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2008.04.26
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カテゴリ: 読んだ本
1998年12月 新潮社より
2001年 6月 文庫化
2003年 4月 回収・絶版

本の内容の前に、作者について。

作者は、本名・池上金男(いけがみ・かねお)。
映画脚本家、『十三人の刺客』『大殺陣』で京都市民映画脚本賞を受賞。
1992年(69歳)に池宮彰一郎として小説家デビュー、『四十七人の刺客』で
新田次郎文学賞を受賞。
1999年、『島津奔る』で柴田錬三郎賞を受賞。

当人が、「家内の病気や引っ越し、連載が重なり混乱し、資料と先輩作家たちの作品が
混ざってしまった。
自戒の意味から絶版をお願いした」とのコメントを発表。
絶版となった2冊以外にも「類似」を指摘する声があり、事件以後、連作の『平家』を除き、
活動をほぼ停止。

盗作疑惑
 2002年12日 『遁げろ家康』が、司馬遼太郎『覇王の家』の類似表現のため回収・絶版。
 2003年 4月 『島津奔る』が、司馬遼太郎『関ヶ原』の類似表現のため回収・絶版。

類似指摘作品
 『平家(ハードカバー版)』  吉川英治 『新平家物語』との類似、文庫化にあたり指摘箇所を
 書換・削除。


以下、池宮彰一郎氏エッセイ集より抜粋。

 一つの義務を持っていると思うんです。それは司馬史観の中に少しでも切れ目をつくりたい。
 そうしないと、歴史文学は発展していかなくなってしまう。司馬史観が余りに圧倒的な
 強みを持っているだけに、それを感じます。
 これは同時代に生まれあわせた人間の義務ではないか。我々同年代の者の務めとして、
 司馬史観に少しでも抵抗する新しい歴史観を世に提示する必要がある、そう思っております。
 (歴史小説における史実と虚構)

 その司馬遼太郎氏の訃報を聞く。そのあとに司馬史観の巨大な牆壁が聳立し残った。
 その牆壁の高さと厚さに、いたずらに逡巡していては、歴史小説の未来はない。更に
 新しい歴史観の道を切り開かねばならない。それが後人の務めである。歴史小説は、
 類型で書いてはならない、それが鉄則である。
 (義、我を美しく)


さて、本の内容です。

主人公は、戦国時代の薩摩の当主・島津義弘。
島津による九州制覇に始まり、朝鮮出兵から関ヶ原の戦いまでを描いています。

義弘は20歳で初陣、66歳で関ヶ原の戦い、85歳で没するまで戦いずくめの生涯。


朝鮮出兵では、出兵中に秀吉が病没。
この機に応じて日本軍を殲滅しようとする朝鮮軍のため、日本軍は帰国も危うい状況となります。
しかし、島津軍が泗川(しせん)において、7千の兵力で30倍にあたる20万余の明・朝鮮軍を
完膚なきまでに打ち破ったため、全軍が無事に帰国を果たします。
この戦いにより、島津軍は朝鮮において「石蔓子(シーマンズ)」と呼ばれ恐れられように
なりました。

関ヶ原の戦いでは、家康の伏見城を防衛するということで東軍参加を家康と約束して
いましたが、家康の心変わりにより伏見城入場を果たせず、やむなく西軍に参加。
しかし、諸事情により戦闘には不参加、西軍敗北が確定の後、家康の本陣前を突っ切る
前進撤退を敢行しました。
この時、島津軍は600人。
本田忠勝や井伊直政ら徳川精鋭部隊の追撃に、多くの犠牲を強いられます。
甥である島津豊久、家老であり長らく戦場を共にしてきた長寿院盛淳も義弘の影武者となって
身代わりに落命。
義弘自身も13名程度の家人に守られながら、東軍の追っ手や落人狩りと戦いながら、
それでも島津領国と領民を守るためと、必死で生き延びて領国まで帰り着くのです。

上記の盗作問題ですが、関ヶ原の合戦開始から西軍敗北までが酷似。
ほとんど司馬遼太郎の「関ヶ原」と違いなし。

もったいないなあ、と思います。
その他の部分、特に島津について描いているところは、すごくいいんですよ。

タイトルともなった「島津奔る」の部分もそう。

島津は兵農一致の国で、武士も日頃は農地を耕して生活しています。
が、農地の端に槍1本と具足櫃を立てておくのが習慣で、ひとたび主命があれば、その場から
間髪を入れず参陣する、というお国柄。
関ヶ原の戦いの前、大阪における島津義弘の手勢は200人程度。
国元に援兵を要請しますが、薩摩を守る兄の島津義久を援軍を派遣しないことを決定。
義弘は見捨てられた形となるわけです。

死を覚悟した義弘は国元の長寿院盛淳に別れの手紙を書き送る。
書状を見た盛淳は、「維新様(義弘)お一人を殺させはせぬ」と家の子郎党200人を引き連れ、
義久に無断で大阪へ向かうのです。

すごいのはここから。
1人でも多くの兵が欲しい、と思った盛淳が、義弘の窮状を家中に触れ回る。
と、その声に応じ、維新様を救えと、主命もないのに島津衆中は槍をつかみ、具足櫃を
背負って走り出すのです。
その数なんと1000人。

大阪までの距離はおよそ1200km。
飢えと疲労によろめきながら、それでも走ることをやめない島津兵達の姿は圧巻。
思わず目頭が熱くなります。

ちなみに1000人が1200kmを走りきったわけではなく、先着した盛淳が迎えの船を
仕立て、毛利領まで迎えを出し、結局800人が関ヶ原に参陣しています。
すごすぎるよ、薩摩兵。

関ヶ原の前進撤退もそう。
これだけのものを書けるのに、なんで盗作なんかしちゃったかなあ、という感じ。
島津を中心に書いているんだから、関ヶ原の合戦シーンなんて、もっとさらっと流すだけでも
十分だったのに。

盗作という行為は作家として恥ずべきもので、その作品も排除されるのも当然と思いますが、
読み手側がそのことを承知した上で、強くカッコいい島津を読みたいと思うならオススメです。
私は司馬遼太郎の『関ヶ原』も読んでいますし、最初から承知の上で借りた本なので、
とても楽しめました。(^^)





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Last updated  2008.04.26 16:00:06
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