♪らんどくつんどく♪

2003.02.28
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池澤夏樹著・本橋成一写真 光文社

 米の武力行使が秒読みといわれる最中に作家の池澤氏がイラクを旅した。なんでわざわざ、そんな危ないところに、と思ってしまったのだけれど、氏の目的は文明発祥地、メソポタミアの遺跡を見るため。そして、ヴィザは意外にもすんなり発給してもらえたというのです。2002年の10月の末のその旅行の見聞をまとめたこの本。池澤氏の文と本橋氏の写真で成り立っていて、一気に読んでしまいました。

 静かな本です。 
 戦争反対を声高に叫んでるわけではなく、氏が実際にイラクを訪れて見てきた彼の地の日常が語られています。遊園地で遊ぶこどもたち、市場の様子、美しい模様のモスクに集う人々、街角の古書市。写真にうつる人々は普通に暮らしている。氏によると確かに経済制裁によって10年ほど足踏みをしてしまっている国だけれど、食事は安くておいしいし、人々は明るく親切。
 戦争の危機にさらされていて、どんなに悲惨かと思えば、ごくごくあたりまえの日常。戦争だ、戦争だと切羽詰ったように破壊の道へ走ろうとするどこかの国の異常な熱さと、非常に対照的で。だからこそ余計に切なくなります。この人たちの静かな日常を奪う権利が、あなたにあるのか。

 メディアを通してしか知らなかったイラクという国の一部を、この本のおかげで垣間見ることができました。氏も書いているように、具体的な人物を知ることで、戦争が起きたときの彼らの境遇や思いを想像することができる。感情を動かすことが出来る。

 戦争を起こすほうは一人一人を見ていない。フセインを排除するのに国ごと攻撃することの理不尽さから目をそらすし、どれだけの人が苦しむかという想像力をもたないようにしているらしい。

「無関心は冷酷よりも更に冷酷」だと氏は述べています。中高生のころによく言っていたのは、誰かがいじめられているとき、それを見ていてとめない人も共犯、ということ。私たちの国は、冷酷な共犯者になってしまうのでしょうか。





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Last updated  2003.03.01 01:28:44


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