すい工房 -ブログー

すい工房 -ブログー

2006年09月30日
XML
 私にも、心あたりはある。
 小学生になる前の記憶はあやふやなものが多いけれど、白く霞がかった情景の中で、写真に映る子と、そっくりな男の子と遭遇したことがあった。

 あのクチナシの庭に迷い込んだ、あの家の側で。
 その子の面影が、あのクチナシの庭で見た女の子と似ていた。

 後になって気づいたけれど、その時、縁側に立っていた女の子は、なぜか男の子用の着物を着ていた。

 写真に映る、橋川とおぼしきこの子と、クチナシの庭で会った女の子は兄妹なのではと、ひそかに考え続けていたのだ。

 一時期は、それを確かめたくて、圭介や小学校の同級生に聞いてまわっていた。
『しらいし』という名と、クチナシの庭の咲き誇る家屋を知らないかと。

 どちらも、みな首をひねるばかりで、なんの情報も得られなかった。

 あれほど気になって仕方なかった写真も、クチナシの庭についても、今はあの時の情熱は消え去ってた。

 橋川に近づくことさえ……怯んでしまうのだから。
 彼と関わりに、足を踏み出せずにいた。


 ベットに寝転んで体を休めていると、部屋のドアをノックする音がした。

「お母さん?」
 壁掛け時計を見ると、もう六時を過ぎている。
「ごめん。今日は晩御飯いらない」
 重い吐息を吐きながら告げると、カチャリと音を立ててドアが少しだけ開いた。

「……俺。圭介だけど」

 思いもしかなった声に、私は慌ててベッドの上に飛び起きた。
 眠りかけていた意識から、一気に目が覚めた。

「な、なに? どうしたの?」
「入ってもいい?」
「……いいけど……」

 了承を得て、圭介は部屋に入ってきた。
 Tシャツにジーンズと、私服姿に着替えている。
 対して私は、帰った頃のままのジャージ姿だ。

 私は改めて時計を見た。
 六時といえば、まだ部活をしている時間ではないのか。
 訊くと「練習にならないから、みんなで強制終了」と答え、円卓の前に腰を下ろした。

 私には、耳に痛い話だった。
 圭介の変動的な人気の産物である、周囲をとりまく女の子の状態は、これまで幾度か目にしている。
 今回はこれまでに例のない、騒ぎっぷりになるだろうとは思っていた。

 圭介の打開策を断ってるだけに、何だか悪い気がしてならない。 




←18 20→



ブログランキング





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006年10月08日 09時20分09秒
コメント(0) | コメントを書く
[クチナシの庭 1~80] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

カレンダー

プロフィール

高月すい

高月すい

コメント新着

高月@ Re[1]:手のひらに「うおのめ」。(09/19) >石井小太郎さん 返事、遅くなりまし…
石井小太郎@ Re:手のひらに「うおのめ」。(09/19) 1週間前に左手親指にトゲが刺さったようだ…
shera@ はじめまして クチナシの庭を拝見しました。 とても引…
佐藤YUKI @ 寮なので夜ヒマで… 寮生活なので、夜がヒマで辛いです(汗)…
梅(b^▽^)b@ 復活 熱烈歓迎 人生長い道のり…… いろいろありますよね…

キーワードサーチ

▼キーワード検索

バックナンバー

2026年08月
2026年07月
2026年06月
2026年05月
2026年04月

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: