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2020年02月10日

ミレッラ・フレーニのこと　ｂｙ名古屋のおやじ

カテゴリ： OPERA

Mirella Freni was one of the finest exponents of light lyric singing and will be greatly missed

She made her Royal Opera debut in 1960 and went on to sing a number of major roles with us over the course of an extraordinary career https://t.co/PefdskFykg
February 10, 2020

ご冥福をお祈りいたします。
オペラ通の名古屋のおやじさまから寄稿いただきましたので
ご紹介させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

＊＊＊

ミレッラ・フレーニのこと

フレーニが亡くなった。私のオペラ鑑賞歴は、彼女と共に始まったと言っていい。彼女の歌声との出会いは、中学１年生の時。カラヤンの指揮する『運命の力』の序曲を目当てに購入した『オペラ・スター・チャリティ』というガン撲滅のためのチャリティレコード（おそらく一度もCD化されていない）に彼女が参加していたのである。歌われていたのは、ベッリーニの『テンダのベアトリーチェ』の中の一曲。『運命の力』の序曲を目当てに購入したレコードだったが、それよりも、そこに参加していたフレーニをはじめ、ドミンゴやベルガンサ、フッシャー＝ディースカウなどの名歌手たちの美しく多彩な歌に忽ち魅了され、日曜日の午後にFMで放送されていた「オペラアワー」を聴くようになった。こうして、オペラとの長い付き合いが始まった。

フレーニの舞台に初めて接したのは、1986年の3月23日。彼女がジュゼッペ・シノポリの指揮でマノン・レスコーを歌ったウィーン国立歌劇場の来日公演だ。当日、東京は季節外れの大雪で、会場のNHKホールに、いつもの何倍も時間をかけて、ようやくたどり着いた。ゴム長を履いて、出かけたような記憶もある。やっと、フレーニが聴けたと感激し、いつまでもこの時間が続いたらいいのにと思った。「やっと」というのは、その数年前に彼女はNBS主催の「オペラ・ガラコンサート」の第1回目に参加することになっていたのだが、来日したものの風邪で出演をキャンセルしてしまったからだ。

このガラ公演の数日前、メトのショップで、フレーニのサイン会があった。嬉々として出かけていき、彼女に「雪の降った東京で行われた、マノン・レスコーの舞台で、初めて、貴女の素晴らしい歌に接することができて、どんなに幸せだったか」と伝えた。「日本から来たのね、カラヤン、クライバー、クラウディオ（アッバードじゃなくて、ファーストネームだったと思う）、シノポリ…どれも、みんな素晴らしい思い出だわ」と、プリマドンナらしからぬ気さくな物腰で応えてくれた。

フレーニの歌を聴くと、いつも「充填」という言葉を思い出す。彼女は、カラヤンをはじめとする名指揮者が作り出す大きな枠組みを、輝かしくまろやか歌声で、隙間なく濃密に埋める。その枠の作りが巧みであればあるほど、フレーニの歌は輝きを増す。歌の面白さではレナータ・スコットの方に軍配が上がるかもしれない。しかし、フレーニが名指揮者たちと作り上げた極上の「濃い」歌は比類のないものだ。あのような見事な歌を、今後聴くことがあるのだろうか。

名古屋のおやじ

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