2010/09/09
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『CRONOUS』~眠らない大陸の物語~


悲魔と焔は座り込んで動かないジャルデウの脇に駆け寄った
とうぜん聞きたい事は山ほどあったが…そんな状態じゃない事もわかっていた

「俺は…こんな結末のために待ってたんじゃない…」

ジャルデウはそうつぶやいて地面を叩いた

「もしかして…さっきのマギックの体って…」

悲魔がそう聞くと

「さっき獲ったあいつの右腕にタトゥーが入ってた…アレはうちのギルドのマークや」



「タダっちは盾んなっとるし…シーバは体を奪われとる…俺があいつにやったハッシュアックスをアレが持ってるって事はあいつも…」

細かい事情を知らない焔もジャルデウの言葉を聞いて全てを察した

「あ、相変わらず甘いな…ジャル…デウ」

その時、反逆者がそうつぶやいた

「その声は…レベ!お前…レベリオンなんか?」

ジャルデウは血相を変えて前のめりに崩れた反逆者の肩を掴んだ

「ジャルデウ…お前には魂を利用されているシーバとタダの気持ちがわからないのか?」

「ま、まさか…お前…そんな…だったらなんで最初にそう言わんかった!」

ジャルデウは反逆者を背後から両肩を掴み抱き起こす

「す、スマンな…ジャル」

「スマンってなんや!なんの冗談だよこんなの…ふざけんな!」



レベリオンはジャルデウにもたれかかるように体を預けると途切れ途切れにそう話した

「しばらくして…また近くにシーバとタダの気配を感じるようになった…おそらく2人とも俺と同じように魂を…」

「もうええって…それ以上しゃべるな!」

ジャルデウはそう言ってレベリオンを抱きしめた

「ジャル…この反逆者の体がもう持たない事はわかってるんだ…だが、それでいい…幸いそこに死神もいるようだしな…お前が連れてきてくれたのか?」



ジャルデウは必死に叫ぶ

「この体は偽りの体…このままこの体が朽ちれば俺はまたあいつに利用される…ジャル…頼む俺を楽にさせてくれ…」

レベリオンはか細い声でそう言った
ジャルデウはレベリオンを抱いたままその場で何度もヒールを唱える
しかしレベリオンにはまったく効果がなかった

「そこの…死神…もうすぐこの体と魂が切り離れてしまう…頼む…俺をあいつから…開放してくれ…」

「わかった…お前の魂は俺が開放してやるから安心しろ」

レベリオンの悲痛な言葉を聞いた焔は正面に回りこんでしゃがむとそう答えた

「ちょっと待てよ焔!お前…なに勝手なこと言ってんだよ!」

「ジャルちゃんわかってやれよ…こいつは苦しいんだよ…」

「わかるわけ無いだろ!俺はずっと独りで旗を守ってきたんだ…ずっと待ってたんだよ…戻ってくるのを!…開放とか…楽にするとか…そんなの…理解…できるかよ…」

「ジャルデウ…俺はこれでやっと自由になる…だから…許してくれ…待っててくれて…ありがとうな…独りきりにして…すまなかったな…」

「どいつも…こいつも…ちくしょう!」

「ジャル…シーバと…タダの事…頼む…助けてやってくれ」

「勝手なこと言うなよ!…なに人にそんな事頼んでるんよ俺が助けるって言えよ!」

悲魔は叫ぶジャルデウの傍らにしゃがむと肩を抱き寄せたそして焔を見て頷く
焔も黙ったまま頷いて返事をすると反逆者の胸に手を当てるそして何かを掴み出すように身体から輝く光の玉を抜き出した
魂を抜かれた反逆者は身に着けていた漆黒の鎧だけを残して朽ち果てていった
そして焔は近くに落ちていた紅蓮のハッシュアックスを拾い上げると目を閉じてそのハッシュアックスに抜き出した光の玉を埋め込んでいく
ハッシュアックスの紅みがいちだんと強くなり、一瞬まばゆく輝きを放つと刀身から真紅の炎を噴き出した
焔はそのハッシュアックスを鎧を抱いたままうずくまるジャルデウの前に突き立てる

「俺に出来るのはここまでだ…これをどうするかは…ジャルちゃんが決めてくれ…」

「レベ…最後までカッコつけやがって…マヂでムカつくよ…」

ジャルデウは焔からハッシュアックスを受けとるとそうつぶやいた
そして3人はユニオンホールを後にした

3人がクロノス城のゲートに戻った時…そこに藁人形が走ってきた

「良かった…無事だったのか?」

「当たり前や…俺を誰だと思ってるんw…ほれ取り返してきてやったわ」

ジャルデウは藁人形を心配させまいと笑いながら自慢げにハッシュアックスを振りかざした

「ぬぉ!危ないって…火の粉が…アチッ…アチッ!」

藁人形は飛び散った火の粉を足で踏んでもみ消した
悲魔は藁人形の肩を叩くと耳打ちをした
藁人形は数回頷いて返事をした
その後4人はSSDのアジトに戻り悲魔がドアに手をかけたところで

「ジャルさん…もう少しだけ待ってくれないかな…もう少しだけ…」

ジャルデウの方を見る事なくそうつぶやいた

「わかってるって…もう無茶はせんよ…悪かったね」

ジャルデウはそう言って悲魔の肩を叩く

「ありがとう…」

悲魔はそう言うとアジトのドアを開いた


『マルス=オーラ』

「あ、アイナさん…ちょっと休みましょう…」

「うーん…私はまだ大丈夫だけど…」

「い、いえ…僕がしんどいです…」

ハイネは息を切らしながら苦笑いを浮かべた
アイナはうなずいて近場の岩によじ登った

「それにしてもすご過ぎですよ…装備が変わったらほとんどダメージ受けてる様子はないし…僕の存在意義が」

ハイネは苦笑いでそう言った
ハイネの言う通り…アイナは装備が変わったとたんほぼ全ての攻撃を避けていたのとそれに加えてのハイペースな狩りでハイネは走り回ってるだけで時々のヒールだけで事足りるようになっていた

「うん♪…この装備になってからすごく楽なんだよね…やっぱり装備って大事なんだね」

アイナはそう答えながら水出しで作ったアイスコーヒーをコップに注いでハイネに渡した

「あら?かわいい服を着たお嬢さんが暴れてると思ったら…この前の…」

アイナとハイネが休憩しているところにそんな声がかかる

「あ!…柊さんだ♪…この前はお世話になりました」

アイナは岩場の上で声をかけてきた柊にお辞儀をした
ハイネもとりあえずお辞儀をする

「探し物は見つかったんですか?」

「うん♪おかげさまで…ほらw」

柊はそう言って光り輝くバゥルをアイナに見せた

「わぁ…アルさんといっしょだぁ♪」

アイナは嬉しそうにしている柊に微笑んだ

「今はココで狩りをしてるの?」

「うん」

「そっかぁ…パラさんもいらっしゃるのね…私も一緒させてもらえます?」

「いい?」

アイナは柊が合流する事をハイネに確認した
ハイネはうなずいて同意したが…正直なところは今のアイナだけでもハイペースなのにそこにもう1人加わるとどうなるかがわかっていたのでため息をついた

「えっと…なにさんとお呼びすればいいのかしら?」

ボーっとしているハイネの顔を覗き込んで柊が質問した
あまりに柊の顔が近くに来たのと…リップをつけてほんのり色気が漂う雰囲気に驚いて岩場から転げ落ちた

「わ…大丈夫?」

アイナが落ちたハイネにそう聞くと

「は、ハイネです!よろしくお願いします!」

大声でそんな回答をしたハイネを見てアイナと柊はクスクスと笑った
それから3人でマルスを走り回った
結果はハイネの予想通り大マラソン大会となり…終わる頃にはハイネはフラフラになっていた
その後…手に入れた戦利品を分け合って柊が先にマルスを後にしようとした時に

「あ、あの…よ、よろしければチャットに登録させて頂いてもよろしいでしょうか?」

ハイネは手をぴったりと足につけ直立の状態で柊に聞いた

「私もぉ~♪」

アイナもそれを聞いて手を上げて柊に駆け寄った

「こちらこそよろしくお願いします♪」

柊は微笑んでそう答えた
柊と別れたアイナ達もひと息ついてからマルスを後にしてアジトに帰還した


『SSD アジト』

アイナとハイネが戻った時には出かけていた全員戻っていた

「ハイネ…どうだった?」

悲魔が戻ってきたハイネにそう聞く

「え?…えっと…スイマセン…ボーっとしてました…」

悲魔の質問からしばらく間を空けてからハイネがそう聞き返した
ハイネの様子を見て悲魔と藁人形が顔を見合わせて首をかしげる

「と、とりあえず…問題は…なさそうだね…」

また自分のチャットを見て意識が遠のいているハイネを見て悲魔は苦笑いを浮かべる

「それから…焔が戻ってきたんでちょっと俺達はあいつのアジトに行って来る…ちょっと重要な話なんでしばらくは緊急事態以外の連絡は避けてくれ」

藁人形がその場に居た全員にそう言うと悲魔はアルテミスを呼び寄せて3人でアジトを出て行った

「なんかあったんすかねぇ?」

アジトを出て行った悲魔たちを見たグロがそうつぶやいた

「まぁ…色々あるんだろうよ…それにしても旦那が帰ってきてくれてホッとしたぜ…なぁハイネ」

音速丸は腕組みをしてそう言った
しかしハイネからの返事は無かった…
音速丸がハイネの方を見るとじーっとチャットを見つめていた
グロと音速丸は顔を見合わせるとハイネの背後に回りこんだ

「おおおお!誰だよこの柊ってのは!」

「彼女か?おい!やるなコノヤロウ!」

「ひいらぎ…?」

グロと音速丸がそう叫び声をあげてハイネが背後にいる2人の存在に気がつく
柊という言葉にアイナと凛と一緒に狼をかまっていた白狐が反応した

「な、なんなんですか!…違いますよ!そんなんじゃないですって」

ハイネは慌ててチャットを閉じて懐にしまう

「怪しいなぁ…かわいいのか?おい!何とか言えよ」

「ち、違いますって!」

「その慌て方は違わないな…俺の集合菅がそう言ってる!」

「グロ…それを言うなら直感だろ…」

「うっせぇな…直菅でも集合菅でも機能は一緒なんだよ!」

それを聞いたエースはため息をつく

「あのぉ…その柊さんて人は…どんな人です?」

「えっとねぇ…サラサラな金色の髪で…すごく強くてステキな人だよ」

「おおお…ブロンド!いいねぇ!」

「紹介しろよ!」

音速丸とグロの猛攻を受けるハイネの代わりにアイナがそう答えた

「アイナさんも知ってるですか?」

白狐がアイナにそう質問する
アイナはうなずいて答えた

「尋問だ!連行しろ!」

「イエッサー!」

「やめてくださいって!」

音速丸とグロはハイネを取り押さえて寝室に引きずっていった
アイナは助けを求めながら暴れるハイネを苦笑いで見送った
そして…ふと辺りを見回して

「そういえば…トムチャさんは?」

トムチャが居ない事に気がついたアイナがそうつぶやく

「うふ…大人の事情よ♪」

そんなアイナに凛が微笑んでそう答えた

「アイナさん…柊さんについて教えてください!」

いつもとは違う白狐の真剣なまなざしにアイナは首をかしげた


『テラ 倉庫前』

倉庫の前を片つけていたバンとシャララのところにシュウがやってきた

「シュウ様…」

シャララはシュウを見てそうつぶやいて顔を曇らした

「シャララ…時が満ちた…行くぞ」

シュウはそれだけ言ってシャララに背を向ける
シャララは目をとじてゆっくり…そして大きく息を吸うと
バンに深く頭を下げる
バンは無言で何度か小さくうなずく
シュウはチラッとシャララの方を見て歩き出した
シャララはもう一度バンに頭を下げてシュウの後を追った



…『To Be Continued♪』





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Last updated  2010/09/09 06:44:58 AM
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