2007年09月08日
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カテゴリ: OPERA
チューリヒ歌劇場日本公演2007
最終日

リヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」

2007年9月8日 東京・渋谷・Bunkamuraオーチャードホール

陸軍元帥ヴェルデンベルク侯爵夫人(S)/ ニーナ・シュテンメ

オクタヴィアン(Ms)/ ヴェッセリーナ・カサロヴァ

ゾフィー(S)/ マリン・ハルテリウス

レルヒェナウのオックス男爵(Br)/ アレフレッド・ムフ





管弦楽 チューリッヒ歌劇場管弦楽団

合唱 チューリッヒ歌劇場合唱団

演出 スヴェン・エリック・べヒトルフ

装置 ロルフ・グリテンベルク

衣装 マリアンヌ・グリテンベル

照明 ユルゲン・ホフマン


ヴェルザー=メスト!!!
やっぱり彼はすばらしかった。

きょうは、何もかもがすばらしかった。

本年度ベストワン! 出ちゃったかもしれない~

ヴェッセリーナ・カサロヴァ!

やっぱり彼女も神様にもらった声を持っている。
生で聴くとぜんぜん違う。
彼女の小柄な体そのものが、楽器だ!
すばらしい声。
これは生で聴かないとわからない。


やっぱりベヒトルフはすばらしかった。
感嘆しっぱなしだった。

こうしてオペラというものは三拍子(音楽・歌手・演出)揃わないと完璧と言えないから大変な「総合芸術」なんだよね。
きょうは完璧に三拍子揃っていた。

しかもチューリヒ歌劇場!
椿姫とは見違える出来。
やっぱドイツ語圏だよね~
イタリア語のオペラをやるよりやっぱこれですよ。

それからリヒャルト・シュトラウスだよね~
私はこの作曲家のすばらしさがぜんぜんわかってなかった。
この作品はモーツァルトとシュトラウス父子へのオマージュなのである。
すばらしい作品だ。
モーツァルトとシュトラウス父子に似ているからではないんです。
オマージュしつつ、越えていこうとしているからです。
そして多分ヴェルザー=メストは今生きている指揮者の中でもっともRシュトラウスを理解している男かもしれない。

きょうのオケはすばらしかった。
最初から最後までまるで…まるで…形容しがたい。

私はカルロス・クライバーが指揮したフォン・オッターの「ばらの騎士」で予習したので、正直、この作品を超えるのは至難の業だろうなと思いながらきょうは軽い気持ちで見にいったのだ。
とんでもない。

名演とは、このこと。
リヒャルトシュトラウスはクラシックの作曲家の中でもっとも難しい作曲家の一つだからだ。

第1幕

きょうもいつもどおり、淡々とした表情のヴェルザー=メストが現れる。
序曲。

幕が開く。
そこは陸軍元帥ヴェルテンベルク侯爵夫人のベッドルーム。
天上まで届く高い窓。
壁には一面鳥のオブジェ。
室内にはなぜか木が4本生えている。
天上には穴が空いている。

鳥、というのはあとで明らかになるが、そのうちに「かごの鳥」になっている女性を象徴しているのだ。

手前の布団に寝ているオクタヴィアン。
朝の光。
侯爵夫人(マリー=テレーズ)はとっくに起きて、窓辺にたたずんでいる。

オクタヴィアンは侯爵夫人と夜を過ごせて、楽しくてたまらない。
浮き浮きしている。

カサロヴァは、くりくりした瞳で、まるで少年のように愛らしい。はまり役だ。
しかもその声といったら!
すばらしい。
独特の低さで、独特のまろやかさがある。
カレン・カーペンターの声のようにアルファ波が出ている。

一方侯爵夫人は「元帥の夢を見た。」と言い出し、オクタヴィアンを不快にさせる。

「でも侯爵はクロアチアで山猫だかを狩っているんだから。」
「あの人は足が速いのよ。以前にも…」
「以前にもだって!?」
「…知らなくていいこともあるのよ。」

小姓のモハメッドが朝ごはんを持ってくる。アジア人が演じている。

「人が来たわ。隠れて!」
「だめじゃない、剣をベッドに置いていくなんて…」

「ぼくが情事にうといのをバカにするなんてひどいな…」

オクタヴィアンはその間に、布を体にドレスのように巻きつけ、頭にはターバンを巻き、召使のように装って出てきた。

夫人のいとこのオックス男爵がやってくる。
彼は野卑で、強欲で、エッチで自分勝手なキャラクター。
実は「椿姫」の日に、この役を演じるアルフレッド・ムフさんも会場でご覧になっていた。その時の見た目の印象が、背が高くてダンディー!で上品!だったので、こんな嫌な男を演じられるんだろうかと不思議に思っていた。
ところが杞憂であった。
彼は黒い長いかつらをかぶっている。
すごく押し出しの強い尊大な男を演じきっていた。しかもこのキャラは「可愛い」ところもないといけないのだ。「バカ」を演じられるぐらいに。
見事だった。

オックス男爵は慌てて辞去しようとしたオクタヴィアンを入り口で突き飛ばしてしまう。
オックス男爵は女装した美しいオクタヴィアンに心引かれる。
さっそくモーションかけまくり。
侯爵夫人は侍女の「マリアンデル」だと紹介する。

オックスは今度資産家の娘と結婚するので、力になってほしいと頼みに来た。
夫人は「きょう公証人が来るから」と、協力する。
しかも銀のバラを持って婚約者を訪れる、「ばらの騎士」をオクタヴィアンに頼もうと言い出す。

オクタヴィアンがテーブルの上のクロワッサン(笑)を「銀のバラ」に見立てて演技するシーンがあったが、場所がはっきりしない。

この作品て、実は裏の主役はオックス男爵なんだよね。
なぜなら侯爵夫人は1幕と3幕にしか出てこないからです。
ほとんどオクタヴィアンとオックスを中心に話が展開していくんです。

オックス男爵はオクタヴィアンに無理やりキスする。
顔をそむけて、テーブルクロスで口をぬぐうオクタヴィアンがめちゃめちゃ可愛い。
カサロヴァは演技もすごく上手で、わざと猫背でどかどか歩き、少年を演じていた。

オックス男爵はずうずうしく朝食を食べ始める。意地汚いという彼の性格を表す。2幕でもソフィーの家の厨房で食べまくっていた(お付の者も)。

そうするうちに、陳情ごとの団体がやってくる。
要するに金持ちにたかりに来たのだ。
貴族の未亡人が遺児を3人連れてやってくる。
帽子屋や、動物屋がやってくる。
そしてこれがびっくりだった。
歌手!
歌手はなんとピョートル・ベツァーラが歌ったのだ。
これは元からその予定だったのだろうか?
だとしたら信じられない。
椿姫の主役が、日替わりで公演している別の演目にカメオ出演するなんて!

しかも演出がまた変わっている。
この歌手は歌手でも、
変わった床屋が奥様の髪を切る間にお慰みにお聴かせする自動人形の歌手なのだ。
ベチャーラは顔を真っ白に塗られ、箱に入っている。

そんでもって声は…
あちゃ~!
ベチャーラじゃなかったらふう~んで終わるんであるが、ベツァーラなんだからそれじゃすまない。声は出ないし、ひび割れているし、ひどかった。
ここだけがきょうのオペラで不満だった点。
でも演出は面白くて、奥様は髪を整えているのも忘れて、興味津々で人形に近づき、上がっている右手を下ろす。するとビヨ~ンと左手が上がる。
奥様は酔いしれて、人形の回りを回り、ついには前の床に陶然と横たわってしまう。
すると人形のねじが止まってしまう(笑)。
フルートを演奏していた男がねじを巻く。

また歌いだす。ところが上手の方で公証人と持参金を出させる話でもめていたオックスが、
『持参金!」と絶叫する。
その大きな罵声で人形が壊れ、男爵の方を向いて止まってしまう。
ベツァーラのガラスのような、グレーがかったブルーの瞳が男爵を凝視する。
しかしその目は焦点が合ってない。
ベツァーラもかなり面白がってこの役をやってたのかしら。

人々は凍りつく。
男爵の野卑で場違いな行動。
侯爵夫人はついに切れる。

「あなたは私を老けて見えるよう髪を結ったわね!」
不機嫌になってしまう夫人。
ようやく人々は出て行く。

ほっとした夫人。
時の流れをなげく。
若い頃は『可愛いテレーザちゃん』だったのに、今は、「あのテレーザちゃんがおばあちゃんになったのね」って言われるんだわ。
自嘲気味にあきらめたように歌う。
彼女が不安なのは、若く美しい恋人を持ってしまったから。
彼がいつかは自分に飽きて去っていくことを考えただけで恐ろしいのだ。

男装に戻ったオクタヴィアンがやってくる。
夫人が不機嫌なのがどうしても理解できないオクタヴィアン。
夫人につれなくされ帰される。
夫人は後悔する。
「私ったらキスもしてあげなかったわ。」
召使に伯爵を呼び戻すよう言う。
召使たち4人は口々に彼がいかに脱兎のごとく憤然として駆け去ったか歌う。ここはうまくなかった。ばらばらで下手だった。

第1幕了。

大拍手!






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最終更新日  2007年09月09日 19時48分33秒
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