2022年11月15日
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カテゴリ: OPERA



Boris Godunov by Modest Mussorgsky
Libretto : Modest Mussorgsky, after Pushkin's play
Opera in 4 Acts with a Prologue
Sung in Russian
New Production
15 Nov - 26 Nov, 2022 ( 5 Performances )

Tue, 15 November 2022, 14:00(World premiere)
OPERA PALACE



Conductor: ONO Kazushi
Production: Mariusz TRELIŃSKI
Set Design: Boris KUDLIČKA
Costume Design: Wojciech DZIEDZIC
Lighting Design: Marc HEINZ
Video Design: Bartek MACIAS
Dramaturg: Marcin CECKO
Choreographer: Maćko PRUSAK
Hair and Make-up Design: Waldemar POKROMSKI

Boris Godunov: Guido JENTJENS
Fyodor (Feodor): KOIZUMI Eiko

Kseniya’s nurse: KANEKO Mika
Prince Vasiliy Shuysky: Arnold BEZUYEN
Andrey Shchelkalov: AKITANI Naoyuki
Pimen: Goderdzi JANELIDZE
The Pretender under the name Grigory: KUDO Kazuma

Misail: AOCHI Hideyuki
The Innkeeper: SHIMIZU Kasumi
The Yuródivïy: SHIMIZU Tetsutaro
Nikitich, a police officer (Hauptmann): KOMADA Toshiaki
Mityukha: OTSUKA Hiroaki
The Boyar in attendance (Leibbojar): HAMAMATSU Takayuki

New National Theatre Chorus
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra

新国立劇場 
モデスト・ムソルグスキー
ボリス・ゴドゥノフ<新制作>
プロローグ付き全4幕 ロシア語上演
2022年11月15日[火]~11月26日[土]
プロローグ・第1幕:70分 第2・3幕:40分 第4幕・フィナーレ:45分

鑑賞日:2022年11月15日(火)14:00
新国立劇場 オペラパレス

指 揮】大野和士
演 出】マリウシュ・トレリンスキ
美 術】ボリス・クドルチカ
衣 裳】ヴォイチェフ・ジエジッツ
照 明】マルク・ハインツ
映 像】バルテック・マシス
ドラマトゥルク】マルチン・チェコ
振 付】マチコ・プルサク
ヘアメイクデザイン】ヴァルデマル・ポクロムスキ

ボリス・ゴドゥノフ】ギド・イェンティンス
フョードル】小泉詠子
クセニア】九嶋香奈枝
乳母】金子美香
ヴァシリー・シュイスキー公】アーノルド・ベズイエン
アンドレイ・シチェルカーロフ】秋谷直之
ピーメン】ゴデルジ・ジャネリーゼ
グリゴリー・オトレピエフ(偽(にせ)ドミトリー)】工藤和真
ヴァルラーム】河野鉄平
ミサイール】青地英幸
女主人】清水華澄
聖愚者の声】清水徹太郎(歌唱のみの出演)
ニキーティチ/役人】駒田敏章
ミチューハ】大塚博章
侍従】濱松孝行

合唱指揮】冨平恭平
新国立劇場合唱団
TOKYO FM 少年合唱団
東京都交響楽団

共同制作:ポーランド国立歌劇場
Co-production with Polish National Opera

***
原設定・声種、FACH(数種の資料による)
Boris Godunov  bass-baritone Fach : dramatic bass
Fyodor (or Feodor) mezzo-soprano
Kseniya (or Xenia) soprano
Kseniya's nurse contralto
Prince Vasiliy Ivanovich Shuysky tenor
Andrey Shchelkalov bass-baritone
Pimen bass Fach : dramatic bass
Grigoriy/False-Dimitri tenor
Varlaam bass  Fach : buffo bass
Misail tenor
The Innkeeper mezzo-soprano  Fach : dramatic mezzo
The yuródivïy 'Holy Fool' tenor
Nikitich, a police officer bass
Mityukha, a peasant bass
The Boyar-in-Attendance tenor
Chorus, silent roles
※1869 Original Version

 トレリンスキの新演出ボリス すごかったです!
 今までにない読み替えが斬新すぎて驚愕ですが、それが物語の根幹をなしてます。
 なにしろ世界初演の場がTokyoということで、大いに誇れると思います。
 このような難しい時に上演を実現させた大野和士さんはさすが世界的指揮者芸術監督です。彼の芸監eraと同時代に生きられて幸せです。ありがとうございます😭

 中身についてはもう少ししたら書きたいと思います。とにかく読み替えの嵐で全く違う作品になっています。

 今日は演出家、深作健太さんも見にいらしてました。

 歌手ではピーメンのゴデルジ・ジャネリーゼさんが圧倒的ですごい声でした。Deep Bassでものすごい声量!ベロセルスキーみたいです。 アフタートーク で大野さんも自分がYouTubeで見つけたと自慢してました。www

 ボリスのギド・イェンテンスさんはまさにハンス・ザックスに理想的な声で、ノーブルで低音も美しく響く バスバリ/バス です。(バッソ・カンタンテ Hocher Bass)(Excerpt from his BIO - Guido Jentjens' repertoire includes all great Wagnerian bass and bass-baritone roles)彼は新国立劇場のマイスタージンガーの時はポーグナーでしたがザックスのカバーでもありました。今回の演出には合う声だと思います。意外なことに、ボリスの声種は実はバスではなく、Fachは ドラマチック・バス・バリトンです。Deep Bassではないのです。

 曲者のシュイスキーを演じたベズィエンさんはワグネリアンキャラクターテノールです。複雑で腹の底が見えないシュイスキーをうまく演じていました。

 音楽的には、今回のプロダクションはムソルグスキーの1869年の原典版と1872年の改訂版を折衷したものということで、MET版であったような、Polish Actはありません。マリーナやランゴーニが出てこないということで、これは見る前からとても残念だったのですが、今回の作品を見るとすごく筋がとおっていました。演出上の改変は、設定の変更のみならず、役が重ねられているというだけでなく、自分の役ではない部分を兼ねて歌ったりしています。トレリンスキの世界に「脱構築」するためにすべてが一度分解されてバラバラになってからまた音楽に合わせて構成されているようです。そのへんも驚きと興奮と共に拝見しました。

***
(以降は中身にふれますのでご注意ください。)


プロローグ Prologue

 クドルチカのスタイリッシュなセットもすばらしい!
 縁が光る箱がいくつも。○○○○○のフョードルのいる部屋以外は自在に動く。
 しもて側に酒瓶が載った台
 この時点でそれ以外にリアリスティックな小道具はほぼない。

 大きなスクリーンが上方にあり、ほぼ全編通じて演者のアップが映されるためのものだが、ここでは雪の被った山並みと川の上空からの映像。どこか寒い国だが、ロシアとあからさまに表現しているわけではない。トレリンスキの設定は現代で独裁者のいる国名不詳の国だ。

 プロローグの伝統版では権力側に雇われた街の人々がボリスの戴冠を望むよう叫ぶように強制されているというシーン。いわゆるアジデモのやらせ。
 METなんかではすごく残虐非道に描かれていたけどまずここからまったく違う。
 民衆にどなりつける警官ニキーティチの声はボリスが歌うのだ。(ここだけ)
 どなりつけられる人々はボリスの側近。民衆はここでは出てこない。側近とは、クセニア(娘であり秘書官の二役?トランプ元大統領の娘のイメージか?)、フョードル(小泉)はフョードルではなくクセニアの友人役でボリスの側近 乳母(乳母ではなくクセニアの友人)アンドレイ・シチェルカーロフ(報道官)ニキーティチ(秘密警察)ミチューハ(市民ではなくボリスの側近)侍従。これらは多分オリガルヒをイメージしていると思う。
  ボリスの姿はトランクスにTシャツの上にバスローブを羽織ったもの。裸足。
 ボリスは息子の面倒を見ている。

シチェルカーロフのアリア:
Православные! Неумолим боярин!
♪正教徒たちよ!公は聞き入れて下さらない

 書記のシチェルカーロフは大統領報道官のような存在で、権力側の意向を伝える役目。ボリスが権力につくのを建前でためらっている様子を民衆(議会議員ら)に伝えている。シチェルカーロフの声種はバス・バリトンだ。METではすばらしいバリトン、アレクセイ・マルコフが歌った。秋谷さんはドラマチック・テノール(重めのヘルデンテノール)なのです。パワフルですばらしい!あくまでもキャスティング・ディレクターの問題だが、不思議なキャスティングだ。音楽的に明確な意図があるならいいのだが。

 民衆たちの、皇帝のためにイコンを掲げて、ドンとウラジーミルの、集まれ的な合唱ってあったかな?なかった?
 それに続くミチューハと警官のやりとりもなかったような?あったかな?

Scene 2 第2場 クレムリンの広場

 ボリスが即位を明らかにし、演説する

ボリスのアリア 
Скорбит душа (Skorvit dusha! )
♪私の魂は悲しんでいる

第1幕 第1場 修道院の中 Act I

 ピーメンと修行させられている修行僧たち。
 ロシア正教というよりは怪しい新興宗教の団体を設定しているかも?
 グリゴリー役以外は役者(黙役)。全部で13人いるかと思って数えたけど8人だった

 ここかわからないがグリゴリーのもっと子供の頃の映像か
 人体実験される子供を集めた病院があってそこから逃げ出そうとしている子供
 これはアウシュヴィッツなどのイメージかもしれない

 ピーメンは回想録 年代記を書いているはずだが、そういう具体的なものはなく
 グリゴリーを洗脳しているようだ

 グリゴリーは自分が、7歳で殺された先帝の甥、皇子ディミトリであると思い込んでしまう。
 工藤さんすばらしかったです!工藤さんはリリコ・スピント・テノールで声に重みがあり、実年齢的にもとても若いのでグリゴリーの年齢に近くぴったりです。

 グリゴリーは興奮状態に陥り、ここを逃げ出しクレムリンに向かうことにする(本来ならグリゴリーはポーランドに向かうため、リトアニアの国境を目指す)

Scene 2 第2場 リトアニア国境の居酒屋

 女の子を世話する的ないかがわしい店。本来の設定はまっとうな居酒屋。そこのおかみ役は清水華澄さん。よく声がとおってすばらしいです。清水華澄さんはやっぱり世界レヴェル。

女主人のアリア
Song of the Drake
Поймала я сиза селезня   (Pai mala ja siza selyeznja)
♪私は灰色の鴨を捕まえた

 破戒僧で浮浪者のヴァルラームとミサイル。このコンビは本来なら、僧院を逃げ出したグリゴリーを連れて旅をしているのだが、このプロダクションの設定では実は僭称者グリゴリーの忠実な部下である。本来の設定ではヴァルラームとミサイルはいわばコメディ担当の存在で、おもしろおかしく演じなくてはいけない。日本人にはとても難しい役だがそこはやっぱり鉄平さん。すごかったです。さすがうまいです。演技で彼にかなう歌役者はそうそういません。

ヴァルラームのアリア:Varlaam's Song
Как во городе было во Казани (kak vo gorode bïlo vo kazani)
♪カザンでの出来事だ

 15~16世紀にかけて起きたモスクワ大公国とカザン・ハン国との間の「ロシア・カザン戦争」でイワン雷帝が1552年に勝った時のことを歌っている。

 グリゴリーはおかみにリトアニア国境に至る道について聞いている(実際字幕がクレムリンとなっているので不自然である。字幕は素直に訳すべきだと思う。日本のオペラ上演における字幕マジックは音楽の改ざんの範疇とみなされ、不適切である。)

 飲んだくれて女遊びしているがそこに秘密警察ニキーティチがやってきて…さあどうなったでしょう。

 この手紙を読むくだりもすごく音楽的におもしろくすばらしいシーンですよね!ヴァルラームほんと大事です。

第2幕 第1場 宮廷

 大統領の娘は憂いている。婚約者が死んでしまった(ボリスが殺したと噂されている)

 そんな彼女に、友人たちは楽しく歌う。

 ボリスが来て娘と側近を下がらせる。「友達と話でもして悲しみを紛らわせろ」と言っているのにすでに読み替え演出ではそういうシーンをやっているw

ボリスのアリア:
Monologue of Boris
Достиг я высшей власти (Dostig ja vïsshei vlasti)
♪私は最高権力者になった

 ボリスは息子との時間を持つ。(ボリスの妄想) もうこのへんからボリスと息子のシーンが哀しくてせつなくて胸に迫ってくるものがあります。トレリンスキは天才過ぎます。そして残酷すぎます。
 息子は食べ物を食べさせても吐いてしまう。ボリスがひどいかっこうをしているのはいつも息子に汚されているからです。

 侍従が来て、シュイスキー公がお目通りを願っていると伝える。シュイスキー公はボリスの政敵である。虎視眈々と帝位を狙っていて、ボリスの凋落を画策している。リトアニアでの偽ディミトリの騒ぎも彼が糸を引いていると言われている。
 シュイスキーは先祖伝来、大貴族でボリスのような成り上がり者を馬鹿にしている。
 史実ではシュイスキーはボリスが死んだあと即位した息子を1年で殺害し、ディミトリーを即位させ、その後ディミトリーも殺して自分が帝位につくのだ。

 シュイスキーがリトアニアでの偽ディミトリの騒ぎを伝えに来る。

 皇子は死んだはずだ
 おまえを派遣しただろう
 どうだったか教えてくれ
 でないとお前をイワン雷帝も棺の中で震えるほど残脚なやり方で殺してやるからな

 私を脅すんですか?私は拷問よりもあなたの勘気が心配です。(皮肉な発言。シュイスキーは精神状態が不安定なボリスが自滅することを予見している)

 ウグリチの殺害現場では、皇子の周りには13人の子供の死体があり、皇子にも深い傷がありましたがお顔はきれいなままでした 手にはおもちゃを握って…

 ボリスは聴いているうちに錯乱してくる

 ここがボリスの名場面のうちの一つです

ボリスのアリア:
Уф, тяжело! (Uf, tja zhelo!)
♪ああ、苦しい!

 Чур, чур
 来るな、来るな!

 血まみれの子供が寄ってくる

 このシーンはどうなっているでしょうか?
 劇場でよくお確かめください

《休憩》

※ポーランドの幕はすべてカットです。

第3幕
ボリスの側近、オリガルヒたちは苦悩している
政情不安
亡き先帝の甥、正当な皇位継承者、グリゴリーを名乗る者が隣国に現れたことで
民衆は皇子が生きていると洗脳されてしまった。
ボリスは帝位簒奪者だ
飢饉で食べ物もない
オリガルヒだけが優雅な暮らしを続けている

シチェルカーロフは鼻から吸い込むタイプのヤクをきこしめしている。
秘書官と打合せする。

ボリスは自分の妄想の世界で苛まれている

ここは劇場でお確かめください

聖愚者のアリア:
Месяц едет, котёнок плачет
♪一月経ち、子猫が鳴く

(本来なら聖愚者と子供たちのシーンで、子供たちが聖愚者からコインを盗む。続くシーンでボリスは聖愚者から○○○と言われる)

トレリンスキの斬新演出の根幹ですが○○○と○○○を一役にするという試みですが、声楽的には成立が厳しいと思います。リリックテノールの声とリリックメゾの声はやはり違う声だからです。いっそここを同じ歌手に歌わせるべきではなかったでしょうか?
カウンターテナーだったら可能だったかもしれません。

第4幕 Act IV Scene 1

国会。報道官のシチェルカーロフが皇子の僭称者を厳罰に処すべしと諮っています。

国会の重鎮、シュイスキーは遅れて到着します。

シュイスキーは策略を実行します。

ボリスのところに行ってきたが、おかしなことばかり言っている

そこに錯乱しながらボリスがやってきます

寄るな…!

平常心をようやく取り戻しますが

シュイスキーの策略により、高僧ピーメンを召喚します。

ピーメンのアリア:
Однажды, в вечерний час   (Smirennïi inok)
♪ある日の夕方

すばらしいです!!!

ピーメンは知り合いの経験したことを話します。盲目だった彼がディミトリー皇子の墓の前で祈ると目が明いた…

しかし背後に何者かが

(ここは劇場でご確認ください ここからがまったくオリジナルで驚愕すべき展開になります。)

ボリスは…

(本来の設定では○○のシーンです)

ボリスのアリア:ボリスの死
Прощай, мой сын  (Prashchai moy sïn)
♪さらば、我が息子よ

フィナーレ(1872年版)

 このシーンは本来なら僭称者ディミトリーがモスクワに入場してきてロシアは荒れ狂う混乱の時代に突入するというシーン。ボリス派の貴族たちはは皆拷問の上に殺されます。なぶり殺しです。このシーンの読み替えはとても強烈で、アフタートークでトレリンスキが語っていたように The BEAST(獣 狼)がのさばるというシーンです。(ポーランドの動物と言えばオオカミですよね!)
 このシーンこそ、トレリンスキが今の世界情勢を映し出すために作ったシーンと言わざるを得ません。

聖愚者の歌:
Лейтесь, лейтесь, слёзы горькие!
♪流れよ、流れよ、苦い涙!

 しかし全体的に見ると、トレリンスキの言いたいことはこのシーンではなく、その前のシーンまでに描かれたことだと思います。作品としては、METで見たボリスよりもこのボリスの方が激しく心をつかまれた作品になっていました。やっぱりトレリンスキはすごいです。

***

Related links:

2010年10月31日  METボリス・ゴドゥノフ最終日

2011年3月12日  MET Boris Godunov this season second run second day

2012年3月17日  MET Boris Godunov INDEX





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最終更新日  2022年11月20日 19時42分38秒


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