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2014.04.24
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カテゴリ: 読んだ本
2006年03月 文藝春秋より


主人公(的な登場人物)は2人。
これまでの複数の作品の例と同様、おじさんと若者の組み合わせです。

おじさん側は並河次郎(なみかわ)、50歳。
警視庁公安部四課の警部補。
面割(相貌識別)の達人です。
過去のある事件のせいで仕事に対する情熱を失っており、周囲からは「ハム(公安)の脂身」と
蔑まれている窓際族です。

若者側は丹原朋希(たんばら ともき)、24歳。


『DAIS』とは防衛庁情報局(Defence Agency Information Service/DAIS)のことで、
防衛庁・自衛隊内部に設置された、日本の秘匿情報機関です。
通称「DAIS」、もしくは本部の場所を指して「市ヶ谷」とも呼ばれるらしい。

朋希はテロ事件の捜査のために防衛庁から出向してきた自衛官として、
並河は、朋希が捜査上必要な場所への出入りを自由にできるための案内人として、
2人はコンビを組むことになります。

2人が追う爆弾テロ事件は、「ローズダスト」という犯人グループによるもので、
リーダーは入江一功(いりえ かずなり)。
『DAIS』の元局員であり、朋希の同期であり親友でもある。

過去の因縁やトラウマ、組織の壁、敵味方となった友人との思想の違い。
そういった中で登場人物達がそれぞれに必死に行動する姿が描かれます。






以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。



























主役(と言っていいと思う)の朋希が、能力的にはすごく優れているが
感情を押し殺して職務に忠実であろうとする、という点では今までの若者達と似ていますが、
これまでと違うのは、かなり繊細で心が弱い感じ。
悩んで迷って動けなくなってというのが、もどかしくもあり、人間的魅力でもあります。
DAISから支給された携帯電話を、DAISとの電話連絡用にしか使わないのでメールの設定が



朋希と一功の因縁というのが、悲劇的で哀れでした。

テロリストグループは一功を始めとして、全員が『DAIS』の元局員。
朋希を含め、かつて全員がオペレーションLPという作戦に関わっていました。

オペレーションLPというのは、北朝鮮への諜報活動への足掛かりを作るための作戦。
若い頃に在日だった北朝鮮の高官が、妊娠した日本人の愛人を残して帰国。
老いてから、愛人の遺した子供が気にかかるようになり、探して欲しいと依頼。
それを知ったDAISは、愛人の孫をでっちあげ、局員を北朝鮮に送り込む作戦を立てる。
すなわちリトル・プリンセス作戦。

孫役に選ばれたのが、堀部三佳。
両親を亡くして、新潟で町工場を営む叔父夫婦に引き取られた、という設定で、
叔父夫婦はもちろん、住み込みの工員達、通いの工員・事務員達も全員DAIS局員。
朋希も一功も住み込み工員役で、皆が家族のように暮らしていた。

それは偽りの家族なんだけど、皆それぞれにその生活に安らぎを感じ、大切に思っていた。
が、作戦は途中で中止。
本来はすぐに伝えられて解散するところ、DAIS上層部の一部幹部の裏切りにより中止命令が
伝えられず、そのために三佳の顔が朝鮮側に知れてしまう。
作戦が朝鮮側にばれることを怖れたDAISは、三佳の処分を決定する。
三佳を救いたいと、メンバー達はDAISを裏切り北朝鮮へ亡命を決意。

しかし、朋希は一功から残るように言われてしまう。
三佳と自分達の安全を守るためには、北朝鮮に亡命してきた自分達の価値を高く売りつける
必要があり、そのためには三佳を救いたいと願っている気持ちを見透かされてはならない。
三佳に恋をしており、元々ポーカーフェイスのできない朋希がいては三佳を救えないかも
しれないから、と。

朋希が工場を離れている内に、全員が出発。
知らずに置き去りにされた朋希は、DAIS本部からの取り調べを受ける。
一功も三佳を好きな事を知る朋希は、三佳も一功を思っているという事に対する嫉妬と、
このまま一功達が逃亡に成功したら二度と三佳には会えないという苦痛とに苛まれ、
一功達には三佳は助けられない、本当に三佳を救いたければ一功達の居場所を話すべきだと
説得に心が乱れ、潜伏場所を言ってしまう。

現場に駆け付けた朋希の前で、三佳は射殺され、一功達は逃亡。
亡命前に朋希に会いに来た一功。
潜伏場所がばれた時、朋希が裏切って喋るはずがないと信じていた三佳は、自白剤などを
使われて朋希がおかしくなってしまったに違いない、逃亡なんかするのではなかったと
泣きながら飛び出していって撃たれたのだ、と告げる。

三佳が想っていてくれたのは自分だったと、それを自分の裏切りで死なせてしまったと
回復不可能な精神的な傷を負った朋希は、自我が死んだような状態でDAISに残る。

旅立った一功は、裏切ったDAIS幹部はもちろん、こんな作戦を必要とするDAISという組織も、
それを許している日本という国にも、その国の中で自らの選択に責任を持たない国民も
全てその報いを受けるべきだ、という思想の下、テロリストとなって数年後に日本へ戻る。

こうして朋希はDAISの一員として、テロリストである一功達と戦うことになるのです。


並河警部補が初めて朋希と会った時に、「人形みたいな目」と感じています。
心を閉ざしている状態。
しかし、2人で組んで捜査をすることに決まり、他部署とのいざこざが起きて
並河警部補が「ハムの脂身」と罵られ、朋希が
「おまえもハムの脂身なんかと付き合っていたらいいことないぞ」と言われた時に、
朋希は「自分は何の味もしない硬い肉より脂身の方が好きですけどね」と言い返したのです。
え?かなり序盤から仲間的発言?
ちょっとびっくりしました。

その後も、並河警部補の自宅に行って家庭的な温もりに安らぎを得たりとか、
この子はずっと孤独が寂しくて、後悔がつらすぎて過ごしてきた可哀想な子なんだなと
思いました。

テロ活動は凄すぎて、怖かったです。
お台場、崩壊。

朋希も、最後は一功と差し違えて爆発を止めて、崩壊するビルの中で2人で死を待つのみ
という状態。
でも、そこへ並河警部補の娘の恵理からメールが来るのです。
「必ず帰ってきてください。待っています」
その一言に揺れる朋希。
すると察した一功が、「行けよ。待っているやつがいるんだろ」と朋希の背中を押してくれる。

その後は、ビルからの脱出を目指してひたすら走る。
その足下に、かつての仲間達であり友人達であった一功達が、子犬の姿に形を変えて
朋希を導く。
まあ、実際は朋希の幻想ですけども。
感動はしました。


他に好きだったシーンとしては、テロリストメンバーの中の山辺と並河警部補の対峙シーン。
若いメンバー達の中で、山辺は唯一並河警部補と同年代。
並河警部補が山辺に、「あんたみたいな大人が混じっていて、なんでガキどもの暴走を
止めてやらなかったんだ」と怒鳴るシーンがあるのです。
大人として、山辺にもちゃんとその意味が通じていて、後悔の表情がよぎる。
このきちんとした大人同士のやりとりが好き。
その後、2人の死闘となっていき、山辺は自殺してしまうので残念なんですけど。

おもしろかったのは、恵理に対して朋希が親しくしたり、並河警部補の部下が親しくしようと
したりすると、途端に頑固親父になって「手ぇ出したら殺すぞ」と威嚇するのが大笑い。
こういう人間らしいところが魅力なんですよ、並河警部補。(笑)





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Last updated  2014.04.24 12:53:48
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