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2011.01.28
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カテゴリ: 読んだ本
1994年1月 新潮社より

銀行本店の地下深く眠る6トンの金塊を奪取せよ。
大阪の街でしたたかに生きる6人の男たちが企んだ、大胆不敵な金塊強奪計画。
ハイテクを駆使した鉄壁の防御システムは、果して突破可能か?
変電所が炎に包まれ、制御室は爆破され、世紀の奪取作戦の火蓋が切って落とされた。
圧倒的な迫力と正確無比なディテイルで絶賛を浴びた著者のデビュー作。
日本推理サスペンス大賞受賞。

(裏表紙 紹介文より)


時代は昭和の終わり頃。
立案者の北川、主人公の幸田、コンピュータシステムに詳しい野田、爆破工作の
エキスパートであるモモ、エレベーター整備作業の経験があるジィちゃん、
北川の弟の春樹が、銀行の地下にある金塊強奪作戦に挑む話です。

登場人物達が魅力的。そしてその関係性がいろいろと複雑です。

幸田は29歳。
無口で人間嫌いで、人のいない土地で暮らしたいというのが願いです。

特技は鍵を開けることで、簡単な鍵なら5秒で開けてしまう。
過去に左翼系グループとつながりがあり、色々と荒っぽい仕事もしていた様子。

立案者の北川は幸田の大学時代からの知り合いで、10年のつきあい。
冷静で頭が良くて大胆な北川は今回の作戦の立案者でもあり、
幸田の唯一の理解者でもあるようです。

そして物語のキーとなるモモ。
幸田の知り合いですが、本名を知らないので『桃太郎』のモモと呼んでいる。
双眼鏡の監視の際に、モモの家の窓が何となく気になって見ていたところ、
モモも監視に気付いており、探りを入れるかのように互いに接触し、
次第に話をするようになった仲です。
どうやら北朝鮮の工作員らしい。

裏切り者として追われている身です。

北川の弟・春樹はバイクを買うために幸田と同じ会社でアルバイト中。
自転車に乗っている時に暴走族グループに引っかけられて転ばされたことに腹を立て、
グループのリーダーへ金属パイプを投げ付けて転ばせ返したことから、
その暴走族グループともめています。


エレベーター整備作業の経験があり、地下金庫に侵入するためにはその知識が必要で
仲間に入れられたジィちゃんと一筋縄ではいかない面々ばかりです。

そんな彼等が、襲撃計画のために綿密に準備を進めていくのですが、
北朝鮮工作員や日本の公安、左翼グループ、暴走族などが絡んできて
次々と事件が起こる。
そんな中で決行される銀行襲撃作戦。
この作戦が成功したのかしなかったのか、残り3ページになるまでわからないのです。

スリルとスピード感、そして登場人物達の生き生きとした人間味が魅力の1冊でした。



以下、ネタバレとなりますのでご注意ください。

















人間嫌いの幸田ですが、どうやら短い付き合いのモモに何か惹かれるものがあったようで
モモを大事な存在と感じるようになっていきます。
そのモモは、元の仲間である北朝鮮からも、北朝鮮に金で雇われた左翼グループからも
狙われていて、そのせいで幸田や北川達にまで危険が及ぶようになるのです。
北川から相談されて「どうする?モモを売るか?」と尋ねられます。
モモを仲間から外し、居場所を彼等に教えれば幸田達は安全になります。
でも幸田は嫌だという。
それを聞いた北川も「よし、わかった」と、危険を承知で幸田の意思を
尊重してくれるのです。
懐が深いというか、人間として情が厚いというか、北川は幸田を大切な友人と
認めているんです。
そういった箇所が随所に出てくる。

でも、仲間の中に密告者がいるらしく、モモを狙って何度も幸田達は襲われます。
春樹が誘拐されて、モモの身柄と引き替えだと言われたりもする。
しかし、北川と幸田は誘拐者(左翼関係のグループ)と交渉して、2億と引き替えに
モモを諦めさせるのです。
その2億はたぶん、金塊強奪が成功した時の幸田の取り分と思われます。

そして何とか決行直前までこぎ着けた時に、北川の妻子がひき逃げで殺されてしまう。
暴走族グループもモモ絡みで関わってきていたんですが、でもひき逃げはモモではなく
春樹への個人的な恨みからみたい。
怒りに燃えた春樹は暴走族のリーダーに車で突っ込み、リーダーも命を落としますが、
春樹も全治3ヶ月の重症を負う。
しかも人を殺していますから、治っても鑑別所送りが決まってしまうのです。

そんな状況下でも金塊強奪作戦を北川はやめない。
しかし決行前夜、北朝鮮の工作員に襲われ、幸田は肩を撃ち抜かれる重症を負い、
モモは死んでしまう。
それでも彼等は作戦を決行するのです。

幸田が近くの電力会社にダイナマイトを仕掛けて爆発事故を起こすと同時に、
野田が銀行のエレベーターに細工してエレベーターを止める。
その機に乗じて、エレベーター管理会社の人間になりすました北川とジィちゃんが
銀行の警備員を倒し、北川と幸田で金塊を運び出す。
2人が屋上に金塊を運び出し、後はそれを地上のトラックで待つ野田の所へ降ろし
脱出する、という段取りなんですが、
そこで幸田がジィちゃんと決着を付けに行くと言うのです。

モモが狙われたのは密告者がいたからなのですが、その密告者はジィちゃんだったのです。
そして、そのジィちゃんは幸田の父親。
幸田が幼い頃、母は近所の教会の神父と通じていたらしく、父親と離婚しています。
教会は火事で焼け落ち、離婚した母親は別の男と再婚して幸田とは付き合いがない。
襲撃の何日か前に、ジィちゃんは幸田に、自分はその父親であると告白していました。
幸田の本当の父親は神父であり、神父が教会に放火したと自分が警察に告げたため
神父は逮捕されたのだと言う。
しかし、本当はジィちゃんこそがその神父であり、火事の発生は幼い幸田が起こしたもので
幸田を庇って神父は警察に逮捕されたのでした。
その事情を全て承知の上で、モモを売った密告者を許すわけにはいかないと、
この最後の瞬間に、幸田は銃を持ってジィちゃんの元へ向かう。
しかしジィちゃんは屋上のエレベーター室で首を吊って自殺している。
その下に銃を置いて、静かに立ち去る幸田。

後は、北川・幸田・野田の3人が無事に脱出するだけなんですが。

金塊を運び出す頃から、もうドッキドキでしたよ。
だって、モモを喪い自分も重症の幸田は様子がおかしくて、それを気遣う北川が
幸田と初めて出会った学生時代を思い出したりするんだもん。
やめてーーーーっ! そんなコトしたら死亡フラグが立っちゃう!!

幸田は屋上からロープで壁を伝って北川達の待つ地上へ降りるんですが、
撃たれた片腕はまったく力が入らないし、降りている途中でロープの結び目は緩むし、
しかも降りながら幸田は「過去に色々な泥棒家業をして脱出もしてきたが、
今ほど自由を感じたことはない」と清々しさを感じている。
いやーーーーっっ! これも死亡フラグっ!!

結局、途中で落ちたらしい幸田をトラックに乗せ、北川も荷台に飛び乗って
野田の運転でトラックは緊急発進。
不審に気付いたらしい警官が走り寄ってくる。
それを振り切って通りに出た野田が、右へ行くべきか左へ行くべきか一瞬迷う。
どちらにも、爆破騒ぎがあったせいで警察のバリケードが出来ている。
バリケードまでの距離が長くてより加速できる方を選ぶんですが、
これが運命の決断みたいに見えて、読んでいるこっちはトラックが横転するんじゃないかと
気が気じゃなくて。

トラックがバリケードを突破して走り去るところで場面は終了。
この時点で、残り3ページ。
どうなったの?どうなっちゃうの!?

次のシーンは船の上。
モモが手配した外国へ逃亡するための船で、浮かれて歌い続けて喉が涸れた野田。
横たわる幸田と、その傍らの北川。
そう、彼等は金塊強奪に成功したのです。

そして北川が幸田に言うのです。
「ところで、おまえはどこへ行きたい? アフリカか? シベリアか?
 いや、これは俺の想像だが、おまえはもう、人間のいる土地でも何でもいいのだろう。
 きっとそうだと思う。こんな事を言うのは気恥ずかしいが、おまえは確かに変わったぜ」


そして、新しい土地が待っていると感じながら、幸田も胸に呟くのです。
「そうだ、モモさん。俺はあんたと、神の国の話がしたいと思う。
 あんたとは心の話がしたいと思う・・・」


幸田のこの言葉で物語は終わり。
強奪作戦のスリルもおもしろかったですが、何だか胸が熱くなるような
それでいて最後は清々しく、ぐっとくる話でした。





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Last updated  2011.01.31 12:57:34
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