2011/08/13
XML
『Fantasy Earth Zero』~メルファリア大陸の物語~



『ゲブランド帝国・首都ルーンワール 平民街』

「ここも相変わらず…か………まだまだだな…」

ラフなタンクトップ姿で歩くライルがそうつぶやくように言う

「いえ…ライル様はよくやられてます…」

そう答えるケイに対してライルは鼻で笑う
そしていち早くライルを見つけた子供たちが満面の笑みを浮かべて駆け寄ってくる

「ライル様…お話聞かせて♪」



子供たちは落ち着き無くライルの周りを飛び跳ねる
ライルはため息をつくと石垣に座りケイに目で合図をした
ケイはうなずくと子供たちを座らせてアメを配った
それを確認したライルはエスセティア大陸の話を始める
子供たちは瞳を輝かせてライルの話に耳を傾けた
オークやリザード…グリフォンなどライルは子供たちが見る事はないモンスターの話を聞かせた
こんなご時世だというのにライルは一度たりとも戦争の話はした事がなかった
以前に…ケイがその事を質問すると

「あいつらにはまだ早い…それにな俺が俺の目線で見てる争いの話を聞かせたらあいつらが俺と同じ目線で物を見るようになっちまうだろ?…王としてそれだけはやっちゃいけない…」

ライルはそう答えた…その時ケイはライルの背中しか見ていなかったので
ライルがどんな表情でその言葉を口にしたのかわからなかった…

ケイはそんな事を思い出してしまい子供たちに話を聞かせているライルを見てクスッと微笑んだ

「てめぇ!なに笑ってんだ!次はお前が話を聞かせてやれよ!…疲れちまったぜ」

照れ隠しなのか…ライルはそんな悪態をついた

「あ!忘れてた…」

その時…子供の1人が突然思い出したかのようにそんな声をもらす


「ライル様…この前のお友達の人がさっき来て…しばらく釣りしてるからって伝えてくれって」

その言葉を聞いたライルは顔色を変えて子供に場所聞く
ライルはケイにその場を任すと慌てて走り出した
城がよく見える川の畔に赤い髪の男はいた

(「こいつか…」)

ライルは警戒をしつつ男に背後から忍び寄る…すると

「やっと会えましたね…そろそろあきらめて帰ろうかと思ってたとこです」

男はライルを見ることなくそう言った
ライルは少し距離を置いて座る

「何者だ?城に居てもわかるほどの威圧感を出しやがって」

ライルもまた男を見る事無くそう言う

「申し遅れました…私は焔と申します…この世界の創造主です」

焔はそう答えて垂らしていた釣り糸を引き上げる
そして針に餌を付け直すとまた川へと投げ入れた

「フッ…フハハハハハハ!…創造主ときたか…そりゃまたでかく出たなw」

ライルは焔の答えを聞いて笑い転げた
しかし焔はその態度に見向きもせずに

「本当の事ですから…仕方ありません」

声色を変える事もなくそう答えた
さすがのライルもそんな焔の態度に笑うのをやめる

「で?その創造主様とやらが俺に何の用だ?」

ライルはまた焔に質問した

「そうですね…聞きたい事は色々とありますが…あなたの成そうとする事と…その先にあるもの…今日はそれについてだけ聞きに来ました…教えて頂けますか?」

焔がそう答えた時…持っていた竿がかすかに揺れて魚がかかった事を伝えた

「成そうとする事?その先にあるもの?…なんでそんな事を聞く?」

ライルは質問に質問で返した

「私はこの地を想像してから…ずっとあなた方…つまり堕ちた魂を見てきました。…平穏だったのはひと時の間…魂同士の持つ「因縁」という因果関係を絶つ事はできず争いが起き始めそれが次第に起きくなり今に至ったわけです」

焔は釣れた魚を引き上げながら相変わらずライルを見る事無く話しをする
ライルはただ無言で焔の話を聞く

「私としては…私が介入する事なく魂同士が自らの力で平穏な日々に戻ってくれたら…そんな期待をして傍観してきましたが…正直、この世界を支えているクリスタルの力をこれ以上騒乱ですり減らしては存続そのものが危うい…そんな状況でして」

焔はそこまで言うと言葉を止めてまた針を川に投げ入れる

「つまり…この争いを続けるとこの世界自体が崩壊する…そういうわけなのか?」

「そうですね…」

「もしも…もしもだ…お前がこの地の創造者だという事や今の話が本当の事だとして…この地が崩壊したらどうなるんだ?」

「そもそも今まで魂とはごく一部の特例を除き冥府に落ち二度と戻る事はなかったのです…全ての魂は冥府で1つとなり…やがて新たな魂として生まれ変わる…そんな感じです。しかしそこに過去という概念はありません…すべてが新しい存在になりますので…ただ、今はこの地が冥府の前の受け皿となっています…この地で魂の1つ1つが個体として洗礼を受けそして縁や徳を宿したまま転生をする…このメルファリアはそのために存在してるのです」

「なるほどね…言わんとする事はわかった…で、俺にどうしろと?」

「今すぐにどうしろという事はありません…そう言ったところで、どうにもならない事くらいは理解しています」

「ほう…」

「だから…あなたの成そうとする事…そしてその先にあるものを教えてほしいのです…あなたが思い描く未来の事を…答えはいずれまた聞きに来ます…今日はこの後予定が入っているので…」

焔はそう言うと竿をあげて片付けはじめる

「予定?」

ライルは不思議そうな顔で焔に聞き返した

「はい、今釣った魚を持ってね…チェスをしに」

焔はそう言うと初めてライルの顔を見て笑った

「ほんじゃ…クソジジイに早くクタバレって伝えてくれ」

ライルは焔にそう言うと立ち上がった
そして焔に背を向けて歩き出す…そしておもむろに立ち止まると

「俺はな…貧しい奴らが虐げられるこのクソみたいな世界を無くしたい…そう思ってる…だがな先の事はわからねぇ…ただ言えるのは今のままじゃダメだって事さ…じゃあ、またな…」

ライルは振り向きもせずそれだけ言うとパンツのポケットに手を突っ込んでまた歩き出した


『エルソード王国・首都リベルバーグ 王城』

「待たせたな…では1勝負するとするかのぉ…」

焔が待っていた謁見の間にナイアスが姿を現すとそう言って焔を手招きした
そして案内された先はとても城内とは思えない庭だった
川が流れ…池があり草木が生い茂っている
その庭をしばらく歩くと趣味のよい装飾の施された東屋が見えてきた

「ここはわしの研究の場所でなこの大陸のありとあらゆる植物が生えておる…これだけの草木をそろえるには骨が折れたぞい」

ナイアスはそう言いながらヒゲをいじる
そして東屋に通されるとすでにチェスの用意がしてあった

「そう言えば…気にはなっていたが…その手に持っている物は?」

ナイアスは焔にそう質問した

「あぁ…呼ばれておいて手ぶらなのもアレかと思いまして…魚を…」

焔がそう言ってナイアスに持っていた魚を見せる

「ふぅむ…これはマス科の魚じゃな…しかもこの腹のあたりの斑点…おぬしゲブランドに寄って来たな?」

「え?魚で違いが分かるのですか?」

「当然じゃよ…生きとし生きる者すべてが皆違いを持っておる…じゃから探究心は尽きんのじゃよ」

ナイアスはそう言って笑いながら焔から魚を受け取った

「エラよ!こいつをソンの所に持って行って塩焼きにしてもらってきてくれんかのぉ…」

ナイアスの周りを飛び回っていたエラはうなずいて返事をするとナイアスから魚を受け取った
しかし相当重いのか…魚を引きずるのではないかと心配になるほどの低空飛行であった

「さて…始めるとするかのぉ…」

ナイアスはそう言って焔の椅子を引いてから自分の席に座った
焔は会釈をした後椅子に座る…そして焔の一手から一戦が始まった
しばらく無言のまま戦いは続いた

「ナイアス様…塩焼きをお持ちいたしました」

そう言って東屋を1人の白髪の男が訪ねてきた

「おお!エラに持たせればよかったものを…」

「ははははは…持たせたのですが…せっかく調理したものを引きずられてもたまりませんからな」

男はそう言って笑うとテーブルの隅に皿に乗せた魚の串焼きを置いた
焼いた塩と香ばしい香草の香りが辺りに立ちこる

「紹介しよう…この者は、わしの古くからの友人でな…前線を退いたのちはここで料理長をしてる者でな…ソンダスと申す者じゃ」

「ソンダスと申します…ようこそエルソードへ」

「焔と申します…」

焔はそう言って席から立つとソンダスに頭を下げた

「堅苦しい挨拶など抜きにして温かいうちにどうじゃ?」

ナイアスはそう言って焼き魚の乗った皿を少し焔の方へと押し出した

「それでは…頂かせていただきます」

焔は串を持って1匹取るとそのままかじり付いた

「うまい…焼き加減、塩加減も絶妙ですが…この香草とのバランスがいい…」

「じゃろう?…ではわしも頂くかな」

そう言ってナイアスも焔同様そのままかじり付く

「やはり…色々な調理方法があるが…魚は塩焼きに限る」

ナイアスはそう言って笑う

「シンプルだからこそ腕が問われる…そう思います」

焔はソンダスにそう言って笑いかける

「ふぉふぉふぉふぉふぉ…昔はひどかったのじゃぞ…こやつの料理は…アレはもはや料理ではなく実験物といっても過言ではなかったな…不可解な物ばかりじゃったわ」

ナイアスはそう言って笑う

「前線に立つ兵士にとって食事とは腹を満たす手段…味など二の次ですから」

「そうじゃな…故にわしはそういった兵士に支えられているのだという事をあの時知ったのじゃよ」

焔はそう言ったナイアスの目に王たる者の資質を感じた

「で…ほう…いいせめぎあいですな…」

ソンダスは駒の配置を見てそうつぶやいた

「うむ…これ程苦戦するとは思ってもみなかったわ」

ナイアスはそう言って笑う

「しかし…六手前でしくじりましてね…おそらく九手先で私が詰みです」

焔は苦笑いでそうつぶやく

「おぬしも役者じゃな…あの場面で今までの流れからあの一手はあるまいて…食えぬ男だ」

ナイアスも苦笑いを浮かべるとそう答えてひげを触った

「あ…ライル殿がよろしくと申していました」

「ふぉっ!どうせ早くくたばれクソジジイとでもぬかしたのじゃろ?」

焔の言葉を聞いたナイアスはそう言って笑う

「そう言えば…まだ肝心な話しを…」

ナイアスがそう切り出すと

「いえ…それは次の対戦の時の楽しみにしておきます」

焔は笑顔でナイアスに答えた

「本当に食えない奴じゃなぁ」

ナイアスは笑顔でそう言うと髭を触りながら背もたれにうつかった



…『To Be Continued♪』





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011/08/14 03:00:37 AM
コメント(1) | コメントを書く
[『FEZ』~メルファリア戦記~] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: