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先日のブログで、高鍋町美術館を紹介しましたが、僕が初めてこの美術館を訪れるきっかけになったのが、児島虎次郎の回顧展でした。ここで児島の画業のすばらしさを知ることができました。2000年5月、高鍋町美術館で児島虎次郎展が開かれました。没後70年を記念した展覧会で、姉妹関係にある大原美術館などの協力で、地方の町立美術館としては異例の規模でした。児島の学童時代の作品から、画壇に登場するきっかけとなった代表作、ヨーロッパ留学中の瑞々しい作品群、帰国後の作品群、そして余技として楽しんでいた日本画や水彩画、陶芸作品などの数々が展示され、児島の画業がバランスよく網羅された有意義な展覧会でした(左の写真はプログラム)。児島は、彼を画壇に引き上げたパトロンである大原孫三郎の命を受けて、日本で初めて西洋絵画を紹介した大原美術館の設立のために、ヨーロッパの名立たる画家達の作品の買い付けに奔走し、大きな貢献を果たしました。当時のヨーロッパは印象派が全盛の時代で、モネを筆頭にルノワールやマネなど数多くの名作を、限られた予算をやりくりしながら買い付けました。モネなどは「睡蓮」の連作に没頭していた時期で、児島はアトリエにあしげく通いつめて、頑固に渋るモネを懐柔したという逸話があります。また有名なエル・グレコのマスターピースである「受胎告知」を、全く評価されていなかった当時にその先見の明で買い付けました。この作品は、現在では大原美術館所蔵品のもっとも代表的なものの1つとなっています。児島の美術に関する優れた審美眼を養ったのは、ヨーロッパ留学であったといわれています。ベルギー印象派に師事した児島は、乾いたスポンジのようにその理論と技術を吸収し、彼独自の美しい作品を生み出しています。僕が特に惹き付けられた作品は「和服を着たベルギーの少女」(左の作品)でした。恐らくヨーロッパ渡航時にもっていったものだろうと思われる花柄の振袖を着た地元の少女を、きらびやかな色彩と複数のタッチを組み合わせて描いています。まだ幼い少女ときれいな振袖のコントラストがこの作品のアクセントになっていて、観るなり眼が留まってしまいます。この作品を、僕は後に本家の大原美術館の本館入口で再び眼にしました。歴史ある建物に鎮座するその姿には、日本の西洋美術黎明期の情熱と、大原や児島の絵に対する想いが伝わってきます。児島は美術品買い付けにたびたびヨーロッパを訪れましたが、その合間に日本画や水彩画を手がけました。絵がうまい人は何をやってもすばらしいもので、ほとんど本業といっていいくらいの大作や、力が抜けていい味を出している作品が数々残っています。特に日本画は、技巧にこだわらず軽妙でカラフルな作品が多い印象でした。またスケッチとして描いた水彩画は、構図や色彩が冴え、彼の優れたテクニックを垣間見ることができます。児島の作品の多くは、岡山県倉敷市の大原美術館や、成羽町美術館に所蔵されています。特に大原美術館では、児島が買い付けた作品をはじめ、多くの著名な画家の作品群、日本の美術品、現代美術の作品群など、広い範囲で膨大な所蔵品があり、1日かけてゆっくり観て回ることができます。倉敷の美観地区に行った折には、ぜひ入館することをお勧めします。その時には児島が集めた名品と、彼が残した作品をゆっくりご覧ください。
Feb 21, 2006
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今年はいろんなことがあった1年でした。来年はいい年になりますように
Dec 1, 2024
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