すい工房 -ブログー

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2008年01月27日
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「――だれから、聞いたの?」

 あえぐように、ようやく出てきた言葉は、それだった。
 今の選考関係で、私とユズルのつながりが知れるのは好ましくない。

 なのに、今、直接選考に関わっている川上さんが、私とユズルの関わりを聞いている。

 ……そこにどんな意図があろうと。

 問題は、その情報源だ。

 川上さんはそんな私の気持ちに気づかない様子で、頬をさらに染めて「三島さんが、そういったことを、話されてたから――」とうつむいてつぶやいた。

 川上さんが主体となる初めての面談のとき。
 その相手先がユズルの会社だった。

 緊張と不安で、何度もトチッて間違って、なんて失態を繰り返したっていうのに、ユズルはおだやかに川上さんを受け入れていた。

 ユズルの同僚がイラだちをあらわにしても「初めてなんだから」とたしなめてもくれた。

 その後も、仕事上、川上さんを訪ねたときも、その場でうまく返事ができない川上さんを「あせらなくてもいいから」と、長い時間、待ってくれたのだと言う。
 そのときも「お時間をとらせて、すみません」と頭をさげる川上さんに「気にしなくていいよ」と苦笑をうかべるにとどめていた。

 川上さんには、なぜユズルがそう気をつかってくれるのかが、わからなかった。
 私から担当を受け継いだ新人だから気をつかっているようには思えなかった。

 それであるとき、口をついて出てしまったそうだ。
 なぜ、気にかけてくれるのかと。

 ユズルはそういわれて、自分の行為に気づいたようだった。
 出すぎた真似をしたかな。
 と、恐縮しつつも「他の人には話さないでほしいんだけど」との前置きを川上さんがうなずいた上で、この面談が始まる前から、私と知り合いなのだとの事実をつげた。

 途中から代役を退かなければならなくなった私が、そのことを悔やんでいて、川上さんのことをお願い。と頼まれていたことも。

「でもチサ――、じゃない、柏木さんと知り合いだからって、選考に色をつける必要はないからね」

 そういったユズルに、川上さんは、判断するのは主任だからとも説明しておいたという。
 ユズルもそれを聞いて、安堵したようだった。

 ユズル本人から、話を聞いたと知って、私は胸をなでおろした。
 ほかの誰かに気づかれたっていう、可能性は消えた。

 不正をしているわけでもないし、別に気にすることでもないのだろうけど。
 ……なんとなく。そうしたつながりを他に知られるっていうのは、胸がむずむずして気持ち悪かったから、川上さんが知ったと聞いて、ほかにも知れてるんじゃないかって、あせってしまった。

 確かに、ユズルには「川上さんをお願い」と頼んでいたけど。
 それは「慣れてないから大目に見てね」程度の意味だったんだけれど。

 まあ、ああした気をつかうのは、ユズルの性分だから。
 ユズルらしいこと、この上ないんだけれど。

 ……もう少し、考えて行動して欲しかった。

 私は安堵の息をつきつつも、シンと冷えた胸のうちを、感じていた。
 川上さんがユズルと私の関わりを知って、驚いたというのもあったけど。
 ほかにも。
 彼女の行為が、示唆する先が見えて。

 息が詰まるのを、感じていた。








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最終更新日  2008年01月27日 10時31分05秒
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