ホラー、近未来、童話、独り言

ホラー、近未来、童話、独り言

2007年10月10日
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カテゴリ: 悲しい



「おーい、おーい。」家路を急ぐ姉妹の耳に一本道の彼方からボンヤリ見え隠れする灯りと

共に誰かを呼ぶ声が聞こえる。

 姉妹は母に内緒で街まで映画を観て来た帰途、甘味屋で時間を過ごし過ぎて遅くなって

しまっていた、田舎の一本道姉の里はいい訳を考えながら足早にと言うより駆け足になって

急ぎ「母に叱られる。」其れしか頭に無い妹の洋子は暗闇に取り残されまいと必死に姉の

後を追っていたが段々遠のく姉との距離に泣きながら助けを求めた「お姉ちゃん、置いとかん

て。」然し姉は耳を貸さず洋子との距離は開くばかり。

 道楽の限りを尽くし財産を食い潰した父を早くに亡くした一家は母が花を売り歩いたり



いた、里はそんな母の姿を見て育ち田舎での生活を嫌い知人に紹介された乾物屋への奉公を

母にも相談せず決めて叱られたが頑として譲らず住み込みで働いていた。

 里の顔さえ見れば小言を言う母が苦手で暇を貰った日は母の目を避けて学校に行く前の

洋子を待ち伏せ映画館に連れて行く、然し母に隠し事は通じず姉に連れ出された日帰宅すると

家の前で待っている母は何時も同じ言葉で洋子を迎えた。

「こんな遅そうまで遊んでばかりおらんと勉強もせなあかんえ、お姉ちゃんは元気でおいやし

たんか。」五人居た兄妹も戦争や病気で亡くなり洋子や里が物心付く頃には二人っきりの

姉妹になっていた、他の兄妹の顔など写真でしか見た事が無く兄妹と言う実感はなかった

其のせいか里は洋子を可愛がり洋子は里を誰よりも慕っていた。

 「おーい。」何人もの村人の声が大きくなる、姉妹を呼ぶ声だと察した姉は着物の裾を

捲り上げ一目散に走りだした、洋子も同じようにして転がるように我家を目指す、息も絶え絶えに



「何処に行ってはったんや。」十月とは言え残暑厳しい京都の夜、滲み出る汗を拭いながら

村人達が声を荒げて口々に姉妹を責めた、集まっていた村人の一人が悲壮な声で

「大変や、あんたらのお母はんが。」皆まで聞かず姉妹は村人を押し退け取り囲んで居た輪の

中に入っていく、其処で目にした物はとても此の世の物とは思えない無残な物体と成り果てた

母が戸板に乗せられいた。



頭、大きく切れた傷口からは出尽くした血が見慣れた衣服をべったりと染め、小さな骸となって

転がっていた、どちらからとも無く骸と成り果てた母に駆け寄り「お母ちゃん。」と抱きつき乍

冷たくなった母を揺するとドロリとした黒い塊が傷口から流れ出た、姉が持っていた半紙で

拭いてやりながら妹に「何してるんや、お母ちゃんの布団ひいたらなあかんやろ。」妹を叱り

振り向いて「ご面倒おかけしますけど母を布団に寝かせて貰えますやろか。」村人に頼むと

其れまで茫然としていた村の人々は慌てて戸板に手をかけた。





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最終更新日  2007年10月10日 19時59分03秒 コメント(3) | コメントを書く
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