すい工房 -ブログー

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2008年12月07日
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カテゴリ: 冷えた指 1~



 その間、和之はじっと私を見つめるだけで。

 私は、そんな彼の視線を正面から受け止めるのに精一杯だった。

 気まずさに、何度か目をそらしたくなったけれど、それをどうにか我慢していた。

 続く沈黙に、息苦しさを覚えていると、やがて和之が口を開いた。

「……それで?」

 ぽつりと、つぶやくようにこぼれ出た言葉だったけれど、しんとした静寂に包まれる部屋の中だったから、そんなか細い声でも、私の耳に届いていた。

 先を促す和之が、何を知りたいのかがわからなくて、私は眉をひそめて「何のことか」と表情で問い返す。

 察した和之が、言葉を続けた。

「だったら、どうだっていうんだ?」
「……否定は、しないの?」
「否定も何も。
 わかって言ってるんだろ?
 家と、彼女との関係」
「ある、程度なら……」

 私の言葉に、和之は軽く目を見張った。

 和之はどうやら、私がかなりの確信を持って、この話を切り出したのだと思ってたらしい。

 だけど、私の考えが想像の範疇だと知って、口をすべらせたと感じたのだろう。

 一度眉間に皺を寄せたけれど「まあ、いい」とつぶやいて「話って、それだけ?」と続けた。

「それだけって――」
「だったら、今度は俺から。
 今後いっさい、家には余計な接触をしないでくれる?」
「余計……?」
「余計だろ。
 気になったかどうか知らないけど、家まで押しかけるなんてさ」
「それは――」

 家まで行くつもりは……泊りがけで長居するつもりなんて、なかった。

 ただ一目、おじさんの容態が確認したかったただけ。

 五分、十分ですむ予定だった。
 その、つもりだった。

「――和之が、連絡してくれていれば、あんなことするつもりなかった」
「だから。人の勝手だろ。
 家族と連絡をとるかとらないか。
 そんなことまで口出しする権利、志穂にあんの?」
「あるわよ」

 言い切った私に、和之は目を見張った。

「なん――」
「私は、和之の連絡先を知ってた。
 雅則君が私を訪ねてきたとき、教えることだってできたのよ?
 ……だけど、和之が連絡をとらない、家族からの電話も受けてつけてないのは、何か理由があったからだって、思って、知らないフリをした。
 ……あのあと、私、言ったわよね?
 連絡をとってあげてって。
 なのに、和之はそうしなかった。
 ほんの少しでもいい。
 現状なんて、話さなくていい。
 ただ、元気にしてるからって、話をしてくれるだけでよかったのに。
 あんなに心配してた雅則君を見て、知っていて。
 連絡先を知らないって――和之とは別れた後は会ってないって、ウソをついた私が。
 どれだけジレンマを抱いたか。
 罪悪感を感じていたか。
 和之が私と同じ立場になったらって考えたら、わかるでしょう?
 ……和之だったら。
 私と同じ状況になって、そ知らぬふりなんてできた?」

 一度にまくしたてた私の気負いに押されて、和之は押黙ってしまったけれど。
 反発するように、告げてきた。

「連絡するしないは、俺の勝手だろ」
「連絡先を教える、教えないも、私の勝手よね?」

 言い切る私に、今度こそ和之は、口をつぐんでしまった。







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最終更新日  2008年12月07日 12時15分53秒
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