すい工房 -ブログー

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2006年09月30日
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 その想いは、今もずっと胸のうちに残っている。
 中学の、橋川が転校してきたころから考えていた。

 小学校低学年の頃だったら、同小学校出身者も覚えているけれど、そんな話はカケラも耳にしない。
 と、なると、小学校に入学する前のことだ。

 同級生の中には、保育園にも幼稚園にも通っていない子もいたから、橋川もそうかもしれない。
 だとしたら、顔見知りがいないのもわかる。

 私が祖父母の家に遊びに来ていた頃。
 そのころ、どこかで会ったのではないのか。

 あのころは子供の特権で、名も知らぬ子等と遊んでいることも度々あった。
 おまけに私は放浪癖も持っている。
 親の知らぬところで知人ができてもおかしくない。

 その頃の私は、周囲の状況に無頓着だった。
 ただ、目の前にある出来事を、そのまま受け止めていた。
 名も知らずとも、初対面でも、気負いなく声をかけていた。

 橋川とはそのころ知り合ったのでは。

 確信に近い想いには、根拠がある。
 いつだったか、祖父が自分のアルバムを見せてくれたときに、橋川らしき子供が移映っていたのだ。
 祖父母が両側に立ち、恥ずかしそうにはにかんだ顔をした男の子。
 側には、カメラ目線をはずした、犬のタロも映っている。

 その時、中学三年だった私は、一目見て橋川だと思った。
 祖父にこの子は誰かと聞くと、祖父は写真を眺めて考え込み、長い時間をかけてようやく思い出した。

「タロを飼ってたころにな、よく遊びに来ていた子だなぁ。……名前? ……さあ。『しらいし』……だったかなぁ」

 タロとは、以前飼っていた柴犬の名だ。

 祖父がはっきりしないので、祖母に聞くと、祖母はよくその子のことを覚えていた。

「そうそう。タロに遊びに来ててねぇ。……まあ、懐かしい写真。撮ってたんだねぇ。……名前? 『白石』……なんだったかしらねぇ。『ぼうや』って呼んでたからねぇ」

 苗字を覚えているのも、その子を迎えに来た親から聞いたのだという。

「橋川じゃなかった?」
「そんな名前じゃなかったよ」

 似ている子がいると告げると、祖母は「その子に聞いてみたら」と簡単に言う。

 そんなに簡単に聞けるわけがなかった。
 姓が違うというのは、両親の離婚、再婚など、何かしらの事情があったに違いないのだから。
 そんな話を、親しくもないクラスメイトに、どう聞けばいいというのか。



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最終更新日  2006年10月08日 09時17分25秒
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