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子供の頃、僕には秘密があった。夕方、お腹がすいてくると、そのミッションは始まる。こそこそと玄関の扉を開け、音を立てないように自転車のスタンドを手でゆっくり上げる。そして家族に見つからないように、こっそりと自転車に乗って出かけるのだ。夕焼けの土堤の上をびゅんびゅん飛ばす。遠くに大きなガスタンクが2つ並んでいる。15分ほどだが全速力で走ると、目的地が見えてくる。僕は自転車のままとある工場の敷地内へ潜入する。めざすは休憩所にある自動販売機コーナー。なにを隠そうその秘密とは、当時めづらしかったハンバーガーの自動販売機の在処を僕だけが知っていたということだった。全力でこいできたのと興奮とで息を切らし、ポケットから百円玉を2枚とり出す。お金を入れ、ボタンを押すとタイマーが周り出す仕組みになっている。暖たまるのをまつ間、工場の人がいつ来ても逃げられるように、自転車の位置を横目で確認する。ドットン。鈍い音とともに出てきたハンバーガーを盗むようにとると、僕はダッシュで自転車にまたがり、勢いよくこぎだす。工場からすこし離れた人気のない公園のベンチに座って、僕は今日も食べ始める。夕闇が降り始めた空に一番星が力強く光っている。親にも弟にも、もちろん友達にも内緒。まだ半分明るい夜空の下、ひとりだけでほおばるグーテンバーガーは、開放感に満ちていて、しかしちょっとせつない味がした。今では、もうお目にかかれないその自動販売機。嗚呼、グーテンバーガーよ。その味を知っていること自体が財産なのか。
November 18, 2005
小さい頃はよく水たまりなんてものを覗いたものだ。あの頃はまだアスファルトの道も少なくて、雨上がりには大抵大きな水たまりがいくつも出来ていた。何を覗いていたんだっけ?・・黄色い雨合羽の小さな俺が居る。しゃがみ込んで、覗いてる。アメンボ。スゥーイ、スゥーイ。泳いだ後にわっかが出来る。スゥーイ、スゥーイ。泳ぐたびに、水面に映った空の青と白がふにゃふにゃとゆがむ。両手のひらを力いっぱいパーにして、そっと水面に付けてみる。冷たい。こんどはおもいっきりバシャバシャやる。アメンボはぴょんぴょん跳ねて嫌がった。あれ?アメンボって水たまりが無くなったら何処にいくんだろう?手を見ると、泥だの小さな細い枝が付いていたので膝で払う。膝も汚れた。風は、さっきまで夕立を降らせていた黒い塊を遠くの空へ運んでいく。また次の街で悪さをするのだ。あ、アメンボも? もしかしたら夕立のあとを追っかけていくのかな。見ると背中を細く割り、パタパタと飛んでいった。
November 11, 2005
ぶらぶらと、夜中の歩道を駅から歩いてきた。向こうの方で、白いものが揺れているのが見える。近づくにつれ、それが大きな花の群集であることがわかった。アサガオをそのまま大きくしたような、両手の平ぐらいの白い花。エンゼルトランペットだよ。歩きながら妻が教えてくれた。天使のラッパなるほど、天使が人間の子供ぐらいだとしたら、ちょうどラッパの大きさだ。すこし離れて振り返って見ると、夜の道にラッパだけが浮かんでみえた。ゆらゆら、ゆらゆら。天使たちがラッパを吹きながら遊んでいるのかもしれない。ああ、そうか。だからこんな夜中にも咲いているんだな。大人になった子供達のために。なんとなく少しニヤケて、向き直り前を見ると、足下からはいつもの歩道が夜の闇へと延びていた。
November 8, 2005
とりあえず登録してみました。忙しくて更新できない日もあると思いますが、寂しいことにならないように頑張っていきます。美味しいバームクーヘン情報は常に募集中です。
November 1, 2005
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