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2011.10.18
XML
カテゴリ: 読んだ本
2003年3~9月 asahi.comに掲載
2008年2月   朝日新聞社より単行本化


あるペットショップで、二泊三日で貸し出されるレンタル猫。
名前は付いておらず、借り主が好きな名前で呼ぶ。
食事はペットショップから支給されたドライフードしか与えてはいけない。
レンタル用のバスケットには毛布が敷かれており、
慣れたにおいの染みついたその毛布さえあれば、どんな家庭に行っても
安心して眠ることのできる毛布猫(ブランケット・キャット)。
そんなペットショップで猫達を借りる7組の家庭を描いた7話の短編集です。


猫は小説の小道具的な存在です。
そのコンセプトがはっきりしているので、むしろ読みやすかった。

レンタル猫って面白い発想ですが、実際にはムリだろうなあと思います。
設定では特別利口な猫できちんと教育を受けているから、貸し先でもおとなしいし、
毛布さえあれば大丈夫となっていますけど。
猫は環境の変化を嫌う生き物ですから、二泊三日のストレスには耐えられまいと思う。
やっぱり猫カフェが限界じゃないかなあ。

重松清さんは人間のちょっとした心の機微とか、人間関係とかを描くので
ハマった時はすごく好きな話になりますが、
そうでもない時は「ふーん」程度の何でもない話になることが多いです。
今回もいいなあと思う話とふーんがありました。



以下、ネタバレとなりますので間を開けておきます。
























花粉症のブランケット・キャット

妻が何でも理屈通りにいかないと嫌な性格で、家の中も几帳面に整頓して
大人だけのキレイな暮らしをしている。
得られない子どもの代わりに猫を可愛がりたいという思って猫をレンタルするが、
猫が虫を狩ったのを見て嫌悪感を抱く。
それまでは一緒に寝たいとはしゃいでいたのに、思い出すと気持ち悪いと食事もできなくなり、

生き物としての猫が欲しいわけではなく『可愛い猫との楽しい暮らし』というイメージしか
なかったのね・・・と、猫飼いとしては好きになれませんでした。
話のポイントはそこじゃないんだけどさ。(笑)

思うようにならない世間の出来事に苛ついて、自分はわがままと後ろめたさを感じている妻と、
不妊の原因が自分にあるため、そんな妻に対して遠慮が先に立つ夫。。
最後、利口な筈の猫が家の中で大暴れして家具や雑貨を壊しまくり、2人とも呆然としつつも、
何となくスッキリしたと笑って終わる話。
これから生きていく上でのイレギュラーに対して、少しずつ寛容になっていけるのかな
と思わないと、読者であるこっちはスッキリできない話でした。(笑)


助手席に座るブランケット・キャット
長年勤めた小さな会社、家族的で居心地良くとても大切だったその会社から、
3千万円を横領した主人公。
「どうしてこんなことしちゃったんだろう。みんなが困るってわかっているのに」
と、後悔とも違う、自分が理解できない主人公。
癌で余命短く、海で入水自殺するつもりだったのに、溺れそうになった猫を助けてしまい
生きることを選択する。
最後はパトカーがやってきた所で終わり。
逮捕されて、会社の人に謝って、でも使っちゃった分のお金は返せないしなあ・・・と
現実的に考えちゃって、何だかもの悲しい話。


尻尾のないブランケット・キャット
父親の期待が大きすぎて失敗が許されない少年。
しかし実は同級生に対するイジメに加わっていて、それが学校と親に発覚。
借りてきた猫に自分を投影しながら描かれる悩みと、
それを理解してるんだかしてないんだか自分勝手な父親との微妙な関係。
微妙過ぎて、ぎりぎり理解しているように書かれているのに、
でも今後も横暴な振る舞いをするんだろうなと思えて、父親にイラッとする話。(笑)


身代わりのブランケット・キャット
叔父(父の兄)の家庭で世話をされていた認知症の祖母を老人ホームに預ける前日、
主人公一家でも過ごさせることに。
祖母が好きだった猫は既に亡く、できるだけ似たブラウンクラッシックタビーのアメショーを
借りてきた。
主人公達は一目見て違うことはわかるが、呆けてしまった祖母にはわからない。
以前からの習慣で猫にお刺身をあげる祖母。
祈るような気持ちで「食べて」と思って見ていると、ドライフードしか食べない筈の猫が
ぺろんと食べる。
その緊張感とほっとする感じがとても良かった。
いや、これも話のポイントはそこじゃないんだけども。(笑)

主人公は、祖母を喜ばせるために、結婚を前提として付き合っている恋人を祖母に紹介しろと
両親に言われているが、実は彼とはお互いに結婚を考えられなくなってきつつある状態。
彼に頼んで演技してもらおうと彼に最寄り駅まで来てもらうが、何かが違うと1人で帰宅。
「おばあちゃん、ごめんね。彼とは結婚しないと思う」と思い切って打ち明けると
呆けてしまっている筈の祖母が「若い人は喧嘩しなけりゃいけません」と笑顔。
思わず彼に電話すると、置き去りにした彼が、でも帰らずに家に向かっている途中とわかる。
「私達、ちゃんと喧嘩しよう」
この2人、やり直せるんだなというのが伝わるじわっといい話。


嫌われ者のブランケット・キャット
思わず涙ぐんだいい話。
ペット禁止のアパートの大家である頑固で偏屈な老人。
月に1回レンタル猫を連れてきてアパート内を通ると、こっそり猫や犬を飼っている家の前で
レンタル猫が鳴くのでバレてしまう。
バレたらアパートを追い出される。
そんな様子を、嫌なジジィ&嫌な猫だと見ているフリーターの主人公。

しかし主人公の彼女が子猫を拾ってしまい、飼うためにバレない方法を考える。
自分達が同じレンタル猫を借りて、その猫に子猫を慣らしてしまえば鳴かないんじゃないか。
無愛想で乱暴なレンタル猫は主人公には全く懐かないが、作戦通り子猫はレンタル猫に懐く。

ある日、主人公は大家の老人の過去を知る。
大家の老人は昔、この場所に息子夫婦と孫娘2人と住んでいた。
が、家が火事になり、一度は避難したのに、孫達が飼っていた猫を助けようと燃える家に戻り、
それを助けようと妻が、そして息子が戻って全員亡くなってしまった。
件の猫は、実は外に出ており無事。
老人は「孫が可愛がっていた猫だ」と猫を恨むことなく、しかし見れば思いだしてつらいので
知り合いに引き取ってもらい、月に1回孫が会いたいだろうと猫を連れてきていた、という。

老人がレンタルするいつもの日が来て、レンタル猫が主人公の部屋の前を通る。
レンタル猫は鳴かなかったが、子猫がレンタル猫を慕ってドアをひっかきながら鳴く。
覚悟を決めて謝る主人公に、「返す時間が来るまで、その猫を一緒に遊ばせてやれ」と老人。
猫を飼っていたら部屋を追い出される・・・・。
老人は「出て行け。一人前になって、ちゃんと働いて、金を貯めてから、出て行け」と。

人の情がわかるちゃんとした大人だった老人に、ぐっときました。


旅に出たブランケット・キャット
唯一の猫視点で書かれた話。
逃げ出したブラウンクラシックタビーのアメショーが、幼い兄妹を助けて短い旅をする話。
その後もペットショップには帰らずに、放浪するらしい。


我が家の夢のブランケット・キャット
リストラされてマイホームを手放すことになった男。
子ども達の夢だった『ペットを飼う』のために、レンタル猫を借りてきて
最後に過ごす家で思い出の写真を撮ろうとする。
息子は無邪気に喜んでくれるが、妻と娘は「それはあなたの自己満足」と冷ややか。
娘がすっごくキツい子で、リストラで傷ついた父親にそこまで言う?とびっくり。
反抗期だから仕方ないのかな?
それにしてもワガママと言うか、父親に叱られたことがないんだろうなという感じ。
最後は「しょうがないよ、家族だもの」という全てを受け入れた母親(妻)の言葉で
家族が絆を取り戻すが、もう少し親に気を遣ってもいいんじゃない?と思った話でした。





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Last updated  2011.10.18 12:53:38
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