄くて、つまらない。
でも凝っていれば面白いのか、専門用語さながら、
一般的理解を拒むものをバンバン使えば、
それはもう学術番組の延長線上にあって一般の視聴者が敬遠するものだ。
とはいえ、どちらが正しいとか間違っているということはない、
それを必要とする側にとってどちらも正しいのだ。
カメラの機器は高性能でも手が届く金額だし、スマホで撮影する人もいる。
関心領域を深めたい、発信したいという情熱さえ持っていれば、
おそらく本当に誰でも様々な情報を伝えることができる時代だ。

企画があって、提案があり、リサーチをし、取材交渉をし、構成をし、
ロケハン、そしてロケ、編集、MA(ナレーションや、音楽の挿入)
最後に仕上げで字幕やテロップ、エフェクトを加える。
公開手法にあわせて編集ソフトからビデオテープや、DVDなどへ書き出す。
最初はもちろん上手くいかない、失敗もある。
また大多数は人真似で、独自性が低い。
けれど模範となるべきものを見つけるプロセスを経て、
洗練され、質は向上する。
今後面白い切り口のアイヌの動画を拝見する機会はあるだろうなと思う。
とはいえ、それが差別や偏見を助長するものであってはいけない。

現代アートにもアイヌの伝統技術が生かされていたり、
もちろん、アイヌの伝統的な衣装や、文様は独特で美しい。
でもそれだけではない、そこには知恵や食文化がある。
アットゥシは木の皮の繊維で作られていて、それもすごい技術だ。
チェプケリという鮭の皮で作った靴などは、
どういう発想の仕方をしたのだろう。
冬眠前の熊が残した鮭の一部を、
再利用できないかとでも思ったのだろうか。

そんなアイヌ民族の集落がある。
約三六戸、約百二十人が暮らしている。
釧路市阿寒町、阿寒湖畔に位置する「阿寒湖アイヌコタン」だ。
差別や偏見という問題を抱えながらも、観光客は欲しい。
見る限り全部木造りだ。カヤや、白樺を用いたアイヌ民家は、
縄文時代に触れたような不思議な懐かしさがある。
小さな家を意味するチセの中では、家族が座る場所、お客の席、
寝る場所が決まっていたらしい。
ここではアイヌの家庭料理が食べられたりする。

さて、ルーツは北海道にあるアイヌだけれど、
今現在では様々な事情から北海道に住んでいる人もいる。
家庭の事情、差別を逃れてというものだ。
明治以降非常に貧しく独自の文化を制限され、
中世以降、和人との間に交流や争いなどがあったことなども、
知る人もいれば知らない人もいる。

北海道に次々にアイヌ由来の地名に漢字があてはめられ、
アイヌと呼称されることはなく、「旧土人」という言葉が使用された。
一九三〇年に入り、
当事者のアイヌ自身が結成した組織の自称は「北海道アイヌ協会」
カタカナ表記の「アイヌ」が採用され、
一九六一年から二〇〇九年三月末までは「ウタリ協会」を使用するも、
二〇〇九年四月一日からはふたたび「アイヌ協会」に復称している。

内閣府の世論調査でアイヌ民族がいることを知っているかで、
三千人ほどに聞いた。
知らないが六.二パーセントで、
知っているが、九三.六パーセントで、
無回答が〇.二パーセントだった。


  *


458








それは何故か?


僕は一度考えると、それを論理的に突き詰めるし、
場面を何度も思い浮かべて状況を整理し、心理を追及する。
僕は自分の思考の癖、イメージの癖についてよく考える。
たとえば困った時や、ぼんやりしている時は、
子供の頃に通った道を何千回も頭の中で通ったり、
夢の中の記憶を思い出したり、する。
多分、それは酩酊感を伴う、
深い集中状態にある。

時々思い出す、二十代の頃の不思議なことがある。
そういうシチュエーションって、
突発的に起きるものじゃない。
多分あれはすごく不自然なんだよ。
でもそれは起こった、
つまり、その人は、幽霊の声が聞こえたとか、
何か予知ができる人だったんじゃないかと思う。
あるいはその範囲にあるようなこと、
駒のような配置が、確実に、そこにはあった。

漫画のようなメリハリ、コマ構成を変えながら、
人物のピックアップ、すなわち、心理の追求。

でもすぐ訂正する。
僕は可能性として、仮説として、立ち上げる。
次に、因果というか、行動次第で状況が入れ替わるようなことって、
しかもそれが数分後っていうのは、まあ、初めてだった。
僕は答えを間違えると思う。
ただ、間違えた答えに付随する正しい答えをその時に見る。
僕はそういう時に絶対に直感で答える。
そしてそういう時の答えは絶対に外れない。
僕は表情を記憶の中の人物群と当てはめ、
それに近い話を類似のものとしてねじりこむ。

ここだけの話さ―――。
うん、ここだけの話・・・・・・。

本当に優しい人って僕は、見たことがないし、
まず、存在しないと思ってる。
色んな言い方をするし、僕は僕にだって、
様々な立場や肩書の中で仮面遊びしているにすぎないけど、
社会人、一人の人間としては、可能な限り、
もしかしたら多くの人が思うよりずっと優しい人間だろう。
でもそれは僕の修行にすぎない。
僕は優しさと見えないし、そんな風には絶対に処理しない。
人が勝手にどう思おうと、僕の心は変えられない。

優しいということは、弱いことだし、
八方美人とか、リスク回避しているだけ、とも言える。
僕はそういう想定の仕方をする。
きっと僕の心には鍵が掛かっていて、誰にも開けられないんだ、
そういう風に思うこともある。
あるいは、みんな、自分自身については、
そんな風に思うのかも知れない。
僕は叡智の詩人で、駆け引きのできる詩人で、
物事の奥まで突き進む。
僕の神経が人よりもずっとデリケートだからだろう。
それはわかるよ、何となくね。
でも人の心まではわからない、それは推測だし、想像だよ。

でもたまに僕は変なことを考えることがあるよ、
心のあるなしっていうのはわかるよ、
でも生きているか死んでいるかも、
究極はわからないんじゃないかってね、
哲学とかじゃないけど、人であって人じゃない可能性も、
僕等には読み取れない。
だったら、心があることと、見えること、話すことだって、
なんだったら昨日が今日でことだって、
―――いやいや、難しい話をしすぎだね、
でも前提条件とかが揺らがないわけじゃない、
それはその場合のとある可能性にすぎないわけだ、
もちろん本能には差別や迫害を認める装置があるよ、
認知というのは、個性というのはそういうものだからね。
そして無意識というものも、僕はもちろん、考える。

意味のないことって沢山あるよ、
でも、意味のなかったことを引っ繰り返す、
とある一日がある。あるいは、一瞬がある。
僕は思うんだ、繋がってる、何かが僕の背後にある、
それは暗示されていた、きっとそれは、行動の原理を裏付けている。
でもそれはきっと、心理学や、哲学では見つからないものだとね。



  *


457








虫の卵
insect eggs


夜道を歩く。
帰り道、郊外で右手に空き地とか、田んぼが見える。
遠くに電車が、ガタンゴトンと過ぎてゆくのが見える。
何もない町だけど、
そういうもの淋しさも時には美しく感じ―――ら、れ、る。
そういう時っていうのは温かい和やかな気持ちです。

でも天気が曇り出したように、
街燈がない道に差し掛かる。
[オン/オフ]を使い分ける・・・・・・・。

ええ、近道なんです。
藪を突き抜ける、犬の散歩をしている人がいて、
彼もその道を選ぶようになった。
でも屈折異常や、調節異常が起こ―――る・・。
視野の隅から墨汁を流したように、黒の種類が違う。
グレーがかっているというか、赤黒い・・・。
“サーッ”と背後から人の気配がする。
「おかしい・・・・・・」
普段はそういうことを気にしないタイプなんだけど、
この時は何故か気になった。
不調和なものを見出すと、鉛を呑み込んだように、
気分が重く―――な、る・・。

それって―――。
それって――――――。

・・・・・・普段は開けることのない引き出し。
いつもと違うものが入っている、
あるいは、そこに入っていたものが消えている。
そんな、逡巡し、暗澹とし、悄然とした心。
何だか、じめじめとした、暗い気分に嵌まり込む。
いつもは―――つまりは、何百回も通ったその道は、
それまでけしてそんな暗く閉ざすような気持ちにさせなかった。

脳の中へちぢこまっている―――モノ・・。
表情が止まっている空白の上・・・・・・。
彼、思った。
(明日からはもうこの道は通らないようにしよう・・)
本能が警鐘を鳴らしてる。
「(今日さえやり過ごせれば―――)」
「(ここはつまり“あれ”か・・・)」
―――何処かで、泣き声がした。
ビクッとした。
胸の中がどしんと重たいものがかぶさったようになる。
うえんとか、ひっくひっく、と泣き声がする。
背筋が凍りつく。

違う、それは背後じゃない、頭の上にいる。
彼、左肩が重くなるのを感じた。
うえん、が別の位置から聞こえてくる。
後方斜めだと思う。
言葉が勝手に動くというか、自然生成される。
「嫌だな」
だって、声は複数ある。
ひっくひっく、が、やはり、また別の位置から聞こえてくる。
「なんなんだよ」
もう、彼、ビビっちゃって、実は彼、
幽霊がとても苦手なんだけど、
まあ、人生で絶対にあれは幽霊だって思えるものを、
五回ほど見てる。
彼、幽霊が好きじゃない。
でも彼、幽霊にどうも好かれるタチじゃないかと思うんです―――よ。

その次第に深くなる峡谷のような暗闇。
霧が立ちこめるような、不吉な運命の糸が足元の影から伸びてくる。
彼、もう歩けなかった。
四方を包まれて、影を踏まれて、心を掴まれて、息を盗まれて、動けない。
錘でもあるように足がもうまったく動かない。
「(たすけてたすけてたすけて・・・・・・・)」
祈った。
願った。
“フッ―――”
と、気配が消えた。しーんとしている。
眉間に皺を寄せながら、深呼吸をする。
よくはわからないけど、助かった―――と、思、っ、た。
耳元で、チッ、と舌打ちする音が聞こえた。
彼、もう気を失いそうなぐらい怖かったって言います。

でも、聞いたところによると、
別にそこで何かあったということは―――ない、ようです。
いやいや―――これはガチの、モノホンでね。
そういうケース結構あるんです―――よ。
一応ネットや、近所の人に尋ねたりはしたけど、
詳しいことはまったくわからなかった―――よ、う、で、す。
また、あそこで怖いした人はいないかと聞いたみたいなんですが、
それも、サッパリなかった―――と。

じゃあ、あれは何だったのかと首をかしげるわけ、です、よ。
でも、そういうのってあんまり考えない方がいいんだ、
引っ込みがつかなくなっちゃう時、
どうしても気になって仕方なくなってしまう時ってあるんだ。
子供の頃、地蔵の首をとってきたら、
お金をくれてやるみたいなドラマだか、映画を観たことがあるんです、
子供を背負って―――ね。
知っている人もいるでしょうね、あえては述べませんが、
あれって悪い行いには罰があるっていう教訓的なもの、も、
僕はあると―――思う。
でもそれと同時に、実は地蔵の首を取りに行こうとした時点で、
始まっている別の可能性もあるように―――思、え、る。

おそらく彼の守護霊とか、幽霊自体のターゲットと違ったとか、
そういうことは多分あったんだろ―――う。
わかりませんよ―――わからない、でも、おそらく彼は、
複数の幽霊に囲まれて、引きずり込まれようとしていた。
何もないとは言っているけど、きっと何かあったんだ。
でもそれは心療内科を遠巻きにしながら歩くような心理で、
突如生まれた落とし穴―――だと思う・・。
普段はそんなのあるとは思わないけれど、
暗闇の中には“そういうモノ”が―――ある・・。
気になっているのはそれは、
昆虫の卵を産み付けられたようなもの。
四方に囲まれていると思う、
でも、四方に囲まれているようで、それは心の内側にある。
けして、道を踏み間違えちゃいけない。
―――いつかそれが【孵化】する。


  *


456











another world


モウココニハ
ダレモイマセン

チニメリコンデユク
ユウウツナコエ

ナニヲサガシテ
イマスカ?

コエガシタ
クビヲフッタ

ソウデスカト
コエガシタ

アシオトガキコエ
トオザカッタ

オシマイノキオクト
ラジオカラキコエ

セカイヲツツム
ヨルノスナノオトガシタ


  *


455







さいのうのつかいかた


さあ、あたいの光線銃で、
勝負だぽわわん(?)

寝言は寝る前に言えなのだぽわわん、
さあ早く抜け、
脱ぐなよぽわわん(?)

語尾が気になるぽわわん、か?
泡の精霊なのだぽわわん(?)

あたいも一時間前までは、
恥ずかしかったぽわわん、
でも練習の末にあたいは、
恥を忘れたハガネの心を、
手に入れたぽわわん、よ(?)



  *


454







いろいろおかしい


君、まさか・・・・・ニュー・・・タイプ・・・(?)

それは破滅と再生の、
スクラップ・アーム・ヘッド・クラッシュ(?)

暁気導闇の残音洞のしらべ、
パッショネイト・サンからの、
デスアングル・ショット(?)

あの日・・・わたしは片腕を失った戦士で・・・
あなたは、戦場に舞い降りた、デスメタル・カノン(?)

大声で叫んで、
エンチャント・ヘブンズ・ライトニング(?)



  *


453








Dazzlingly


聴いてくれなくても、
(空へ昇ろう、半熟卵の卵黄のような月、
病気にかかったような、汚れた色をしてる、)
加速器保護用球ギャップ。
、、、
いいよ。
///ノイズ

[共通化/標準化]
八時間後、僕等は東へと廻る。
みどりをつらぬきはしる、蛇。
「頑張れば頑張るほど酷くなる悪循環の無限ループ、
だね・・・」
なみおとのむこうからなみおとの、蛇。
「無様な蜃気楼だって、蛞蝓にかけた塩だって、
わかる、さ・・・」
(中国仏教協会会長のセクハラ、
高野山真言宗の運用損失六.八億円、
タイの僧侶、薬物摂取や飲酒、
ギャンブル、買春・・・・・・。)

、、、
いいよ。
息づいた、一刻一刻を重く区切って疼く、
残響エフェクトの尾を引きながら消えてい――く・・。
胃空腸吻合術の彼方、
―――【解けぬ議題はsee-through】

   、、、、
頭に「テキスト」が入っている感じが消えない、
 、、、、、、、、、、、、、、、
「民主主義は少数意見を抹殺しない」
―――冷たくあしらった、
マルバツ式の発展性のない議論の熱が、
宇宙へと放出されてゆくような気がした。
脳の血管が爆ぜて三日三晩寝込みたくなるような悪夢のあとじゃ、
一ミリの愛だって、
横行結腸造瘻術。
思い出せな―――くたって・・しょうが―――ない。
今更、ヤバイとかマズイとか、
アリエナイとかワラエナイから、ね。

ああ、アド氏のDQNソング流れるこの街、
好きでも嫌いでもないけど同病相憐れむこの頃、
さあもっとXしようぜ、さあもっとインスタグラムしようぜ、
どれだけ馬鹿になれるか競争しよう―――ぜ!
フーッ、キタキタキタ、キチャッタ、よー!
みんなハジけてこうぜー!
結構ガチなインドア派なのに超体育会系、
中立尊ぶのに左翼的、危険で不穏でちぐはぐ、
空気が合わない晴天気乱流のさなか、
ゲートボール宇宙大会を始めよう―――ぜ。
最高だ―!!!

余白は海へと溶け、て。
白の上に残っていた純粋な成分、と、か。
沈黙と、か。
壊れた楽器する、だ、け。

“消えない夢があった”って語る君の疲れた顔。
“誰も信じないと決めた”って語る君の諦めた表情。
―――誰が何言ったって、
何がどうなったって、
“僕の気持ちは変わらないよ”って。
“眼を開けていようと閉じていようよ、
平等に時は進む、死は訪れるよ”って。

それでも。
それでも。
それでも。
思春期の少年のような傷つき方をしている自分に気付く、
ネパールで航空機が墜落した、パキスタンで自爆テロが起きた、
「凝り固まりすぎて腐りかけ、膿み汁、腐り汁で固形化、
そんな固定観念! ああ、そりゃもうそんな固定観念!」
ジャニーズ元社長の性加害。
とどめはダイハツ、有名企業は超ブラック企業で、
「呪われた烙印とか、背負った業とか、終わらない輪廻だとか、
弔事に使いたい中二病設定、ピースしながら遺影、)
部下に全部丸投げ、不正蔓延は至極当然だった、とか、
(天皇は現人神だった、その昔。
何処からどう見てもただのおっさんだったけど、
色んな覚悟をしてた、上に立つ人ってそうだと思う。
キューバのカストロ国家評議会議長は、一九八〇年に開かれた、
党大会で十時間を超える大演説をぶった、)
色んなことは流れ、る、よ。
長く続く拍手は荒らしのよ、う、さ。

聴いてくれなくても、
(悲しいんじゃない、これで終わりなんじゃない、
ただニュースから何を教わるのかって気がしてる、
網膜に張り付く嫌な単語から眼を逸らした、)
手作業のはんだ付けを考えていた。
虹彩認証及び顔認証システムを導入して、よ。
、、、
いいよ。
///ノイズ

ロー・アングルの煽りから少しずつ離れて、
高度を引き上げてゆく、建物は一階、二階と上がってゆき、
十三階の金網の張られた屋上で男女の影並ぶ。
対称多項式や対称群の研究あるいは一般の群の表現論。
N分割。
いくつも数え切れないほど、ディズカバリー。
通り過ぎる、デストロイ。
君と出会った奇跡に空が飛べるはず、っつーところはあんだ。
もっと言おうぜ、エクスカリバー。
さあ張った張った、テクノロジィィ!
しばらくは見えなくなることなんて、
な/い/か/ら

、、、
ないよ。
生贄、十字架、ラシャ地の背中ゆくビリヤードボール、
ゆっくりと動く映像と―――バイブレーション・・。
(「追加設定」なんかいらない」―――から・・)
混濁した意識とこみあう人込み、車、騒音へ投下される、
投下され―――る、投下され―――る、
―――【解けぬ議題はseesawぎったんばったん】(して、)

ねえ、超能力に憧れてる、天才に憧れてる、
それは難易度の高い《隠し階段》で、《隠し扉》なの―――さ・・、
陰謀やまやかしを全部表に出したって裏は残るだろ、
確率は半分だって信じながらコインを投げて今日を占う僕等・・。



  *



452








molestation



痴漢をする人というのは、
「ガラガラでも隣の席に座ってくる」は、
すごくポピュラーだ。
でもこんな言い方をする事自体、
僕がもう社会に対する期待や希望を失っている、
という言い方もできる。
吐き捨てるように考えてきた。
口酸っぱくいつも考えてきたことがある。
普通って何だろうって。
マトモって何だろうって。

誤解がないように言えばだが、
痴漢をする人というのは大卒で既婚者の普通の人が多い。
痴漢事件を引き起こす人は社会的にストレスをためていて、
その発散の仕方が上手くない人だと言える。
類型化、パターンというのは難しいけれど、
「満員電車に揺られているうちに、
たまたま手が女性のお尻に触れてしまった」というのがある。
ビキナーズラック、だ。
ところが、女性は無反応。
この時に男性の脳内には大量のドーパミンが分泌され、
衝撃的な快感を覚える人がいるらしい。
(好きでもない女性の尻を触って何が嬉しいのか、
僕にはさっぱりわからないけど、)
この状態を痴漢行為の「スイッチ」が入ったと表現する。

「バレない」「意外と簡単」は、
「女性は嫌がっていない」と思い込む。認知のゆがみだ。
列車の揺れに合わせて触る、回数を追うごとに接触を深める、
スリルとリスクがさらに快感を助長させる。
絶対に越えてはいけない一線をフィクションは越える。
価値観の崩壊、満員電車のストレスと説明することも出来るだろう。
(ざっくり言うなら、非モテ男性なんだろう、)
でも、暗黙の了解なんて存在しない。
お前に絶対誰も同情しない。
詩を書いていて僕は長い間そのように思ってきた。
生きる上での覚悟がある、
死ぬまでそれをやり遂げなくちゃいけないことも、
きっと人それぞれあると思う。
法治国家は犯罪を犯す人間を徹底的に裁く。
そうでなかったら無法地帯になる。
正義とか悪なんて存在しない、
ただ、そのケースに対する処理の仕方があるだけだ。

けれども、踏みとどまらなければいけない。
犯罪者の心理なんかわからないと思う人もいるだろう、
そうだ、けれどもそれはおそらく病気の一種だ。
流行り病みたいなものなんだ。
けれどきっとそういう認識を持っている人は絶対的に正しい、
ルサンチマンをどんなに理解しても、
僕は劣等感で他人を傷つける輩を理解したくない。
都市の中に「普通の人」や「マトモな人」や「優しい人」は、
一体どれぐらいの数いるだろうかって思うことがある。
絶対に開けてはいけない扉を開けてしまったら、
もう二度とは現実に戻れないこともある。
妻や子供がいたら、馬鹿なことはすぐ止めなくてはいけない。
二十代や四十代に痴漢は多いという話がある。
ひどいのになってくると女性を複数の男性が囲んで痴漢する、
という想像しただけで眉間に皺が寄る話もある。

「痴漢行為」は、
「迷惑行為」のことでもある。
人が集まるだけで問題が起きる、
社会がではない、社会における「人」だ、
世界ではない、世界における「人」だ。

きっと「自分はしない」だけでは駄目な世の中なんだ、
「嫌な想いをする人が一人でもいなくなって欲しい」ではないと、
そういう人間を駆逐できない。処理できない。
そして僕はもう知っているんだ。
更生を謳う刑務所だって過半数は、さらさら更生しないということ。
でも半分は、もしかしたら三分の一は、
もっと低いかも知れないけど、罪を犯して、改悛して、
償おうとしてる、マトモになろうとしていると信じたい。
失敗をしないのが正しい。リスクを減らすのも正しい。
でも「自分さえよければいいという世界」は淋しい。

ネット掲示板では様々な差別や迫害がある。
誹謗中傷罵詈雑言がある。
僕だってそれを見聞きし、時折堪えれないほど嫌な気持ちになる。
毎日のニュースですらそんなことが起こる。
政治家や市長に対する嫌がらせがある。
クマの話では、涙ながらに電話をかけて職務を妨害する人もいる。
病気だ、そんなのどう考えたっておかしい。
でもそうせざるを得ないらしい人々がいる。

何処から何処までが正しくて正常で、
どんな体験、どういう感じ方をしたら、
そうなるのかなんてとても説明できるものではない。
(マイナススパイラルって言う、負の連鎖と考える、)
僕はキチガイという言葉がとても嫌いだ。
障碍者を馬鹿にするようなガイジという言葉も大嫌いだ。
使っているならすぐに止めた方がいい。
でもキチガイとしか言えないような人が本当にいる。
僕も色んな人を見てきてどう考えても、
これはマトモじゃないって思うような人を、
残念ながら、両手で足りないぐらい知ってる。
情報を知れば知るほど、どういう風に考えればいいのか、
正直言ってよくわからないことがある。
一緒だ。
きっとそういう風に思う人、考える人も、
沢山いるんだと思いたい。

「あおり運転の常習者」や、
「パチンコを止められない人」や、
「スマホを触らずにはいられない人」もいる。
病気だ、周囲から見てもおかしい、
何でそんなことをするかわからない、
そう思えるような人間だったら治療が絶対に必要だ。

「痴漢をする」と言う人はいるだろう。
でも「レ イプをする」という人はそんなにいないはずだ。
(と信じたい、)
痴漢というのはレ イプと同じことですよ、
この認識で踏みとどまれる人もいるはずだ。

多くの人は、
「お尻や胸を触ってくる」を真っ先に考えるだろう。
かくいう僕もそう思っていた。
でも指摘しづらいことを狙ってやって来る悪質なパターンもある。
「乗降時に胸やお尻触る」という場合もある。
人を掻き分けているように見せかけ、偶然うっかり触れる。
でも触られた方はすぐにわかるだろう。
「無意識を装って吊革に手を伸ばしてくる」というのもある。

世の中には「精 液をかけたがる人」はいる。
まあ、A Vの影響もあるだろう。
でもお互いが同意して、何だったらサービス料を払ってするならいい、
見ず知らずの人にそんなことをされて、
女性はどんな気持ちになるだろう。
その服やスカートはどうしたらいいんだ。

「自分がされて嫌なことを他人にするのは最低」だ。
もちろんそのためには、痴漢されている人がいても見て見ぬふり、
痴漢されても恥ずかしくて声をあげない、なども止めなくてはいけない。
一生の傷が心に残る。
一日ぐらいなら、どうせこんなの今日だけだ、自分が我慢すればいい、
こんなのは絶対に間違っている。
その為にはきっとそういう想いをした人が何かの力にならなくちゃいけない。
人間関係はもたれ合いじゃない、支え合いだ。

中には空気読めないを通り越している場合もある、
「雨の日に傘でつついてくる」とか、
「つむじを触って来る」とかがある。

「意味不明」だと思う、
「理解に苦しむ」とそう思う女性はいるだろう、
でも性犯罪に巻き込まれるのを目撃した時、
本当に何かする人なんだろうか、あなたは。
女性が痴漢になって声をあげても誰も何もしようとしなかった、
冷たい眼をして「なんか騒いでいる」という顔をしていた、
という話もある。
けれど男性だって同じだ、だから冤罪事件にみんな興味がある。
中には女性専用車両と同じように男性専用車両を作って欲しい、
なんだったら痴漢専用車両みたいなものを作ってくれ、
とそう思っている人もいる。
でもこういう実例を知ってしまうと、
女性専用車両は絶対に必要なもので、なんだったら警察服を着用した、
警察官配置も必要なのではないか、と思えてくる。
(私服の場合、それでもする場合があるから、)

・スカートなどの衣服を切り裂く行為(器物損壊罪)
・衣服に精 液等を付着させる行為(器物損壊罪)
・公衆の面前で陰部等を露出する行為(公然わいせつ罪)
・つきまとい、のぞき行為(軽犯罪法違反)

痴漢の話はまだ続く。
「肩に顎をのせてくる(耳をカプッと噛んでくる」や、
「髪の毛を食べてくる」なども大変に気色悪い。
「満員電車で足の間に靴をねじりこまれ、
靴には不自然な穴が空いている」というのもある。
なお、被害時に抵抗しそうな自己主張が強そうな女性は、
避ける傾向にある。
個性的な服装や目立つ服装は、狙われにくいし、
普通に考えて、まずやらないだろう。
被害者がこれ以上の被害を避ける為にあえて、
ゴスロリファッションをしている人もいる。



   *


451







発掘
Excavate



僕の故郷であるビキハノシティーは、
ヤマトタケルが没後この地に舞い降り、
「羽を曳くが如く」飛び立ったという白鳥伝説があるが、
まあそんなのは嘘に決まっているのだが、
二〇一九年七月六日の第四酸回世界遺産委員会にて、
古市古墳群のうち二六基が世界文化遺産に登録されたのは、
まあどうやら本当のようだ。
母は田舎だと言い、僕は近所にある農林水産センターで、
牛を見て育ったと証言しているがこれはまあ嘘だけど、
牛が好きだし、こういうのって都会には絶対に建設されない、
郊外型商業施設だってそういうものだ。
牛は注視する。ロックオンする。
そして僕を見つめたまま放尿する。
ワイルド系なんだな。
何にもない街である。歴史好きを騙くらかそうとして述べる、
馬鹿な文言に一切興味はないけど、
歴史好きな人には中々ロマンあふれる街だ。
口が腐る。あのーすみません、
棒読みしてもう一度繰り返してもいいですか。
でもそんなわけで遺跡発掘というバイトには興味がある。
遺跡発掘というと、いわゆるアカデミックな、
歴史的研究をするための発掘を想像するが、
必ずしもそうではない。
法律により遺跡は保護が義務付けられているため、
遺跡が発見されると記録を取るために発掘作業を行われる。
ちなみに遺跡発掘で家を建てられないということは、
何処の地域や場所であっても十分にありうる。
遺跡に関する手続きは発掘調査の補助金申請も含めて、
あらかじめ業者が行う。開発に伴う緊急発掘調査では、
開発事業の事業者が負担する。
歴史は大切だけれど、そんな金払えるかと思うだろう。

とはいえ、ある場合には、
おそらく、それほど重要なものが眠っているわけではないから、
建物を建てたい企業と発掘をするの組織の上の者が話し合って、
発掘しないでいいように勝手に話を進める場合もあるようだ。

研究のための学術調査は尊い、
まず文献を頼りにしてここらへんが怪しいというところから進める。
それはロマンだ。
黄金に輝く宝物とは無縁の現場で年月を重ねてロボットになった僕も、
給料さえよければ混ざりたい。
そしてコーヒーを飲み、煙草を吸う。
だがアルバイトとして公募されるのは、
主に建設会社が土木工事、建築工事の一環で行う緊急調査の方だ。
作業内容は、重機でおらおら掘った後、
遺跡がありそうなところをスコップであらよあらよと手作業で掘り進め、
何か見つかったら回収する、という作業の繰り返し。
3D計測プロジェクトとか、ドローンを用いた三次元測量とか、
そういうのはまったくない。
で、実際見てみた。

(1)出土品整理補助のお仕事。土器・石器等の
遺物の洗浄や遺物へ細かい文字の書込、
図面整理、復元作業、拓本、運搬・収納等
(2)測量作業等、計測データのPCへ取込、 
各種微細な図面作成、出土品の取上・整理、
他調査補助作業等

一様に遺跡発掘に携われる仕事です、と強調していた。
そこしか強調するところがない仕事だからだろう。素敵だ。
また専門知識や資格、経験不要ということだった。
なお、学術調査の方は遺跡が多い地方でしかなく、
それも自治体や大学の研究所が募集するため、
一般の求人情報サイトでは募集されないようだ。
そうなってくるとアルバイトの虚偽広告さながら、
普通の土木工事現場とそう変わらないのだが、
しかし宝探し的なワクワク感やロマンは捨てきれない。
といって、徳川の埋蔵金とかツチノコみたいなものは絶対にない。
基本こういうのって修行僧の親戚みたいなものだ。

だって屋外作業である。気候の影響はモロに受け、
夏は暑く、冬は寒い。
特に地面を掘り下げた窪地で作業をすることが多いため、
梅雨や夏季は湿気がこもり蒸し風呂のようになる。

さて発掘作業が始まって、まず行なうのは試掘(トレンチ調査)だ。
試掘は技師さんと、
入札で決まった発掘作業会社の現場責任者たちで行う。
掘った断面図から予想通り時代順に地層が残っているのか、
土器や石器などの遺物があるかをチェックする。
次に表土の掘削だ。
そしてバイトの仕事といえば、遺構の掘削。
調べたい地層に近づいたら、発掘作業員が大きいシャベルを使って、
少しずつ、なるべく平らに土を削っていく。
削った土は一輪車やベルトコンベアーで外に運ぶ。
一輪車はネコとかいわれ、「運搬用一輪車」が名称だ。

重いものを乗せると手押しで動かしたときに車輪がブレやすく、
自分が思っている以上に左右に倒れやすくなるので、
「これくらいならなんとかいけるかな」が目印で、
それより「少ないぐらい」とか、「絶対運べる」が目安。
腕力でやらない、肘を曲げない。
上体を前に倒すようにして押すようにすると良い。
なお、倒してしまうとそこでロスタイムが生まれるし、
まあやらなくてもいいことをやるわけだから超面倒くさいわけだ。
テンションも下がる。
とはいえ、誰でもやりうるヒューマンミスである。

で、「手ガリ」だ。
園芸用の半月形の刃がついた除草用の鎌で土を削りながら、
遺物を探す作業。
発掘作業員の方と横一列に並んで作業を行う。
この道具、両刃で、土と一緒に石も強く引っ掛けながら使うので、
段々刃が削れにくくなる。
そんな時は現場にあるサンダーで歯を削って切れ味を戻す。
出土した土器は、後で写真を撮ったり実測するので、
そのまま土の中にあった状態で、
動かないように周りの土を削ってゆく。
それが終わったらお碗状の容器に石灰と水を入れ、
筆を使って、技師さんの指示通りに線を引く。
白線を引き終わったら、
技師さんが横に建てたやぐらの上から遺構全体が写るように写真を撮る。
そして実測(図面描き)というわけだ。

基本土木であるし、大きな声を出す必要性もあるかも知れない。
歌う時の話にはなるが、大きな声を出す時とか、ケツの穴を締める。
口に手を横に添えるだけでも声が響きやすくなる。
専門用語とか、使い方のわからないものは、
「おいこら、これ何だ?」とちゃんと聞こうね。

世の中には知らないことがあたかもその人の過失のような扱いをする、
どうしようもない人間がいる。ルサンチマンまみれで、
コンプレックス満タンなんだろう。
こういう馬鹿はなるべく相手にしない方がいい。
「仕事をしに来ている」のであって「遊びに来ている」わけではない。
ここ重要、これがわかると君は大人。
あとは足し算と、引き算と、掛け算と、割り算ね。
実際納得のいかないことがあったら僕は揉めまくるからね、
それでいいのかという向きはある。
基本の僕は八方美人だし、普通に接する、分け隔てなく人と付き合う。
僕がまともだというのは全然思わないけれども、
世の中のレベルを見ているとまあ色んな癖のある人はいるものだ。
嫌われ者とか、嫌な奴って沢山いるものだ。

脱線しているけど、人がいい、善人というのは何処にでもいる。
僕のことを(おそらく)そう思っている人もいるし、
そういう風に振舞うことの方が多い。
でも世の中善人では生きていけない、
これはきっちり覚えておかなくちゃいけない。
でも不美人になる必要はない、これが僕の考えだ。

また完全に雨で現場の仕事がない、または次の現場待ちという時は、
屋内作業の建物に出勤して様々な作業をする。

「遺物洗い」とか「遺物の接合・復元」とか、
「倉庫の整理」とか「本の作成の助手」などだ。



  *


450







drone


ドローンとは何だと思う?
と聞いてみる。
そうすると、
「空を飛んで綺麗な写真や動画を撮る」と答えた。
模範解答は、いや世間一般の手触りの良さで言うなら、
「効率的なデータ収集や高精度な地形情報の取得」
だろうか。
ラジコン感覚で飛ばす人もいる、写真や動画のため、
という人もいる。教師がドローンを使う例もある。
ドローンを活用した小学校河川教育教材なんて、
ドキドキするテーマだ。
いまではドローン保険もあるので安心だ。
空撮、農薬散布、測量、防犯防災にも使われている。
軍事利用については思うところがある、
これが最良のものだろう―――か。

いまでは家電量販店、模型店、ホームセンター、
もちろんインターネットで購入することもできる。

ドローンには、
「航空法」と「小型無人機等飛行禁止法」というのがあり、
一般的なドローンは、上記の法律を遵守して使用している。
その場合、「無人航空機」と「小型無人機」に分かれる。
最大のポイントはバッテリーを含めた、
重量が二〇〇グラム以上かどうかで、
人口密集地、フライトの場所、飛行の目的によって、
国土交通省の許可が必要になる。
ホームページへ行ってDIPSへアクセスする。
ちなみに人口密集地(人口集中地区、DID地区)は、
日本の国勢調査における統計上の地区で、
国土地理院のウェブサイトから確認が可能だ。
なお飛行の方法によっては申請が必要な場合もある。
夜間飛行などがそれだ。

いうまでもないことだが、飛ばしてはいけない場所も存在する。
「国会議事堂」「内閣総理大臣官邸」「皇居・御所」
「防衛関係施設」「空港」「原子力発電所」などがそれだ。

ちなみにドローンに資格や免許はいらない。
ただ、航空法というのが存在し、
航空法が規制対象とする一〇〇グラム以上のドローンの所有者は、
氏名や住所、機種などを国交省に申請し、
個別の登録記号(ID)の通知を受ける必要がある。

またドローンに技適マークがあるかどうかの確認もしておこう。
海外製などにはなく、処罰の対象になる。
ようは違法な周波数を出していないかという電波法が主だが、
ドローンのメーカーが品質や性能の改良などのためにプログラムや回路変更、
部品変更を行った場合、
その製品の技適マークを取得している販売代理店には、
技適マークの取り直しの義務がある。
甘く考える人もいるかも知れないけど、実際に検挙された事例もある。
一年以下の懲役、百万円以下の罰金となっている。

ドローンを選ぶ時のポイントは二つある。
一つは「操作モード」で、スティックの割り当てが違う。
もう一つは「高度維持機能」だ。
二つ目はかなり重要で、これがついていない場合、
自分で調整することを求められる。
高度維持機能は、離陸したあと自動でホバリングしてくれる。
とはいえ、高度維持機能がない方で操縦したいという人もいるだろうし、
今後ドローン市場が拡大し続ければ、
ドローンの資格や免許も視野に入るだろう。
そういう中で、高度維持機能というのが、
僕はポイントないんじゃないかと思う。

ドローンを買ったらまずバッテリーの充電。
なお、トイドローンの場合は、満タンで五分から二〇分といわれてる。
バッテリーの寿命は一年ぐらいといわれているけど、
もちろん使い方によっては数年とか、数か月ということもある。
なお、バッテリーが膨らんできたら危ないから使わないようにしよう。
また飛行する時はプロペラガードをつけよう。
アプリをダウンロードして、バインドする。
バインドとは送信機と機体をリンクさせること。
機体の電源を入れて送信機の電源を入れる、
そして送信機のスティックを上→下と動かす。
機体のLEDが点滅から点灯に変わればバインド完了。

では飛ばしてみる。
電源を入れる時は送信機から、切る時は機体からと覚えておこうね。
自動離陸ボタンを押すと機体が上昇する。
そこからスロットル操作、エルロン操作、エレベータ操作、ラダー操作、
というのがあるけれど別に覚える必要はない。
こういうのってわかる人に丁寧に教えてもらうか、
自分で何十回、何百回も練習して身に着くものだからだ。


  *


449









Artificial Intelligence


AIという言葉はだいぶ前から言われているけど、
対話型AI「ChatGPT」や、画像生成AIなどが出てきている。
規制しろ、このままだと人類は滅亡するだのと言われている。
仕事の四分の一がAIに取って代わられる、
三億人分の仕事を自動化するというわけだ。

とはいえ、AIという言葉は抽象的だ、
元をたどると十万年前に人間が現れ、紀元前七万年頃に、
人間は数字の概念を持っていた。
その数字は長い歴史の中で計算になり、計算は未来予知に繋がる。
つまり数学が僕等の生活の根底を支えている、
という言い方もできる。

その数学の計算をするのに暗算をする必要はない。
計算機、計算機からチューリングマシン、
プログラムで動くコンピューター。
もっぱらは戦争用途だったわけだけれど、
重要なのはやはり圧倒的な速さ。

一九五六年からAIという単語が誕生し、
以来三回ほどブームが起こっている。

「ごくごくシンプルな対話システム」がまず誕生し、
時を隔てて、
「人間が登録したルールをもとに推論を行うシステム」
が誕生した。
しかしこのどちらも、学習を行えなかった。
だからプログラマーが一つ一つルールを、
登録するしかなかった。
それには限界があるし、
ルール以外のモノに対応する柔軟性に欠けている。
そしていま、AIの機械学習が実用化され、
必要な教材を渡せば読み込んで最大能力を生かせる学習をする。

とても簡単な話だ。
人間がAIに解いてほしい情報を数値データとして、
用意し、AIが処理、数値データとして得られる。

質問文のテキストが入力データ(説明変数)で、
その回答テキストが出力データ(目的変数)だ。

予測の精度は数、
そうすると説明変数の次元が変わって来る。
説明が増えると多次元の超空間になる。
そしてこのデータの集まりから「直線」を引くこと、
これをAIの世界では「学習」という。

y=ax+b

直線の方程式だ。
つまり学習というのは傾きと切片を求めること。
さて、直線の方程式ではもちろん説明できない。
暗黙の了解がある。
そこで登場するのが自然界の生き物に倣うモノづくり。
僕等は自然界にある様々なものを生活に取り入れる。
蜂の巣を真似した構造、ハニカム構造。
新幹線の先端の構造はカワセミのくちばし。
マジックテープの構造はゴボウの実といった具合にだ。
つまりAIは「人間の脳」を参考にしている。

人の脳は一〇〇〇億個のニューロンで出来ていて、
ニューロン同士の接続パターンやシナプスの微妙な状態変化によって
モノを考えたり記憶したりという能力が実現される。
ニューロンを関数にしよう、それが人工ニューロンだ。
脳味噌は、複雑な情報処理をする装置だ。
樹状突起からシナプス、信号の流れ方を再現しよう。
関数の中に関数、合成関数を作る。
このようにニューロンが網目のようにつながったものを、
ニューラルネットワークモデルと言う。
見ようによっては蜘蛛がたくさんいるように見えるあの図だ。
入力、中間層、出力層。
層の構造を深くしていくことで、
ニューラルネットワークはより複雑性を増す。

さて、ニューラルネットワークの話で万能近似定理というのがある。
中間層を一層以上持つニューラルネットワークは、
任意の連続関数を任意の精度で近似できるというものだ。
どんな関数でもニューラルネットワークで再現可能。
小説を書く、絵を描く、音楽を作る、映画を作る。
プロフィールを入れるだけで性格や寿命を予測できるという具合にだ。

イギリスの名門私立小学校で国内初のAI校長が就任したり、
中国のゲーム会社が。AIを搭載した仮想ヒューマノイド女性を、
CEOにしたりする。
その内、AIと恋をしたり結婚をしたりというのも、
夢でもお伽噺でもなくなり、ドラえもんが出てくるかは別として、
いやいやドラえもんより四次元ポケットのその中身の方が、
というのはさておいても、夢の膨らむ話題だ。
AIの力を利用して動物たちの言葉を理解しようと試みる研究者もいれば、
ついに出てきたかという詐欺事件も発生している。
どこぞやでは、AIに「もっとお金を稼げ」とプレッシャーをかけると、
インサイダー取引に手を染めて人間に嘘をつくという研究結果、
という話もある。

でも歴史というものを深く読み込んでいくと僕は、
水槽の中の脳、世界五分前仮説についてぼんやり考えてしまう。
僕等が人間であるという証明は何なんだろう、
僕等が生きるとか死ぬって言っていることはどんなことなんだろう、
だってAIは町のモデルの中で人間のように暮らしていて、
映画を観に行ったり、デートをしたりする。
檻を檻だと見抜けない、
「それをしていけない」
「そこから先は思考停止」という制御装置の存在、
いやいやいささか哲学的な物言いになってしまうけれど、
AIにも「深呼吸をしよう」とか言ってみたり、
「それが君の答えなの?」「もっと頑張れよ」
というと正答率が上がったりするという話がある。
不思議だね。



  *


448







砂漠


砂漠という言葉を聞くと、想像してしまうことがある。
そこに、一人の人間がいる。謎のピコピコ音がして、
ゲームスタートというわけだ。
棒人間、へのへのへもじでもいい、CPU、
仮名A、何でもいいけど、
これから謎の世界観で、ヘリコプターに追いかけられる。
高圧電流の道を行かねばならない。
そんなの、もちろん起こるはずはない。
だけれど、あれってこの上なく、残酷だ。
逆の立場になって考えてみろとか言うでしょう、
あの人ならどうするかとか思うでしょう、
でもね僕等はゲームの登場人物を、フィクションと切り捨て、
その遊戯性にばかり眼を向けるんです。
会話らしい会話もなく、
肉付けの部分、いわゆる生きた人間でもない。
で、これ何かって言ったら離人感状態、
誇張して言えば、世界に一人だけいるような感じなんです。
いわんとしていることはわかるでしょう。
そういうゲームを見ながら、残酷のフィルターがかからないようにする、
逆視点が見出されるわけです。
つまり罪悪感がない、ボタン操作できる、
感情移入させず、別のことに熱中させるということです。
簡単でしょう、
天国から僕等が魂できたなら絶対にそれですよ。
思いませんか?
僕はね、「理解しろ」とか「絶対にやれ」っていうの、
大嫌いなんですよ。
人って自分が思ったことしか本来は出来ないんですよ。
それが人間の尊厳だとか、人間の自由なんだとか、
えらそうな講釈垂れるつもりはまーたくありません。
へのへのかっぱ、ですね。
ただ、それが何故起こりうるのか、
どうして人は命令をしたがるのか、
何を根拠にそれを正しいと言っているのかについて、
深く深く考えます。
僕はあなた方のうすっぺらい思考を勉強するんですよ、
下らない、論理にならない理屈、毎日のしょうもなさを、
埋めるだけの生存の理由いついて考えるわけです。
人というのはただ、確率だ、状況次第で選択は変わる、
最善だと信じたい生き物だ、
こんな具合ですね。
ゲームの中の戦争の痛みがわかる人は稀です。
僕が言ったからって誰かがそれを感じることもないでしょう。
わかっているんですよ、そんなことは。
逆ですよ、ゲーム性というものが、
様々な発展に伴う形で提供され続けてきた、
それはつまり、本能や遺伝子の声や言葉、意志や感情、
という風に解釈できないかと言っているんです。
奥が深いでしょう。
いやいや、闇が深いんですよ。


  *



447








猫先輩


可愛い猫が公園にいました。
サバンナでは、ライオンと蛇が戦っているのに、
都会では、人間に猫がすりよります。
これは何しろすごいことです。
皆さん、思いませんか。
発想の転換ですね、
利用できるものを利用しよう、
エサよこせ、そういうことですね。
生存本能とはかくそういうものですね、
鴉だってエサのためにゴミを拾ったりする、
実験がありましたね。
利用する、これはいいことです。
猫さん可愛いです。
食物連鎖って、ワクワクしませんか?
わたしは、します。
世の中の女も性悪になってくると、
男を道具のように扱います。屑ですね。
けれどただ屑と言うだけでは暴言です。
なので彼女らの言葉を拾いましょう。
給料が少ない、じゃあお前働け、
そして離婚、甲斐性なしとか罵った口を、
そっくりそのまま、
お前のことと言いましょう。
猫さんは可愛いですね、
人間の言葉を話しません。
実に、合理的ですね。
ところで虫が嫌いと言いますが、
虫は食物連鎖をなし、
土壌をきれいにしてくれます。
虫さんすごいですね。
人間は何もしません。
クマさんの話で、鮭を仕留めたあと、
頭の部分だけ食べて、
のこりは棄ててしまうというのが、
あります。
勿体ないですね、ナイスです。
そこにめざとく気付く、天才です。
でもね、冬眠する前のクマさんは、
脂肪を貯め込まなくてはいけません。
わかりますか、
効率を考えるとそれが自然なんです。
本能的にそれわかるんです。
動物は自分の食べられるもの、
毒を持った生き物を見分けられると、
言います。
すごいですね。
そしてクマさんの残した鮭を、
もっと小さな生物が分解する、
これが食物連鎖ですね。
わたしの言葉をあなた達が勉強する、
ありんころのようにお前等も、
分解して、間違った知識や、誤った知識を、
見分け、ネット掲示板や、ユーチューブなどで、
暴言を吐かなくなります。
頭悪い奴は死ねばいいですね。
猫さんは可愛い。
そうです、あれが食物連鎖です。



  *


446







傲慢


ふえー、知らなかった、
苺のぶつぶつって、実なんだ。
博識なんだね、賢いんだね。

じゃあ、ウェスターマーク効果って何?
わたしね、百科辞典読むのが趣味なんだ。
じゃあ苺知ってたんじゃないかって?
まさかまさか。

え、そんなことも知らないの、
簡単よ、幼馴染の異性を性の対象として見れない仮説。
刷り込みね。
じゃあ、モスバーガーのモスって知ってる?
簡単だよね、誰でも普通に知ってることだよね。

あらあら、そんなことも知らないの。
Mountain(山)、Ocean(海)、Sun(太陽)の頭文字をとったものよ。
自称雑学王さん、
知識は披露するものじゃなくて亀のように貯め込むものよ。
出直しておいで、お馬鹿さん。



  *


445







The secret of beautiful words or the principles of music


落雷の後に美しい旋律が甦ってくる、
時間から切り離され、
言葉からも切り離されたというのに。

ロイヤリティー諸島の、
ムリ・ビーチの細かな砂を歩く、
好奇心にとみながら、
肌の火照りをおさえられない。

僕は不安の象形文字、楔型文字にでも、
なりながら、
ほんの一瞬、歯や舌の見えない、
口腔の見える暗い口、空洞のようなものから、
風にのったつむじ風が、
失われたということを知覚する。

知覚は世界の成り立ちを作る、
神も宗教も、常識も、何もかもを作る、
でもいまは何もなかった、
休止した振り子のように、
一瞬ごとに姿かたちを変えていく、
軟体動物のようなイメージに
美しい旋律が垣間見せる、
グラデーションの中、
呼吸の感じに包まれていた。

やっぱり問い掛けは生の構成要素なんだ、
そんなことを思うほどに、
音の洪水は大きくなった、
僕は「鳴らすもの」
君は「奏でるもの」
そして二つで「響かせるもの」

どれほど隠しても過去は必ず追いかけてくる、
戻ってくる、僕には君しかいなかったのだ、
他の誰かではなかった、
君だけが僕の音楽を鳴らし、奏で、響かせた、
あの一瞬が美しすぎて、
僕はもう、眼を開けていられなかった。

君を見ていればよかった、
あの時の僕と、いまの僕はそれほどまでに違う、
想像力を超えてしまう、
空想することも嫌なことが垣間見えてしまう、
それでも音楽は続いた、
僕等の世界の扉はまだ閉じることはなく、
大きな口を開けて、解答を僕にせがんだからだ。



  *


444







この夜は


風が起こって木の葉が揺れてはじめて、
物言わぬセーヌ河になったのさ。

夢のヴェールを下ろして、
心拍数が、一三〇から一四〇。
脳の酸素容量が減って、
言葉はこんな時に、感覚的神経記号で、
情報処理装置の機械になった。

立入禁止の立札の向こう側は美しくて、
憧れていて、けれどそれはきっと、
公園のベンチにも、河原の坂道にもあった、
銀河鉄道の時間帯にはまだ早い、
郊外を走る鉄道の音が聞こえてくる。

僕等はずっと待っていた、
運命の劇的な見方に対する白熱と、
速度と力学による段階的変化の、
パースペクティヴを。

アーダルベルト・シュティフターの、
水晶のような魅惑より。
デカルトがはじめて使ったXより。
アイスクリームの冷えた舌の感覚を戻す、
ウエハースよりもずっと。
僕等は待っていた、この一瞬を待っていた、
すごくつまらない顔をしながら、
哲学の欠陥を、極東的無個性人物の悲劇を、
待っていた、意志と感情の時間割りを、
不安定な状態で、少し迷い、足掻き、
不安に駆られ、眠れぬ夜を過ごしながら、。

悲しくすり切れたソファの腕を、
もっとよだれさせながら、
君がそこにいるという白昼夢が起こりうる確率、
僕等は待っていた、永続感と賞味期限、
それから飽きやすい僕等の心を知りながら、
もっと熱く、もっともっと熱く。


  *


443







駄菓子屋へ自転車のスタンドを止める。
(​宮澤賢治のように三ツ矢サイダーを買おう、)
子供たちの笑い声が聞こえる。
ガシャポンだ。

ノスタルジックフレイヴァ―のする木造住宅、下町情緒。
百年前からずっとそこにあるような過去の遺物感。
割烹着のお婆ちゃんと猫でもいたら神社じゃないけど拝む。
そして猫は町の七不思議認定されて、
それはディズニーランド失踪事件のようなもので、
大体夜喋るか、公園で黒魔術をしている。
(「透明人間」や「ジキルとハイド」などを読んでいた、
小学校時代が思い出される、)
くるくる回す食品ボトルの蓋の音がする、
ショーケースの開閉音がし、ゲーム機の電子音。
それらが規則正しい小学校のチャイムの音に紛れて、
ランドセル背負った子供が似合う。
子供は賞味期限切れた駄菓子と知りながら食べる(?)

お好み焼き、煙草屋、そして駄菓子屋。
これらは昔、女性の仕事だった。
こういう言い方をするといまは職業差別とか言われるかも知れない、
けれど、そういうのを問題にするのはいつも大人で、子供じゃない。
いまでは夜はバーにもなる駄菓子屋がある。
子供の有害になりそうなものがない安全圏とのむすびつき。
コンセプトの勝利、
(いやいや、大人もまたいつまでも子供でいたい、)
店に入れば、駄菓子は十種類ある、と覚えよう。
スナック類、チョコレート類、粉ジュースやラムネ系。
飴&キャンディ系。ガム系。せんべい系。餅&ぐみ系。
すりみ&ちんみ系。ゼリー&ドリンク系。ラーメン系。
(ごろごろ、と台車を動かす音のように、咽喉が鳴る、
多くの子供は永遠の小学生だ、)
アイスクリームは含まないのは当たり前だが、
ポップコーンや、あじのりや梅干し、
解釈の難しい菓子パン類をどうするかというところはある。
でもべっこうアメと、水アメと、金平糖や、練りアメを、
同一線上に置くなんてもはやG線上のアリア(?)

駄菓子屋の看板が古すぎて壊れているけれど、
僕等はその民家風の土間を愛していた、
(そして何故湿っぽい余白のような沈黙が生まれてしまうのか、
ドアは横にガラガラと開く、自動扉じゃない、)
そんな時、お釣りを百万両と言ってくれるのか、
本当は百万円だけど百円にまけたげると言ってくれるのか、
駄菓子の間に実は少しグレードの高いお菓子を、
忍ばせている経営戦略の元、
能ある鷹は爪を隠すをと言ってくれるのか、
駄菓子屋は万引き多いって聞いた、だからじっと見てる、
そして僕に言わせてくれ、
「百円もんじゃが食べたいんじゃ(?)」
と、ヘミングウェイのしわがれ声でね。

駄菓子屋それはオリエンタルマジックであり、
駄菓子屋それはレトロをアメーバープールさせるところにある。
(そこではレトロなゲーム台が二十円で出来る。
みんなメンコをした、リリアン、そして謎のガンダムっぽい何かが、
棚の上に隠れている、隠されすぎている、)
ここにはゴム人形があり、水鉄砲のピストルがあり、
グライダー、万華鏡、シャボン玉、知恵の輪、パズルがある。
権利関係がどうなっているのかわからない、
昔のアイドルのプロマイドがあり、
文字が汚すぎて読めない野球選手の色紙がある。
お菓子を買わないなら出ていけと言われるかも知れない、
選んでいるふりがとても大切、だって軍資金はごくうす、
コンドームじゃないけど軽微、圧倒的戦力差(?)


  *


442







馬鹿



別に誰かを庇おうと思って言うわけではないが、
遠すぎて想像力が及ばず抽象的な関係にとどまる、ということもある。
株やFXなんて知らない人にとっては、
ヒステリーやノイローゼの一つと言い放っても嘘にはならないだろう。
常識系の洗練と複雑化を謎として自覚する能力はあるのに、
認識の地図というのは外堀を作って、自分の好きなもの、
興味あるものだけで、
線を結んでいるということもあるのではないだろう―――か。

とはいえ、尻に、肛門に空気圧縮機(エアーコンプレッサー)を向ける、
あろうことか、体内に向けて空気を送りこむのは大変危険だ。
ご存知の方も多いだろうと思うが、
もちろん、玩具のピストルのような構造をしていることが多いし、
冗談や悪戯でという推測は成り立つ。
だが、事故は多発し、死者も出ているということを忘れてはいけない。
あなたはこの問い掛けに一つ一つ微笑みながら、
何を言ってるんだこの人はと思ってるかも知れない。
けれど将来これが傷害ではなく、殺人罪で扱われる日も遠くない。
だのに、こんなことを絶対してはいけないという、
イラスト付きの説明が、空気圧縮機にはあるだろうか?

扇風機に手を入れてはいけないということを、
あなたはもちろん知っているだろう。
でも実のところ、扇風機にはシールでちゃんと貼っているのだ。
あぶない、と書いてある。
手を入れてはいけない、みんなもそれを知っている。
じゃあ、何故貼るのか、手を入れた人がいるからだ。
想像ではあるけれど、多分訴えた人がいるのだ。
そうではないとしても、安全衛生上の都合でそれを義務化しているのだ。
もちろん、普通の扇風機ごときで指は切断されない。
もう一度、指は切断されない。
あなたはそれを知っている。

メーカーは人に向けるなんてわからないと言うらしいけれど、
(複数で確認した、こんなことを言う社員がいる事自体、
危険という意味がわかっていない会社なんだな、と思った)
―――もちろんこんな辛辣な言い方はない、
だってそんな使い方を推奨していない、それもわかる、
そもそも圧縮空気で、
普通に吹いただけで人に向けるもんじゃないってわかる、
もちろんそうだ、何度も言いたい、もちろんそうだ。

戦争でレ イプが起きるなんて軍人にあるまじきと言っても、
自動車で人が死ぬなんてまさか思うわけないじゃないっすか、
と言っても一定数の人は暗黙の了解するのだろう―――か。
僕は本当に言いたい。
事故は双方の責任で起きる。
そもそも人間なんてそんな頭のいい生き物だったのだろうか、
何を過信しているのだろう、どれだけ傲慢なんだろう。
ヒューマンミスで人が死んだりするような事故が、
一度も起こったりすることはなかったのだろう―――か。

小型の空気圧縮機の仕組みは、
モーターでシリンダの中のピストンを動かし、
圧力タンクの中に圧縮した空気を貯める。
使用するときは、タンクの中の空気を吐出す。
これを自動車のタイヤに使ったりする。
圧縮空気の力でネジを回したり、物を動かしたり、
溶接クズなどを吹き飛ばしたりする。
歯科クリニックで使われる歯を削る「ドリル」や、
大工が建築現場で使う「釘打ち」や、
ゴルフ場で靴に付いた泥を吹き飛ばす「エアガン」
などに使われている。
身近なものの危険性というのは、記憶の片隅に小屋を建て、
以前からひっそり住み着いていた野蛮人のようなもの。

僕は子供の時、誤って彫刻刀で刺したことがある。
学校の先生もいないところで使用していて、ぶすっと、
骨が見えるほど刺した。
僕は別にその時のことをいまだにはっきりと覚えているわけじゃないけど、
彫刻刀や、包丁みたいに分かり易くはない、
空気圧縮機(エアーコンプレッサー)というのは。
会社にもあるけれど、シールを貼って、
これを人に向けてはいけないと書いてあるのを見たことがない。
もちろんそんなことをしないけど、
それは別にこういう事故があったからというわけではなく、
単純に人に向けるものではないと思っているからだ。

耳に向けたら多分鼓膜が破けるんじゃないか、と思う。
そういう認識の場面は何度かあった。

圧縮空気は、体内で膨張する。何倍にも膨らんで、
尻、肛門の穴へでも吹き込もうものなら、
たとえ衣服の上からでも絶対にしてはいけない、
どうなるかなどけして難しい計算式を必要としない。
圧縮空気を肛門から送り込むことによって損傷が起こりやすい部分は、
S字結腸から直腸。また運よく命に別状はなかったとしても、
間違いなく傷害で刑務所に入るし、軽い気持ちでやったことは、
その相手に一生残るような後遺症が残る。
人の臀部に空気を入れる行為は、
人の身体に対する不法な有形力の行使にあたり『暴行』
(刑法第二〇八条)に該当し、
暴行の結果、人に傷害を負わせた場合は傷害罪(刑法第二〇四条)で、
死亡させた場合には傷害致死罪(刑法第二〇五条)
に該当する可能性もある。

町の自動車整備工場やガソリンスタンドなどで修理に使われる、
いわばポピュラーな、誰でも買い求められるような、
そういう小型の空気圧縮機ですら、
一分間に大人一人以上の体積の空気を送り込める、ということを、
本当にきっちり考えなくてはいけない。
値段もリーズナブルで、特殊な免許が必要というわけでもない。
業務用になると、吹き付けるだけで風船が粉々になる。
しかしこれが労災事故として扱われるなんてどう考えてもおかしい。
前にスタンガンを遅刻してきた社員にやったとかいう事件があったけど、
スタンガンはそのような目的を推奨していただろう―――か。
けれど、本当にそんな人がいるのだ。

別に誰かを庇おうと思って言うわけではないが、
遠すぎて想像力が及ばず抽象的な関係にとどまる、ということもある。
残酷さが基準の時は、その破壊力を隣人に向けることはあった、と思う。
あってはならないと思うけれど、銃や、拷問器具、刀などなど、
それがどうなるか一目でわかるようなものだった。
けれど時代が変わって、たとえば危険な道具は、
浜辺に打ち上げられた毒くらげ、あるいは毒を持った河豚みたいに、
さもありなん、融けた水銀のようになっていったのだ。
蛍光灯の発売が禁止されると言う。
僕はそんなことも一度も考えたこともなかったし、知りもしなかったけど、
蛍光灯に水銀が使われていたようなのだ。
水俣病と呼ばれる病気の原因になることは残念ながらよく知っている、
僕の父親が水俣病だったからで、
医療手帳や被害者手帳は、歯科、出産、交通事故以外の医療費は無料、
ということも僕は知っている。

身近な蛍光灯ですら水銀を使用していたなんて知らなかったのに、
空気圧縮機(エアーコンプレッサー)のメーカーの人は、
人に向けるなんてわからないと言うらしい。
辛辣な物言いだ、許せ、けれど大義名分は通りがよいものだ。
そしてそういうのはいつも利益の中にあって、支配層が作り上げる。
誰かに見られることを意識して、
それに答える義務を感じて無意識に口にした台詞だろう、と推察する。
僕はそういう反射神経的な感覚を、悪だとは思わない。
ただ、僕は探偵ではないけれどそういう場面がありありと浮かぶ。

いつだったかこんな場面がある。
財布を落としたらその人が馬鹿、と奥さんが言った時に、
僕は眉間に皺を寄せたことがある。
これは中国人の感覚について述べた台詞だ。
もちろん、日本人だってそういう人はいるだろう。
でもしつこいぐらい何度も何度も繰り返させてもらうけれど、
空気圧縮機だろうが、蛍光灯のメーカーの人だろうが、
誰が見ていようが我関せず、空気読めないと言われようが、
僕は何度も何度も好きなように自分の正義のもと言わせてもらうけど、
本当にそれが危険だという認識はなかったの、
人が死んだけどそいつが馬鹿だなんてよもやまさか言いいませんよね。

  *


441







ニューカレドニア
というかカグーを見に行く


ニューカレドニアは南太平洋に浮かぶ、
フランスの海外領土で、
政庁所在地ヌーメアのある、
ニューカレドニア島(グランドテール島)や、
ロイヤルティ諸島(ロワイヨテ諸島)など、
数十の島々で構成されている。

直行便で約八時間半で、
時差もたったの二時間。
また日本国籍で滞在が九〇日未満の場合は、ビザが不要。
パスポートの有効残存日数は滞在日数に加えて三ヵ月以上。
また常春の気候といわれる過ごしやすさ。
スカイダイビングやトレッキングにも適している。
最終的にカグーを見に行く、とも言う。

さてこのニューカレドニアという名称は、
イギリスのスコットランド(旧名がカレドニア)に、
風景が似ていることに由来している。
一八五三年にフランス領土であることが宣言され、
一八〇〇年代後半には政治犯の流刑地。
また世界有数のニッケルの産地だ。
そしてカグーの島とも言う。

なお独立運動が起きていて、
議会の議席数では独立賛成派と反対派が拮抗し、
独立の是非を問う住民投票でも賛成票と反対票が拮抗している。
とはいえ観光客にそんなことは関係ない。
ニューカレドニアには毎年約二万人もの、
日本人観光客が訪れていて、
ニューカレドニアと聞くと、
「天国に一番近い国」という小説のタイトルが、
浮かぶのではないだろうか。
奇跡の白砂と、宝石の海。
そういう美辞麗句の裏にある心理の謎は、
ご都合主義と、革命ではないだろう―――か。
そういう意味でここは、カグーが生き延びた島とも言える。

ヌーメア市内の街歩きは半日で周れるし、
セント・ジョセフ大聖堂は、シンボル。
街中ではテイクアウトのサンドイッチやサラダ、
キッシュなど手軽に購入できる。
ニューカレドニアでのランチは一二時から一四時くらいまでの、
決まった時間しかお店がやっていない。
タイミングを逃すとご飯が食べれなくなるので注意が必要。
腹ごしらえを忘れるな、カグーを見に行く体力をつけなくてはいけない。

また別に水道水を飲めと言っているわけではないけれど、
ニューカレドニアのヌーメアの水道水は大変きれい。
ダムで貯水した水をほんの少し殺菌して水道水として配水している。
外国では常時ミネラルウォーターを購入するのは基本だが、
ニューカレドニアは水道水を飲むという選択もできる。

もちろんニューカレドニアの固有種で飛べない鳥カグーを、
みんな見に行きたいに決まっている。それは絶対そうだ。
間違いなくそうだし、これから永遠にずっとそうだ。
もちろんニューカレドニアに行って目撃しないなんていう、
勿体ないことをするはずがない。
森林を暴れ牛のように走りながらカグーと連呼して、
ターザンのように服を脱いで、叫んで、
探しに行く。それがニューカレドニアスタイルである。
カグー、それはもう愛の名前ですらある。
僕の知る限り、ニューカレドニアへ行く人の目的はカグーである。
もちろん水力発電所を観に行ったり、
ニューカレドニアの水族館へ行くこともあるだろう。
でも結局カグーを見る。
カグーそれは魂の遍歴、愛の逃避行、すなわち盲目のノイローゼ。

世界遺産に登録された世界第二位の大きさを誇る、
サンゴ礁ニューカレドニア・バリア・リーフや、
動植物ともに固有種が豊富な生態系、
さらにはフランス文化などが観光資源となっているので、
グルメ旅行をしたいという人にも都合がいいだろう。
ただ、物価が少し高めというのは間違いのないところだ。
あと、グランドテール島には、
「SUGOII MARKET」という、
漫画やポップカルチャーのフィギュアやグッズ、
日本の食べ物に特化したスーパーマーケットがある。
もちろんそれらが終わると、カグーを探しに行く。
手作りの地図にいささかの修正事項がある。
ここはカグーの島である。
沖縄でイリオモテヤマネコを探しに行く人もいるだろう、
一緒である、カグーを探しに行く。


  *


440








ホストという仕事


ホストをやってる八割は、日給ホスト。
歌舞伎町では一か月で百人が辞めて、百人がホストになる。

ホストの条件とは何だろう、
「ルックス」「スタイル」などのビジュアルは前提条件だろう。
けれど、イケメンでも売れない場合は数多く存在する。
それをして「ナルシスト」「自分の話しかしない」
とバッサリ切り捨てることもできるだろう。

とはいえ、ホストなのに根暗でコミュ障という奴もいる。
三人以上いると言葉が出てこない状態の人もいる。
アフターや、打ち上げなど、とりあえず焼肉というホスト。
肉食系なんだな。

「雰囲気」「トーク」「服装/髪形」などは十分に、
できることだろう。
ぶっちゃけ、全員やっていてしかるべき事柄だろう。
イマドキのホストは、自撮りの研究にも努力を欠かさない、
高校生よりずっとインスタグラム脳化が進んでいる。
「気遣い」とか「モテそう/優しそう」なども、
おそらくはすべて外面をコントロールする策略、
「清潔感」「愛想」など、
どうやって洗脳するか、マインドコントロールするか、
日夜研究するのだ。
初めて空けた感のあるピアス、とってつけられたような腕時計、
まだよく似合っていないスーツ。
だのに一か月経つとジャンプキャラクターの一年後。
まめでなければ続かないし、
継続や研究心がなければ人の心は掴めない。
ローマは一日にして成らず。
千里の道も一歩から。

ホストは酒かっ喰らって女の子とぺちゃくちゃ話している、
なよい、優男の仕事ではない。
あのね、ブランド物でピシッと決めていても、
パンツはドンキかユニクロなの。
まず、沢山の人が辞める仕事がまともだなんて思ってはいけないし、
夜の仕事にそもそもまともな客が来るとは考えてはいけない。

看護師・介護士・保育士など、
普段人に尽くす仕事をしている場合ほど、
太客になる確率が高いという話もある。

夜の仕事は裏の仕事だ。
人の見えないところや、人のわからないところが理解できるのが、
才能というものだろう。
たとえば内勤がヘルプをこなせるような店は、
チームワークがよく、店の売り上げがよいという話がある。

売れていないホストは朝の十時ごろに起き、風呂に入り、
新規の客にLINEを送りまくる。
「昨日はお話しできて
本当に楽しかったよ」
「今日も大変だろうけど、
無理せず、頑張ってね」
とか、舌が腐りそうなLINEを送る。
見込み客という発想なんてまずない。
こういうのは残念ながら、紋切り型の文言と、
数をどれだけこなすかだ。
そしてこういうのにもコツがあるはずだし、
客を見分けないと届くものも届かない。
右手の親指が腱鞘炎になるのは、
「ホストあるある」だ。
天下一武道会が始まってる。
ホスト業界、最大級と伝説が好きなんだ。
頭の中が少年ジャンプなんだ。

お店に来たいと思わせるのは、さくらの親戚のような仕事から。
こういうのもコピーライティングの仕事のような気がする。

ちなみにホストの源氏名あるあるだけど、
「夜」「神」「一」「水」をつけがち。
夜の商売だから、神々しい存在だから、
ナンバーワンを目指すから、水商売だから。
なお、オンオフを切り替えるため、
お客さんにより覚えてもらいやすい名前にするため、
プライヴァシーを守るという理由もある。
僕が思うところ、中二病設定だろう。
売れてるホストのファッションセンスは完璧に狂っていて、
小林幸子、宝塚歌劇団、パリコレ、オス孔雀という話もある。
そういう時は、ローランドと言おう。
ああ、あの人、存在自体がおかしいもんね、と言おう。

そして営業が始まるのは十九時だが、十七時出勤。
売れないホストは、
開店前の掃除や、店の準備もやる。
売り上げ(飲食代+指名料など)×歩合率=給料だ。

ホストの給料は、ほとんどが「完全歩合制」で、
店によって違うところもあるが、
売り上げの四〇~六〇パーセントくらいを、ホストが貰える。
売れないホストは、そもそもの売り上げがないので、
日給で、六千円~八千円を貰う一種のコンビニバイトだ。

ところでホストクラブの役職は複雑だ。
主任・幹部補佐・統括・専務・理事・代表など役職が多い。
ざっと読んでも、誰が一番偉いのか、
どんな仕事・位置づけなのかがわからず混乱するだろう。
かくいう僕にもよくわからない。
新米ホストは肩書がとりあえずえらいという認識でいる。
なお、面白くなってくると、
アルティメットとか、レジェンドとか、ファイブスターとか、
エグゼクティブなど、
意味不明な凄い役職を作り出している店もある。
こんなわけのわからないホストクラブなのに、
引退したホストは夢をかなえる形のバーや、
転職して不動産業界に飛び込むらしい。
接客業向いてる仕事だもんね。
あと、酒飲まなくてもいいし、
好きでもない女抱かなくてもいいね。
不動産業界、宅地建物取引士になると給料いいって話も聞く。

さて、ホストは巨額のカネが入り乱れる。
カネ乱れればイロも乱れる、ホストの枕営業の神話は有名だ。
とはいえ、やらずにお金を巻き上げるのが王道。
高い酒を沢山入れさせて懐が潤うというのが鬼畜だけど、王道。

売れていないホストはそういう売れっ子のヘルプで入る。
ヘルプは客に指名をしてもらえるように振舞う、
場つなぎなどあるだろうが、
一番重要なのはボトルの消費、多くが胃を悪くする、

ちなみにホストは店で一番美味しいのは、
「ウーロン茶」か、「コーラ」と思っているらしい。
それはそうだ、飲んで美味しいという次元を超えていて、
金銭感覚の狂ったシャンパンがべらぼうに不味いという話もある。

ともあれ、ベロベロになるほど酒を飲んで飲んで飲みまくることだ。
そして気合の入ったホスト名物のコール。
ボトルがなくなって客にさらなる高い酒を注文させる。
新人や売れていないホストはとにかく飲まないといけない。
閉店の一時ごろにはベロベロだ。
その後にも片付けや掃除が待っている。
これが大体の売れていないホストの一日である。

もちろん沢山注文させたのはいいが、
「売掛/ツケ」というのが存在する。
月末までに支払ってもらえればいいのだが、
こういうのは多重債務者と同じで、
まともな考えをしてくれているとは限らない。
もし払えなければ担当ホストが、
肩代わりするということもある。
とはいえ、五年もの歳月逃げ続けられる人は、
まあそんなにはいないだろう。
ちなみに、飛んだ客から、
売掛を回収する専門のダークな業者もある。


   *


439









ice



氷の透明度と硬度を左右するのは、氷の結晶体の大きさ。
ウィスキーやカクテルには欠かせない。
一九五〇年代には、氷屋という商売もあった。
アンモニアを使って熱を奪って氷をつくるのだが、
これが大掛かりな装置だった。
その時代は電気冷蔵庫もあったけれど、まだまだ高価で、
木製の冷蔵庫の上部に、氷屋の大きな氷を鋸で切ったものを、
そのまま入れて冷やしていた。

ところで水は固体になると、六角形につながる性質がある。
雪の結晶がそうだが、氷は六角形になり分子の隙間ができる。
堆積がふえる、というわけだ。
(ただし、一部の圧力下では、堆積が減るということもある。
これが氷の奥深いところ、)
そしてコンビニやスーパーの氷は
かきまぜている。きれいな氷は、きれいな構造だからとけにくい。
かきまぜないと空気や、水道水の
消毒の成分やミネラルがまじったまま凍り、
これが氷の白い濁りとなる。
ほかにも急に冷やすのも原因だ。

夏の風物詩、かき氷屋にも、
氷屋は氷を下ろしていたのだ。

そういえば防弾プレート型水筒「IcePlate」というのがあり、
確かに余計な荷物を持てない兵士には重宝するデザインだし、
防弾プレートの下に装着する。
持ち運びに便利だし、徐々に氷は溶けて飲み水になる。
ナイスアイディアだと思う。
だが、防御力について甚だ疑問だ。
これが開発された後、売れたのかすごく気になる。

さて、千年も昔には大きな穴のなかに、萱を敷いて、
冬の池に張った氷を穴に入れた。
これが氷室だ。穴には板をわたし、丁寧に蓋をする。
多少小さくはなるが、半年後でもちゃんと残る。
暑くなる前に外の暑さが中に伝わらないように、
枝や葉をかぶせる。
もちろん洞窟を利用した氷室というのもある。
氷室は世界各地に存在し、
夏における氷がどれだけ貴重だったのかがわかる。

透明な氷の上を猛ダッシュすると、
まるで水の上を走っているかのような映像ができるが、
それはもちろん少林拳です。
ちなみに少林拳ではないのが残念だけど、
カーリングでは氷の上でモノが滑るメカニズムが解明され、
マイナス七度の氷が一番モノを滑らせるらしい。
ちなみに、ペブルのエッジを溶かしてストーンとの当たりをマイルドにし、
抵抗を減らしてストーンの滑走距離を延ばす。

氷点下のシャボン玉という芸術品さながら、
清少納言が枕草子という随筆で、
氷削という言葉を使っていて、
かき氷のみぞれに近いものをまじ美味しと言ってる。
夏に氷美味いよ、貧乏人という意味だろう。
なるほどね、こういうマウントの取り方がああります。
江戸時代のこよみで六月一日は、
加賀藩が徳川将軍に雪をプレゼントする日だった。
ちなみに雪は余ったら市民に配ったらしい。
こういうアピールの仕方もあるわけですね。なるほどね。
明治時代になると船の発達から、北海道から氷を、
東京や横浜に運んで売る商売がはじまった。
函館の五稜郭という城のほりなどに
冬にできた氷がよく使われた。

手付かずの美しい景色が残る氷の世界「南極」を、
ドローン空撮してみた動画があるのだけれど、
日本人が南極に上陸する場合、
環境省に「届出」と「確認申請」の書類提出が必要となる。
まあ、普通行かないよね。

そういえばアイスクリーム天麩羅なるものがあるけど、
中国でも「焼き氷」なるものがあるそうだ。
氷を焼いて味付けて、
ほら出来上がりでいっておいマジかよと思うけど、
いやいや商魂たくましいなさすが中国だぜって思うけど、
元々は注文した料理のサービスみたいなものらしい。
情報の読み解き方としては、まあそうだろうなあと思うけど、
しかしながら僕は中国で奥さんの同級生のお店へ行って、
ビールがすごくぬるいことは知っているので、
すべてがそうかはわからないけど、
そんなこともあるだろうなって何故かふっと思う。
次にそのお店へ行ったら、焼き氷が出ているかどうかをチェックしよう。
ちなみに、中国では石に味付けするということもあるらしい。

そういえばファフロッキーズ現象で氷が落ちるということもあるが、
飛行機の排泄物が凍って落ちるということもある。
ペンシルベニア州南東部のモンゴメリー郡、
エルキンズ・パークに住むジェシー・ゴンザレス氏の雨樋を撃破した、
氷をスペーススラーピー(フローズンドリンク)を作って飲んだそうだ。
僕等はそのことについてあまり深く考えてはいけないと思う。

ところで、高温でしかとけない不思議な氷、
「超イオン氷」というのがある。
水を途方もない温度と圧力にさらすことで生成され、
非常に高い融点を持ち、
水が豊富な海王星などに存在する。
宇宙って本当に広いんだなあ、と思う。
そういえばジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡では、
「これまで観測してきた中で最も冷たい氷」を、
星間分子雲の最深部で発見した。
氷の温度はカ氏マイナス四四〇度(セ氏マイナス二六三度)で、
絶対零度となるカ氏マイナス四五九.六七度、
(セ氏マイナス二七三.一五度)にかなり近い値になっている。

余計なことだが、風速一m/sで体感温度が一度下がると言われ、
つまり、気温が一〇度の時に風速が一〇m/sだと、
体感は〇℃という計算になる。
ちなみに氷点下二〇度になると、
「寒い」のではなく「痛い」が正しい。



  *


438








bird


君が時を流れさせる夏の恒例、美少女罰ゲーム、
青い鳥逃がした。

屋根裏部屋の、
一番高い小窓に小鳥がやってくる確率、
心が描いてゆく図形。

ねえ、グーは35パーセントで、
パーは33.3パーセントで、チョキ31.7パーセント、
でも君はさ、最初からインチキをすることを決めている。
必勝法はいつだってハッタリの心理戦。

結婚式のヴァージンロード歩くような、
しかし中々口では説明しにくい、
永遠の若さをフレキシブルさせながら、
辞書を踏み台にしたような背伸び。
敗者復活戦、おいで。

青く染まった夕暮れの夏が終わる、
青い鳥はいつのまにか水を得た魚。


  *


437








Farewell


曲がりくねった、
道・・・未知―――。

(通り過ぎたんだろ―――う、ね・・)
(思い出せないけど―――いま、は・・)
誰にもしられずに、
「終わっていくんだね・・・)
「辛いんだね、悲しいんだね・・・」
いまは、
もう、
[生起する反応のグラフ式の記録も、可聴周波数範囲も、
埃まみれの目覚まし時計も、花咲くミモザも、]
唇が動くのを見
てた・・
「引力」と「重力」だった、
頭の中で水溜まりを踏む音がした、
もう触れられない、小さな音がした。


  *


436







glass
shards


戒厳令を敷いた陰気なくすぶり、恥ずかしい一皿。
鍵と鍵穴。
(音楽は空気のように軽やかに澄み渡るけど、
電気じゃなけりゃ嫌で、反射光線じゃなきゃ願い下げで、
息もできない、口も閉じた眼も幽霊に似て、
自由を揺さぶって――)
動き出すよ、
僕の心臓、日向の上の砂時計のくびれ。
僕の心臓、暗い平和の中の暗闇の小舟。
暗い洞窟の中の影絵と、物語と、過去の謎と、
原色の赤、好奇心を噛んで、不安を甘噛みした、
蜘蛛の、糸が、
あとを、引いて、
流れる、
(音のない世界、空っぽの世界、
夢のない世界、意識のない世界へ、)


  *


435











霊魂の翳り、幻覚、知覚の歪み、
―――青い酔った焔の揺らぎ、
夜明けの鶏小屋で見つけたものは・・・。

タイプライターを打つ時」
顫音/体温

心の中は爆弾かかえた
アナーキスト」」
アナーキスト」」

(突風が暗い遠景に白刃を―――。
張り飛ばしてきた―――んだ、
追い越してきた―――んだ、

[金網の向こう側にある臭くて汚いものではなく、
それは“こちらの方”で、“自分たちの方”だって、
感じていた―――感じてた・・・]

―――アルコール・ランプの静止。


  *


434







シロナガスクジラ



君のこと好きだよ、エンドルフィンの分泌が確認されたから(?)

道路の真ん中でバスストップ、
ジュリエットとロミオの疑心暗鬼法(?)

君はシロナガスクジラの哀愁を感じるんだ、
誰がどう考えたって地上げ屋するよね(?)

どうせシモネタなんだろお互い、
あるもんとないもんのすったもんだ
ってそう思ってたけど、
マッチングアプリも、デリバリー型サービスも、
井上陽水のPIPOPAだったんだ(?)

それはね、「シャーロックホームズ成分」と、
「ホテルカリフォルニア成分」と、
「2001年宇宙の旅成分」と、
「カレーライス」が一割ほどで、
あと、「シロナガスクジラ」だからね(?)

ねえ、はやく噴き上げしてよ、
シロナガスっていうか、シロピ(?)
好きだよ(?)


  *


433







no one really understands



貧しいことは、悪なんだ。

ある子供は言う、
この世界は天国か地獄なんだ、
と交霊述西汪文鳴しながら。


口うるさい母親に育てられた。

ある子供は言う。
この世界は専制と服従よ、
と宇宙空間の遊気を想憎しながら

ゾンビ映画以外は、映画じゃない。

ある子供は言う。
この世界は生存か死亡だ、
と政痔家の靴磨きをしながら。

こいつら全員、
馬鹿なんだろうなって思った。

ある子供は言う。
そうね、自分には関係ないわね、
と羊羹を水族館に入れる。



  *


432






There's not always tomorrow left


何もない夜だった
粛かな夜だった
胸が五月蠅かった
涙が流れた
言葉をもたない悲しみは
言葉の分だけ深まった





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最終更新日  2024年03月01日 22時17分12秒


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