すい工房 -ブログー

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2008年09月15日
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 そのあとのことを、俺は覚えていない。

 おばさんが言うには、そのあと俺は、にっこりと笑って自分の名を明かし、そして何がどうなったのか、はきはきと状況を説明したのだそうだ。

 舞台度胸はあると、自分でも思っているが。

 この時は過去の自分を褒めてやりたいと思う。
 いや、本当に。

 そのおかげで、おばさんの好印象を得ることができたのだから。

 そうでなければ、松井と久坂の、今のような家族ぐるみの付き合いなどなかっただろう。

 それは。
 小太郎とも……ソラとも。
 共にすごしてはいないということだ。

 小太郎とソラと過ごす日々は、今も思い出せるほど色鮮やかで。
 その時の感情も、同時に胸に蘇るほどだ。

 人見知りするソラは、小太郎と遊ぼうと松井家を訪問した俺を、始めのうちはおばさんの後ろに隠れて、こわごわと俺を見ていた。

 それも回数を重ねるにしたがって、次第に気を許してくれて。
 一度なついてしまえば、あとはくったいない笑顔を向けてくれた。

 おぼつかない足取りで、懸命に俺と小太郎のあとをついてこようとする姿を見ると。

 何ともいえない愛おしさを感じたものだ。

 寄せられる無垢な信頼にまた、嬉しさを覚えていた。

 ソラが思春期を迎える頃まで。
 俺とソラは、周囲から兄妹とよく間違えられるほど側にいたし、仲がよかった。

 ……ソラが、年頃になって。

 言動の端々に、小さな壁を感じるようになっていた。
 それも初めは、勘違いだと思っていた。

 ……ソラが、何も言わずに留学するまでは。

 高校に進学するときも、進路相談を受けたというのにだ。

 ソラが。

 俺と距離をとろうとしていると。
 実際、距離をとっていると。
 実感すると同時に、思い知った。

 その時の、何ともいえない焦燥感は。
 いま思い出しても、重く、胸にのしかかってくる。






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最終更新日  2008年09月15日 23時58分40秒
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