教室に戻って昼食を終えると、昼からの競技が始まる。
私はもう参加種目がないので、グランドを見下ろせる廊下に椅子を出して、そこからのんびり眺めていた。
団席は人で埋まっている。
もともと生徒数が多い高校なので、本当に座る場所がないのだ。
先生の叱責(しっせき)を受けたときのカモフラージュに、昨日までかかっていた、くす玉の材料を手にしていた。
競技終盤にくす玉をかかげ、結果発表の後、団席に戻ってクス玉を割る。
優勝を前提に中身をつくっているけれど、この時ばかりは、負けても「祝! 優勝!」の垂れ幕がおさまっているクス玉を割るならわしになっていた。
競技は消化され、最後を飾る全学年リレーが始まった。
各学年から男女二名ずつ選ばれ、各団ごとに整列する。
奇数走者は女子、偶数走者は男子との規定以外、決まりごとはない。
伝統としてアンカーは三年の男子が走る以外、順番は自由だった。
そこが戦略として、各団こだわる箇所でもある。
全学年リレーになると、私のように教室や他の場所でさぼっていた生徒も、狭い団席や、グランドの周囲に戻る。
閉会式にすぐ参列できるようにするためと、なにより、全学年リレーを間近で見るためだ。
後になるほど走行距離が長くなるスェーデンリレー。
第一走者だったカエは、見ると第五走者に順番が変わっていた。
初めに差をつける作戦を変更したらしい。
カエとしては心外の極みだろう。
体育大会終了しだい、文句を長々とこぼしそうだ。
思いながら、団席からあぶれ、トラックの周囲に立つ由里子のそばに行った。
由里子は私に気づくと、興奮気味に手をつかんだ。
「見てよ、あれ」
促され、指差した方向を見て驚いた。
「圭介が……アンカー?」
圭介も、なんだかんだ言いながら、陸上部の短距離選手だ。
全学リレーの走者にリストアップされていた。
アンカーは三年の男子が走る伝統なのに。
なのに、二年の圭介が、なぜ。
「アンカーだった田上先輩が怪我したんだって。で、急遽、走者を変更して、やむなく圭くんがアンカーに回されたらしいよ」
午前中、カエが借り出された「白が土壇場で順番を変えた」理由はこのためか。
「それだけじゃなくて、ほら――」
由里子が指差し、促された先を見て、私はぎょっとした。
「橋川!?」
そう。なぜか橋川までアンカーになっている。
負傷した走者に変わって順番を変えた圭介なら納得がいく。
なぜ、橋川までアンカーになっているの。
「圭くんが……挑発したみたい」
ひそめた声で、由里子がつぶやく。
「挑発?」
「二年と競うなんて、大人気ないんじゃない?……とか何とか、瀬口先輩に」
瀬口先輩は、わが青団の団長であり、この全学リレーのアンカーだ。
くらり、とめまいを感じる私に、由里子はさらに詳しい状況を話してくれた。
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