サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.02.19
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カテゴリ: 文学
 行きつ戻りつしているうちに、とうとう「葵」の帖まで来てしまいました。「葵」とつづく「賢木」の帖は、「源氏物語」序盤の大きな山場を成していて、それまで少しずつ語られてきた人物たちが、いっせいに衝突して動き出し、あるものは死に、あるものは別れ、あるものは怒り、あるものは絶望するというふうに、いったんギュッと収束されて、その後思い切り拡散するというような、きわめて密度の濃い部分となっています。

 筋を追うだけでも、けっこう大忙しなのですが、大きくたどれば「葵」では、
 桐壺帝の禅譲で、代が朱雀帝に代わり、六条御息所は、帝の代替りにともなって斎宮になった娘に、同行して伊勢に下るか迷う。そのおり葵の上は妊娠して出産が迫るが、物の怪が憑いて苦しんでいる。看病にいそしむ源氏の眼前に、葵の上に取り憑いた六条御息所の物の怪が姿を現す。葵の上は源氏との第一子(夕霧)を何とか無事出産するが、産後の肥立ちが悪く、結局あっけなく死亡してしまう。悲嘆に暮れる源氏だが、その慰めとなった紫の上と、ついに初めての契りを結ぶ。 ― 
 ついでに、「賢木」の帖もたどってみると、
 退位した桐壺院はほどなく死去し、にわかに政局が左大臣派にとって厳しくなる。前帝の后であった弘徽殿の大后とその父の右大臣が政権を牛耳り、左大臣派は中枢からはずされる。そんなさなか、源氏と心ならずも(?)三度めの逢う瀬を遂げた六条御息所は、結局娘とともに伊勢に去る。源氏は故院の妻、藤壺に執拗に迫るが思いは果たせず、危険を承知で相変わらず右大臣一族の朧月夜と三日と開けず逢う瀬を重ねる。ある日ついに右大臣に現場を押さえられ、弘徽殿の大后の大きな怒りを買う。 ― といった具合でしょうか。

 とはいえ、このブログは「源氏物語」を逐帖ごとに追いかけながら、イッチョマエの解説みたいな話するのが目的ではなくて(今までは結果的にそうなっていますし、今後もごく便宜的にそうなるのかもしれませんが)、あくまで私の初見の印象と、できればこの物語が読まれた平安時代のニオイのようなものが、多少でも嗅ぐことができればと思っているのです。

 しかし前にも少し触れましたが、私にとっては序盤の大きな関門が待ち構えています。再びここに現われる六条御息所の物の怪のことです。
 「夕顔」の帖に現われた六条御息所の物の怪について、紫式部はここで御息所の物の怪を、 意識的に朧写 しているという西郷さんの解釈を引き、さらに私なりに平安時代の読者は、社会通念上の「物の怪」という概念を、今と違ってごく普通に実在するものとして捉えていた。したがって、「夕顔」の帖で語られる中味で、実際におこったことと、主人公たちの想念に現われたことは、今よりずうっと明晰に仕分けされて、読まれていたのではないか、という話をしました。


― つづく ―





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Last updated  2009.02.19 11:58:13
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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