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啄木が殺した女【電子書籍】[ 日下圭介 ] 面白いとかつまらないという観点から言ったら面白い方、と答えることになるかな。 ミステリー作品という観点から言うと、もたらもたらしすぎだ。 まず本筋の殺人事件が長らくうっちゃられてしまい、石川啄木の人生が長々と語られる。 そもそも本作の題名が、啄木が殺した女、だから、読み手はそこにひきつけられる。 この辺は心理戦ですね。 それはともかく、石川啄木は次から次へと借金を重ね、女性関係も派手に進行する。 そこに啄木が交際していた女の殺人なのか自殺なのかわからない事件を絡めてきて、それが啄木が殺した女というわけだ。 私自身小学校高学年あたりから啄木の伝記を読んだり、渋民村を訪ねたりして、彼がけっして嫌いではない、むしろ好きな偉人、と慕っていたから、本作を読めば読むほど、啄木という人が嫌いになってゆくのがわかるのだった。 それほどの力が日下圭介にはあるということだ。 少なくとも石川啄木に関する取材が半端ないもの。 ただ読者よ、本作に書かれている啄木論が全てではないということを申し添えておく。 そのことを前提にして、もう一度本ミステリーに戻ろう。 日下さん、ヒロインを寝せるのにイージー過ぎやしませんでしたか。 これが終盤に来るから、全部みろっとめろっとお見通し状態になる。 暗号もね、啄木の短歌を使った割には、これまたイージーで…。 これらを含めて私の評価は冒頭のとおりになったのだった。 こういう回りくどいのが日下の作風なんでしょうな。(3/2記)
2024.06.02
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脅迫者たちのサーカス【電子書籍】[ 日下圭介 ] 文句なしの一級ミステリー。 これが平成6年ころの作品だから、いかに今の作品で光るミステリーがないかがわかる。 ミステリーの3大要素は、言わずと知れた、動機、機会、方法。 本作は、誘拐事件ではない誘拐事件とでもいえるものだろうか。 小学生の男の子がいなくなったのは間違いないが、誘拐されたものではない。 しかし、なぜか、5000万円の身代金要求が入る。 報道協定を結んでいながら、協定に入っていない三流新聞社がすっぱ抜く。 捜査陣は犯人側の要求に翻弄される。 身代金は、病院のエレベーターで第三者に発見され…。 凝りに凝った作品で、しかもこの小説の中心的人物は、かつて過失致死で執行猶予刑を被っており、執行猶予期間が一けた台の日数になって、件の小学生の男子が転がり込んでくる。 さてその後、どうなるか。 私たちは、執行猶予刑の男と男子の側から外を見る仕掛けになる。 とすると、一体だれが脅迫状を送り現金をせしめようとしたのかが、大きな問題になる。 私も頭を使いましたよ。 謎解きは突然に、終盤にあらわれる。 それも叙トリではなく。 読み手の前にフェアに材料は揃えられてあった。 犯人の声なし。 その辺が大きなヒントかな。(3/1記)
2024.05.31
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【中古】 紅蓮の毒 薬売り・辻村の探偵行 推理傑作集 / 日下 圭介 / 光文社 [文庫]【宅配便出荷】 8作の短編集。 越中富山の薬売り辻村が主人公だ。 薬売りの話だけに、毒を盛るというトリックが多用されている。 けれども、なんと昭和初期に飛行機を使ったアリバイ作りも入っている。 そして、彼は司法警察員でないから、犯人に対しては寛大なのだ。 また、警察に対しても有益な情報を与える。 実によくできたシチュエーションだ。 この作品がすぐれているなと思うのは、前読で千草検事が仮説後に自供を得て証を得る方法を取っていたのに対し、あらかじめ証を提示しそれをもとに推理して犯人を突き止めるというところだ。 それがミステリーリーダーには実に心地よい。 久しぶりの一気読みだ。 この作品の得なところは、司法警察員があまり出てこないところ。 だから、刑事法の知悉も警察組織もなにも必要ない。 ミステリーの三大要素にストーリー性が加味されていればいいのだ。 そのストーリー性が実にすぐれていて面白い。 衝撃的な話は、硫酸で死体を溶かしてしまう話だな。 これは、密室トリックにもなっていた。 まあそれにしてもこれだけのミステリー作家が今はもういないと私には思える。 令和のミステリー作家よ、奮起せよ。(3/30記)
2024.05.24
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