サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.02.18
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カテゴリ: 文学
 さて、源の内侍騒動のあと、つづく「花宴」の帖では、光源氏が敵対側の弘徽殿(右大臣派)に、酔ったまぎれで忍んで美女を見初める。天下第一の禁止を破って、不義の子までもうけた彼にとっては、敵対側の寝殿といえども、禁止のハードルとしてはそれほど高くなかったのでしょうか。
 この帖の右大臣派(弘徽殿女御の妹)、六の君(朧月夜)とのアバンチュールは、この長い物語の中でも彼のプレイボーイ的振るまいが、もっともストレートに描かれているシーンだと思うのですが、すごく若やいだ声で、歌などを口ずさんで歩いてくる、貴女らしき人を認めて、源氏は

― いと嬉しくて、ふと、袖をとらへ給ふ。女、「おそろし」と思へる気色にて、「あな、むくつけ。こは誰そ」と、のたまへど、
「何か、うとましき」
とて、…やをら、いだきおろして、戸は押し立てつ。
…「こゝに人の」と、のたまへど、
「まろは、皆人に、ゆるされたれば、めし寄せたりとも、何條事かあらん。たゞ忍びてこそ」と、のたまふ声に、「この君なりけり」と、聞き定めて、いさゝか慰めけり。 ― 同上

 すごく嬉しくなって、スッと女の袖を押さえられる。女は怖じた気配で、「まあ、怖い。あなたは誰です?」と、おっしゃってはみるものの、
源氏は「何を怖がることがあるものですか」

…女は「ここに人が…」と、おっしゃるけれども、君は
「私は、誰にも許されていますから、人をお呼びになっても、どうにもなりませんよ。ただ大人しくしてらっしゃい」と、おっしゃる声が「この人は源氏の君だわ」と、女は聞き定めて、ちょっとほっとした。(円地訳を一部変えてます)
 ずいぶん調子のいい話ですが、女も女で、相手が今はときめくヨン様(?)ならぬ、光源氏と分かると態度がおおいに軟化する。このあたり、当時の身分制も一応視野に置かなくてはならないのですが、高貴な男から懸想された場合、女はムゲにそれを拒否できないという社会認識があって(空蝉や夕顔がそうでした)、だからこそ天上人に準じる光源氏ならば、仮に「あさましい」ことになったとしても、社会通念上は一応非難されない、という意味での安堵感が含まれているのです。

 しかし、その後の経過をみていると、この女(朧月夜)、若いというせいもあるのでしょうが、右大臣派と対立する相手と知りながら、源氏に負けず結構積極的なので、どうやら危険や禁止のハードルが高いほど、思いもセックスも燃え上がるという、例の 源氏の「お癖」を彼女は共有している ようにも思われます。
 よく考えてみると、当時の光源氏は、正妻の葵の上は例のとおりのよそよそしさ、期待の紫の上はまだ子供、藤壺の宮はもちろん気楽に合える立場ではなく、快楽の共有を究めあえた夕顔はすでに死亡して、私的生活面では相当抑圧状態にあったのではないか。お互いに危険を危険と知りつつ、むしろそれであるがゆえに 高い満足と危険を、積極的に共有できる 相手というのは、彼女が初めてなのでした(夕顔には高いハードルはなかったのです)。
 もちろんそのあとには、高い代償が待っていたのですが。

― つづく ―





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Last updated  2009.02.18 11:44:43
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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