すい工房 -ブログー

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2008年09月29日
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カテゴリ: 冷えた指 1~



 その機械の前に立って、おじさんは作業を始めていた。

 私には、それがどういった作業か、わからないけれど。
 ゆっくりとした動作で――左腕は、おぼつかなさを感じさせるものだったけれど。

 危うさは感じなかった。

 何かを削っているのか、甲高い金属音が響いている。

 それが。
 かつておじさんがしていた仕事だと……何となくだけれど、わかった。

 長年続けてきた作業は体に染み付いていて。

 たとえ身体に不具合が生じても、それを他で補っていた。

 左腕が思うように動かなければ、その分、右腕を動かして。
 左足に力が入らなければ、その分、右足に力をこめて。

 そうしながら、ゆっくりとだけれど作業をこなしている。

 ……だけど。
 以前と比べたら、満足のいく出来にはならないようだった。

 しばらく作業を続けたあと、おじさんは手につまんだものをしげしげと眺めて。
 ……落胆したように、肩を落としていた。

 だけど。

 すぐに次のものを手にして。
 作業にとりかかって。

 作っては落胆し、作っては作業の改善を図り。

 そうした行為を繰り返している。

 何度も繰り返される行為に。
 ……私はそっと、工場を出た。

 おじさんの様子を見る限り、作業中の危険は感じなかった。

 自分でも、体のことをわかっているのだろう。
 無理をせず、自分のペースで作業を続けていた。

 通常就業時間内に、作業をしないのは、自分の体がどういったことか、わかっているから。
 他の人に迷惑をかけないように、仕事中は工場から距離をとり。

 時間外に、作業する。

 現場に戻りたいという、、おじさんの意思を強く感じた。
 そんなおじさんを、心配だからといっても、覗き見するのが失礼に思えて、私は工場をあとにした。






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最終更新日  2008年09月29日 21時08分19秒
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