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染井為人 0
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透明カメレオン【電子書籍】[ 道尾 秀介 ] 本作では、二度驚かされる。 何を言う、そなたはミステリーリーダーではないか。 序盤、話がもたもたもたもたしていて、収拾がつかない。 このまま進むのであれば、もう私はこの本を捨ててしまおうかと思った。 しかし私のポリシーは何しろ完読なので、とにかく先へ先へと進んだ。 そして道尾の作品について気づいたこと。 せっかく二度も驚かされたのに、心に響かないのは、文章力のなさが原因だと思う。 私のように何十人もの作家の作品を読んでいると読みやすい文章力のある作家となんとわかりにくい作家なんだと思う作家にわかれてしまう。 道尾は後者だ。 それが実に惜しい。 何しろ、一度驚かされ、二度驚かされたんだから。 しかも二度めは、うっすらと私の眼には涙が浮かんでいたんですぞ。 それだけのストーリー力のある作家なのに、本当にもったいない話なのだ。 さて一度目と二度目のいわば、どんでん返し的文学におけるトリックについて説明しよう。 第一。 これは先に書いた通り、話がもたもたしていたことからの必然であった。 ミステリーでよくつかわれる、なり変わりだね。 なり変わりだと思わされているのは、読み手だ。 しかし、この第一の問題は、長らく読み続けているミステリーリーダーには、全部みろっとめろっとお見通し状態なのだ。 次、第二の問題。 これは、本作の根幹にかかわる問題なので、軽々には話せない。 とにかく涙が出てきたのは確かだ。 それも不覚にも。 だから、私は、道尾の文章力のなさが悔しいのだ。 本当に素晴らしい文章力をもってすれば、きっと、涙がとめどなく出てきて、本作は大作だ!と叫んだことだろう。 この部分は、一種の叙トリも使われている。 マンションに一か月もすれば戻るだろうという主人公のことばがそれだ。 しかし、明確な叙トリではない。 ここは黙って騙されようじゃないか。 それもまた読書人としての矜持だと私は思う。(1/25記)
2024.04.22
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スケルトン・キー【電子書籍】[ 道尾 秀介 ] まず一言、いいね! 双子モノは数多あるけれど、本作はサイコパスという事案を上手に双子で表現したものだ。 たしかに叙述トリック?と思われる部分はあるけれど、それは、ミステリーのルール違反、たとえば、探偵が犯人だとか、執事が犯人のような、到底ミステリーのプロなら認められない違反からみたら、軽い、軽い。 そもそも叙述トリックは違反にはならないからね。 それよりも本作が最初から双子モノなんて書くこと自体、こりゃああなた、完全なネタバレじゃありませんか? 読み進んでいくうちに、この話は双子以外成り立たないことに気付いたのは私だけじゃあるまい。 そもそも道尾はここで、僕に点を打ったり、のちに反対字を出したりする演出を試みている。 この辺は実にフェアだ。 まあそれにしても一体この悪にまみれた行為はどれだけ続くのだろうか、終わりがないのか、なんて思っていたら、意外にも朝ドラ理論的終わり…。 こういうのが好ましい。 本作が一気に読了できたのは、道尾の文章力の高さによる。 事案が脳内で飛び跳ねている。 そういうのが小説の醍醐味だと思う。 それが文章力だと思う。 文章を読むのが読書である。 今、子供たちの読書力を高めよう!なんてことでムリムリ読書教育をしたり、読み聞かせをしたりしているようなのだけれど、実は必要なのはそういう方法論ではなく子供が自然に本に向き合う形を作ってやることだと私は思う。 本作を理解できるのであれば、読むのは何歳でもいいじゃないか。 紙の本でも電子書籍でもどっちでもいいじゃないか。 読書に型をはめるのはよくない。(10/5記)
2023.12.20
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その話を聞かせてはいけない 道尾秀介 しかしそれにしても東野後がいない。 そもそも年代的には本作の作者道尾秀介が昭和50年生まれで東野の世代からは約20年離れているし,道尾は直木賞,ミステリー大賞,推理作家協会賞も受賞しているから,第六祖の候補者にはなりうる。 さて本作であるが,つまらん。 短編だが独り善がりだ。 それがこの作家の弱点ではないのか。 つまり,自分だけがわかっていて,読み手をないがしろにする癖がある。 だからどうしても候補者で終わってしまうのだ。 それはともかく本作の面白さのなさは最終盤に収斂される。 したがって最終盤をいかに読み解くかが本作を読解する上でのポイントになる。 さらに彼の場合は文章力のなさが致命的だ。 すなわち何を書いているのかわからないのだ。 しかしそれでも商業ベースで成り立ち,あまつさえ新潮文庫百万部ベストセラー,向日葵の咲かない夏もあり,決して実績的には悪くない。 そこで道尾秀介の同世代の作家をもう少し読まなければなるまいな。 もう一度最終盤のシーンに戻ると,私の脳内ではこの舞台はがけっぷちのはずだ。 なのに目隠しを外されて後ろを見たら風が吹いてきたというのだ。 ここまでをまとめるとこうだ。 後ろを見たら風が吹いてきたのであればそこは海,ではなかったのか。 どうも矛盾を感じてならない。(3/6)
2023.05.28
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球体の蛇 (角川文庫) [ 道尾 秀介 ] 本作は,今日、何読んだ? 210718ということで1回読んでいるにも関わらず,どういうものだろうか,なぜ記憶が曖昧なのかあるいは戻らないのかはよくわからないけれど,間違いなくこのブログ記事つまり210718は,的確な意見であった。 今回改めて読んでみて冒頭のシロアリ業者のシーンすら思い出すことができない自分の不甲斐なさにがっかりした。 それでも少しは記憶が残っていてキャンプのシーンやらについてはそういえばと少し思い出せたような感じのそんな中での再読だった。 今回私がミステリーリーダーになったのは定年引退後の話であって,ミステリーに関しては,江戸川乱歩賞,日本推理作家協会賞を順番に読み継いでからの話なのである。 それで本作もこの二つの賞のどちらかに入っていたことで選んだのだったろうかと思ったのだが実はこの作品がどちらにも入っていないのだった。 それでも私はこの作品は優れていると思ういっぽう不快感もあって,好きな作家というまでには至らない。 ところで道尾秀介という作家は1975年,昭和50年生まれだそうで,とすると東野の後継になる可能性もありということになるか。 さて本作をミステリーという視点から考えると,トリック不足でしょうな。 というよりこれといったトリックはない。 それでも本作の最初のシーンは乱歩を彷彿させる。 床下の散歩者とでもいうのだろうか,シロアリ業者だけに床下にいて住人の動向を探る。 顔半分を火傷した女性の姿は正史の世界でもある。 様々な偶然を装う辺りは森村的でもあり東野的でもある。 それでもこの作家に関しては今一つ東野の後継には推せない。 それは作家の命でもある文章力のなさである。 いずれ東野の後継を置かなければならないのだから道尾秀介もその後継の候補者としてあげておいてもいいのかな。 結局人間関係の綾をいかに表現するかということが現代の小説家に課せられていることかもしれない。 とにかく不快ではあったが面白い作品だった。(3/3記)
2023.05.25
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カラスの親指 by rule of CROW’s thumb【電子書籍】[ 道尾秀介 ] 映画,カラスの親指(夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記 221202),を観て,いやあ,映画って本当にwonderful!なんて最後に感想を書きながら,私はその映画では完璧に騙されていたのだった。 そのことが悔しいなどという思いにはならず,ただ一体原作というのはどうなっているのだと気になって気になって仕方なかったのだった。 その映画の観了感に書いた時はまだ Kindle Unlimited には無かったのだった。 ところがなんとついに Kindle Unlimited に入り,私は必死になって読んだ。 400ページ越えの大作であった。 さて私がいつも比較検討する,映画か原作かの視点からは,私は原作を映画が凌駕することはできなかったという評価だが,ただし原作を読んでいる最中武沢は阿部寛だし,テツは村上ショージのイメージで,映画がそのまま小説になったようなそんな感覚にとらわれた。 映画はほぼ原作に沿ったものだったことが本作を読むとわかる。 本作は,騙し絵である。 したがって読み手なり観手のこのストーリーに対する理解がなければ,一本!とはならない。 映画は,ストーリーがわかりづらくて,結局原作に頼らざるを得なかったというのが結論だ。 確かによくできた映画だったが,本原作を読むまで理解しがたい部分が多々あった。 それが綺麗に氷塊しましたな。 テツの得意なアナグラムも,中華そば屋の劇団のポスターも,取り壊し間際のマンションも綺麗に繋がった。 特に劇団に関しては,映画では早くから出ていたけれど,原作は最終盤に出てきたくらいで,その謎解きが実に巧妙であり,私の脳裏で阿部寛が縦横無尽に動き回ったのだった。 本当によく出来た作品だった。
2023.01.28
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球体の蛇【電子書籍】[ 道尾 秀介 ] トモと言う名の男の半生を描いたものといえば少しは本作の芯を捉えているのではなかろうか。 このトモにはサヨとナオという姉妹と実母それに智子という4人の女性がからんでくる。 サヨと智子は死んでしまう。 いずれもトモが間接的に関与している。 それに乙二郎という小父さんと田西という男がからんでくる。 カテゴリーはミステリーでもホラーでもない。 怪しげな現象を感じつつ先に進んでいくヒューマンストーリーだね。 私が好きになれないのはどっちつかずのところ。 二人の女性が死に至る背景がトモ自身自分にあると思っているのにナオの介在で何回か書き換えられる。 問題点は自殺事案が新聞記事になっていて知ったというナオのことば。 これはありえない。 ここに作者の作為があるとすれば前述のどっちつかずが氷解する。 すなわち智子は死んでおらず最終盤トモが見た女は間違いなく智子だったということ。 テントの火災も今ひとつ不自然だ。 タバコのの投げ捨てで燃えたりはすまい。 花火でも果たして人の命を奪うほどの大惨事になったりするものか。 小説だからといって幼い女の子二人を残して親がドライブに行ったりするものか。 でもなんとなく自叙伝的な感じがまた魅力的な作品でもあった。 もう少し読みやすい文章だとなお良かった。
2021.07.18
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鬼の跫音 (角川文庫) [ 道尾 秀介 ] 本作は鈴虫、犭(ケモノ)、よいぎつね、箱詰めの文字、冬の鬼、悪意の顔という6つの短編からなる。 いずれもこの作者独特の世界観の話で、ミステリーという名の論理的な作品だと思って読むとこの作者から大逆転を喰らってしまうことになる。 鈴虫は最終盤に大逆転が待ち受けている。 本作には必ず S という名の人間が出てくる。 これがとても気になってきざわりでしょうがなかった。 そもそも小説書きにおいてはそういうイニシャルトークは慎むようにというような小説書き作法の本を読んだ記憶があり、本作はそれがあまりにも酷すぎたのだ。 犭は刑務所の作業所が作った木の椅子に掘られていた判じ文字を主人公が探して歩くミステリー仕立てだ。 判じ文字については、父は屍、母は大などと書かれてあったものであるけれども、大という文字が犬という文字と重なるなどというトリックは昔からよくあったことだ。 それ以上に本作ではこれまた最終盤に大逆転が待ち受けている。 簡単に作者は読み手を飽きさせない。 よいぎつねはこれはちょっと不思議な話、時間というものの概念がこの作品では完全に薄れてしまい、20年後の私が20年前の私に土に埋められる話である。 箱詰めの文字は盗作疑惑の話でそれに殺人が絡んでくる。 冬の鬼は愛する醜い顔の女のために失明する男の話である。 悪意の顔は絵画の中に実生活者が吸い込まれてしまうもの。 ひとつひとつ個性のある短編であるが本格派のミステリーを読んでいた私はこういうリアリティのない話にはちょっとついていけないのである。 この作家の得意なワールドといえばそれまでなんだろうが、私自身もうすでに読了してこの作家のこの作品の話はもう記憶の中にはなくなっている。 いつまでもその話に拘泥することはない。 いちいちそんなことをしていたらとてもじゃないが小説など読めないもの。
2021.07.14
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