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2012.11.08
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カテゴリ: 読んだ本
2009年10月 集英社より
2012年03月 文庫化


聞けたはずの言葉をいつも虚空に探している。
30万人の心に沁みた『MOMENT』から7年。
ほんとうに大切なものは、いつも側にあると気づいた。
待望の書き下ろし小説。

(「BOOK」データベースより)

先日読んだ『MOMENT』の姉妹編。
『MOMENT』の主人公・神田の幼馴染で、『MOMENT』にも登場した葬儀屋・森野が
主人公です。

神田が大学を卒業して7年後。森野は29歳。
18歳で両親を亡くして、さびれた商店街にある家業の葬儀屋を継いで女社長となった森野。
従業員は両親の代から店にいた竹井と、新人の桑田。

しかし心を込めて仕事をしています。

そんな仕事に関連して、発生する不思議な事件。
葬儀後に故人から遺族に送られて絵。故人の幽霊がいるのか?
一度家族のもとで執り行われた老人の葬儀を「自分を喪主にしてやり直して欲しい」と
要求する女。
森野の両親が葬儀を行った故人の妻の元に現れた“夫の生まれ変わり”と称する少年。

そんな事件に対し、「死者を眠らせるのは葬儀屋である自分の仕事」と
森野が真相を明かしていきます。
これに、23歳で渡米した神田との恋愛へのためらいを絡めて描かれています。

『MOMENT』の時にも思ったけど、作者の描く人物が魅力的。
不器用な中に現れる誠実さとか優しさとかが、読んでいてほっとします。



以下、ネタバレとなりますので間を開けておきます。


























森野と竹井の関係がいいです。
竹井は年寄りの社員で、高校生で両親を亡くした森野をずっと支えてきました。
森野がまだ小学生だった頃、竹井の幼い娘が病気で死にかけたことがあります。
病院との電話のやりとりを聞いて、周囲の大人達が娘が死んだと思い、言葉を失う。
その時に、森野が「私が代わるから。竹井の娘になるから!だから!」と叫ぶ。

結局、勘違いで娘は生きていたんですが、竹井はその時から
森野をもう1人の自分の娘と思っていたと言い、森野の両親の死後は父親代わりとなって
くれていたのです。
うん、いい話だ。

タイトルの「WILL」。
中学生の森野が父親とのリビング・ウイルについて話すシーンがあるんですね。
リビング・ウイルとは、自分の死に際して実施される治療について
患者が判断能力のあるうちに文書化したものだそうです。
父親が
「このときのウィルってのは、意思のことなんだぞ。
 そのウィルが未来を表すってことは、未来ってのは、
 いつだって意思と一緒にあるってことだな」
俺、今いいこと言ったよな?と得意がっているシーンです。

そしてラストシーン。
まだ高校生で、突然の両親の死に呆然として、きちんと送ってやれなかった森野のために
竹井が葬儀のやり直しを提案する。
その最後に、両親の墓に参った森野。
「私はいい娘でしたか?私はいい娘でしょうか?」と心の中でいつも呟いていた問いに
ようやく答えを得ます。
「いい娘よ。いつだって、いい娘よ」と母。
「いいも悪いもねえやな。お前は俺の娘だ」と父。
ようやく泣くことができた森野が、良い名前を付けてくれてありがとう
と感謝するところで初めて、名前が『未来』であることがわかる。

直前の神田のプロポーズで、アメリカから一事帰国してきた神田が
「未来を迎えにきた」と言っていて、2人の未来を作り上げていこうという意味だと
思っていたのですが、森野未来を迎えに来たという意味だったんですねえ。

未来はいつだって意思と共にある、というテーマがタイトルで語られていました。

優しい気持ちになれる話です。
入っている細かいエピソードの1つ1つもおもしろい。
いい作者に出会ったなあ。もう少し読もう。





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Last updated  2012.11.08 12:50:48
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