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Apr 15, 2008
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カテゴリ: 伊庭求馬孤影剣
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 二人が語り合っていると、求馬が手拭を下げて戻ってきた。

「旦那、手拭を」  お蘭が求馬の手拭を軒下に干した。

「旦那、村松三太夫が人足稼業を束ねる稲田屋に入ったそうですぜ」

「奴が、我等を追ってこの旅籠町に参ったも申すか?」

「さいで、師匠が見たそうです」  「夕餉前に片をつけるか」

 求馬が平然とした顔つきで窓辺に腰を据え、煙草を燻らしている。

「殴り込みですかえ」  「それも面白かろう」

「こいつは楽しみだ」  猪の吉が顔を引き締め帳場に向かった。

「お蘭、そちも風呂を浴びたらどうじゃ」



 入れ替わりに猪の吉が番頭を伴って戻ってきた。

「地酒にございます、それに漬物をお持ちいたしました」

「番頭、我等はこういう者じゃ」  求馬が嘉納主水の書状をみせた。

「大目付さまのお知り合いにございますか、これは失礼をいたしました」

 番頭が額を畳みに摺りつけ、逃げるように慌てて去った。

「旦那、一杯」  猪の吉が湯呑みを差し出した。

 求馬が一気に飲干し、猪の吉もご機嫌で咽喉を鳴らした。四半刻ほどで

お蘭が戻ってきた。  「師匠、地酒です」  「済みませんね」

 お蘭が湯上りの色っぽい顔をみせ湯呑みを手にした。

「ご免下されまし」  廊下から声がして格子縞の着物を羽織った中年の男と、

目つきの鋭い男が現れた。



「わたしは、この旅籠の主人にございます。こちらは宿場の十手持ちの韮崎の

小兵親分にございます」  「十手持ちの親分が、あっしらに用ですかえ」

「小兵と申します、皆様は大目付様の謂れのあるお方とか、失礼ながら書状を

拝見いたしたくお邪魔をいたしました」

 紺縞の絣(かすり)を小粋に着こなし、股引姿が良く似合う男である。



「へい、稼業がら是非ともお願いいたします」  飽くまでも低姿勢である。

「稼業なら仕方があるまい、確と見ることじゃ」  求馬が書状を手渡した。

「一切の取調べなく通行させるべきこと。大目付、嘉納主水」

 書状に目を通し、「へへっ」と小兵と主人が平伏した。

「親分、稲田屋に村松三太夫と名乗る男が逗留した筈じゃ。その男は公儀の

科人(とがにん)、夕餉前の腹ごなしで退治いたす所存じゃ。異存はあるまえな」

 求馬が白面の相貌をみせぼそりと訊ねた。

「恐れながら申しあげます。ついでに稲田屋をお縄にしたく存じます、差し支え

なければ、お供をお許し下さい」  小兵が額をこすりつけた。

「良かろう、夕餉は何刻ころじゃ」  「はい、六つ半(午後七時)にございます」

「左様か、料理に注文がある。塩漬けの鯖を頼みたい」

「畏まりました」  主人が驚き顔で応じた。

「親分、わしは夕餉前に乗り込む、さよう心得よ」

「へい、畏まりました」  二人が興奮の面立ちをみせ下がって行った。

「旦那が、料理に注文をつけるなんて初めてではありやせんか」

 猪の吉が不審そうに訊ねた。

「韮崎には海産物が荷揚げされる、最近、海の物が喰いたくてな」

「驚いたね、これから命の遣り取りをしようってのに」

 求馬の豪胆な態度に感心し、鯖なんて久しぶりだなと猪の吉も思った。

 刻限前に小兵の配下が、厳重な身形で稲田屋の軒下に潜んだ。

 それぞれが指股、袖搦、突棒を揃えた物々しさであった。

 清水屋から黒羽二重の着流し姿で求馬が、うっそりと痩身を現した。

 猪の吉が宿衣をはしょった股引姿で後に従っている。

 求馬が恐れげもなく痩身を稲田屋の玄関に入れた。

「何者だ」  「サンピンか」  人相の悪い子分達が長脇差をもって立ち上がっ

た。  「この屋に村松三太夫が滞在しておろう」

「ここは稲田屋だぜ、怪我をしねえうちに退散しな」

 凄んだ男が顔色を変えた、求馬の痩身から殺気が噴きあがったのだ。

「野郎っ」  長脇差を振りかむった男が悲鳴をあげ土間に転がった。

 求馬が手首をねじりあげ、そのまま土間に投げ捨てたのだ。

 それを見た小兵の配下が、喚声をあげて玄関に殺到した。

「やい小兵、これは何事だ」  脂ぎった男が土間に現れ凄んだ。

「うるせえ、稲田屋、年貢のおさめ時だ。神妙にしろい」

 小兵親分が十手を煌かせた。

「うるせえな」  赤鞘の大刀を腰にぶちこんだ村松三太夫が現れた。

「おめえか」  求馬を見た三太夫の垂れ下がった目蓋が瞬いた。

「御用だ」  「神妙にしろえ」  小兵の配下が突棒で殴りかかった。

 三太夫の腰から脇差が煌いた。  「ぎやっー」  諸刃の刃で一人は胸、

いま一人が首筋から鮮血を噴き上げた。

「貴様の相手はそれがしだ」  求馬が乾いた双眸をみせ進み出た。

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Last updated  Apr 15, 2008 11:08:48 AM コメント(10) | コメントを書く
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