サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.02.12
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カテゴリ: 文学
 昨日あげたような左大臣、右大臣両家の世俗的な勢力図の中にあって、頭の中将は「桐壺」の帖から登場しているのですが、「帚木」ではすでに光源氏のワル友達のような関係になっていて、お互いにおどかしっこや、自慢話(主として女に関する)をし合って、何かにつけて競い合いをしている。すでに二人とも若妻を娶りながらも(それが政略的であるがゆえに)、ほとんど家には寄り付かず、殿中で男同士のヒソヒソ話に打ち興じている、というのは、まさしく青春の若さがなせる仕儀で、ほほ笑ましくもあるのですが、やっている中味は相当悪い。
 このあたりは、結婚済みということをのぞけば、我らが学生時代や、かつての旧制高校の男たちの振るまいとほぼ同然で、若さというのは 悪さのハードルの競い合い を演じているようなものです。この場合つねに先行していたいのは他ならぬ頭の中将で、彼の気質としては「やんごとなき」貴公子に対して、後れを取ることは許されないのです。

 ところが、この後れを取らないという観点が、彼の場合どういうふうに現れてくるかというと、ひらたくいえば 数の勝負 となってくるわけで、結果として殿中の若女房には(まるで犬が電柱に云々するように)、かたはしから手をつけて何となく悦に入っている気配がある。これぞ世俗の代表である彼の面目躍如といったところですが、いっぽうの光源氏は並々の女房には目もくれない(数には関心がない)ので、頭の中将は何かにつけて光源氏の動向が気になって仕方がない、という仕儀に相成ります。
 例の「雨夜の品定め」でも、当初は源氏のひそかな逢引きを何とかあばこうとするが、源氏のあいまいな応対で何も出てこない、というわけで「若紫」以降、彼はひそかに源氏を尾行する。彼にとっては、どこかの貴女とひそかに美味くやっているに違いない光源氏というのは、あいまいそのもので許せないたちのもので、要は白黒ハッキリ決着をつけて、源氏をヘコましたいのでした。

 「末摘花」の帖では、源氏の後をつけてきた頭の中将が、逆に末摘花の家を伺っている姿を源氏に見つかって、ヘコまされる。しからばということで、つづく「紅葉賀」の帖では、「源の典侍(ないし)」なる大年増(おおどしま)に対しては先回りして、源氏がしのんでくる現場を押さえようとする。二人の寝屋に音を立てながら近づくので、源氏はめんどくさくなって屏風のうちに隠れようとするが、このあとの三人の風体の描きかたもまた冴えていて、

― (頭の中将)ひきたて給える屏風のもとに寄りて、「ごほごほ」と、たゝみ寄せて、おどろおどろしく騒がすに、内侍は、ねびたれど、いたくよしばみ、なよびたる人の、さきざきも、かやうにて、心動かす折々ありければ、ならひて、…「この君を、いかに、しなし聞こえぬるにか」と、わびしさに、ふるふふるふ、つと、ひかえたり。 ― 同上
 頭の中将が、隠れている源氏の屏風を「ごほごほ」と、たたんで、大いに騒がしくさせると、内侍はさすがに年を取っても、アダっぽい女なので、今まで何度もこうした場面に遭遇していて、実は内心ワクワクしながら…「このかたは、源氏の君をどうするつもりなのか」と、つらくて震えながらも、(頭の中将を)つかまえている。

― 「たれと、しられで、出でなばや」と、おぼせど、しどけなき姿にて、冠などうちゆがめて、走らん後手思ふに、「いと、をこなるべし」と、おぼしやすやふ。
 「誰とも分からないうちに、出てしまおう」とも思うが、みっともない姿で、歪んだままの冠を被ったまま、逃げ去る自分の後姿を思うと、「大変な笑い草だ」と思ってためらってしまう。
 一方、中将の君は、
 ― 中将、「いかで、われと知られ聞こえじ」と、思ひて、物もいはず。たゞ、いみじう怒れる気色にもてなして、太刀を引き抜けば、 ― 同上
 「どうしても私とは知られまい」と思って、黙ったまま、ものすごい形相で、太刀を引き抜いたので、内侍は
 ― 女、「あが君あが君」と、むかひて手をするに、ほとほと笑ひぬべし。 ― 同上
 「あなた、あなた」と、頭の中将に向かって手を合わせるので、(中将は)もう少しで吹き出しそうになった。

― つづく ―





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Last updated  2009.02.12 14:59:30
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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